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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること(2) ~ 出産のピークは何日頃?

北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること(2) ~ 出産のピークは何日頃?_a0151913_2248291.jpg
クルミ (2013年6月22日撮影 於 男鹿水族館)

12月も半ばになりました。現時点でこの繁殖シーズンのホッキョクグマの赤ちゃん誕生が公表されているものは以下です。

カナダ・トロント動物園で一頭(人工哺育)11月11日誕生
アメリカ・コロンバス動物園で一頭(人工哺育)11月6日誕生
チェコ・ブルノ動物園で一頭 11月24日誕生
オランダ・「動物帝国」で二頭、11月21日誕生

たったこれだけなのですが、実は多分もう誕生してはいるものの発表が行われていない施設が最低二つほどあるだろうと私は考えています。この誕生の事実の発表は年が明けてから行われるというケースがよくあるものの、やはり現時点で発表されている上記の4例はかなり少ないと考えています。ここで、飼育下においていったい何日頃に赤ちゃんの誕生が多いのかを統計にしたものがありますからご覧いただくことにします。これは先日もご紹介した今年2015年に発表された最新の研究報告である “Reproductive trends of captive polar bears in North American zoos: a historical analysis” に記載されているものです。この研究報告は北米における動物園などでの1912年から2010年までの約100年間の北米の動物園で飼育されていたホッキョクグマの456回の出産によって誕生(そして成育)した697頭の個体についての血統登録台帳からの集積データです。ですから当然、誕生してから少なくとも半年成育した個体のデータということになります。今回も前回同様、結論部分の集積データをグラフにしたものをご参照頂くこととします。そのグラフは以下です。ワンクリックしていただき開いたページの+記号をさらにクリックしていただくと拡大しますのでそれをご参照頂くこととします。尚、これは出産数(litter)であって出産頭数(number of cubs)ではありませんのでご注意下さい。
北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること(2) ~ 出産のピークは何日頃?_a0151913_2151173.jpg
(出典)"Reproductive trends of captive polar bears in North American zoos: a historical analysis" (Figure 3. The number of litters born per day of polar bear birth season. )

上を見ていただきますと、やはり多いのは11月8日あたりから12月20日頃までだということが言えます。ピークは11月22日から12月12日といった約20日間のようです。特定の日を挙げれば、中間日(つまりピークの中のピーク)は11月29日であると報告は述べています。つまり本日12月15日はすでにピークをかなり越しているということになります。ただし、これはあくまでも出産日であって出産の事実の発表はこれから何日か後、あるいは何週間後となるわけで、これは施設の方針によって大きく異なります。オーソドックスな例で早い場合は、誕生から3日~1週間後であり、やや遅い場合は誕生から一か月後というのもよくあるケースです。つまり、生後72時間という最初にして最大の関門を乗り切ったところで発表するというケースは誕生の3日後ということになるわけで、これは授乳音が確認できた段階での発表ということを意味するわけです。発表が遅いのはロシアとアメリカで、これはほとんどが年を越してからです。今回のコロンバス動物園の発表はそういう点から考えて非常に早かったということになりますね。発表が早い代表格はオランダとデンマークでしょう。

さて、現時点における日本ではまだ今年は赤ちゃん誕生の発表はありません。静岡と札幌からの発表は確かにあったものの、それは誕生の発表であったと同時に失敗の発表でもあったわけです。
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クルミ (2013年7月27日撮影 於 男鹿水族館)

今年の繁殖シーズンで日本では最も可能性が高いと思われるのは男鹿水族館のクルミであることは言うまでもありません。彼女は過去に一回の出産(そして育児)に成功しているわけで、これが国内の他園で出産を期待されている数頭の雌たちとは異なる点です。昨年は別のデータを用いてクルミの出産の可能性、予定日、出産頭数などを細かく予想したわけですが、今年についてはそういったデータに拘ることは止め、ひたすら待ちの姿勢を貫くことにしています。2012年12月にクルミがミルクを出産した時には出産から数時間後の発表だったわけで、その時にはまだ授乳音が確認される前に出産の事実が発表されたわけです。だからといって仮に今年も出産があれば前回同様にスピード発表するかどうかは全くわかりません。欧州などでもそうですが同じ施設でも発表の時期が年によって異なる場合もあるからです。ですから現時点で男鹿水族館の発表がなくてもクルミがもう出産しているということだってあり得るということです。ただし一つだけ大胆な予想をしてみれば、クルミに出産があるとすればそれは12月20日頃までであって、それ以降はないだろうということです。つまり、今週一杯で「勝敗」が明らかになると思います。

(*追記)実は私は最近の投稿で、ホッキョクグマの出産日は野生下であっても飼育下であってもだんだんと11月から12月が主流になりつつあるということを述べたのですが、その記載のあった研究報告を読みはしたものの不注意で保存しておらず、ここ数日ネット上などでその報告を探し回っているのですが見つかりません。確かカナダの研究者の報告だったと記憶しています。ところが今回の最新の北米の飼育下のホッキョクグマに関する報告では、過去100年間にホッキョクグマの出産日が後にずれてくるという傾向を否定しています。それは以下の、年代における出産日のデータの散布図より読み取れるわけです。つまり、縦軸の散布の中心点を定めてそれを線にして年代の新しい右側部分に伸ばしていくと横軸と平行線のほぼ直線になるわけです。ということは、過去100年間にわたって少なくとも北米における飼育下ではホッキョクグマの出産日(のピーク)の時期には変化がほとんどないということを示していることになります(あくまでも飼育下での話です)。
北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること(2) ~ 出産のピークは何日頃?_a0151913_22174999.jpg
(出典)"Reproductive trends of captive polar bears in North American zoos: a historical analysis" (Figure 4. A scatter plot of year (x-axis) by polar bear birthing dates (y-axis) sorted ordinally.)

つまり私が以前に眼にした研究報告で述べられていたことと全く異なる結論を今回の最新の研究報告は導き出しているというわけです。私がかつて読んだ研究報告のタイトル名を私が今この場で提示できない以上、今回の新報告の結論を本ブログでも採用するというのが正しいあり方でしょう。そう訂正することとさせていただきます。

(資料)
"Reproductive trends of captive polar bears in North American zoos: a historical analysis" (2015)

(過去関連投稿)
北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後
by polarbearmaniac | 2015-12-15 21:30 | Polarbearology

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