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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎

「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎_a0151913_2391587.jpg
ジャンブイ(Jambui the polar bear/Белый медведь Ямбуй)
(2016年2月1日撮影 於 よこはま動物園ズーラシア)
「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎_a0151913_253867.jpg
故ウムカ(豪太の父 - 左)とジャンブイ(現 ズーラシア - 右)
(於 ロシア・ノヴォシビルスク動物園 circa 1993~1994)

よこはま動物園ズーラシア(以下「ズーラシア」と略記)で飼育されている雄のジャンブイの血統の謎については過去に何度か投稿してきました。私は数年間、この野生出身のジャンブイは実は双子兄弟の一頭であり、そのもう一頭はモスクワ動物園で飼育されていた故ウムカ(ウンタイ – 男鹿水族館の豪太の父)ではないかという強い疑念を抱いていたわけですが、昨年に「『ロシア血統の謎』に迫る(4) ~ 横浜・ズーラシアのジャンブイの誕生・血統の真相を探る」という投稿でロシアにおける信頼度の高いと考えられる資料を用いてこの「ジャンブイ/故ウムカ双子兄弟説」を否定したわけでした。そういった経緯は全て過去関連投稿をご参照下さい。私自身はこれで決着をつけたつもりだったのですが、ここにきてとんでもない映像ファイルを入手しました。この映像は今まで行ってきた資料に基づく研究をひっくり返しかねないほどのインパクトを持っているわけです。

まずその映像ファイルですが、ロシアのホッキョクグ好きのある方からいただいたものですが、1994年(頃)のノヴォシビルスク動物園で撮影された映像だそうです。1994年(頃)といえば、ズーラシアのジャンブイもモスクワ動物園の故ウムカも当然まだノヴォシビルスク動物園で飼育されていたわけでした。写っているのは二頭のホッキョクグマでまだ幼年、あるいは若年個体の年齢であることは明白であり、その様子からこの二頭は野生孤児で保護された双子である可能性が強いと思われます。便宜上、向かって左側の個体を「個体X」右側の個体を「個体Y」と呼ぶことにします。その映像を下でご覧いただくことにします。



さて、ご覧になってお気付きになられたかもしれませんが映像の向かって右側の「個体Y」の顔付き、そしてとりわけ両目と鼻の間にある傷には特徴があることがわかっていただけたかもしれません。この「個体Y」の姿を映像から切り出して拡大してみたのが下の写真です。
「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎_a0151913_1543628.jpg
おわかりいただけたと思います。この「個体Y」はズーラシアのジャンブイに99.9%間違いないということです。こういった顔の傷を写真で拡大するのは非情な行為であり私は決して好きではないのですが、今回だけはしょうがありません。この下が最近のジャンブイの顔を拡大したものです。
「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎_a0151913_2314896.jpg
「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎_a0151913_2315760.jpg
ジャンブイ(2016年2月1日撮影)

幾分位置関係に微妙な違いがないとは言えませんが、それは成長によって生じた顔のバランスの変化によるものだと思います。それにしてもジャンブイの幼年時代の映像が残っていたとは驚きです。実に貴重な記録だと思います。しかし同時に極めて不可解なことに気が付くわけです。それは「個体Y」すなわちジャンブイと一緒に写っており双子として育ったことが確実と思われる向かって左側の「個体X」が誰なのかということです。私の持っている記録資料ではジャンブイと双子である可能性のある個体は全く存在していないわけです、ある一頭を除いて..。

その一頭こそ実は私が資料を駆使してジャンブイとの双子兄弟であることを否定したモスクワ動物園で飼育されていた故ウムカ(ウンタイ)なのです。ともかくこの映像に映っている「個体X」「個体Y」のうち「個体Y」は間違いなくジャンブイです。そして昨年、私は資料を駆使して「ジャンブイ/ウムカ双子兄弟説」を否定したわけですが、その私の否定説に立てば「個体X」「個体Y」は双子ではないことになるわけですが、映像を見る限り私にはこの二頭は双子に見えます。

ジャンブイと故ウムカが本当に野生孤児の双子であるかどうかを問わず、この時代にこの年齢でノヴォシビルスク動物園で飼育されていたのはジャンブイと故ウムカ(ウンタイ)しかいないわけで、つまりこのことは向かって左側の「個体X」は故ウムカ(ウンタイ)であることは間違いないということだけはハッキリ言えるわけです。さらに、ズーラシアはジャンブイの顔の傷はロシア時代に闘争によって生じたものだと述べているわけですが、しかしこの1994年(あるいは1993年?)の映像にはすでにこの傷があるわけです。仮にズーラシアの述べる通り闘争によってジャンブイの顔に傷が付いたとすれば、彼が闘争した相手はウムカしかありえず、そうなるとジャンブイは自分の顔に傷を付けた闘争相手であったウムカとこうして闘争後も同居していたことになるわけで、それは極めて不自然です。つまりジャンブイの顔の傷は彼が自分の母親が密猟者によって射殺された一連の不幸な出来事の際に生じた傷であるという解釈のほうが正しいように思うわけです。

さらにこの映像が撮影されたのが本当に1994年であるかについては疑問の余地がないわけではありません。記録資料から考えれば1993年の映像であると考えるほうが合理的だと考えられます。しかし信頼性があると考えられる記録資料にも事実を反映していない点が存在する可能性があることにも注意が必要でしょう。たとえば前回も「追記」で述べたように故ウムカ(ウンタイ)の保護日が1992年1月2日という、やや不自然な日付である点などもそうです。つまりこの日付はやはりダミーではないかと考え得るわけです。

この問題、さらにまた深い謎に引き戻されてしまったような気がします。やはり当初私が考えていたように「ジャンブイ/故ウムカ(ウンタイ)双子兄弟説」は成立する可能性が出てきたというだけでなく、それが真相ではないかという疑いが強くなってきた感じすらします。今回ご紹介した映像に映っている二頭が「双子」ならば「ジャンブイ/故ウムカ(ウンタイ)双子兄弟説」は自動的に成立します。「双子ではない」ということならば成立しません。私にはどう見ても「双子」の姿に見えます。この二頭の体の同じような大きさも、そしてその飼育場所も、彼らが双子であることを強く示唆していると感じます。つまり横浜のジャンブイと男鹿の豪太は叔父/甥の関係であるということを意味するわけです。つまり釧路市動物園が所有権を持つミルク(故ウムカの孫になりますが)のパートナーをジャンブイとツヨシとの間で生まれた雄の個体(つまり故ウムカの甥になります)にしようとするのは無理ではないものの、やや注意が必要になるということです。大事をとってミルクのパートナーは同じロシア血統でも「アンデルマ/ウスラーダ系」のほうがよいでしょう。

ともかくこの問題はまだまだ追及が必要ですね。「謎の国ロシア」からやってきたホッキョクグマたちの遠い過去は依然として深い霧の奥深くに沈んでいるのです。

(過去関連投稿)
ジャンブイの素顔 ~ 彼の出自の謎を追う
夏の日曜日の昼下がりのジャンブイ、再び彼の出自の謎を考える ~ 彼は果たして豪太の伯父なのか?
モスクワ動物園のムルマ(4) ~ 危機の克服、そして豪太の誕生
ウムカ (男鹿水族館・豪太の父)、悠々の水遊び
モスクワ動物園のウムカ (ウンタイ – 男鹿水族館・豪太の父) 闘病生活の後、すでに死亡の模様
「ロシア血統の謎」に迫る(1) ~ ラスプーチン、ゲルダ、血統番号2893個体の三頭の謎を追う
「ロシア血統の謎」に迫る(2) ~ 日本ホッキョクグマ界最大の謎「イワンとホクトすり替り説」に挑む (前)
「ロシア血統の謎」に迫る(3) ~ 日本ホッキョクグマ界最大の謎「イワンとホクトすり替り説」に挑む (後)
「ロシア血統の謎」に迫る(4) ~ 横浜・ズーラシアのジャンブイの誕生・血統の真相を探る
追い詰められた「含羞のホッキョクグマ」ジャンブイ ~ 彼を覆い始めた北の方角の「暗黒の闇」の不気味な力
by polarbearmaniac | 2016-02-21 07:00 | Polarbearology

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