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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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自然下でホッキョクグマの赤ちゃんに襲いかかり殺して食べてしまう雄の成年個体 ~ 大自然のドラマ



こういう映像というのは残酷であるかどうかなどと考える以前に事実は事実として冷徹に見ておく必要があるわけです。ナショナルジオグラフィック(National Geographic)誌が今回初めて公開した映像です。そもそもホッキョクグマという種が存在して以来、ずっとこういうシーンは自然下では存在し続けてきたわけで、現在においても全くそれは同じです。この映像は2015年にカナダのバフィン島で撮影されたものだそうです。実に貴重な映像だと思います。必見の映像でしょう。多くの方に是非見ていただきたいと思います。音声をonにしていただくと専門家の説明を聞くことができます。どの方も大変に冷静です。女性の研究者の方はこう語っています。

“Sure, you understand that this is life in the Arctic, and this is something we know about polar bear biology. But to see it is really dramatic.”

英語でこの行為のことを "Cannibalism" と表現しますが、これに「共食い」という日本語訳を当てるのは私は非常に問題があると思っています。「同種食い」とすべきでしょう。この件については過去関連投稿をご参照下さい。それから、果たしてこういう "Cannibalism" が最近の温暖化によって増加しているかについては明確な統計がありません。野生のホッキョクグマの生態研究の機会の増加や近年の "Polar Bear Tourism" の流行によって人間が野性のホッキョクグマの姿に多く接するようになったために、必然的に今まで目にすることが少なかったホッキョクグマの "Cannibalism" に遭遇する機会も増えてきたためであり、温暖化による影響とは直接の関係はないという解釈には、一定の説得力はあるようにも思います。

この母親は最終的には自分の身を守るためには自分の子供を救出するのを諦めてしまうわけです。これはホッキョクグマだけではなく人間の世界でも同じです。大戦末期に旧満州において満蒙開拓団などの在満邦人たちは攻め入ってきたソ連軍からの危害を逃れて逃亡して身を隠すという危機の極限状態のなかでソ連兵に気付かれないように、泣き出した自分の子供の口やのどを声が出なくなるまで押さえつけて殺してしまったのはまさに在満邦人の母親(又は父親)たちですが、これは子供を殺したのではなく「静かにさせた」ということにすぎません。映画「ショア」での証言からもわかる通り、第三帝国下の絶滅収容所のガス室で幼児を抱いた母親は足元から上へと充満してくる有毒ガスの苦しさから一秒でも長く逃れようと自分の子供を床に投げ捨てて子供の頭を踏み台にして1センチでも上に登ろうとしたわけです。その結果、「処理」終了後のガス室内部には頭蓋骨が割れて脳漿の飛び出した子供たちの遺体が散乱していたというわけです。ですから今回の映像で最後に自分の子供を見捨てて逃げてしまうホッキョクグマの母親の行為は危機の最終的な段階では正当化できるのは当然だと考えられます。

(資料)
National Geographic (Feb.23 2016 - Exclusive Video: Polar Bear Cannibalizes Cub)
Washington Post (Feb.23 2016 - A polar bear killed and ate one of its own kind on video. Is climate change to blame?)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの cannibalism(同種食い) を考える
by polarbearmaniac | 2016-02-24 17:00 | Polarbearology

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