人気ブログランキング | 話題のタグを見る


街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ

ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_11491.jpg
ゲルダとシルカ(Белая медведица Герда и медвежонок
Шилка)
(以下、全て2014年9月11日 ノヴォシビルスク動物園)

最近、ノヴォシビルスク動物園のゲルダが将来のライバルとして前回の出産で産んだ娘のシルカ(現 大阪・天王寺動物園)を脅威を感じていたというような記述を私は行っていますが、その典型的な一例をご説明しておきたいと考えます。それは2014年9月11日の現地ノヴォシビルスクでの投稿でも触れたのですが旅先のことでもあり詳しくは述べる余裕がなかったわけです。写真と映像を時系列的に並べてみることとします。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_1191098.jpg
小雨の降って肌寒い来園者の非常に少ない平日に突然現れた私を見つめるゲルダお母さん。つまりゲルダお母さんは私から何かエサを投げてもらいたいわけで、こうして期待して待っているわけです。(*追記 - ノヴォシビルスク動物園では来園者は園指定のものならばホッキョクグマにエサを投げ入れることを認めているわけです。「ロシア橋北地域で働く人々とホッキョクグマの不思議な関係 ~ 「蜂蜜(мёд)を食べるお方」への敬意」という投稿を御参照下さい。)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_12544100.jpg
当然シルカも私に期待していたのですが、「どうもこの人は何もくれそうにないな。」と諦め始めてしまうのです。私はもちろん、動物園で動物たちにエサを投げ入れることなど考えたこともありません。そういったことをシルカはいち早く私から感じ取ったのでしょう。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_1203638.jpg
しかしゲルダお母さんは諦めずにまだ私を見ているわけです。「早く私に何か下さいな.....」とでもいった感じでしょうか。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_130426.jpg
シルカは当の昔に私を諦めてしまっているわけです。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_135133.jpg
かなり時間が経ってようやくゲルダお母さんは私が何もくれないことをわかってきたようです。怪訝な表情になってきました。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_3293037.jpg
ゲルダお母さんがふと娘のシルカを見ると、娘のシルカは利口にもさっさと私から何かエサをもらうことを先に諦めてしまっていたわけです。それを見たゲルダお母さんは怒ったのです。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_1373533.jpg
つまりゲルダお母さんは娘のシルカのほうが先に私からエサをもらうことができないことを察していた、つまり自分よりも状況の判断(つまり、この人からはエサをもらえないと早く見抜くこと)に優れていたという娘の利口さという事実を見せつけられてゲルダお母さんは娘のシルカに嫉妬し、そして怒ったわけです。 ゲルダお母さんは娘のシルカに八つ当たりです。下の映像を是非ご覧下さい。ホッキョクグマの母親というのは、こうったように子供に向かっていくということは通常は決してしないものなのです。これをゲルダお母さんの若さと未熟さということで説明することも十分可能でしょう。

シルカの態度が気に入らないゲルダお母さん (Gerda the polar bear is getting angry at her female cub, Shilka, on Sep.11 2014 at Novosibirsk Zoo)

ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_1505677.jpg
いたく御立腹なゲルダお母さんなのです。ゲルダお母さんは腹いせにシルカの好きな白いポリタンクを取り上げて自分で遊び始めてしまうのです。つまり「私はお前なんかと遊ばなくても楽しいんだよ!」とゲルダお母さんは虚勢を張っているのです。しかし意地で遊んでいるために遊び方がぎこちないわけです。以下の映像でそういった様子をご覧ください。ただ茫然と母親を見つめているだけのシルカなのです。

シルカの好きなポリタンクを取り上げて腹いせに自分で遊ぶゲルダお母さん (Gerda the polar bear demonstrates her supremacy
over Shilka, by playing with Shilka's favorite toy, at Novosibirsk Zoo, on Sep.11 2014)


そういったゲルダお母さんの怒りが収まると、結局シルカは母親から孤立してしまうのです。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_2132861.jpg
シルカは何故ゲルダお母さんが怒ったのかが理解できません。

母親の怒りの理由を理解しないまま孤立してしまったシルカ (Shilka
the polar bear cub does not understand the reason of her mother's anger, at Novosibirsk Zoo, on sep.11 2014)


ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_2305353.jpg
ゲルダ (Белая медведица Герда)

このシルカの母親であるゲルダはこの時点でまだ6歳なのです。つまり母親としてだけではなく一頭の雌のホッキョクグマとしても意識や感情が完全に成熟していなかったと考えることは可能です。しかしそれよりももっとホッキョクグマの母親と娘との関係には、あることがきっかけで母親が娘に対して厳しく対応する時があることは間違いないと思います。こういった件については「ホッキョクグマの母娘の再会で何か起きるのか? ~ セシ、ヴィルマ、ピリカに冷水を浴びせた母親たち」という投稿をご参照下さい。こういった母親ゲルダと娘シルカとの親子関係の断面は、天王寺動物園で暮らしている現在のシルカを見ていてもあまり想像できないに違いありません。今回のゲルダの息子であるロスチクとゲルダとの関係はシルカとの関係のような微妙なバランスの上に存在している関係ではなく、もっとおおらかさを感じさせるものです。その理由がゲルダお母さんの育児経験に厚みが出てきたために生じたのか、それとも子供たちの性別によって生じているのかのどちらが正しいかについて確定的な結論を出すことは難しいわけです。 しかし現時点では私は前者が正しいように思っています。
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ_a0151913_493225.jpg
シルカ (Белый медвежонок Шилка)

現在は大阪・天王寺動物園で暮らしているシルカは「寂しがり屋」であるという言われ方が大阪でよくされるようですが、より正確に言えば、シルカの母親であったゲルダは娘であるシルカに愛情は持っていたものの、ゲルダはまだ母親として6歳という年齢によって未熟であり自分の娘に対する愛情をうまく表現し、そして的確に発揮できなかったことから、シルカは誰からでもよいからもっと自分に愛情を注いで欲しいと内心願うようになっていったホッキョクグマではないかというのが私の現時点での見方なのです。そして現在はそれが自分の担当飼育員さんにより大きく向かっているのではないかということです。徳島のポロロはおもちゃをくれる人ならばどの飼育員さんが現れても同じように喜ぶわけですが、大阪のシルカの場合は関心がもっと特定の個人(つまり担当飼育員さん)に向かう傾向が強いというのは、こういったノヴォシビルスク時代の母親との関係が影響しているように思うわけです。

ホッキョクグマの親子関係というのは実におもしろいのです。ホッキョクグマの母親は全て一頭一頭、その育児スタイル(子供に対する接し方)が違うのです。多くのホッキョクグマの親子に接すれば接するほど、ますますホッキョクグマの親子関係に興味が湧いてきます。

(以上、写真そして映像は全て2014年9月11日にロシア・ノヴォシビルスク動物園で撮影)

(過去関連投稿)
ロシア橋北地域で働く人々とホッキョクグマの不思議な関係 ~ 「蜂蜜(мёд)を食べるお方」への敬意
ロシア・ノヴォシビルスク動物園生まれの二頭 ~ シルカ vs オイゼビウス (Ойзебиус - 仮称)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダをシモーナと比較する ~ 母親と息子の実力は反比例?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの成長 ~ シルカ/ゲルダとは非常に異なる親子関係
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチク、その日常の姿 ~ 経験を積んだゲルダお母さん
(2014年9月ノヴォシビルスク動物園訪問記)
◎2014年9月11日(木曜日)訪問
・リバーパークホテルからノヴォシビルスク動物園へ ~ ホッキョクグマたちに御挨拶
・容姿端麗なゲルダお母さん、その娘への態度に見る子育て初体験の初々しさ ~ 育児スタイルを模索中
・シルカ、順調に成長を遂げるその素顔
◎2014年9月12日(金曜日)訪問
・ノヴォシビルスク動物園訪問二日目 ~ ゲルダお母さんとシルカの不安定な関係
・ゲルダの将来への道のりと課題 ~ 一頭の母親と一頭の雌の二役の演技の動機となっているもの
・シルカ、その聡明かつ醒めた知性が発散する魅力 ~ ミルク、マルル、ポロロを超える逸材か?
・クラーシン(カイ)の性格とその素顔 ~ 双子兄弟のピョートル(ロッシー)との違い
◎2014年9月13日(土曜日)訪問
ノヴォシビルスク動物園訪問三日目 ~ "Pour que Gerda et Shilka soient heureuse..."
シルカちゃん、ゲルダさん、クラーシン君、お元気で! そしてまた会う日まで!
by polarbearmaniac | 2016-07-16 06:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類

最新の記事

........and so..
at 2023-03-27 06:00
モスクワ動物園のディクソン(..
at 2023-03-26 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-25 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2023-03-24 02:00
鹿児島・平川動物公園でライト..
at 2023-03-23 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-22 03:00
名古屋・東山動植物園でフブキ..
at 2023-03-21 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-20 02:00
モスクワ動物園のディクソン ..
at 2023-03-18 22:20
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2023-03-18 03:00

以前の記事

2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索