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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア北東部・カムチャッカ半島の南端地区で白いヒグマの存在が確認される

ロシア北東部・カムチャッカ半島の南端地区で白いヒグマの存在が確認される_a0151913_23142451.jpg
カムチャッカ半島で目撃されたヒグマの親子 
Photo:Российская газета
ロシア北東部・カムチャッカ半島の南端地区で白いヒグマの存在が確認される_a0151913_03331.jpg
ロシア北東部のカムチャッカ半島で最近、観光客が同地で撮影した二頭の子供を連れたヒグマの母親の写真が話題を呼んでいるそうです。このヒグマ親子の姿が確認できたのはカムチャッカ半島の最南端部にあるウスチ・ボリシェレツキー地区(Усть-Большере́цкий райо́н)であり、この二頭の子供のうちの一頭は体毛が白く、まるでホッキョクグマのように見えるわけで、その写真が撮影されました。最初はこの白い個体は「アルビノ」、つまり遺伝情報の欠損により 先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある個体だろうと理解され一部のマスコミもそう報じているものの、カムチャッカ半島のクロノツキー自然保護地区の動物生態の専門家であるアレクサンドル・ニカノロフ研究員はこの個体が「アルビノ」であることを否定しています。その理由としてニカノロフ研究員は、この写真の白い個体の鼻が黒いことをあげ、もし「アルビノ」ならば鼻はピンク色であるはずだと語っています。そしてニカノロフ研究員は、この地区で40年も動物の生態を研究しているが、このような白いヒグマの姿を(たとえ写真ではあれ)見たのは初めてであると驚きを隠しません。大変に短いですが地元のTVニュースを御紹介しておきます。


ロシア北東部・カムチャッカ半島の南端地区で白いヒグマの存在が確認される_a0151913_234566.jpg
カムチャッカ半島で目撃されたヒグマの双子 
Photo : Российская газета

以前に「千島列島・国後島で姿が捉えられた白いヒグマ ~ ホッキョクグマとの関連は?」という投稿で我々日本人にとっては「北方領土」である国後島(Остров Кунашир)で数年前に初めて白いヒグマを写真で捉えることに成功したことを御紹介していました。今回のカムチャッカ半島というのはホッキョクグマの生息地ではなく、時折半島の北東岸に姿を見せることもあるそうですが、今回はカムチャッカ半島の最南端の地区での話ですのでホッキョクグマの血が混じった個体というわけではないようです。しかしホッキョクグマとヒグマとの関係は最近の研究でその進化の過程において従来の説とは異なる有力な説が登場しています。それはなんといっても今世紀に入って分子生物学の急速な発達によるところが大きいわけです。若干でもご興味のある方は「ホッキョクグマの起源について(5) ~ ホッキョクグマとヒグマとの進化過程での交配を否定する新説登場」という投稿を御参照下さい。ホッキョクグマとヒグマとの関係は従来考えられていたような単純なものではないということがここ数年の研究の成果によって明らかになってきたわけです。こういった件について海外の最新の研究結果をフォローして紹介している専門家の方は日本にはいらっしゃらないようです。となれば、私がやるしかないというわけで、非常に時間を費やして精緻に資料を読み込んで今まで「ホッキョクグマの起源について」という投稿を行ってきたものの、ほとんどのホッキョクグマファンの方々には全く興味を持っていただけないでしょう。そもそも訪問者の方の数を増やそうとしてここで投稿を行っているわけではありませんので、興味云々はどうでもよい話ではありますが、欧州のホッキョクグマファンの方々もやっていないことですので私自身としてはこれからもそれを続けるつもりです。

ロシア語でホッキョクグマのことを "Белый медведь (ベルィ・メドヴェーチ)" といいますが、これは文字通り「白い熊」という意味です。ヒグマについては "Бурый медведь(ブルィ・メドヴェーチ)" といい、これは「茶色い熊」という意味です。ロシアのあるマスコミは今回の白いヒグマについて "Белый бурый медведь" という表現を行っていますが、これは便利な言い方ですね。これを英語に直訳しますと "White brown bear" となるわけです。日本語や英語では通常ホッキョクグマのことを "Polar bear" 、つまり「極地の熊」というわけですが、ロシア語でもこの言い方で "Полярный медведь(パリャールヌィ・メドヴェーチ)" という言い方はあるのですが、これはあまり多くは用いられていないようです。おそらくそれは文化的な背景があるだろうと私は考えています。これについては「ロシア橋北地域で働く人々とホッキョクグマの不思議な関係 ~ 「蜂蜜(мёд)を食べるお方」への敬意」という投稿を御参照下さい。

(資料)
ТАСС (Aug.9 2016 - "За 40 лет впервые такого вижу": медведя редкого окраса обнаружили туристы на Камчатке)
РИА Новости (Aug.9 2016 - На Камчатке удалось сфотографировать медведя-"альбиноса")」
Российская газета - Дальний Восток (Aug.9 2016 - На Камчатке увидели белого бурого медведя)
МИР 24 (Aug.9 2016 - На Камчатке сфотографировали уникального бурого медведя-альбиноса)
Камчатка-Информ (Aug.9 2016 - Не «Умка» и не альбинос: Туристы на Камчатке сфотографировали медведя необычного окраса)
BLOGOS (Nov.4 2009 - 【佐藤優の眼光紙背】国後島の白いひぐまを北方領土交渉に生かせ)

(過去関連投稿)
千島列島・国後島で姿が捉えられた白いヒグマ ~ ホッキョクグマとの関連は?
ホッキョクグマの起源について(1) ~ 諸説の成立過程を整理する
ホッキョクグマの起源について(2) ~ ホッキョクグマ版 「イヴ仮説」 の登場
ホッキョクグマの起源について(3) ~ 画期的な新説が登場するも依然として残る謎
ホッキョクグマの起源について(4) ~ 衝撃的で強力な新説の登場により通説が遂に崩壊へ
ホッキョクグマの起源について(5) ~ ホッキョクグマとヒグマとの進化過程での交配を否定する新説登場
ホッキョクグマの起源について(6) ~ 「新・通説」の結論を否定した新説が登場し謎は再び深まる
by polarbearmaniac | 2016-08-10 00:30 | Polarbearology

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