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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・アシニボイン公園動物園での偉大なる故デビー、そして彼女の末娘ナナ(仙台)の貴重な映像

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故デビーとナナ(現 仙台・八木山動物公園) (1985年) 
Image:Reuter

日本のホッキョクグマファンにとっては何が何でも名前を知っておかねばならない偉大な雌(メス)のホッキョクグマが二頭存在しています。我々日本人にとってだけではなく、世界のホッキョクグマファンにとってもこの二頭が飛びぬけて偉大な雌のホッキョクグマであることに意義を差し挟む人はいないでしょう。そして不思議なことにこの二頭のホッキョクグマの功績は日本のある都市の動物園で偶然にも交差するのです。それは仙台市の八木山動物公園です。この偉大な二頭のホッキョクグマとは、カナダのアシニボイン動物園で飼育されていた故デビー(1966~2008)、そしてロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園で飼育されているウスラーダ(1987~)というわけなのです。八木山動物公園では故デビーの最後の子供であった雌のナナ(1984年12月15日生まれ)、そしてウスラーダが2004年12月2日に産んだ雄のラダゴル(カイ)が飼育されています。このウスラーダ(そして息子のラダゴル)についてはそのロシア時代の様子を可能な限りご紹介していますので御興味のある方は過去関連投稿をご参照いただくこととして今回は省略し、本稿では故デビー(そして娘のナナ)について少々述べておくことにします。
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故デビー (Debby the Polar Bear/Белая медведица Дебби)
(41歳の2008年) Photo:global news

このデビーが亡くなったのは当ブログ開設前のことでしたが、私なりに当時世界最年長(推定42歳)のデビーが亡くなった際のカナダでの人々の反応や当時の様子を何回かに分けて投稿していますので是非過去関連投稿をご参照下さい。このデビーは生涯に4回の(成功した)出産で6頭の子供たちを育て上げています。そのうちの第一子は1974年に生まれ2009年5月に34歳で亡くなった京都市動物園で飼育されていた雄の故ポールです。
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故ポール (Paul the Polar Bear/Белый медведь Пол) 
Photo(C)京都市動物園

そしてデビーの最後の子供が1984年に誕生したナナなのです。ちなみにデビーのパートナー(つまり故ポールとナナの父親)はスキッパーという名前で1999年に34歳で亡くなっています。この故デビーと故スキッパーの同居の姿、そして誕生翌年の1985年にナナがデビーお母さんと一緒に戸外に登場した姿(ほんの一瞬ですが)をご紹介しておきましょう。この映像はデビーが亡くなったことを報じるニュースの中で登場しているわけです。実はこの故デビーと一緒にいる赤ちゃんの姿がナナのものであるというクレジットは映像に付いてはいないのですが、故デビーが育てたのは一頭の子供が二回、双子が二回です。この映像では一頭ですので可能性としては1974年に誕生した故ポール(京都市動物園)の可能性は全く排除はできないものの、映像の前後の部分からこれは10歳だったデビーとポールとの姿ではなく19歳のデビーと赤ちゃんの姿であることは間違いないと判断できますので、必然的にこの赤ちゃんはナナであることを意味するということです。音声はonにして下さい。開始後30秒あたりからの数秒間を御注目下さい。



さらにこの下は1982年の映像で、デビーが前年1981年に産んだ双子との貴重な映像です。



次にデビーが亡くなったときのニュース映像で以前にご紹介していなかったものを一つ見てみましょう。最晩年のデビーの姿を見ることができます。



さて、このナナは生後一年が経過しない1985年の9月に来日したわけですが、当時の名前はウィニーというものでした。それがいつナナに改名されたのかはわかりません。多分仙台来園直後ではないかと思います。しかし血統台帳上では現在もナナはカナダでデビーお母さんと暮らしていた当時の名前であるウィニーとなったままなのです。ラダゴル(カイ)についてはすでに「カイ」という名前に変えて血統台帳に記載されています。ちなみにこの下が仙台・八木山動物公園に暮らす3頭のホッキョクグマたちの血統台帳です。下をワンクリックしていただいて開いた画面をさらに+で再度拡大してみて下さい。
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故デビー Photo(C)Assiniboine Park Zoo

さて、偉大なる故デビーの6頭の子供たちですが、そのうちで現在も健在なのはこの仙台のナナただ一頭なのです。一昨年にオランダの「動物帝国」で飼育されていたウォシュが亡くなっており(上の1982年の映像で映っている双子の一頭)、文字通り仙台のナナは故デビーの遺した唯一の現存する子供というわけです。
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ナナ (Nana the Polar Bear/Белая медведица Нана)
(2013年2月3日撮影 於 仙台市・八木山動物公園)

そのナナもすでに31歳になっています。こういった高齢のホッキョクグマは大事にしてやらないといけません。彼女は徳山動物園のユキと共に国内最高齢のホッキョクグマです(正確には、ナナは飼育下の誕生ですので確定記録優先の慣例から公式的にはナナが「国内最高齢」となります)。
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ナナ(2013年2月3日撮影 於 仙台市・八木山動物公園)

それにしてもナナというのは実にありがたいホッキョクグマです。私のようにいい加減に写真を撮る者にも彼女の姿は美しく撮れるのです。もともと被写体(ナナ)が美しいわけですから写真でも美しいのは当然なのですが、しかし実際は美しくてもそうは撮れないホッキョクグマというのもいるわけです。まだナナに会ったことのない方がいらっしゃいましたら是非とも仙台へ行くことをお勧めします。そしてそこで会うことができるのは偉大なる故デビーの娘の年齢を感じさせない美しい姿なのです。
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ナナ(2013年2月2日撮影 於 仙台市・八木山動物公園)

さらに付け加えれば、このナナの美しさというのは母親になったことのないホッキョクグマの「乙女の美しさ」が昇華したものだということです。世界中には母親になったことのないホッキョクグマはそれこそ多く存在しています。そしてそういったホッキョクグマたちもそれぞれ独自の美しさを放っています。しかし「乙女の美しさ」と形容できるホッキョクグマはこのナナだけかもしれません。一方で母親になったことのあるホッキョクグマの美しさというのはまた別の種類の美しさなのです。いずれにせよナナというのは非常に貴重なホッキョクグマなのです。

(*追記1)以下の写真はデビーと一頭の赤ちゃんの姿です。上でも申し上げましたがデビーが双子ではなく一頭の赤ちゃんを育てたのは2回だけ、つまり1974年誕生の京都の故ポールと1984年誕生の仙台のナナの2回だけです。このどちらの写真かを考えてみますとこれは19歳のデビーではなく10歳のデビーの姿だと思います。さらに赤ちゃんの顔立ちや体付きから雄のようにも見えますので、これは故ポール(京都市動物園)の姿ではないかと判断できます。しかしこれに関しては100%の自信は全くありません。ひょっとしたらナナの写真かもしれません。
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Photo(C)Assiniboine Park Zoo

(*追記2)あと文句なしに偉大な雌(メス)のホッキョクグマが三頭います。アメリカ・デトロイト動物園の故ドリス(1948-91)、ロシア・カザン市動物園の故ディクサ(1973-2006)、ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ(生年不詳)の三頭です。このあたりになるともうカリスマ的ホッキョクグマになります。特にデトロイト動物園の故ドリスは歴代最高齢記録、歴代最高齢出産・育児成功記録、歴代最高齢出産記録という輝かしい記録を持っているわけです。ただしこの三頭になりますと完全にマニアの世界の話になってきてしまいます。偉大であると同時に非常に神秘的なホッキョクグマなのです。アンデルマなどはもう「生ける伝説」の世界のホッキョクグマである点で、現時点では「奥座敷のホッキョクグマ」であると言えましょう。

(資料)
Naturenorth.com (Debby’s Story - A Special Polar Bear and her Legacy)

(過去関連投稿)
(*故デビーとナナ関連)
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (上)
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (下)
偉大であったホッキョクグマのデビー、その娘であるナナと再会した猛暑の仙台
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園内に建設中のホッキョクグマ保護・厚生センターについて
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園内にホッキョクグマの保護・厚生施設が完成
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園の新展示場施設の建設  ~  偉大なるデビーの遺したもの
ナナからポーラへ ~ 世代を超えて引き渡された繁殖を担う主役のバトン
寒風と冬晴れの空の下での仙台・八木山動物公園のホッキョクグマたちの姿
29歳となったナナ、その決して色褪せぬ優雅さ ~ 伝説化された偉大なホッキョクグマの娘ここにあり!

(*ウスラーダとラダゴル - カイ関連)
仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真
ウスラーダお母さんの10番目の子供、カイ (八木山動物公園 / ロシア名 : ラダゴル )のロシア時代の姿
ロシアのマスコミ、カイ(仙台)とロッシー(静岡)の地震・津波からの無事を大きく報じる
カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語
カイの素顔 ~ 「黄金の中庸(Aurea Mediocritas)」 としての存在、そして将来の可能性
初夏の日のカイ (ラダゴル) ~ 女帝ウスラーダが手塩にかけて育てた「正統派ホッキョクグマ」
by polarbearmaniac | 2016-08-20 00:30 | Polarbearology

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