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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・シカゴ、リンカーンパーク動物園にルイヴィル動物園のシークーが突如姿を現す

アメリカ・シカゴ、リンカーンパーク動物園にルイヴィル動物園のシークーが突如姿を現す_a0151913_15582363.jpg
シークー Photo(C)Phil Velasquez / Chicago Tribune

さて、非常に理解が難しいニュースがシカゴで報じられています。シカゴ市内にあるリンカーンパーク動物園で大改装が行われて新設された新ホッキョクグマ飼育展示場(The Walters Family Arctic Tundra)は来週木曜日にオープンするわけですが、それに先立って昨日木曜日に一部の関係者に公開され、そこに現れたのがケンタッキー州ルイヴィル動物園で飼育されていた6歳の雄のホッキョクグマであるシークー(2009年12月3日トレド動物園生まれ)でした。報道によればこのシークはすでに約二週間前にシカゴに到着していたそうです。事実、以下のようにルイヴィル動物園はシークーのシカゴへの移動を告知していました。



このシークーのシカゴへの移動の理由としてルイヴィル動物園はAZAのSSP (Species Survival Plan)による移動であるとしてルイヴィルのファンに理解を求めています。つまりAZAのSSPを主導しているトレド動物園のランディ・メイヤーソン氏が決定したということを意味しているわけです。ルイヴィル動物園にはシークーより一歳年下の野生孤児出身の雌のカニックが飼育されているわけで、私はシークーとカニックがペアとなって繁殖を担っていくものだとばかり思っていました。ところがこうしてシークーはシカゴに移動してしまったわけです。リンカーンパーク動物園は近いうちに雌のホッキョクグマもここに移動してくるということを述べているのですが、それがどのホッキョクグマなのかは全く不明です。アメリカのブロガーさんも頭を捻っています。シークーと同じ年齢層の雌のホッキョクグマは全米には見当たらないわけです。正確に言えばいるのですが、それはシークーの妹というわけですから繁殖上のペアにはできません。一方のルイヴィル動物園が飼育しているカニックは野生出身ですからパートナーはどの雄の個体とも可能であるため、ルイヴィル動物園はシークーを失うことにも比較的冷静な態度を保っています。

さて、そのシカゴのリンカーンパーク動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場に現れたシークーの様子を以下の映像でご覧ください。





話を前に戻しますが、何故AZAのSSPを主導するメイヤーソン氏がシークーとカニックとのペア形成を断念したかについてですが私なりにあえて理由を考えてみればこういうことです。それは、アメリカのホッキョクグマ界では繁殖計画がうまくいっておらず、頼りになるのはトレド動物園の雌のクリスタルだけだという状態になってしまっているわけです。これは比較的近年まで日本のホッキョクグマ界は円山動物園のララだけを頼りにしてきたということと似ているわけです。トレド動物園のクリスタルはすでに6頭の子供たちを成育させているわけでシークーもそのうちの一頭です。しかもコロンバス動物園のオーロラとアナーナという双子姉妹もクリスタルの娘であり、しかもこの双子姉妹は今後の繁殖が大いに期待できるわけです。つまり、クリスタルの血統がアメリカのホッキョクグマ界の若年・幼年個体を席巻してしまう可能性がすでに現実化しているわけです。さてそうなると、せっかくの貴重な野生出身のカニックをシークーとペアにしてしまえば、さらにクリスタルの血統の拡大を助長してしまい、カニックの野生出身の血統の優位性の存在を打ち消してしまうというデメリットがあるということです。そういったわけでシークーとカニックとの間の繁殖を断念したのだろうという解釈です。シークーをルイヴィル動物園から移動させるということはメイヤーソン氏にとっては比較的容易な決断だったかもしれません。何故ならメイヤーソン氏はトレド動物園の副園長格であり、そしてシークーの所有権はトレド動物園にあるからです。
アメリカ・シカゴ、リンカーンパーク動物園にルイヴィル動物園のシークーが突如姿を現す_a0151913_14254240.jpg
シークー Photo(C)Phil Velasquez/Chicago Tribune

アメリカのホッキョクグマ界は非常に難しい状況です。いくつもの動物園で巨額の資金を投じて新しいホッキョクグマの飼育展示場を建設してきたわけですが、そこには可能ならば若いペアのホッキョクグマを飼育・展示したいと各動物園は考えるわけです。ホッキョクグマを移動させようとすればファンは強い抵抗を示します。ホッキョクグマの個体、ファン、動物園という三つの結びつきは日本以上に強いというわけなのです。ホッキョクグマが人気動物になっている近年では特にその傾向が強くなっているということです。こういった事態にSSPの担当者は頭を痛めているということだろうと思います。

(資料)
Chicago Tribune (Nov.10 2016 - Lincoln Park Zoo's latest polar bear frolics in new exhibit space)
Chicago Tonight | WTTW (Nov.10 2016 - Polar Bear Makes a Splash at Lincoln Park Zoo’s Newest Exhibit)
ChicagoNow (Nov.10 2016 - Meet Siku: A sneak peek at Lincoln Park Zoo’s new Polar Bear)

(過去関連投稿)
(*シークー関連)
アメリカ・トレド動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
“It’s a boy !”― アメリカ・トレド動物園の赤ちゃんの性別判明!
アメリカ・トレド動物園の赤ちゃんが産室を出ました!
アメリカ・トレド動物園の赤ちゃんの名前が決定
アメリカ・トレド動物園のシークーがルイヴィル動物園へ移動決定 ~ アメリカのPSSP
アメリカ・オハイオ州トレド動物園のシークー、ケンタッキー州ルイヴィル動物園に到着
(*リンカーンパーク動物園関連)
シカゴ・リンカーンパーク動物園の「ホッキョクグマ啓蒙週間 (Polar Bear Awareness Week)」
アメリカ・シカゴ、リンカーンパーク動物園のアナーナがノースカロライナ動物園へ ~ 新施設建設とSSP
by polarbearmaniac | 2016-11-11 16:00 | Polarbearology

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