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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアイオンがイジェフスク動物園へ ~ 「新血統」への挑戦

モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアイオンがイジェフスク動物園へ ~ 「新血統」への挑戦_a0151913_6555883.jpg
アイオン (Белый медведь Айон/Eisbär Aion)  
Photo(C)ロシア大統領府

これはなかなかその意味するところの理解が一筋縄ではいかないホッキョクグマの移動が発表されました。ロシア連邦・ウドムルト共和国のイジェフスク動物園(公式にはウドムルト動物園 - Зоопарк Удмуртии)の広報担当者が地元メディアに明らかにしたところによりますと、モスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で飼育されてきた7歳になった野生出身の雄のホッキョクグマであるアイオン(Айон)が12月21日にイジェフスク動物園に到着したとのことです。その到着の映像も公開されました。



これから約一か月間は検疫期間で、アイオンの飼育展示場でのデビューは1月下旬であると報じられています。また、イジェフスク動物園においては野生出身である雌(メス)の12歳のドゥムカとのペアリングが試みられるらしいことが想定されているらしく「アイオンとドゥムカには血統の繋がりは全く無い」とも報じられています。
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアイオンがイジェフスク動物園へ ~ 「新血統」への挑戦_a0151913_16483858.jpg
アイオン (Белый медведь Айон/Eisbär Aion)  
Photo(C)ロシア大統領府

モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアイオンがイジェフスク動物園へ ~ 「新血統」への挑戦_a0151913_1733643.jpg
ドゥムカ (Белая медведица Думка/Eisbärin Dumka)
(2014年9月18日撮影 於 ロシア・イジェフスク動物園)

これは明らかにモスクワ動物園の戦略ですね。現在イジェフスク動物園にいて雌のドゥムカは11歳の雄のノルドとペアを形成し、2013年12月に雄のニッサン(現 イギリス・ヨークシャー野生動物公園)と2015年11月にシェールィとビェールィの雄の双子を産んでいます。すでに二回の繁殖成功の実績のあるこのドゥムカとノルドのペアを解消させてまでドゥムカのパートナーをアイオンにしたいというのは意味が分かります。つまりノルドはモスクワ動物園のシモーナの息子(つまり「アンデルマ/ウスラーダ系」)なのですがアイオンは野生孤児個体であり、このアイオンを同じく野生孤児の出身であるドゥムカと組み合わせることによって野生出身同士のペアを作り、そして繁殖を行いたいということとみて間違いないでしょう。つまりモスクワ動物園はイジェフスク動物園に「新血統」のホッキョクグマの繁殖を行わせたいということなのです。これは果敢で凄い決断です。


2010年3月に野生孤児で保護された時のアイオン


モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設でのアイオン(2015年)

こうなるとロシア国内には今まで何回がご紹介してきましたクラスノヤルスク動物園のフェリックスとオーロラ(本名ヴィクトリア)のペアと並んでイジェフスク動物園の新しいペアとなるドゥムカとアイオンという、二つの野生出身個体の「新血統」ペアが生まれることとなるわけです。となると、日本の動物園(特に札幌や浜松)がロシアから雄(オス)の個体を導入しようとすれば比較的ハードルは下がってくるということを意味します。勿論入手の難しさという点ではそう変わらないわけですが。札幌や浜松がリラやモモのパートナーを仮にロシアから導入しようとすれば、その交渉相手はクラスノヤルスク動物園とモスクワ動物園という二つの選択肢となることを意味することになるでしょう。

やはりモスクワ動物園をリーダーとするロシアのホッキョクグマ界でも「アンデルマ/ウスラーダ系」の血統勢力の拡大に対する対策を行ってきているということなのです。こうなると同じイジェフスク動物園で飼育されている3歳の野生孤児出身のバルーとウスラーダの末娘のザバーヴァのペアも解消されるかもしれません。つまり野生孤児であるバルーのパートナーはモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で先日保護された野生孤児のニカとなる可能性が出てくるわけです。何故なら、今回イジェフスク動物園に来園したアイオンはモスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設ではシモーナの娘であるミラーナと一応はペアを組んでいたのですが、それが解消させられてイジェフスク動物園にやってきたからです。つまり「野生孤児個体/アンデルマ・ウスラーダ系」というペアが解消されて「野生孤児個体/野生孤児個体」というペアへと組み合わせが変更になる傾向が進むと考えられるからです。

とうとうロシア国内でも「アンデルマ/ウスラーダ系」の受難の時代が到来してきたことにもなりそうです。私たちはそうしたロシア国内の飼育下のホッキョクグマの動向を知っておかねばならないというわけです。

(資料)
Izhlife (Dec.23 2016 - В зоопарке Ижевска появился еще один белый медведь)
ИА «УДМУРТИЯ» (Dec.23 2016 - Пятый белый медведь появился в зоопарке Удмуртии)
Комсомольская правда (Dec.23 2016 - В Ижевский зоопарк привезли еще одного белого медведя)
ロシア大統領府・プーチン大統領サイト (ПРОГРАММА «БЕЛЫЙ МЕДВЕДЬ»)

(過去関連投稿)
ロシア・極北の街でホッキョクグマの赤ちゃん孤児を保護!
モスクワ動物園に送られた赤ちゃん孤児のその後の映像
モスクワ動物園で保護されている孤児のホッキョクグマ、アイオンの近況
モスクワ動物園が期待を持つ将来の新ペア ~ ヴォロコラムスク付属保護施設のホッキョクグマたち
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設で暮らすアイオンとミラーナの夏の日
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設のアイオンの3歳の誕生祝い ~ WWFが保護した野生孤児の成長
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設の野生孤児アイオンの5歳の誕生会が行われる
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設の野生孤児アイオンの近況 ~ 間もなく本園にデビューか?
by polarbearmaniac | 2016-12-23 16:30 | Polarbearology

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