人気ブログランキング | 話題のタグを見る


街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ロシア・ペルミ動物園が年齢不詳のアンデルマの生年は1984年と公式見解を発表 ~ アンデルマの実年齢は32歳

ロシア・ペルミ動物園が年齢不詳のアンデルマの生年は1984年と公式見解を発表 ~ アンデルマの実年齢は32歳_a0151913_5321655.jpg
アンデルマ (Белая медведица Амдерма в Пермском зоопарке/Eisbärin Amderma)
(2017年7月15日撮影 於 ペルミ動物園)
*ルトヴィク(ホクト - 姫路)、クライ(ゴーゴ - 白浜)の母、ラダゴル(カイ - 仙台)、ピョートル(ロッシー - 静岡)、モモ(浜松)の祖母、イワン(旭川)、シルカ(大阪)の曾祖母

ロシア・ウラル地方のペルミ動物園が注目すべき情報を発表しています。同園に飼育されている年齢不詳の偉大なホッキョクグマであるアンデルマの生年についてペルミ動物園は 「1984/1985年(を跨ぐ冬)」であるとの公式見解を示しました。同園は以下のように述べています。

".....старая медведица Амдерма (родилась ранее зимы 1984/1985гг., поймана на Новой Земле взрослой, с двумя медвежатами, в сентябре 1989г.)"

この「1984/1985年(を跨ぐ冬)」というのは1984年11月から1985年1月という意味であると解すべきであり、アンデルマは野生出身ですから実質上は1984年11~12月の生まれと確定されたと理解して間違いないわけです(野生の場合は1月誕生というのは稀だそうです)。つまりアンデルマは現在32歳であるということになります。

今まで何回か投稿してきましたが、アンデルマの生年については主に1980年説と1983年説の二つが存在しており、ペルミ動物園は従来から1980年説を非公式見解としてではありますが採用していました。しかし私は1983年説を支持してきたわけです。ところが今回のペルミ動物園の発表ではアンデルマの生年を「1984/1985年(を跨ぐ冬)」、つまり実質上は1984年と確定させたわけです。


アンデルマ / Белая медведица Амдерма / Eisbärin Amderma / Amderma the Polar Bear (Jul.20 2017)

ウーン....どうでしょうか、私自身は従来のペルミ動物園の(非公式)見解である1980年説は極めて考えにくいとは思っていましたが1984年という今回の同園の公式見解の発表の結果はかなり意外でした。つまりどういうことかといいますと、アンデルマが1984年(の11~12月)の誕生であるならば彼女が雄(オス)の双子(一頭は故メンシコフ、もう一頭は死亡)を連れて1989年の9月に極北の街であるアンデルマに忽然と現れた際には彼女は4歳であったということになります。(*注 - アンデルマ親子の捕獲の経緯については過去関連投稿の「ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿」の (1) ~ (4) を御参照下さい。) 1989年9月に一歳に満たない双子の幼年個体を連れてアンデルマの街に出没したということは彼女は前年1988年の11~12月に出産していることを意味しており、そうなるとつまりアンデルマは4歳になったかならないかという時点で出産していたということになるのです。これはホッキョクグマの出産としては最も早い年齢の出産であることを意味しているわけです。以前に「ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限」、及び「北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後」という二つの投稿においてホッキョクグマにおける野生の場合の最年少出産年齢、及び飼育下における最年少出産年齢のデータを示したことがありました。どちらもそれは4歳での出産例の存在が最年少であることを示しています(3~4歳 か 4~5歳かは微妙)。 ただしその例は非常に少ないわけです。
ロシア・ペルミ動物園が年齢不詳のアンデルマの生年は1984年と公式見解を発表 ~ アンデルマの実年齢は32歳_a0151913_743499.jpg
アンデルマ (Белая медведица Амдерма в Пермском зоопарке/Eisbärin Amderma)
(2017年7月17日撮影 於 ペルミ動物園)

今回のペルミ動物園の発表によりますとアンデルマはまさにこの稀な例、つまり最年少繁殖可能年齢で故メンシコフを出産したということになるわけです。1989年9月にアンデルマと故メンシコフの親子を捕獲したレニングラード動物園はおそらく捕獲時点でアンデルマの体の科学的な観察によって実年齢を割り出していたはずで、今回のペルミ動物園の新見解はその1989年のデータの詳細が見つかったためにそれに基づいての今回のアンデルマの生年の新しい公式見解となった可能性はあるかもしれません。


ロシア極北・アンデルマの街

先日ペルミ動物園で一週間彼女と向き合った私の率直な印象ではアンデルマはやはり1983年生まれの33歳ではないかという感覚を持ちました。あるいはひょっとして34歳かもしれないという気がしないでもありませんでした。但し「1980年生まれ(の36歳)」という今までの有力説には到底承服はできないという感じもしました。
ロシア・ペルミ動物園が年齢不詳のアンデルマの生年は1984年と公式見解を発表 ~ アンデルマの実年齢は32歳_a0151913_5421347.jpg
アンデルマ (Белая медведица Амдерма в Пермском зоопарке/Eisbärin Amderma)
(2017年7月20日撮影 於 ペルミ動物園)

さて、そうなりますと以下のことが言えるわけです。つまり、

・アンデルマがホクト(姫路)を産んだのは彼女が15歳から16歳になる(なった)時である。
・アンデルマがゴーゴ(白浜)を産んだのは彼女が19歳から20歳になる(なった)時である。

.....ということになるわけです。これを札幌のララに当てはめますと、アンデルマがホクト(姫路)を産んだ年齢はララがアイラ(帯広)を産んだ年齢であり、アンデルマがゴーゴを産んだのはララがリラ(札幌)を産んだ年齢であるということになるわけです。

いずれにせよ、アンデルマは今まで考えられていたよりも1~4歳若かったということになるのです。これは非常に喜ばしいことであると理解すべきでしょう。偉大なアンデルマには是非もっと長生きしてほしいと願っています。


ロシア極北・アンデルマの街に現れるホッキョクグマたち

(*追記)本投稿がなされたあと数時間してペルミの情報サイトがペルミ動物園で暮らす高齢の5頭の動物たち ("Топ-5 старожилов пермского зоопарка: у нас живет самая старая белая медведица России") という記事をアップしています。そこでペルミ動物園のホッキョクグマの担当飼育員であるエカテリーナ・メーリニコヴァさんがインタビューに答えているのですが、そのエカテリーナさんは「アンデルマは約40歳である。」と述べています。もちろんこの年齢は実際とは異なるわけですが、エカテリーナさんはおそらく面倒くさいので簡単にそう答えたのでしょう。さらに、ペルミ動物園のスタッフはアンデルマのことを愛情を込めて「バーブシュカ(бабушка - お婆ちゃん)」と呼んでいるとも語っています。エカテリーナさんはさらに、年に数回も(数人もという意味でしょう)日本(「日出ずる国 - страна восходящего солнца)」という表現をしています)からアンデルマに会いにくるファンがいるとも述べています。当ブログの開設者もそういったファンのうちの一人です。その他エカテリーナさんはホッキョクグマの訓練のこととか飼育展示場の清掃作業などにも簡単に触れています。
ロシア・ペルミ動物園が年齢不詳のアンデルマの生年は1984年と公式見解を発表 ~ アンデルマの実年齢は32歳_a0151913_15354574.jpg
Photo(C)«Prо Город»

(資料)
Пермский зоопарк (Aug.2017/Животное месяца - Белый медведь)
(*追記資料)
Новостной сайт Перми и Пермского края (Aug.25 2017 - Топ-5 старожилов пермского зоопарка: у нас живет самая старая белая медведица России)

(過去関連投稿)
(*アンデルマ関連)
雌の入手を求めてペルミ動物園を訪問したベルリン動物園のブラスキエヴィッツ園長
ロシア・ペルミ動物園の歴史を物語る貴重な写真 ~ ペルミ州知事が公開のコレクションより
ロシア・ペルミ動物園、ホッキョクグマ舎に置かれた「赤いソファ」
ロシア・ペルミ動物園でのホッキョクグマへの活魚のプレゼント
ロシア・ペルミ動物園で夏期恒例の活魚のプレゼント始まる ~ アンデルマ健在!
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマとテルペイの夏
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園で夏期恒例のホッキョクグマへの活魚のプレゼント始まる
ロシア・ペルミ動物園のホッキョクグマ、「生ける伝説」となったアンデルマ
ロシア・ペルミ動物園で一般公開された生後3ヶ月のゴーゴ(現・天王寺動物園)の様子
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(1) ~ 捕捉し難き素顔
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(2) ~ その存在への認識
2011年ロシア遠征後半(ペルミ動物園関連部分)
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(1) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(2) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(3) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(4) ~ 遠征での映像より
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園が創設80周年を祝う ~ 偉大なるアンデルマ健在!

*ユムカ、セリク、アンデルマの三頭同居
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でアンデルマとユムカ、そして野生孤児セリクの3頭同居は順調な滑り出し
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でのアンデルマ、ユムカ、セリクの三頭同居は大きな成果を上げる
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でのアンデルマ、ユムカ、セリクの三頭同居の近況 ~ 最新の映像が公開
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園のアンデルマ、ユムカ(ミルカ)、セリクの近況
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園、初冬のユムカ、セリク、アンデルマの姿 ~ 調和のとれた関係
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園で夏期恒例のホッキョクグマへの活魚のプレゼント始まる
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園の「ホッキョクグマの日」のイベントで訓練の様子が公開される
ロシア・ペルミ動物園の「国際ホッキョクグマの日」 ~ アンデルマ、ユムカ、セリクと来園者たち
ロシア・ペルミ動物園でセリクとユムカ(ミルカ)が後見役のアンデルマの影響からの独立を指向へ
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園で夏期恒例の活魚のプレゼント始まる ~ ロシア最長老のアンデルマ健在!
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園の三頭のホッキョクグマたちの日常の小さなドラマ
by polarbearmaniac | 2017-08-25 06:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類

最新の記事

........and so..
at 2023-03-27 06:00
モスクワ動物園のディクソン(..
at 2023-03-26 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-25 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2023-03-24 02:00
鹿児島・平川動物公園でライト..
at 2023-03-23 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-22 03:00
名古屋・東山動植物園でフブキ..
at 2023-03-21 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-20 02:00
モスクワ動物園のディクソン ..
at 2023-03-18 22:20
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2023-03-18 03:00

以前の記事

2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索