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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・イジェフスク動物園でアイオンとドゥムカの初顔合わせが行われる ~ 「新血統」誕生への挑戦

ロシア・イジェフスク動物園でアイオンとドゥムカの初顔合わせが行われる ~ 「新血統」誕生への挑戦_a0151913_18485268.jpg
ドゥムカ(Думка)とアイオン(Айон)
Photo(C)Зоопарк Удмуртии

ロシアのホッキョクグマ界ではここのところ明らかな方針のもとにホッキョクグマの個体移動が行われています。そしてそれは欧州を巻き込んだ形で行われているわけです。これを敢えて言うならばロシアのホッキョクグマ界はいわゆる「アンデルマ/ウスラーダ系」(つまりカザン血統 - Белые медведи Казанской линии)の個体を国外に出すことによってロシア国内の飼育下のホッキョクグマの血統の遺伝的多様性を維持しようと懸命になっているということです。それに対して欧州側としてはこのロシアの「アンデルマ/ウスラーダ系」の個体を受け入れる余地がまだ十分にあったという事情があって今回の欧露間の個体移動が実現したというわけです。
ロシア・イジェフスク動物園でアイオンとドゥムカの初顔合わせが行われる ~ 「新血統」誕生への挑戦_a0151913_20545377.jpg
ロシア国内でいえば、イジェフスク動物園(公式にはウドムルト動物園 - Зоопарк Удмуртии)の雄のノルド (Норд) と雌のドゥムカ (Думка) のペアはすでに二回の繁殖成功の実績があったもののペアは解消されてしまうという結果になりました。これはノルドがモスクワのシモーナの息子(つまり「アンデルマ/ウスラーダ系」であったという理由によるものです。ロシアにおいて個体数の多い「アンデルマ/ウスラーダ系」に野生出身のドゥムカをパートナーとさせておくのは野生出身の血という貴重な繁殖資源の浪費につながるという考え方なのです。野生出身の個体には同じく野生出身の個体をペアにして今までにはなかった「新血統」を誕生させようという狙いであり、それによって12歳の雌(メス)のドゥムカの新しいパートナーはモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で飼育されていた野生孤児出身の7歳の雄(オス)のアイオン(Айон)ということになり、アイオンは昨年の末にモスクワからイジェフスクに移動してきたというわけでした。非常に考え抜かれた決断だったと思います。
ロシア・イジェフスク動物園でアイオンとドゥムカの初顔合わせが行われる ~ 「新血統」誕生への挑戦_a0151913_20433354.jpg
アイオン(Айон)とドゥムカ(Думка)
Photo(C)Зоопарк Удмуртии

さて、そのドゥムカとモスクワから来たアイオンとのイジェフスク動物園での初めての同居の試みが開始されたようですが、それに先立ってやはり同居までの周到な準備がなされていたようです。室内で直接接触しない形での出会いを行わせて互いが相手に対して攻撃的な態度を示さないことを長い時間かけて確認するなどのプロセスを経て今回の同居試行となったというわけです。そしてその結果としてこの新しいペアの相性は非常に良いということをイジェフスク動物園は語っています。

ドゥムカには過去に二度の出産の成功経験がありまずが、雄(オス)のアイオンについては本当に彼に繁殖の能力があるのかについての証明はないわけです。こういった例は雄(オス)のホッキョクグマの繁殖能力が試される試金石となるということで、今回の個体移動を欧州側と共に実現させたモスクワ動物園にとってもこの個体移動プランの成否を占う大きなものの一つとなりそうです。ここで、春の季節の到来したイジェフスク動物園のホッキョクグマたちその他の様子が紹介されている映像がありますのでご紹介しておきます。



このドゥムカとアイオンの間で繁殖に成功した場合、その個体はロシア国内の動物園、及び欧州の動物園で飼育されることになるはずで、そういった件については「モスクワ動物園が、今後ロシア国内で誕生の個体はロシア国内と欧州だけで飼育の意向を表明」という投稿を御参照下さい。悲しいかな日本は完全に締め出されてしまった状態になっているわけです。

(資料)
Зоопарк Удмуртии (Apr.5 2017 - Новая пара зоопарка)
ИжевскИнфо.РУ (Apr.6 2017 - Белый медведь Айон встретился с «невестой» в зоопарке Удмуртии)
ИА «УДМУРТИЯ» (Apr.6 2017 - Новая пара белых медведей образовалась в зоопарке Удмуртии)
ИА Сусанин (Apr.6 2017 - Белый медведь Айон встретил свою любовь в Ижевском зоопарке)

(過去関連投稿)
ロシア・極北の街でホッキョクグマの赤ちゃん孤児を保護!
モスクワ動物園に送られた赤ちゃん孤児のその後の映像
モスクワ動物園で保護されている孤児のホッキョクグマ、アイオンの近況
モスクワ動物園が期待を持つ将来の新ペア ~ ヴォロコラムスク付属保護施設のホッキョクグマたち
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設で暮らすアイオンとミラーナの夏の日
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設のアイオンの3歳の誕生祝い ~ WWFが保護した野生孤児の成長
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設の野生孤児アイオンの5歳の誕生会が行われる
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク付属保護施設の野生孤児アイオンの近況 ~ 間もなく本園にデビューか?
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアイオンがイジェフスク動物園へ ~ 「新血統」への挑戦
モスクワ動物園が、今後ロシア国内で誕生の個体はロシア国内と欧州だけで飼育の意向を表明
by polarbearmaniac | 2017-04-07 00:30 | Polarbearology

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