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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ウクライナ・ハリコフ動物園の偉大なる母であったセヴェリャンカの姿 ~ 写真という実相を語らぬ媒体の限界

ウクライナ・ハリコフ動物園の偉大なる母であったセヴェリャンカの姿 ~ 写真という実相を語らぬ媒体の限界_a0151913_1301566.jpg
故セヴェリャンカと三つ子の赤ちゃん (Белая медведица Северянка с малышами) Photo(C)Харьковский Зоопарк

世界の動物園で飼育されてきたホッキョクグマたちには過去に偉大な母であったホッキョクグマが何頭か存在していますが、そういったホッキョクグマたちの大部分は死後に忘れ去られてしまうといったことは珍しくありません。そういった偉大なホッキョクグマたちが飼育されていた当時に担当していた飼育員さんも年月を経て動物園から去り、そういった過去の素晴らしいホッキョクグマたちを語る証人はいなくなってしまうわけです。実に惜しいことだと思います。私は少なくとも現在、動物園で活躍しているホッキョクグマたちについては単に写真や動画だけでなく、彼ら(彼女ら)の生き様についてしっかりと記述して残しておいてやりたいと常に思っています。そうしたことはウスラーダやシモーナやララといった偉大な母であるホッキョクグマたちがいかに母親として子供たちを育て、そして彼女たちがどのようなホッキョクグマであるかを記録し続けることで実践している(してきた)と思っています。

ウクライナのハリコフ動物園で1960~70年代に偉大なる母として君臨したセヴェリャンカ(1955~?)については以前に「ウクライナ ・ ハリコフ動物園に到来した暑い夏とサーカス出身のティムの近況 ~ 同園での繁殖の歴史」という投稿の中でご紹介したことがありました。彼女は1966年から1977年にかけて13頭の子供たちを産み育てた、当時としては世界屈指の名ホッキョクグマであり、幸運なことに少なくともその名前と功績だけは現在のハリコフ動物園でも「伝説のホッキョクグマ」として記憶されているわけです。しかし彼女がどのような母親であったかを記述した文章は見つかりません。現在大規模な改造工事のために閉園中の同園の前には過去に飼育していた動物園たちの記録写真が展示されているそうで、そういった中にこのセヴェリャンカが三つ子の赤ちゃんと共に写っている写真があるそうで、冒頭の写真がそれなのです。このたった一枚の写真が何を語るかですが、私の見たところたった一枚であっても、ある程度はセヴェリャンカの偉大さを見せてくれているようにも感じます。

このセヴェリャンカはおそらく、長い時間にわたって彼女の三頭の子供たちそれぞれに対して注意力を払い続けることのできたホッキョクグマだったように推測します。そうした彼女であっても一日のちょっとした時間ではこうして居眠りをしていたのでしょう。しかし子供たちは勝手に遊び回るということをせずに母親に寄り添っているという姿を見せています。こうしたことから想像できるのは、セヴェリャンカは私の分類で言えば「関与性」の高い母親であったのではないかと考えます。そして「理性型」であるよりも「情愛型」のタイプではなかったかと推測します。ウスラーダはこういったシーンを見せることは極めて稀だったのです。つまりウスラーダは自分の子供を自分の外に存在しているものと認識するホッキョクグマであり、セヴェリャンカは子供たちを自分の一部として内側に認識していたホッキョクグマではないかということです。つまりセヴェリャンカはシモーナやララに近いホッキョクグマだったのではないかと想像することはあながち間違いではないように思うわけです。

このセヴェリャンカの母親としての在り方は私の経験から導いた単なる推測にすぎず、実際はどうだったかについては今となってはわからないということです。近年において私は感じるのですが、写真といものは実はあまり多くのものを語らないと思うようになりました。動画は写真以上のものを語ることが比較的多いとも感じるようになりました。しかしそういったものよりも、「セヴェリャンカはどういう母親であったか?」、つまりセヴェリャンカの母親としての実像を明らかにできるのは当時彼女を実際に観察した人の書いた文章、あるいは証言だろうと思います。そういった当時のものを読むことができないのは非常に残念です。

(過去関連投稿)
サーカスを「引退」し余生を送るホッキョクグマ ~ ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの夏
ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの近況 ~ 繁殖の「過去の栄光」をどう考えるか
ウクライナ ・ ハリコフ動物園に到来した暑い夏とサーカス出身のティムの近況 ~ 同園での繁殖の歴史
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by polarbearmaniac | 2017-09-25 03:00 | Polarbearology

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