街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園がハールチャーナのパートナー探しに早々と着手へ

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ハールチャーナ (Белый медвежонок Хаарчаана)
Photo(C)Михаил Солдатенков/Ленинградский зоопарк

ロシア北東部のヤクーツク動物園で2016年の11月30日に誕生した雌(メス)のハールチャーナ (Хаарчаана) は昨年の12月初頭に彼女の祖母であるウスラーダの暮らすサンクトペテルブルクのレニングラード動物園に移動したわけですが、これはウスラーダの息子でありハールチャーナの父親であるロモノーソフがレニングラード動物園からヤクーツク動物園にBLで移動する際のレニングラード動物園とヤクーツク動物園との間の合意書に基づくものだったわけです。レニングラード動物園に移動してきたハールチャーナに対する市民の関心は非常に高いようで、それは何といっても長年にわたってサンクトペテルブルクに君臨している女帝ウスラーダの後継者としてのハールチャーナに興味があるからでしょう。ここで地元メディアの撮影したごく最近のハールチャーナへの給餌の様子をご紹介しておきましょう。表情の変化がよくわかる素晴らしい映像だと思います。下をワンクリックして下さい。
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さて、サンクトペテルブルクの地元ネットワークが報じるところによりますとレニングラード動物園は早々とこのハールチャーナパートナー探しへの意欲を見せているとのことです。レニングラード動物園はこのハールチャーナをウスラーダの後継にすることによって「レニングラード動物園のホッキョクグマ王朝 ("династия белых медведей Ленинградского зоопарка")」を存続させていくということを明らかにしていると同時に、ウスラーダとは別居して暮らすハールチャーナが退屈しないように「遊び友達」を導入することによって将来のハールチャーナの繁殖上のパートナーとしてペアを形成する意思を示しているわけです。そういったことから、おそらくハールチャーナのパートナー探しは早ければ早い方がよいということになるのでしょう。それから、ロシアの動物園で非常に若くして(5~7歳)繁殖に成功するペアというのは1~2歳から同居しているというケースばかりなのです。仙台の八木山動物公園はラダゴル(カイ)とポーラとの同居開始にかなり慎重な姿勢で臨み、また上野動物園のデアがイコロと同居を開始するのもかなり時間を置いてのことでした。上野はイコロを北海道から上野に導入する意図はデア来日前後の時点ですでに十分にあったものの急がなかったのです。こういった日本のやり方とロシアのやり方は全く異なるわけです。私は日本の同居開始の年齢を遅くするやり方は別に間違っていないとは思います。それは大自然下において繁殖可能年齢となった二頭が突然遭遇して繁殖行動に移行するといった野生のホッキョクグマの繁殖を念頭に置いて飼育下でも可能な限りそれに近いやり方で繁殖に結び付けたいという生態学的な観点を踏まえたやり方は間違ってはいないと思いますし、仙台も上野もしっかりとした考え方で繁殖に取り組んでいます。特に仙台は「幼馴染」という関係を極力回避しようとしていたわけで、それはそれで正しいとは思います。ところがロシアでは「幼馴染」をむしろ推進するという、仙台(や上野)とは真逆のやり方を行うのです。さて、しかし圧倒的に実績を上げているのは日本のやり方ではなくロシアのやり方であるというのは結果が示しているというわけです。最近になって欧州で急速に行われるようになっている幼年・若年個体の多頭同居もロシアの「幼馴染」を推進するやり方と同一線上にあることが、こうやって初めて理解できるのです。「ホッキョクグマは単独行動を指向する動物である」といったテーゼを飼育下のホッキョクグマにもいとも簡単に適用させて雌(メス)の幼年・若年個体(たとえばアイラ、マルル、ポロロ、シルカ)の単独飼育を続ける日本のやり方は肯定できないということの根拠がこのあたりにあるということなのです。諸事情によってバフィン/モモ、ララ/リラの母娘の同居は長く続いていますが、つまりこのことは結果的にモモとリラの将来の繁殖には有利に働くでしょう。つまりモモやリラにとってバフィンやララの存在は「幼馴染の存在」や「多頭同居」の代用として見事に機能しているであろうからなのです。
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ハールチャーナ (Белый медвежонок Хаарчаана)
Photo(C)Михаил Солдатенков/Ленинградский зоопарк

同園で取材されたメディアのニュース映像を見ますとハールチャーナの現在暮らしている場所は当初予定されていたウスラーダの隣の区画ではなく、以前いサーカス出身のイョシが暮らしていた飼育小屋のかなりの区画をぶち抜いてかなり広くした場所であるように思います。ここならばもう一頭を同居させることができるという考えなのでしょう。ウスラーダの隣の区画というのは以前にメンシコフの暮らしていた場所ですが、あそこに二頭は無理だろうと思いますから飼育小屋を改造して活用するのは合理的ではあるでしょう。しかしハールチャーナの将来のパートナー候補というのは難しい選択になるでしょう。ノヴォシビルスク動物園のロスチクとはいとこ同士になるので無理です。そうなるとペルミ動物園で期待されているミルカ(ユムカ)とセリクとの間に誕生が期待されている個体が一番可能性があると思います。ハールチャーナの父親であるロモノーソフとミルカ(ユムカ)はいとこ同士ですが、それぞれの子供同士は「またいとこ」ですので六親等になるはずです。五親等以上ならば許容するのがロシアにおける一種の「許容基準」のようですので、これならば問題は無いと思われます。ましてやハールチャーナの母親であるコルィマーナとペルミ動物園のセリクは野生孤児の出身ですので尚更都合がよいということにもなります。

(*追記)レニングラード動物園におけるハールチャーナの最近の映像をもう一つご紹介しておきます。



(資料)
Пешком по Питеру (Jan.6 2018 - Медведице из Ленинградского зоопарка подыщут пару)
Ivyborg.ru (Jan.10 2018 - Медведице Хаарчаане из Ленинградского зоопарка подыщут пару)
ГАТР (Dec.11 2017 - Медведицу Снежинку в Ленинградском зоопарке кормят мясом и морковкой)
(*追記資料)
Nadv.ru (Jan.11 2018 - Якутяне навестили белого медвежонка Хаарчаану в Ленинградском зоопарке)

(過去関連投稿)
ロシア・ヤクーツク動物園のハールチャーナが11月にサンクトペテルブルクのレニングラード動物園へ
ロシア・サハ共和国、ヤクーツク動物園のハールチャーナが間もなく満一歳へ
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ロシア北東部 ヤクーツク動物園のハールチャーナが満一歳となる ~ ゲルダ/シルカの先例を危惧する同園
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ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園でハールチャーナ到着の日のウスラーダの姿
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園に到着したハールチャーナの姿
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園でハールチャーナの引き渡し式が行われる
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のハールチャーナへの市民の関心の高さ
by polarbearmaniac | 2018-01-11 02:00 | Polarbearology

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