街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る
通知を受け取る

アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラの成長 ~ スタッフの強い意思と苦闘の最前線

a0151913_2163034.jpg
ノーラ (Nora the Polar Bear) Photo(C)Hogle Zoo

2015年の11月6日にアメリカ・オハイオ州のコロンバス動物園で誕生し人工哺育で育てられた雌(メス)のノーラ (Nora) は昨年2016年の9月に西海岸オレゴン州ポートランドのオレゴン動物園に移動したものの彼女の「適応化 (socialization)」を行うための相手役だったタサルが亡くなってしまたっために当初の「適応化」の目的を果たすために彼女は2017年9月にユタ州ソレトレイクシティのホーグル動物園に移動して彼女と同年齢であるトレド動物園生まれのホープとの同居することになった件が今までの経緯でした。こういった一連のノーラの成長の過程を見事に "The Loneliest Polar Bear" というタイトルにまとめてネット上で公開しているのがポートランドのメディアである The Oregonian 紙です。このノーラの成長記録を書いてきた記者であるケイル・ウィリアム (Kale Williams) 氏はノーラがオレゴン動物園を去った後に初めてホーグル動物園を訪問して5ヶ月振りに現在では2歳となったノーラと再会し彼女の現在の様子について述べています。それをごく簡単にご紹介しておきます。
a0151913_2173465.jpg
ノーラ (Nora the Polar Bear) Photo(C)Hogle Zoo

ノーラはホーグル動物園での暮らしにもすっかり馴染んだ様子で、遊び友達であるホープと一緒に遊び回るなどノーラにとっての「適応化」のステップを確実に歩んでいる様子ではあるものの、いくつかの点でオレゴン動物園において直面した課題が依然としてノーラには付きまとっているとウィリアム氏は語っています。その前にまずホープと遊ぶノーラの現在の様子を見ておきましょう。下をワンクリックしていただくと映像の開始画面に飛びます。
a0151913_1461479.jpg

もう一つ、最近のノーラについてトレーニングの様子を見てみましょう。



さて。このノーラはホーグル動物園到着補に一ヶ月の検疫期間を経て遂に飼育展示場でホープとの同居が始まったわけですが、その日の様子を伝えたライブ映像がありますのでご紹介しておきます。これは以前にも一度ご紹介した映像です。ノーラとホープとのその時点での関係について非常によくわかる映像です。左端で固まっているのがノーラ、右側で動き回っているのがホープです。下をワンクリックしていただくと映像の開始画面に飛びます。
a0151913_2161880.jpg

上のライブ映像が公開されたときに大きな反響があったそうで、何故ノーラは寂しそうにしているのかとか、ホーグル動物園のノーラの扱いは間違っているといった非難の声がかなりあったそうです。やはりノーラは他の個体との同居経験がほとんどなく(オレゴン動物園でのタサルとの同居は極めて短期間で終了しています)、やはりかなり緊張していた感じが窺えます。しかしこの後にゆっくりとではありますがノーラはホープとの関係がうまくいく軌道に乗っていったそうです。ホープは同年齢のノーラよりも体重が約45キロ以上(以前の情報では約80キロでした)も重かったためにノーラは最初の頃はこうしてホープの姿を見ていただけだったそうです。ホープはノーラを無理やり遊びに誘い込むことはせずに辛抱強く行動していたのが幸運でした。そしてとうとうノーラとホープとの関係は親密になったそうです。その映像を御紹介しておきます。これも以前に一度、「アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園でノーラとホープが同居を開始し、一般公開となる」という投稿でご紹介しています。



ノーラはオレゴン動物園では非常に常同行動の時間が長かったそうですが、そういったものが現在の段階では見られなくなったそうです。ノーラは人工哺育されたコロンバス動物園時代には飼育員さんや来園者などという人間とだけ交流があり、そのためにそういった人間に対してある種の依存心を持ってしまったようで、このことが彼女に不安感を抱かせる結果となってしまったそうです。それは、担当飼育員さんの姿が見えなくなると癇癪をおこしてアザラシのような声を上げたりエサの容器を叩いたりしていたそうです。そしてあたりを歩き回るなどの常同行動を行うために、専門家は彼女に抗うつ剤の投与を行うこととしたそうです。やがて彼女の状態は好転したものの、不安感から生じていると考えられたそうした症状は完全には払拭はできなかったそうです。こういった症状をなくすための唯一の方法はノーラ自身がホッキョクグマであることを習得することだという結論となったというのが経緯だそうです。その具体的手段が彼女に、仲間としての遊び友達を与えてやることだったというわけです。
a0151913_232121.jpg

次なる問題はノーラの関節の異常でした。ノーラはコロンバス動物園で誕生したあとの生後七週間のときに代謝性骨疾患 (Metabolic bone disease) と診断されたそうですが、これによって本来は真っ直ぐでなければならない骨が曲がっている箇所が少なくとも六か所あることがわかったそうです。特に問題だったのは左前脚の関節部分だそうで、現時点では最も初期の関節炎の徴候が見られるそうです。
a0151913_3384382.jpg
(C)Kale Williams/The Oregonian

下はノーラのサーモグラフィー画像ですが、明らかに左側の前脚の関節部分の温度が右前脚の同じ部分よりも高い値を示しているのが非常によくわかります。
a0151913_23301423.jpg
(C)Kale Williams/The Oregonian

上の写真が示している左前脚の温度の高さは、この部分に炎症が生じている可能性を示しであり、果たしてノーラが現在痛みを感じているのか、感じているとすればどの程度なのかについて人間の筋骨格についての専門家に意見を求めているそうです。ノーラは成長して体重は165キロほどになっているわけですが、彼女が水に中に留まる時間が長いという事実は、そうsることによって彼女が自分の体重が前脚にかかる体重の負担(そしてひょっとして炎症の影響)を軽減することに役立っているということが述べられています。今後果たして彼女の成長によるさらなる体重に増加やホープとの同居によってノーラの精神状態が再び悪化するのかについては現時点でははっきりとした予想はできないとも語られています。ここでまた一つ、ごく最近のノーラの映像を見ておきましょう。以下をワンクリックして下さい。
a0151913_1455869.jpg

やはり人工哺育された個体というのはいくつもの問題を抱えるケースが多いようですね。コロンバス動物園、オレゴン動物園、ホーグル動物園の三園の密接な連携と協力体制によってこのノーラという人工哺育された一頭のホッキョクグマをなんとが正常なレールの上に乗せようとしている姿勢には感心してしまいます。そういった姿勢の背景には、苦戦しているアメリカの動物園におけるホッキョクグマの繁殖について、どうしてもこのノーラを繁殖に寄与させたいという強い意思を感じます。今後もこのノーラを見守っていきたいと思います。

(*後記)ホーグル動物園でのノーラに関するニュース映像をまた一つご紹介しておきますが、ノーラに関してよくまとまった情報を提供しています。ワンクリックして下さい。
a0151913_17283592.jpg

(資料)
OregonLive.com (Feb.7 2018 - Project Nora: We're headed to Utah to visit Nora. What questions do you have?) (Feb.12 2018 - Nora the polar bear finally easing into her new home)
(*後記資料)
KSL.com (Mar.6 2018 - For Nora the polar bear, there is Hope)

(過去関連投稿)
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園を去るノーラに寄せた深い想い ~ 同園と地元紙の文章
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園でのノーラの最後の一日 ~ 彼女との別れを惜しむ地元の人々
アメリカ・オレゴン動物園のノーラがソルトレイクシティのホーグル動物園に無事到着
アメリカ・トレド動物園のホープがソルトレイクシティのホーグル動物園に無事到着
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園でノーラとホープが同居を開始し、一般公開となる
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラが満二歳へ ~ 必読の 'The Loneliest Polar Bear'
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園でのノーラとホープの同居が充実への兆しを見せる
「ノーラの物語 "The Loneliest Polar Bear"」がダウンロード可能となる
by polarbearmaniac | 2018-02-16 23:45 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ドイツ・ロストック動物園の新..
at 2018-09-23 00:30
姫路市立動物園のユキが男鹿水..
at 2018-09-22 09:00
チェコ・ブルノ動物園のウムカ..
at 2018-09-22 00:30
昨年2017年の繁殖シーズン..
at 2018-09-21 00:30
ポーランドのワルシャワから成..
at 2018-09-20 13:00
ワルシャワのショパン博物館 ..
at 2018-09-19 06:45
ワルシャワ、旧ゲットー地区を..
at 2018-09-18 06:50
ワルシャワ、旧ゲットー地区を..
at 2018-09-18 06:40
ワルシャワ、プラガ地区を歩く..
at 2018-09-18 06:30
ワルシャワ、旧ゲットー地区を..
at 2018-09-17 06:45

以前の記事

2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire


Resurrection: The Struggle for a New Russia


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag