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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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二年前に「世界で最も悲しいホッキョクグマ」とされた「皮扎/皮萨 (Pizza)」の二年後の現在

二年前に「世界で最も悲しいホッキョクグマ」とされた「皮扎/皮萨 (Pizza)」の二年後の現在_a0151913_0451833.jpg
現在の「皮扎/皮萨 (Pizza)」 Photo(C)HZY/National Geographic

二年前に中国・広東省の広州市のショッピングモールにある「広州正佳極地海洋世界 (广州市正佳极地海洋世界 - Guangzhou Grandview Polar Ocean World)」の水族館で飼育されていた当時三歳の雌(メス)のハイブリッドのホッキョクグマの「皮扎/皮萨 (Pizza)」の飼育環境が劣悪であったことからこの皮扎 (Pizza)を「世界で最も悲しいホッキョクグマ」と呼んで彼が飼育されている水族館の閉鎖を求めてネット上で署名活動が行われたということがありました。それについては「中国・広東省、広州市の世界からの批判を浴びる「広州市正佳極地海洋世界のホッキョクグマ」の謎」、「イギリスのヨークシャー野生動物公園が中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の受け入れを申し出る」、「中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の血統の深い謎 ~ 「皮扎 (Pizza) = 皮祖 (Pezoo)」 なのか?」という三つの投稿を御参照いただきたいのですが、当時の私の関心はもっぱらこの「皮扎/皮萨 (Pizza)」の血統に潜む深い謎の追及にあったわけでした。相当の「ホッキョクグママニア」を自負している方でないと簡単には理解していただけない内容だったと思っています。さて、実は先日の私の海外遠征中にナショナル・ジオグラフィック (National Geographic) 誌の5月11日付記事 ("Nearly Two Years Later, ‘World’s Saddest Polar Bear’ No Longer Sad?") にて、この皮扎 (Pizza) の二年後の現在の様子について取材した投稿を掲載していますので、その内容を簡単にご紹介しておくことにします。
二年前に「世界で最も悲しいホッキョクグマ」とされた「皮扎/皮萨 (Pizza)」の二年後の現在_a0151913_2134721.jpg
「皮扎/皮萨 (Pizza)」Image:National Geographic

二年前の大きなキャンペーンによって批判を浴びた広州正佳極地海洋世界は数カ月後にその飼育展示場を閉鎖して皮扎 (Pizza)を天津市の天津海昌極地海洋世界 (Tianjin Haichang Polar Ocean World) に移動させました。そこは皮扎 (Pizza)の生まれ故郷です。そして彼女は自分の母親とそこの飼育展示場で同居を始め、そして現在に至るまでそこで暮らしているそうです。今年の4月にアメリカの保護活動家の方が実際に天津市のこの天津海昌極地海洋世界を訪問して皮扎 (Pizza) の元気な姿を確認しており、その際に映像も撮影したようです。以下にその映像の一部をご紹介しておきますが、前半は二年前の広州市での映像です。後半は現在の天津市での映像で皮扎 (Pizza) が母親と共にいる姿が映っています。下をワンクリックしていただくと映像開始のページに飛びます。
二年前に「世界で最も悲しいホッキョクグマ」とされた「皮扎/皮萨 (Pizza)」の二年後の現在_a0151913_14880.jpg

その活動家の方など複数の観察によりますと皮扎 (Pizza)は二年前と比較するとずっと幸福そうに見えストレスも感じていない様子に見えたそうです。また、常同行動も影を潜めていて以前と比較すると桁違いに良い状態 ("a million times better") にあるということだそうです。以前の施設との比較では、以前はガラス越しに来園者の近くにいてカメラのフラッシュなどを浴びていたものの現在の場所では来園者とはやや距離があり、そして来園者の喧騒はずっと少ないそうです。展示時間も以前の施設では夜まであったものの現在の施設では昼間の時間帯だけだそうで、さらに現在の飼育展示場は皮扎 (Pizza)が自分の姿を隠す場所もあるということだそうです。勿論現在の場所は屋外の場所に出られないという点では理想的な飼育環境とは言い難く、やはり中国の施設ではホッキョクグマの飼育には適した場所はないということも語っています。そもそも中国には飼育下の動物たちの福祉を定めた法律はないそうです。ショッピングモールなどの商業施設の一部に動物たちが展示されていることについては、そういった商業目的の施設には動物たちを展示することに教育的な目的といった観点が欠けている点も大いに問題があるとも述べています。
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皮扎 (Pizza - 右) と、その母親とされる個体(左) 
Photo(C)HZY/National Geographic

さて、こういったナショナル・ジオグラフィック誌の記事の内容はともかくとして、現在の天津市の施設で皮扎 (Pizza)と同居しているのが本当に彼女の(生物学上の)母親であるのかについては完全な確証が無いままです。この記事の中で実際に天津市のこの施設で皮扎 (Pizza)に会った方は彼女のことを "he" で述べていますが皮扎 (Pizza)は "he" ではなく "she" で受けるのが正しいわけです。皮扎 (Pizza)がこうして母親と同居しているのは彼女がまさに母親と同性の雌(メス)であるから可能なことであると考えれば、やはり皮扎 (Pizza)と同居しているのは彼女の(生物学上の)母親であると考えて間違いではないようにも思います。そして、上の写真で見る限り皮扎 (Pizza) の母親もやはりハイブリッドである可能性が濃厚です。ということは皮扎 (Pizza) の(生物学上の)父親はハイブリッドではない通常のホッキョクグマであるという可能性が強くなることを意味しています。

なかなか素晴らしい記事だと思いますが、皮扎 (Pizza) が皮祖 (Pezoo)と同一個体ではないかといった疑問などは解けないままです。仮のこの記事のように皮扎 (Pizza) が雄(オス)だというのでしたら「皮扎 (Pizza) = 皮祖 (Pezoo)」は成立する可能性は大きいと思います。それから、中国の施設はホッキョクグマの血統のようなことについては質問しても一切答えないようです。その他についてもインタビューを申し込んでも断られるようです。現に本件についても活動家その他の方が天津市の天津海昌極地海洋世界に取材を申し込んでも断られたことを述べています。中国国内のホッキョクグマの血統については数頭は別にしても、その他は非常に謎が多いのです。解明は容易ではありません。

(資料)
National Geographic (May.11 2018 - Nearly Two Years Later, ‘World’s Saddest Polar Bear’ No Longer Sad?)

(過去関連投稿)
セルビア・ベオグラード動物園のハイブリッドの正体 ~ “Polar Bear/Kodiak Bear Hybrid”
中国・広東省、広州市の世界からの批判を浴びる「広州市正佳極地海洋世界のホッキョクグマ」の謎
セルビア・ベオグラード動物園と中国・広州市の正佳極地海洋世界を結んだ「暗黒の闇」の連鎖の世界
イギリスのヨークシャー野生動物公園が中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の受け入れを申し出る
中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の血統の深い謎 ~ 「皮扎 (Pizza) = 皮祖 (Pezoo)」 なのか?

(*皮祖 (Pezoo)関連)
中国・天津市の天津海昌極地海洋世界でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ そしてカナダでの映画撮影
映画 “Il mio amico Nanuk” で共演したエイギー(Agee) とハイブリッドの皮祖 (Pezoo)
by polarbearmaniac | 2018-06-11 03:00 | Polarbearology

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