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「米露ホッキョクグマ委員会」の会議が7月下旬に開催 ~ ロシアに狩猟枠復活の危険性

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ウスラーダ (Белая медведица Услада/Eisbärin Uslada)
(2017年7月12日撮影 於サンクトペテルブルク、レニングラード動物園)

大変に注意してその行方を追っていかねばならないニュースが報じられています。今回のニュースの内容を御理解いただくためにはまず「ロシア、ホッキョクグマ狩猟割当数を放棄 ~ 全面禁猟へ踏み出す」という2011年4月の投稿を御参照して頂くことが必要になります。

アメリカとロシアとの間には動物学者、生物学者といったホッキョクグマの専門家とホッキョクグマの保護行政を行う担当者からなる「米露ホッキョクグマ委員会 (Российско-американская комиссия по белому медведю)」という集まりがあり、これはアメリカのアラスカ州、ロシアのチュクチ半島という二つの隣接したホッキョクグマ生息地域におけるホッキョクグマの生態調査などの共同研究を行い情報を共有してホッキョクグマ保護政策に反映させていくことが目的となっています。この委員会の第十回目の合同会議が7月23日から30日までロシア・チュクチ半島のエグベキノト(Эгвекино́т)という小さな街で開催されるそうです。今回の会議の議題はチュクチ半島とアラスカにおけるホッキョクグマの生息頭数に関する研究結果の報告と発表ということになっています。やはり生息数が議題となったのは2010年の会議だったわけですが、当時の生息数から割り出されたホッキョクグマの狩猟枠として38頭がアラスカとチュクチ半島に住むイヌイットに割り当てられたのですが、そのうちのチュクチ半島の分であった29頭の狩猟枠をロシアは自ら放棄したわけでした。ロシアにおいては旧ソ連時代の1957年からホッキョクグマ狩猟は原則的に禁止されていたわけで、その例外枠としての29頭の枠を放棄してホッキョクグマ狩猟の禁止といった原則に例外を設けない姿勢をロシアは明らかにしたわけです。

さて、今回の7月の会議ですが、この地域におけるホッキョクグマの生息数は3300頭という数字が出ていることが非公式的に明らかにされ、そしてこの生息数は過去の調査の結果と比較すると最も多い数字となっているようです。この数字に基づいて「米露ホッキョクグマ委員会」は前回の狩猟枠の数字よりも多い数字を新しい狩猟枠としてアラスカとチュクチ半島のイヌイットたちに割り当てることは確実な情勢のようです。ここで問題なのは、果たしてロシアが前回の2010年の会議において割り当てられた狩猟枠の放棄を今回も行うのかどうかということだと思われます。前回のロシア側の狩猟枠放棄を決断したのはプーチン大統領ですが、今回も果たして同じ決断をプーチン大統領が下すかどうかに注目が集まります。ホッキョクグマの生息数の若干の増減とは関係の無いことでプーチン大統領の前回の決断は下されたわけですので、おそらく今回もプーチン大統領は狩猟枠放棄という同じ決断を行う可能性が非常に高いとは思いますが、気がかりなこともあります。それは、ごく最近のホッキョクグマの生息数は世界的な規模では安定しているだけではなく、むしろ増加しているといった話がいろいろな場所で非公式的な形でなされているわけで、そうなると狩猟枠を増やして欲しい(認めてほしい)といったイヌイットたちの声が通りやすい環境になってきつつあるのではないかという点です。「ホッキョクグマの保護者」を自認するプーチン大統領の前回と同じ決断を期待したいと思います。

(資料)
ТАСС (Jul.12 2018 - Российско-американская комиссия по белому медведю впервые пройдет на Чукотке)
Вести.Ru (Jul.12 2018 - Жителям Чукотки могут вернуть право на добычу белого медведя)

(過去関連投稿)
ロシア、ホッキョクグマ狩猟割当数を放棄 ~ 全面禁猟へ踏み出す
by polarbearmaniac | 2018-07-13 03:00 | Polarbearology

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