街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

ロシアのニジニ・ノヴゴロド、ニジェゴロド・リンポポ動物園のウムカ-アヤーナの夏の日

a0151913_013547.jpg
ウムカ-アヤーナ (Умка-Аяна)  Photo(C)Зоопарк Лимпопо

2017年の10月にロシア北東部サハ共和国のレドネコルィムスク地区で孤児として保護され、その後モスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で保護・飼育されていた現在二歳の雌(メス)のウムカ-アヤーナ (Умка-Аяна、以降単に「アヤーナ」と略記します) は今年の4月にロシア第四の都市であるニジニ・ノヴゴロドにあるニジェゴロド・リンポポ動物園 (Зоопарк «Лимпопо») にロシア動物園・水族館連合 (СОЗАР - Союз российских зоопарков и аквариумов) によるホッキョクグマ繁殖計画の一環として移動してきましたが、その一連の経緯は過去関連投稿を御参照下さい。そのアヤーナですが7月に飼育展示場に人工雪製造機が設置されて一日あたり3トンの雪が飼育展示場に排出されるようになったそうです。非常に短いですが以下にその雪とアヤーナの姿を撮影した映像がありますのでご紹介しておきます。



ニジェゴロド・リンポポ動物園では以前からホッキョクグマの飼育、そしてその繁殖を切望してきましたのでかなり広い飼育展示場が新設されたわけですが、最初はモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で飼育されていたシモーナが移動して来たものの、そのシモーナに代って4月からアヤーナが来園してシモーナはヴォロコラムスク附属保護施設に帰還したというわけです。私はまだこのアヤーナに会ったことがありませんのでできる早い時期にニジニ・ノヴゴロドを再訪して彼女に会っておきたいと考えています。ロシアの動物園にもいろいろと若い野生孤児個体が飼育されるようになっていますので、そういった個体は可能な限り会っておきたいと考えているわけです。
a0151913_2331158.jpg
Photo(C)Зоопарк Лимпопо

アヤーナは将来的にこのニジェゴロド・リンポポ動物園で繁殖を担っていくことになるわけですが、問題は彼女のパートナーです。野生出身の雄(オス)の個体が理想的なのですが、ここ数年にわたってロシアで保護される孤児個体はペンザ動物園のベルィやペルミ動物園のセリクを除いて雌(メス)の個体ばかりです。ロシアにおける飼育下のホッキョクグマの今後の繁殖にとっては頭の痛い問題でしょう。実に奇妙なことなのですが欧州、ロシア、日本では雄(オス)の若年、幼年個体が不足してきているわけで、これは雄(オス)と雌(メス)の頭数のバランスがとれなくなってきていることを意味しています。自然下、飼育下を問わず特に幼年個体ではもともと雌(メス)と比較すると雄(オス)の死亡率が幾分高かったわけです。人間でも男の赤ちゃんは女の赤ちゃんと比較すると病気になりやすいといった傾向があるのと同じことです。ところがホッキョクグマの場合はここにきてこの傾向が顕著になってきたのではないでしょうか。仮に母親が雄(オス)と雌(メス)の双子を出産しても雌(メス)だけしか育てないといったケースがかなり出てきているのではないかという気がするわけです。ホッキョクグマの母親は出産直後に「この子は育たないだろう」と本能的に察知した赤ちゃんは食害で「処理」してしまうのだという比較的有力な仮説がありますが、仮にこの説が正しかったとすれば、「この子は育たないだろう」と母親に察知された雄(オス)の赤ちゃんが段々と多くなってきているという、まさに仮説の上の仮説すら立てられるような気もしてきます。これは自然下、飼育下を問わず、環境状態が段々と悪化しているということを意味するかもしれません。私の記憶では自然下では誕生直後の頭数では雄(オス)が約51%、雌(メス)が約49%というのが統計的な比率だったと思います。そして雄(オス)は雌(メス)と比較すると幾分死亡率が高いため、結局は雄(オス)が50%、雌(メス)も50%という同じ比率に落ち着くという、まるで神の摂理が存在しているかのような見事なバランスが保たれるわけですが、これがひょっとして崩れてきているのではないかという危惧の念を持ちます。これは科学的な調査による最新のデータが出てきませんと何とも言えません。

(資料)
ГТРК "Нижний Новгород" (Jul.19 2019- Три тонны снега для одной медведицы)
Комсомольская правда (Jul.19 2019 - Белой медведице из нижегородского зоопарка подарили снежную горку)
Новости Нижнего Новгорода (Jul.19 2019 - Аяна кайфует. В нижегородском зоопарке выпал снег специально для белой медведицы)
Ykt.Ru (Aug.14 2019 - Фотофакт: якутская медведица Умка-Аяна в нижегородском зоопарке)

(過去関連投稿)
ロシア北東部サハ共和国で北極海岸より700キロも離れた内陸で野生孤児が目撃 ~ 保護に動く自然管理監督局
ロシア北東部の内陸をさまよう個体への対応の二つの選択肢 ~ 動物園での保護か生息地への移送・解放か?
ロシア北東部 サハ共和国の内陸でホッキョクグマの幼年個体が保護 ~ 生後一年未満の雌(メス)と発表
ロシア北東部 サハ共和国の内陸で保護された雌(メス)の幼年個体がスレドネコルィムスクの街に移送される
ロシア北東部 サハ共和国の内陸で保護された幼年個体がヤクーツクに到着 ~ ただちにモスクワへ
ロシア北東部サハ共和国で保護された幼年個体がモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設に無事到着
ロシア北東部サハ共和国で保護された幼年個体、検疫終了後にただちにモスクワ動物園の本園に登場の予定
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設で保護された孤児の名前が「ウムカ-アヤーナ」に決まる
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナがニカと同居の見通し ~ 「適応化」へ
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナの近況 ~ 魚の給餌量の多いロシアの動物園
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナ、歯の治療から発見場所の謎を考察する
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナの近況 ~ 優れた外部環境への適応性
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設のウムカ-アヤーナがニジェゴロド・リンポポ動物園に到着
ロシア、ニジニ・ノヴゴロドのニジェゴロド・リンポポ動物園のウムカ-アヤーナの近況
(*2018年10月 ニジェゴロド・リンポポ動物園訪問記)
・ニジェゴロド・リンポポ動物園でシモーナと三年振りの再会
・シモーナ (Белая медведица Симона)、世界最高の母親としての素顔
・ニジェゴロド・リンポポ動物園訪問二日目 ~ 矛盾を内包したシモーナの来園
by polarbearmaniac | 2019-08-14 23:55 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

アルマトイ動物園へ ~ アリ..
at 2019-09-20 23:30
ロシアからカザフスタンへ ~..
at 2019-09-19 23:55
ノヴォシビルスク動物園 第三..
at 2019-09-18 23:00
ノヴォシビルスク動物園 第三..
at 2019-09-17 23:45
ノヴォシビルスク動物園を二ヶ..
at 2019-09-16 23:45
成田からノヴォシビルスクへ ..
at 2019-09-15 23:30
秋のロシアと欧州へ
at 2019-09-15 08:15
ロシア・イジェフスク動物園の..
at 2019-09-15 01:00
ベルリン動物公園のヘルタ、そ..
at 2019-09-14 02:00
スコットランドのハイランド野..
at 2019-09-13 03:00

以前の記事

2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire


Resurrection: The Struggle for a New Russia


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag