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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・クラスノヤルスク動物園に対して中国の動物園がホッキョクグマとパンダの交換を申し入れる

ロシア・クラスノヤルスク動物園に対して中国の動物園がホッキョクグマとパンダの交換を申し入れる_a0151913_3594765.jpg
オーロラ Photo(C) Роев ручей Красноярский зоопарк

ほら、また来たかというニュースです。ロシアのクラスノヤルスク動物園の園長であるアンドレイ・ゴルバン(Андрей Горбань) 氏が本日(8月20日)の夜に地元のTV局であるエニセイTVのインタビュー番組に出演してクラスノヤルスク動物園についていろいろと語っているのですが、その中で非常に気になる発言を行っています。それは、中国の動物園がクラスノヤルスク動物園に対してジャイアントパンダとホッキョクグマの交換を熱心に申し出てきているとのことです。園長さんの出演した夜9時のこの番組を以下に御紹介しておきます。



この下では番組の中でホッキョクグマの新飼育展示場について、そして本件についての園長さんの発言部分だけを再生できます。



園長さんが語るには、同園のホッキョクグマ新飼育展示場が秋に完成しても4頭ものホッキョクグマを飼育・展示していくことはできないために、いったいどのホッキョクグマをクラスノヤルスク動物園に残し、どのホッキョクグマを他の動物園に移動させるかを年内に決定しなければならないと語っています。4頭とは、野生孤児出身の雄(オス)のフェリックス、同じく野生孤児出身の雌(メス)のオーロラ、ウルスラ、そして先日ノリリスク近郊で保護された個体です。その他にも同園が所有権を持っていて現在ゲレンジークのサファリパークで飼育されている雄(オス)のセードフ司令官(彼はウスラーダの息子です)がいるのですが園長さんは彼については触れていません。さて、園長さんは中国の動物園が獲得したいのは雌(メス)の個体であり、それと交換にジャイアントパンダをクラスノヤルスク動物園に移動させるということを申し出ているそうです。ただしジャイアントパンダについては中国の国有資産であるため年間100万ドル(つまり約1億円)の有償ローンでの移動という条件だそうです。園長さんは、年間100万ドルも払う資金はクラスノヤルスク動物園にはないと語っていて中国からの申し出には非常に慎重な姿勢を隠してはいません。中国の一体どの動物園の申し入れなのかですが、私の想像では第一の有力な可能性としてノヴォシビルスク動物園生まれのロスチクを購入した動物園でしょう。その動物園はロスチクのパートナーとして雌(メス)の個体を入手しようとしている可能性が十分にあるからです。第二の可能性としては北京動物園でしょう。北京動物園はジャイアントパンダを何頭も飼育しているからです。

さて、この件についてクラスノヤルスクの地元メディアは非常に誤った解釈を行って報道しています。園長さんの語る本件に関する前半の話は「クラスノヤルスク動物園には4頭(あるいは5頭)のホッキョクグマを飼育していくだけのスペース的余裕がないので他園に移動させねばならないホッキョクグマがある。」という内容と、後半の「中国の動物園が雌(メス)の個体をジャイアントパンダとの交換で欲しがっている。」という内容を結びつけて「クラスノヤルスク動物園の雌(メス)のホッキョクグマがジャイアントパンダと交換で中国に行く。」と理解してしまっているわけです。当ブログをもし関心を持って読み続けていられる方が仮にいらっしゃるとすればお分かりでしょうが、ロシアの動物園の野生孤児出身のホッキョクグマの個体は全てロシアの国有財産であり(2000年あたりを境にしてそれ以降)国外に出すことができないことになっています。ジャイアントパンダも一応は中国の国有財産とはいえ、ローンが条件ならば国外に出せるということとは事情が違うわけです。クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマの雌(メス)の個体は全て野生孤児出身ですから国外に出ることはないということです。先頃モスクワ動物園にジャイアントパンダが来園してプーチン大統領と習近平国家主席の臨席のもとでモスクワ動物園でお披露目となったわけですが、実はこれも中国側がジャイアントパンダとホッキョクグマの交換を申し出てきたもののモスクワ動物園はそれを拒否したためにジャイアントパンダだけがやってきたという事情があるわけです。ですからクラスノヤルスク動物園の野生出身の雌(メス)のホッキョクグマがジャイアントパンダと交換で中国に行くということはあり得ない話です。

さらに考慮しておかねばならないのは、クラスノヤルスク動物園の園長さんが同園のホッキョクグマのうちどの個体を他園に移動させるかを年内に決定すると語っていることは一種の「カムフラージュ」であることを理解せねばなりません。「ロシア極東・沿海州 ハバロフスク動物園のハバルのパートナーはクラスノヤルスク動物園のウルスラに内定」という投稿でご紹介しています通り、クラスノヤルスク動物園から移動する個体はウルスラと事実上内定しているのです。ハバロフスク動物園がこのことを地元ハバロフスクのメディアにリークしてしまっていることをクラスノヤルスク動物園の園長さんは知らないのでしょう。
ロシア・クラスノヤルスク動物園に対して中国の動物園がホッキョクグマとパンダの交換を申し入れる_a0151913_42522.jpg
フェリックス Photo(C) Роев ручей Красноярский зоопарк

さて、中国は以前はホッキョクグマの「供給元」であったロシアからのホッキョクグマの入手が困難となったためにジャイアントパンダという彼らの「切り札」を使って交換という形でロシアからホッキョクグマを入手しようとしているわけです。ロシアの動物園に誕生した個体(つまり飼育下生まれの個体を意味します)の多くは近年では欧州の動物園に移動するケースが多いのですが、それは欧州も今まで飼育してきた個体とは異なる血統の個体を求めてロシアからホッキョクグマを導入するという形をとっています。ただしそれも条件があるわけで血統的に「問題の無い」個体に限られるわけです。ところがこの問題に引っかかってきたのがノヴォシビルスク動物園です。そしてその典型例が野生出身ではなく飼育下生まれのロスチクであり、彼は有償売却ということで中国の動物園に買われてしまったわけです。中国にしてみればホッキョクグマ入手のために「僅かに開いた穴」がノヴォシビルスク動物園(そして将来的に日本平動物園)なのです。ちなみに日本平動物園で赤ちゃんが生まれても権利はレニングラード動物園にありますのでレニングラード動物園は中国にその赤ちゃんを売却することは必至です。そしてノヴォシビルスク動物園のノルジとシャイナの双子も90%以上の確率で中国の動物園に移動する結果となってしまうでしょう。残念なことではありますが。

ということで、クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマがジャイアントパンダと交換で中国に行くという話は成立しないということです。

ちなみに当ブログ開設者はジャイアントパンダには全く関心がありません。知的興味が全く湧かないからです。そして彼らを受け入れる感性も当ブログ開設者は持ち合わせていません。しかし当ブログにジャイアントパンダが登場した投稿が一つだけあります。2010年10月9日の「北京動物園・大熊猫(ジャイアントパンダ)館の風景」という投稿です。ジャイアントパンダに対する私の考え方は全てその投稿に述べた通りであり現在も全く変わっていません。

(資料)
Телеканал Енисей (Aug.20 2019 - Китайцы предложили обменять медведя из зоопарка Красноярска на панд. Но есть один нюанс)
КП - Красноярск (Aug.20 2019 - Китайские зоопарки хотят получить красноярских белых медведей в обмен на панду)
"Лаборатория новостей - Красноярск" (Apr.20 2019 - Китайские зоопарки предложили обменять панду на красноярского белого медведя)

(過去関連投稿)
モスクワ動物園が北京動物園よりのホッキョクグマ入手希望を事実上拒否 ~ したたかなアクーロヴァ園長
ロシア極東・沿海州 ハバロフスク動物園のハバルのパートナーはクラスノヤルスク動物園のウルスラに内定
(*2019年7月 クラスノヤルスク動物園訪問記)
・ノヴォシビルスクからクラスノヤルスク、そしてクラスノヤルスク動物園へ
・野生孤児出身のフェリックス (Феликс) の素顔
・野生孤児出身のオーロラ (Аврора) の素顔
・野生孤児出身のウルスラ (Урсула) の素顔 ~ 日帰りの旅を終えノヴォシビルスクに帰還
by polarbearmaniac | 2019-08-20 23:45 | Polarbearology

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