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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ヴォルゴグラードでの巡回動物園でウムカとスネジョークの生存が確認される

ロシア・ヴォルゴグラードでの巡回動物園でウムカとスネジョークの生存が確認される_a0151913_2395714.jpg
ロシア・ヴォルゴグラードでの巡回動物園でウムカとスネジョークの生存が確認される_a0151913_2401743.jpg
Image:Высота 102

ロシアにおける巡回動物園 (Передвижной зоопарк) というのはロシアの地方の中小都市をキャラバンのように回って住民に動物たちを見せるという、いわゆる移動動物園なのですが、ここには深い闇が横たわっていることは過去関連投稿を御参照頂きたく思います。これこそが「ロシアの暗部」であるわけで、大変残念なことにこの巡回動物園にはホッキョクグマも存在しています。「ロシアの巡回動物園「モスクワ・サファリ園」に暮らすウムカとスネジョーク ~ ロシアの闇の部分」という3年前の投稿を御参照頂きたいのですが、そこでご紹介したウムカとスネジョークという二頭のホッキョクグマはそれ以降どうなったのかについて全く情報がありませんでした。私は非常に心配していました。ところが本日(8月21日)になってヴォルゴグラード(昔はスターリングラードと呼ばれていた都市です)にこの移動動物園が再び戻ってきていて、そこを訪れた地元の方が撮影した映像が地元メディアの記事に紹介されてホッキョクグマの姿が映っていることから劣悪な条件下でなんとか生き延びていることが確認できました。以下がその映像です。映像開始後26秒あたりから登場するホッキョクグマと映像開始後34秒あたりから登場するホッキョクグマは別の個体である可能性が濃厚であると思いますので、ウムカとスネジョークの二頭は生存していることがほぼ確実であることがわかります。この映像を撮影された方(子供さんだそうです)はあまりにこの巡回動物園における動物たちの状況が悲惨であることを悲しんで映像を撮影しながら泣いている声が収録されています。



気温は40℃近い高さとなっているそうで悪臭が漂っているとヴォルゴグラードの地元のメディアは報じています。「巡回動物園・サファリ園 (Передвижной зоопарк «Сафари»)」と呼ばれている今回ヴォルゴグラードの巡回動物園の園長は、「スタッフは動物たちが暑さで健康を損なわないように努力しており、"Ветеринарный комитет" (これを何と訳せばよいかは難しいですが、一応 "獣医委員会” としておきます)はこの状態での飼育に意義は唱えておらず、またビタミンなどを含むきちんとした食事も与えている。」と地元メディアの取材に対して語っています。ホッキョクグマのいる区画にある窪み(プールの代わりでしょう)には水が入っていないことを記者が園長に質問すると園長は「夜に水を入れます。」と答えています。記者の取材があったためかスタッフは動物たちに水をかけてやるということを行い始めたそうです。この「巡回動物園・サファリ園」の園長は20年にわたってロシアのサーカス団体を統轄する組織である「ロスツィルク «Росцирк»」の責任者の一人であり、「この動物園の動物たちはサーカスで演技していた動物たちである。」と語り、地元住民がこの巡回動物園の飼育環境の悪さについてヴォルゴグラードの地元当局に告発しようという動きがあることを牽制する発言を行っています。

さて、これで一つの事実が完全に明らかになりました。それは、この巡回動物園を運営しているのはやはりロシアのサーカス団体である「ロス(ゴス)ツィルク」であり、飼育されている動物たちは以前から予想していた通りサーカスで活躍した(あるいは不適格の烙印を押されてしまった)動物たちで、要するにサーカスを引退後に(引退させられた後に)、送り込まれる場所であるという事実です。現在ロシアのサーカスで唯一、依然として活躍しているホッキョクグマはモーチャ (Мотя)、ウムカ (Умка)、クノーパ (Кнопа)、ドーラ (Дора) という四頭の雌(メス)のホッキョクグマたちです。これらのホッキョクグマたちのサーカスでの演技を止めさせて彼らをサーカスから解放しようというネット上での署名活動も行われています。私は動物たち(ホッキョクグマ)をサーカスで演技させることには大反対です。しかし彼らを今、直ちにサーカスから引退させることができたとしても、彼らの所有権を持つのは「ロス(ゴス)ツィルク」であり、この団体は引退させたホッキョクグマを直ちに巡回動物園に送りこむでしょう。そうなれば4頭のホッキョクグマたちにはもっと悲惨な運命が待っているのです。「そうなってもよいのですか?」と私はその署名活動を主宰している方に申し上げたいと思います。この署名活動に賛同していらっしゃる方(ロシアと欧州の方)は少々無責任ではないでしょうか? サーカスでの演技を止めさせるより前に、まず「出口を塞ぐ」ことが必要なのです。つまり、サーカスを引退した(引退させられた)動物たちが巡回動物園に「流れ込む」という出口を塞ぐ方が先だと私は思います。「サーカスにいる動物たちは可哀相だ。だからサーカスから彼らを直ちに解放せよ!」という気持ちが非常によく理解できます。しかし彼らの「引退場所」をちゃんと用意してやることこそがもっと急務なのです。ホッキョクグマたちはサーカス団で演技をしているうちは「それなりの」待遇を受けることができます。何故ならサーカス団にとって彼らは「商売道具」ですので一応は「それなりの」待遇を行って健康を維持してやらねばならないからです。ところがホッキョクグマたちがサーカスから引退すると(引退させられると)、彼らはもう「用済み」の動物なのです。ですから彼らが送り込まれた巡回動物園は飼育環境は劣悪のままで改善されることがないのです。

ウムカとスネジョークの二頭のホッキョクグマが今後どれだけこの環境で生きていけるかはわかりませんが、何とか彼らをちゃんとした施設で保護・飼育してやってほしいと思います。私はかつて(2012年秋)、ロシア極東・沿海州のハバロフスク動物園でゴシというホッキョクグマに会ったことがあります。彼は幼少期にサーカス団に送られたものの不適格の烙印を押された後に巡回動物園に送られて何年もそこで劣悪な飼育環境で暮らしたホッキョクグマでした。しかしハバロフスク動物園が新動物園となったときに巡回動物園から救い出されてハバロフスク動物園で飼育されるようになったホッキョクグマでした。彼を巡回動物園から救い出した時はひどい健康状態だったそうです。彼に会った体験は今までの私の海外でのホッキョクグマ体験の中で最も印象深かったもののうちの一つでした。これについては「ロシア極東・ハバロフスク動物園、開園15周年を祝う ~ 三代のホッキョクグマたちの想い出」という投稿を開いていただき、その投稿の下にある「2012年秋 ハバロフスク動物園訪問記」を御参照下さい。ウムカもスネジョークもゴシのように巡回動物船から救ってやらねばならないのです。

(資料)
Высота 102 (Aug.21 2019 - В Волгограде ребенок разрыдался от жалкого вида животных в передвижном зоопарке) (Aug.21 2019 - «Отмените жару!»: руководство передвижного зоопарка в Волгограде оправдалось за страдающих животных)

(過去関連投稿)
ロシア・モスクワ郊外の私設動物園の悲惨な現実
サーカス団のホッキョクグマ、ダーニャは何処に消えた? ~ サーカス団と巡回動物園とを結ぶ暗黒
極地で死ぬかサーカスで生きるか? - "Смерть на полюсе или жизнь в цирке?"
ロシアの巡回動物園「モスクワ・サファリ園」に暮らすウムカとスネジョーク ~ ロシアの闇の部分
by polarbearmaniac | 2019-08-21 23:45 | Polarbearology

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