街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・カザン市動物園のテルペイの近況 ~ 過去の栄光と伝説、そして謎に包まれた同園の乏しい情報

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テルペイ Photo(C)Казанский зооботсад

ロシア南部のロストフ動物園で飼育されていた野生孤児出身の推定15歳の雄(オス)のテルペイ(Терпей) が繁殖目的で今年の1月にカザン市動物園に移動してきた件はすでに投稿しています。そのテルペイのパートナーとするのは23歳の雌(メス)のマレイシュカ (Малышка) なのですが、このマレイシュカはロシアでも繁殖の実績の豊富なホッキョクグマです。彼女はウスラーダの妹、つまりカザン血統の直系にあたるわけで繁殖能力に優れているのももっともなことだと思われます(この「カザン血統」についてお知りになられたい方は「モスクワ動物園が、今後ロシア国内で誕生の個体はロシア国内と欧州だけで飼育の意向を表明」という投稿を御参照下さい)。このマレイシュカとテルペイの間での繁殖が成功するかどうかは何とも言えませんが私は悲観的に考えています。この二頭がどのような暮らしをしているかについては全くといってよいほど情報がありません。しかしごく最近カザン市動物園はテルペイの姿を写真で公開しました。依然として非常に厳しい飼育環境でありテルペイに対してもマレイシュカに対しても同情の念を禁じ得ません。
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テルペイ Photo(C)Казанский зооботсад

カザンには定期的に動物園に行って動物たちの様子をネット上で報告するようなファンはいないようです。そもそもホッキョクグマファンというのはカザンにはいないようで、このマレイシュカが2012年12月に産んだユムカ(現在はミルカという名前でペルミ動物園で飼育)が母親であるマレイシュカと一緒に過ごす最後の日も、誰もこの親子に会う目的で動物園を訪れたファンは私以外には一人もいなかったという非常に寂しい現実があったわけでした。その日のマレイシュカとユムカ(ミルカ)の様子は過去関連投稿の「2013年9月 カザン市動物園訪問記」を御参照下さい。

カザン市動物園というのはホッキョクグマが亡くなってもその事実を公表しない動物園です。人に知られたくない事情があるのか、それとも本来ホッキョクグマに関する情報の発信が極めて乏しいことに理由があるのかわかりませんが容易にはこの動物園におけるホッキョクグマの情報を得ることは難しいわけです。マレイシュカの姿も最近は全く確認できず、彼女が本当に元気でいるのかどうかも確認のしようがないわけです。現在は新動物園が建設中ですが、果たしていつオープンするのかもよくわかりません。二ヶ月ほど前の地元TVニュースにおける新動物園建設工事の様子を見てみましょう。この様子ですと新動物園のオープンは来年の夏以降のことになるでしょう。



さて、話をカザン市動物園のホッキョクグマに戻しますが、今年1月にロストフ動物園から移動してきた雄(オス)のテルペイですが彼はもともとペルミ動物園で飼育されていました。その彼のペルミ動物園時代の姿を再度下の映像でご紹介しておきます。左側にいるのは故アンデルマです。


プラスチック板と遊ぶペルミ動物園時代のテルペイ(2013年9月30日撮影)- Terpey the polar bear plays with plastic materials at Perm Zoo, Russia, on Sep.30 2013.

このテルペイというのは「礼儀正しい」好男子で私は以前から彼を評価しています。彼は2シーズンの予定でカザン市動物園に出張してきているわけですが、この厳しい飼育環境でなんとか無事でいてほしいと思います。次の映像はマレイシュカです。この映像も私の撮影したもので以前にもご紹介しています。彼女はウスラーダの妹ですのでウスラーダに似ているわけですが、それよりももっとウスラーダの娘であるモスクワ動物園のシモーナに似ていると思います。


カザン市動物園のマレイシュカ(2015年8月14日撮影)- Malyshka the polar bear at Kazan Zoological Garden, Russia on Aug.14 2015

マレイシュカはよい意味で非常にふてぶてしいホッキョクグマです。彼女はこのカザン市動物園で伝説の名ホッキョクグマであった故ディクサ (1973~2006)から誕生しています。このディクサについてお知りになられたい方は「女帝ウスラーダとシモーナ、コーラ、リアの三頭の娘たち ~ 偉大な母親たちの三代の系譜」という投稿を御参照下さい。このカザン市動物園のような飼育環境の悪い動物園で暮らしていた故ディクサ、そしてやはり地方都市のペルミの小さな動物園で暮らしていた故アンデルマ、この二頭のホッキョクグマの娘(ウスラーダ)と息子(故メンシコフ)が作りだしたのが「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」という、日本を席巻し欧州にも勢力を広げつつある血統なのです。新しい動物園ができる前にまたこの現在のカザン市動物園に行ってみようかなとも思っています。過去の栄光と伝説、そして謎に包まれたカザン市動物園のこの飼育展示場を改めて記憶に深く刻みつけておきたいと思っています。

(*注)このマレイシュカというホッキョクグマはロシア語で "Малышка"と綴りますので本来は「マリィシュカ」と表記すべきなのですがカザン市動物園は血統登録を行う際にラテン文字で"MALEESHKA" と登録してしまったわけです。ですから彼女の正式な国際血統名は"MALEESHKA"が正しいことになってしまったというわけです。これに沿って本ブログでは日本語表記を 「マリィシュカ」ではなく「マレイシュカ」としています。ただしyoutube のような動画のタイトルでは私はロシア語の "Малышка" を尊重してラテン文字表記を "Malyshka" としています。

(過去関連投稿)
ロシア・ペルミ動物園におけるセリクとユムカの近況 ~ テルペイがロストフ動物園に移動か?
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(*マレイシュカ関連)
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ロシア・カザン市動物園のマレイシュカの近況 ~ 新動物園の完成は8月下旬に延期となる
(*2011年9月 カザン市動物園訪問記)
・カザン市動物園へ ~ 貧弱な飼育環境と大きな繁殖実績との間の巨大なパラドックス
・カザンの星、マレイシュカお母さんの素顔
・カザンで見たユーコン (天王寺動物園、ゴーゴの父) の素顔
・カザン市動物園訪問2日目 ~ 疑惑から事実の確定へ
(*2013年9月 カザン市動物園訪問記)
・成田からモスクワ、そしてカザンへ ~ 別れが目前に迫った母娘への想い
・シャリアピンパレスからカザン市動物園へ ~ 別れの時が迫ったマレイシュカとユムカの母娘の姿
・マレイシュカお母さんの性格と母性
・ユムカの性格と素顔 ~ カザンに初雪の降った日...そして別れ
(*2015年8月 カザン市動物園訪問記)
・カザン市動物園、その疑惑と謎に満ちた不可解な状況 ~ マレイシュカとの再会
・マレイシュカは年末に出産するか? ~ 劣悪な飼育環境にも逞しく生きるホッキョクグマのロシア魂
・ユーコン (Белый медведь Юкон - 姫路ホクト、白浜ゴーゴの父)   (1988 ~ 2014)
by polarbearmaniac | 2019-08-23 23:45 | Polarbearology

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