夜のヴァーツラフ広場での回想

ホテルから非常に近いヴァーツラフ広場になってきた。
ここは「広場」という地名にはなっているが実質上は幅の広い大通りである。そして非常に賑やかな場所である。
聖ヴァーツラフの騎馬像が立っているが、その像の真下には花束が供されている。
1968年のソ連軍を中心としたワルシャワ条約機構軍のチェコスロヴァキア侵攻に抗議してプラハの大学生だったヤン・パラフは1968年1月にこのヴァーツラフ広場で焼身自殺した。私が初めてプラハに来たのはまだ学生だった確か1976年のことであるが、その頃はもう共産党政権の締め付けがかなり厳しくなっており、この場所に近づくことはかなり勇気が必要だった。秘密警察がこの場所にやってくる人間を周囲から監視しているという話を私はすでに聞いていた。しかし私は思い切ってこの場所に足を運んだ。一本だけ花がここにあったのを覚えている。私は写真も撮らずに早々にこの場所を離れたのだった。そういった思い出のある場所である。以下はヤン・パラフの葬儀の様子である。1969年1月の映像だが、その頃はまだこうして市民がソ連を中心にしたワルシャワ条約機構軍のチェコ侵攻に抗議して焼身自殺した青年を悼んで集まることは可能だったのである。



以下は1968年8月21日のワルシャワ条約機軍のプラハへの侵攻の様子を写した映像である。


その後チェコスロヴァキアでの1989年に起きた「ビロード革命 (Sametová revoluce)」によってこの国の共産党政権は崩壊するまでの間、私は何回かプラハを訪問した。大抵は当時の西ドイツから夜行列車でプラハに入り、そしてやはり夜行列車でプラハから西ドイツに戻るというやり方だった。当時のチェコスロヴァキアで私は治安当局に尾行されたり尋問されたりと、かなり恐ろしい体験はしたが幸運にも逮捕はされなかった。「プラハの春」が押しつぶされた1968年の数年後からチェコスロヴァキアは当時のソ連以上に秘密警察の市民への監視体制が徹底して行われた。実に恐ろしい国だったのである。
SONY α9 II
FE 24-105mm F4 G OSS
（Dec.28 2019@チェコ、プラハ）