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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期・若年期での早世個体の多さ

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バフィンとモモ (Baffin/Баффин and Momo/Момо)
(2015年8月28日撮影 於 大阪・天王寺動物園)


日本では有数のホッキョクグマの繫殖成功を誇るのが大阪の天王寺動物園であることは今更言うまでもないでしょう。同園におけるホッキョクグマの繫殖記録をロストック動物園が収集した情報により振り返ってみたいと思います。ただしその前提として申し上げておかねばならないのは、天王寺動物園の記録は事後になって訂正された形跡がうかがわれるということです。ロストック動物園が記録の訂正や改竄を自ら行ったということは考えにくく、天王寺動物園が何らかの意図を持って記録の訂正を行った形跡があるということです。ですから下の記録は大阪のファンの方々が把握している情報とは異なっている可能性があるということを御承知下さい。ともかく見ていくことにしましょう。
大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期・若年期での早世個体の多さ_a0151913_053812.jpg
シルカ (Shilka/Шилка)
(2015年8月27日撮影 於 大阪・天王寺動物園)


まず天王寺動物園における繁殖記録は雌(メス)のユキコ (Yukiko #940 1979~2004) と雄(オス)のユキオ (Yukio #206 1979~1995) とのペアによる繁殖から記録されています。このユキコ (#940) は野生出身と推定できる個体であり1980年12月15日に天王寺動物園に入園した記録があります。天王寺動物園は情報誌の「なきごえ Vol.42-7」の中で、ユキコは1979年11月19日にアメリカのタルサ動物園で生まれたとしていますが、この1979年11月19日にタルサ動物園では確かに雌(メス)の双子が誕生した事実はあります。しかし誕生した雌(メス)の双子のうちソーニャ (Sonja #443) は1980年11月21日にドイツのオスナブリュック動物園に移動し、その後2005年6月8日にゲルゼンキルヘン動物園に移動し、そしてそこで2008年9月26日に亡くなっています。双子のもう一頭の雌(メス)のワーニャ (Wanja #444) も同じく1980年11月21日にドイツのオスナブリュック動物園に移動し、彼女はそこで亡くなっています(死亡日は不明となっています)。ソーニャとワーニャはアメリカから大西洋を渡ってドイツに移動した個体であることはロストック動物園の資料だけでなく、アメリカ側が独自に作成した資料、つまりAZAの北米個体歴史記録 (Historical Studbook) でも完全に裏付けられていることなのです。ですからユキコがアメリカのタルサ動物園で生まれたという天王寺動物園の記述は誤っていると言わざるを得ません。ロストック動物園の記録はユキコ (Yukiko #940) については誕生地は不明としており、それはすなわちこの時代に非常に多く存在したカナダの野生出身個体がユキコの「正体」と推定すべきであるということになります。天王寺動物園はユキコがタルサ動物園の生まれであると認識しているかもしれませんが資料的根拠は全くなく、実際は異なると結論付けざるを得ません。

ユキオは1979年12月3日に旭山動物園で誕生しています。このユキオの母親は野生出身のユキ (Yuki #203 1966~1983)です。このユキというのは前回の投稿でもご紹介していたポール(シロー)の母親でもあります。ユキオの父親はシロウ (Shirou #202 1966~1989)という野生出身個体です。さて、ユキオ (#206) とユキコ (#940) の間での繁殖記録は以下です。ユキコはいきなり三つ子を出産していたというのは驚きです。

① 1986年11月10日 3頭誕生 性別は雌(メス)が3頭 同日全頭死亡
② 1987年11月16日 1頭誕生 性別は雌(メス)    コユキ
③ 1989年11月11日 2頭誕生 性別は雌(メス)、不明 11月14日に共に死亡
④ 1990年11月30日 1頭誕生 性別は雌(メス)    ミユキ
⑤ 1992年12月8日 1頭誕生 性別不明        同日死亡
⑥ 1993年11月27日 1頭誕生 性別は雌(メス)    ユキミ 
札幌・円山動物園に入園の翌日の1995年2月22日に死亡

大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期・若年期での早世個体の多さ_a0151913_20424747.jpg
ユキコ (#940) とコユキ (#1285) Photo(C)天王寺動物園

上の記録のうちの②で誕生したコユキは1991年3月9日に岡山の動物園で亡くなったことになっていますが、これは池田動物園でのことでしょう。渋川動物園とは考えにくいです。③の双子で生まれた個体の性別は一頭が雌(メス)、もう一頭は不明となっています。④の1990年に誕生したミユキ(Miyuki)は言うまでもなく神戸・王子動物園で現在も暮らしているミユキのことです。⑥の1993年に誕生した雌(メス)の個体のユキミ(#1492 Yukimi) は1995年の2月21日に札幌の円山動物園に到着したものの翌日の2月22日に死亡しています。この個体は生きていれば円山動物園でデナリとペアを組んでいたでしょう。死亡してしまったが故に円山動物園はラクテンチで生まれたララを入手したわけです。何故そう言えるかと言いますと、ララの所有権はラクテンチから一度動物商に移転しており、円山動物園はその動物商からララを購入した記録が残っているからです。天王寺動物園から来園した個体が急死してしまったために円山動物園はその個体に代わる個体の入手のために急遽、動物商に声をかけたということが記録から推定することができるわけです。そしてその動物商の名前はデナリを購入した動物商と全く同じなのです。当時はホッキョクグマのペアは同じ年齢の個体同士をペアにするということが行われていたわけですが、1995年2月22日に死亡した雌(メス)の個体のユキミはデナリとまったく同じ年齢だったわけです。ですからデナリとのペア形成が期待されていたわけですが結局のところはデナリの一歳下のララになったというわけです。


バフィンとモモ、その一般公開 (2015年3月10日) - Baffin the polar bear and her female cub at Tennoji Zoo, Osaka Japan, on Mar.10 2015, the day of the cub's first public appearance

さて、次の記録ですが、これは上記の繁殖記録での雌(メス)の個体のユキコが今度はネボスケ(Nebosuke - 1977~2001) とペアを組んで繁殖に挑戦した記録となります。このネボスケは野生出身の個体と考えられ、1978年4月に白浜のAWSが購入して飼育した個体であり、その後1983年7月に宝塚ファミリーランドに移動し、そして1995年11月に天王寺動物園に移動してきた記録があります。

⑦ 1997年11月28日 2頭誕生 性別不明  1頭は12月2日死亡、もう1頭は12月4日死亡
⑧ 1998年11月25日 1頭誕生 性別は雄(オス)   ユキスケ 
翌年1999年12月3日に同園で死亡

このユキスケ(Yukisuke)は一歳になったばかりの若さで天王寺動物園で亡くなっているわけですが、何かを飲み込んだのが原因であるということを聞いたことがあります。こういったことは関西のファンの方々は詳しいと思います。さらに上の⑧では大問題があります。ロストック動物園の記録によれば1998年11月25日に誕生した個体は雄(オス)が2頭いることになっています。血統番号1628 と血統番号2809 の二頭です。ところがこのどちらも1999年12月3日に天王子動物園で死亡したことになっているのです。血統番号1628 は名称が不明、血統番号2809 は名称が「ユキスケ」となっています。誕生して1年以上経過した個体が全く同じ日に死亡することなど確率的には考えられません。ですから血統番号1628 と 2809 は同じ個体であることは明白なのです。何故このようなことが生じたのかと考えると、天王寺動物園はユキスケの血統暗号が1628であることは知らずに、後日になって「ユキスケ」という名前を血統情報に記載したいという理由だけで全く新しい誕生情報をロストック動物園に送ったのでしょう。困ったことです。実は天王寺動物園はこれを再び行うという「意図的」なミスをやっているのです。それはシルカについてです。実はシルカは血統番号が二つあるのです。もともとの血統番号に付けられた名称である "Shilka"(血統番号3352) を "Icchan" に変えたいという目的だけで、"Icchan" という個体の誕生情報を新たにロストック動物園に送って血統番号3356を得ているのです。ですからシルカには二つの血統番号があるわけです。しかも "Shilka" で登録されていたもともとの個体(血統番号3352)、つまりシルカについては2014年12月20日にノヴォシビルスク動物園で「死亡」してしまったことにしたのです(これを行ったのはノヴォシビルスク動物園である可能性も十分にあります)。ロストック動物園は血統番号3352の個体、つまりシルカについて明確に「2014年12月20日に死亡、死因は不明」と記録しているわけです。死んでもいない個体を架空の日付である2014年12月20日に死亡したという、事実とは全く異なる情報をロストック動物園に送るとは、これに関与した関係者(おそらく複数の動物園の複数の関係者)は悪質な行為を行ったと言えましょう。 さて、こうしたことによってノヴォシビルスク動物園のゲルダは2013年12月11日に雌(メス)の双子(つまり "Shilka" (血統番号3352) と "Icchan"(血統番号3356) の二頭を産んだという誤った記録が血統台帳上に存在する結果となっています。血統台帳の信頼性を失わせる状態となっているわけです。

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2006年3月15日に来園したゴーゴ Photo(C)天王寺動物園

さて、ユキスケはこうして1999年に亡くなりネボスケは2001年に亡くなりユキコは2004年に亡くなりといった状況で天王寺動物園はホッキョクグマ不在となったわけでしたが、ロシアのペルミ動物園であの偉大なるアンデルマから2004年12月3日に生まれたゴーゴ(クライ)が天王子動物園に来園したのが2006年3月15日のことでした。そしてゴーゴは浜松市動物園から2012年3月2日に来園したバフィン(Baffin - 1991~)をパートナーとして繁殖に挑戦することになります。その結果が下です。モモの誕生です。

⑨ 2014年11月25日 1頭誕生 性別は雌(メス)   モモ

こうしたロストック動物園の記録によれば天王寺動物園では現在に至るまでホッキョクグマは13頭が誕生し、成育したのは(生後半年を超えたものは)5頭ということになります。ロストック動物園の記録が正確であればそういうことになるというわけです。一般的に言えば「実は〇〇だった」ということはどこの動物園でもある話です。しかしここではあくまでロストック動物園の記録ではこうなるということを述べたわけです。

こうしてロストック動物園の記録で天王寺動物園で誕生した個体を振り返っていきますと、意外にも早世した個体が多いというのは残念なところです。1987年に誕生したコユキは3歳3ヶ月、1993年に誕生した個体は1歳3ヶ月、1998年に誕生したユキスケは1歳1ヶ月でこの世を去っていることになります。移動先の円山動物園に到着した翌日に亡くなった1歳3ヶ月の雌(メス)の個体が生きていればララが円山動物園に行くことはなかったでしょう。しかし大阪生まれの個体が死亡してしまったためにララは別府のラクテンチから札幌に移動したわけです。その札幌でララは「偉大なる母」としての路を歩んだことになります。ここには何か運命的なものを感じざるを得ません。


by polarbearmaniac | 2020-09-16 01:00 | Polarbearology

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