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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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名古屋・東山動植物園の苦闘の繁殖記録 ~ ユキコ、そして二世代の「トロイカ体制」実らず

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サスカッチ (Sasquatch the Polar Bear/Белый медведь Сасквоч) (1989~2020)
(2012年4月21日撮影 於 名古屋・東山動植物園)


世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理して血統台帳を作成しているドイツのロストック動物園が収集した情報により、今回は名古屋の東山動植物園におけるホッキョクグマ繁殖への挑戦を辿っていきたいと思います。

同園で飼育されていたホッキョクグマに関する歴史はロストック動物園に記録として残っているものを調べた限りでは、意外にもそれほど古いものではないようです。まず最初のペアとして形成されたと思われるペアのうちの雄(オス)は野生出身と思われる個体で名前は不明です。この個体(個体番号3203 1956~1967) が東山動植物園に入園したのは1957年の6月だったようです。そして彼のパートナーとして来園したのが雌(メス)のユキコ (Yukiko 1956~1984) なのです。このユキコはすでに「仙台・八木山動物公園の苦闘の繁殖記録 ~ 悲願である繁殖の成功を担ったナナを含む三世代の奮闘」という投稿でご紹介していました。仙台の八木山動物公園で1971年12月1日に1頭の赤ちゃんを出産した記録を残していたユキコのことです。さて、この雄(オス)の個体(個体番号3203 1956~1967) とユキコとの間での繁殖はどうだったでしょうか? ロストック動物園は下の情報を記録しています。

① 1965年12月24日 1頭誕生 性別不明           翌日死亡
② 1966年12月20日 1頭誕生 性別不明         12月22日死亡

さて、この翌年の1967年に残念なことが起きました。雄(オス)の個体(個体番号3203) が8月に10歳の若さで亡くなってしまうのです。しかしロストック動物園の記録を見ていくと東山動物園はこの雄(オス)の個体の死期が近いということを事前につかんでいたという形跡が見いだせます。どういうことかと言いますと、東山動植物園は野生出身の雄(オス)の幼年個体(個体番号1228 1966~1990)をロシアから購入し、そしその個体は1967年4月に東山動物園に入園しているからです。つまりユキコとペアを組んでいた雄(オス)の個体(個体番号3203) が亡くなる4ヶ月も前のことだからです。さらに東山動物園はカナダの野生個体と思われるやはり雄(オス)の幼年個体(個体番号1229 1966~1990)を同年1967年の5月に入園させています。それだけではありません、その雄(オス)の2頭の幼年個体(個体番号1228 & 1229)の将来のパートナーとして雌(メス)の幼年個体(個体番号1330 1966~1993) も5月に入園させているのです。こういったことは、東山動植物園が当初から飼育していた雄(オス)の個体(個体番号3203)に迫りつつある死を早い段階で予期していたことを物語るわけです。

さて、1965年と1966年との二回の出産を経験した雌(メス)のユキコ (Yukiko) も早々と1967年の3月末には仙台の八木山動物公園に移動しており、そしてそこで1971年の12月に出産をするわけです。こういったあたりに何かドラマを感じます。
名古屋・東山動植物園の苦闘の繁殖記録 ~ ユキコ、そして二世代の「トロイカ体制」実らず_a0151913_4356100.jpg
東山動物園の次の世代はこの雄(オス)の2頭(個体番号 1228 & 1229) と雌(メス)の1頭(個体番号1330) の「トロイカ体制」となったようですが、繁殖の記録はロストック動物園には存在していません。この二世代目の同園におけるホッキョクグマの姿を映した映像が存在していますので下に御紹介しておきましょう。1978年の映像です。


そしてその次の世代の「トロイカ体制」を形成した3頭は私たちに非常に馴染み深いホッキョクグマたちです。
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サスカッチとオーロラ (Sasquatch and Aurora)
(2012年4月21日撮影 於 名古屋・東山動植物園)


「新トロイカ体制」のうち最も最初に来園したのが1990年11月22日に入園した雄(オス)のサスカッチ (Sasquatch 1989~2020) です。彼の出自については「名古屋・東山動植物園のサスカッチ逝く ~ 謎に満ちたその出自」という投稿で述べた通りです。


Sasquatch the Polar Bear, with snow at Higashiyama Zoo (2018)

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オーロラ (Aurora the Polar Bear/Белая медведица Аврора) (1990~2016)
(2012年4月21日撮影 於 名古屋・東山動植物園)


次に来園したのが1991年11月16日に入園した雌(メス)のオーロラ (Aurora 1990~2016)です。彼女は1990年12月18日に釧路市動物園で三つ子として誕生したうちの1頭です。


Special treat of fish to Aurora the Polar Bear, at Higashiyama Zoo (2015)

オーロラの母親は先日も話題にしました野生出身のコロ (Coro 1974~2008) です。オーロラの父親は血統情報上は "フロスティ二世" (Frosty II 1973~1999) という名前で記録されている個体ですが、この個体の出自は非常に深い謎に包まれています。この "フロスティ二世" は1974年6月30日に旭山動物園に入園した記録があるのですが、同じこの日にカンゾウ (Kanzo 1973~2004) とハゲ (Hage 1973~ ?) という雄(オス)の個体2頭も旭山動物園に入園した記録があります。カンゾウはよく知られた個体なのですがハゲという個体は謎の個体です。この謎の個体であるハゲはなんと1975年9月29日に "フロスティ二世" と共に釧路市動物園に移動した後にハゲだけが1979年5月に動物商に売られ、その後の消息が忽然と消えてしまうわけです。その一方、オーロラの父親であった "フロスティ二世" (Frosty II ) として記録されている雄(オス)の個体は釧路市動物園に残留するのですが、彼の「正体」は何でしょうか? その候補としては彼が旭山動物園に入園した1974年6月前後を境にして「消息不明」となってしまったホッキョクグマを探す必要があります。候補となり得る何頭か存在しているのですが以下の二頭が相当に有力な候補となります。

A. 個体番号 2551 - カナダのマニトバ州で野生で捕獲された後に1973年10月にアシニボイン公園動物園で保護されたもののすぐにロックトン・サファリに移され、その後に消息不明となってしまった雄(オス)の個体。

B. 個体番号 2592 - アメリカのデンバー動物園で1973年11月29日に誕生し、翌年に一般公開されたものの、その後に消息不明となっている性別不明の個体。

オーロラの父親が "Frosty II" という英語の名前でロストック動物園に記録されている事実などから考えると、私は上の二つの可能性のうちではBの可能性の方が幾分高いような気がします。 だたし "フロスティ二世" (Frosty II) の父親の名前は "フロスティ (Frosty)" ではないということから考えますとAの可能性は捨てきれないということです。いすれにせよオーロラの父親の「正体」は A,又は B とみて間違いないではないかと思います。

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ミリー (Millie the Polar Bear/Белая медведица Миллие) (1992~2015)  Photo(C)東山動植物園

さて、三番目に来園したのは1994年12月5日に入園したイギリス・ノースヨークシャーのマルトン(モールトン)動物園生まれの雌(メス)のミリー (Millie 1992~2015) です。彼女の出自については「名古屋・東山動植物園のミリーが亡くなる」という投稿を御参照下さい。


Millie the Polar Bear with a plastic tank at Higashiyama Zoo (2014)

ミリー (Millie) は浜松市動物園で飼育されていた雄(オス)のジェイソン (Jason 1992~2010) とは双子の関係にあります。そしてミリーとジェイソンはイギリスのスコットランドのハイランド野生公園で2017年の12月にヘイミッシュが誕生するまではイギリスで誕生した最後のホッキョクグマだったわけです。ミリー(そしてジェイソン)の父親はマーカス (Marcus 1977~1998) であり母親はマンディ (Mandy 1977~2004) ですが、この二頭の出自はロストック動物園に記録においてもよくわかっていません。

さて、このサスカッチ、オーロラ、ミリーという東山動物園の「二代目トロイカ」体制によるホッキョクグマ繁殖の結果についてロストック動物園の記録はありません。つまり出産は全くなかったということになります。

こうして東山動植物園によるホッキョクグマの繁殖をロストック動物園の記録によって総括しますと、誕生は合計2頭、成育した個体はいないという結論になります。東山動植物園には現在はホッキョクグマが不在となっています。現在の日本のホッキョクグマ界の状況を考えると、東山動植物園がこれからホッキョクグマ繁殖を目指す可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。残念なことです。

(過去関連投稿)
名古屋・東山動物園の静かなドラマ ~ サスカッチのストーキングと逃げるオーロラ
名古屋・東山動物園のサスカッチ、飾れるか「男の花道」~ 雄の国内最高齢となった男の正念場
名古屋・東山動植物園のミリーが亡くなる
名古屋・東山動植物園のオーロラ逝く ~ 「生活感」に溢れた現実主義的ホッキョクグマの死
名古屋・東山動植物園のサスカッチ逝く ~ 謎に満ちたその出自


by polarbearmaniac | 2020-09-22 03:00 | Polarbearology

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