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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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鹿児島・平川動物公園の苦闘の繁殖記録 ~ 惜しまれる一般公開間近だった1989年誕生の赤ちゃんの死

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バナウゼ(ホクト)(Eisbär Banause/Hokuto the Polar Bear, 1990~2015)(2012年9月1日撮影 於 鹿児島・平川動物公園)

鹿児島といえばホッキョクグマを連想させるイメージはほとんどないのですが、今回は世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理しているドイツのロストック動物園の収集した記録から平川動物公園におけるホッキョクグマの繁殖に関する情報を辿っていくことにしたいと思います。
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平川動物公園はホッキョクグマ飼育の歴史はそう古いものではないようです。ロストック動物園の記録によりますと平川動物公園に最初に導入されたホッキョクグマの雄(オス)の個体(個体番号207 ?~1990) は飼育下で誕生した可能性が非常に高いそうで、彼が平川動物公園に入園したのが1972年10月9日という記録が残っていることから考えますと、このこの個体の誕生年は1970年、もしくは1971年と想定できます。そして個体が平川動物公園に入園した時期の比較的直前に消息不明となった飼育下の雄(オス)の個体(つまり動物商に売却されてしまい行方不明となっている個体)をロストック動物園の記録の中から見つけ出す作業が必要になるのです。該当個体で候補になる可能性のあるのは以下です。

(A) 個体番号 2478 - アメリカのサンディエゴ動物園で1970年11月28日に誕生し1972年1月12日ミャンマーのヤンゴン動物園に入園するも、その後の消息が不明になっているポレックス (Pollex) という名前の個体

(B) 個体番号 2979 - チェコスロヴァキア(当時)のドヴール・クラロヴェ動物園 (ZOO Dvůr Králové)で1970年11月29日に誕生し、その後の1971年10月に売却されたもののその後の消息が不明になっている個体

おそらく(A)のポレックスが平川動物公園に最初に導入されたホッキョクグマの雄(オス)の個体(個体番号207 ?~1990) の「正体」である可能性が非常に高いのではないでしょうか。 さて、この個体のパートナーとなったのがユキ (Yuki 1959~1975) です。彼女についてはすでに「よこはま動物園(野毛山動物園 & ズーラシア)の苦闘の繁殖記録 ~ 健闘の野毛山動物園、不毛なズーラシア」という投稿でご紹介していました。彼女は横浜の野毛山動物園で1964年、1965年、1969年の3回にわたって出産している個体です。ユキは1973年8月に野毛山動物園から平川動物公園に移動したわけです。そしてそこで雄(オス)の個体 (207) とのペアで繁殖を目指すわけです。ロストック動物園の記録は、このペアによる繁殖について以下の情報を記録しています。

① 1974年11月24日 2頭誕生 性別は雄(オス)と雌(メス) 
  雄(オス)は11月27日死亡、雌(メス)は11月25日死亡

ユキは横浜に続いて鹿児島でも出産したわけです。今回も成育こそしませんでしたが、一頭の雌(メス)のホッキョクグマが二つの動物園で出産したというのは、日本では多分ユキだけでしょう。さて、そうしたユキでしたがその出産の翌年の1975年の8月7日に15歳で亡くなってしまうわけです。

平川動物公園ではユキの死後すぐさま、その年1975年の11月にユキに代わる雌(メス)の個体を導入したのでした。ロストック動物園の記録ではその雌(メス)の個体 (個体番号208)の名前は「ユキ2号 (Yuki 2)」となっています。このユキ2号はやはりどこかの動物園で生まれた個体だったようですが、それがどこかはわかりません。このユキ2号は野毛山動物園が1973年4月に購入した後にすぐに権利が京都市動物園に移され、京都市動物園で1973年7月から1975年11月まで飼育されていた記録があります。このユキ2号ですが、なんと平川動物公園に入園した翌年の1976年10月に亡くなってしまうのでした。
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こうして二頭の雌(メス)の個体を失ってしまった平川動物公園が次の雌(メス)を導入たのは1983年になってからのことでした。この雌(メス)の個体(個体番号214 ?~2008)は大阪府の、みさき公園の動物園で1979年11月から1983年3月まで飼育されていた個体で、出日についてロストック動物園の記録では飼育下の生まれである可能性を示唆しています。誕生は1977年、あるいは1978年であるようです。さて、雄(オス)の個体 (個体番号207 ?~1990) と、この雌(メス)の個体 (個体番号214 ?~2008) との間での繁殖についてロストック動物園の記録は次のように記しています。

② 1984年12月1日 2頭誕生 性別は共に雄(オス)   共に同日死亡
③ 1987年11月9日 2頭誕生 性別は共に雄(オス)共に11月11日死亡
④ 1988年12月6日 1頭誕生 性別は雄(オス)     12月9日死亡
⑤ 1989年11月10日 2頭誕生 性別は1頭が雄(オス)
  性別不明個体は11月18日死亡、雄(オス)の個体は翌年2月6日死亡

いやあ、この⑤の1989年の双子の出産、これは本当に惜しいことをしました。1頭については亡くなりはしましたが生後72時間の壁を突破して生後一週間を突破したところまで生きていましたし、もう1頭はもう少しで生後3ヶ月を迎えるところだったわけです。そしてまた残念なことに繁殖を担っていた雄(オス)の個体 (個体番号207) がなんと1990年8月に亡くなってしまうわけです。これで雌(メス)の個体 (個体番号214) はパートナーを失ってしまいました。彼女はその後の2008年9月に29歳(推定)で亡くなります。

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バナウゼ(ホクト)(Eisbär Banause/Hokuto the Polar Bear, 1990~2015)(2012年9月1日撮影 於 鹿児島・平川動物公園)

さて、平川動物公園で次の世代を担ったのは私たちにとってもよく知るホッキョクグマでした。まず、雄(オス)のホクト (Hokuto 1990~2015) です。彼は1990年11月24日に旧東ベルリンにあるベルリン動物公園 (Tierpark Berlin) で誕生しています。彼はベルリン時代には "バナウゼ (Banause)" という名前だったとベルリン動物公園の情報誌に書かれています。彼の父親はロビー (Robby 1997~1997) というベルギーのアントワープ動物園生まれの個体ですが、私は会ったことがありません。しかしホクトの母親であるポーランドのカトヴィツェの動物園生まれのアイカ (Aika 1980~2016) にはベルリン動物公園で二回ほど会っています。
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アイカ (Eisbärin Aika, 1980~2016)
(2013年1月2日撮影 於 ベルリン動物公園)


このアイカは非常に眼光の鋭いホッキョクグマでした。その時の現地でのレポートは「32歳となったアイカの素顔 ~ 老いを感じさせぬプライドの高さと足腰の強靭さ」、及び「33歳になったアイカ、その誇り高きプライド ~ 心配される足腰の衰え」という投稿を是非御参照下さい。このホクト(バナウゼ)は1991年12月に平川動物公園に入園したのでした。

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カナ (Kana the Polar Bear /Eisbärin Kana)
(2012年9月1日撮影 於 鹿児島・平川動物公園)


このホクトのパートナーとなったのがカナ (Kana 1990~ ) です。彼女はカナダ出身と思われる野生出身個体です。彼女も1991年12月に平川動物公園に入園しました。さて.....このホクトとカナのペアの間での繁殖についてですが、ロストック動物園の記録にはカナの出産については全く記録がありません。これは、カナは全く出産しなかったことを意味しています。少なくともロストック動物園の記録によればそうなります。ホクトは2015年3月13日に亡くなっています。彼の死を持って平川動物公園のホッキョクグマ繁殖の幕は閉じたのだと考えてよいでしょう。残念です。
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ホクト(右)とカナ(左)
(2012年9月1日撮影 於 鹿児島・平川動物公園)

ロストック動物園の記録をまとめますと、平川動物公園におけるホッキョクグマの赤ちゃんの誕生は合計9頭、成育した個体はなかったということになります。

(資料)
Taking (HEFT 1 2019)

(過去関連投稿)
南国・薩摩に生きるホッキョクグマたち ~ 欧州現代史激動期のベルリンに生を受けたホクトへの親しみ
旧東ベルリンのベルリン動物公園へ ~ アイカとトーニャの2頭の雌に御挨拶
32歳となったアイカの素顔 ~ 老いを感じさせぬプライドの高さと足腰の強靭さ
25年前の東ドイツにいた「もう一頭のクヌート」 ~ ユキ(姫路)とポーラ(仙台)の父親の物語
セルビア・パリッチ動物園のビョルン・ハインリヒ死す ~ ユキ(姫路〕 とポーラ(仙台) の父親の訃報
ホクト(鹿児島・平川動物公園) の行動から推測する彼のベルリンでの幼年時代
33歳になったアイカ、その誇り高きプライド ~ 心配される足腰の衰え
オランダ・ロッテルダム動物園のエリックが亡くなる ~ 双子の赤ちゃんを遺した父親の21歳の早過ぎる死
鹿児島・平川動物公園のホクトが亡くなる ~ 34歳の老いた母を遺して相次いで逝った三頭の息子たち
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんが無事に生後十日目を経過 ~ 1992年撮影の謎の映像は故ホクトの姿か?
鹿児島・平川動物公園のカナ (Kana) の夏の日 ~ 魚と毎日2個の氷のプレゼント


by polarbearmaniac | 2020-09-24 01:00 | Polarbearology

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