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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち

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アイラ (Aïra the Polar Bear)
(2013年6月29日撮影 於 おびひろ動物園)


北海道・帯広市のおびひろ動物園におけるホッキョクグマ飼育と繁殖については同園が公表している情報が多いように見えるわけですが、実はかなり謎があると私は思っています。そういったあたりを世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理しているドイツのロストック動物園が収集した記録を振り返ることによって、その謎に迫ってみたいと思います。おびひろ動物園のホッキョクグマ飼育の歴史については以前にもご紹介していた十勝毎日新聞の特集記事である「つなげ命のバトン - 第3回「追いつめられたシロクマ」において同紙がおびひろ動物園から得た情報を表にしていますので(以下「帯広資料」と略記します)、その帯広資料とロストック動物園の記録を比較してみたいと思います。
北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち_a0151913_20235898.jpg
コロ (Koro) とメリー (Merry) Photo(C)おびひろ動物園

同園でホッキョクグマが導入されたのは1966年のことだったようです。ロストック動物園の記録では最初に来園したのは雌(メス)のメリー (Merry 個体番号217 1964~1996) であり1966年9月10日に来園したそうです。次に来園したのは雄(オス)のコロ (Koro 個体番号216 ?~1990) であり、彼の来園は1969年9月10日となっています。いすれもロシア(当時はソ連)のウランゲリ島で捕獲された野生出身個体という記録があります。「帯広資料」ではこの2頭は共に1966年9月の来園とされていますのでロストック動物園の資料の日付とは異なります。しかし多分これは帯広資料が正しいでしょう。なぜかと言えば、ロストック動物園がコロの入園の年を "1969" と記録しているのは単純に "1966" の間違いだろうと考えられるからです。しかも後に続くのは9月という "9" の数字です。ロストック動物園はこういった数字の記載ミスを他の個体に関する情報の記載で何カ所かで行っています。また、たとえば先日の円山動物園に関する情報でも、キャンディの個体(血統)番号である 1454 を、それと似た番号であるララの個体(血統)番号である1514 と取り違えて記載している箇所があったということはすでに指摘しています。ロストック動物園の記録をこうしてかなり見ていきますと、同園が「ミスを行うパターン」というものが見えてきます。こういったことを知ることによって逆に、どういった場合にはロストック動物園の記録に信頼性があるか(記載ミスを行わないのか)をも知ることもできるのです。

さて、この雄(オス)のコロと雌(メス)のメリーというペアによる繁殖についてロストック動物園の記録は以下の通りです。

① 1974年12月7日 1頭誕生 性別不明            同日死亡
② 1976年12月1日 2頭誕生 性別不明        共に12月3日死亡
③ 1977年11月27日 2頭誕生 性別は雄(オス)雌(メス)
                          共に12月29日死亡
④ 1978年12月8日 2頭誕生 性別不明        共に12月17日死亡
⑤ 1979年12月2日 1頭誕生 性別は雄(オス)      12月28日死亡
⑥ 1980年11月26日 1頭誕生 性別不明           12月5日死亡
⑦ 1981年12月6日 1頭誕生 性別不明           12月9日死亡
⑧ 1984年12月16日 1頭誕生 性別不明          12月19日死亡

上記の記録と「帯広資料」を比較してみて下さい。かなりの違いがあります。「帯広資料」には③の1977年誕生、及び⑦の1981年誕生の二つの記録が抜けています。さらに個別に見ていきましょう。①1974年については「帯広資料」では「約60日間生存」とありますがロストック動物園の記録では出産日に死亡となっています。②1976年については「帯広資料」では「約6日間生存」ですがロストック動物園の記録では「2日後に死亡」なのです。③1977年誕生の双子ですが、これはすでに申し上げましたように「帯広資料」にはない誕生です。これについてロストック動物園の記録では「11月27日誕生で12月29日に2頭が共に死亡した」ことになっているのは不自然です。おそらく「11月29日死亡」が正しいのではないでしょうか。それを証明する写真が以下です。
北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち_a0151913_21491996.jpg
1977年12月15日のコロ (Koro) とメリー (Merry) 
Photo(C)おびひろ動物園

このおびひろ動物園の写真には "1977年12月15日" の撮影であることを示すキャプションが付けられているのです。つまり"1977年12月15日" の段階では雌(メス)のメリーは産室を出ていたことを示しているからです。ですから、赤ちゃんの死亡日はロストック動物園の記録である1977年12月29日ではありえないということになります。いずれにせよ、ロストック動物園の記録における③1977年誕生個体についての情報はやや authenticity に欠けていると考えます。④1978年では「帯広資料」では「生後10日目に死亡」ですがこれはロストック動物園の記録と一致しています。しかしロストック動物園の資料では誕生は2頭であるものの「帯広資料」では1頭です。⑤1979年ですが「帯広資料」では「生後26日目に死亡」でロストック動物園の記録と同じです。⑥1980年では「帯広資料」では「約10日間生存」ですがこれもロストック動物園の記録と同じです。⑦1981年の誕生についてはロストック動物園の記録では1頭ですが「帯広資料」には誕生がなかったことになっています。⑧1984年では「帯広資料」では「約10日生存」ですがロストック動物園の資料では3日後に死亡したことになっています。
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Photo(C)おびひろ動物園

おびひろ動物園では近年になってホッキョクグマの人工哺育を試みたことがあったことを明らかにしていますが、それは⑤1979年誕生の個体であったことは確実でしょう。これはロストック動物園の収集した記録で読み取れるのです。

コロとメリーのペアはさすがにロシア(ソ連)のウランゲリ島の出身だけあります。よくぞこれだけの頭数を出産できたものだと思います。やはりホッキョクグマはカナダよりもロシアなのです。 ロストック動物園の記録によりますと、おびひろ動物園ではその他1971年から1973年まで飼育されていた雄(オス)の幼年、または若年個体(259) がいた形跡があるのですが1973年6月に南朝鮮のソウルへ移動した記録があります。また、アメリカ・アリゾナ州トゥーソンのリードパーク動物園で1978年12月1日に誕生した雌(メス)のミンディ (Mindy)という幼年個体も飼育されていた形跡があるのですが彼女のその後の消息は不明となっていす。また、1978年11月30日にやはりリードパーク動物園で誕生したモーク(Mork) という雄(オス)の個体を1979年5月に入手した形跡があるものの、この個体のその後の消息は不明となっています。 さて、おびひろ動物園でこうして繁殖を担ったコロとメリーのペアでしたが残念なことに雄(オス)のコロは1990年1月30日に、そして雌(メス)のメリーは1996年2月13日に亡くなったことをロストック動物園は記録しています。
北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち_a0151913_23451073.jpg

おびひろ動物園の次の世代のホッキョクグマですが、これが問題なのです。アメリカ・オハイオ州 クリーヴランドのメトロパークス動物園で1991年11月14日に誕生した双子である雄(オス)のスバル (Subaru 1991~1998) と雌(メス)のサツキ (Satsuki 1991~ ) が共におびひろ動物園に来園したのは1992年10月31日であることをロストック動物園は記録しています。下はスバルとサツキがおびひろ動物園に来園した翌日の1992年11月1日の写真のようです。
北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち_a0151913_2232271.jpg
1992年11月1日のスバル (Subaru) とサツキ (Satsuki)
Photo(C) おびひろ動物園

このスバルとサツキの母親は以前にもご紹介していた野生出身のスノウボール (Snowball 1970~2008) です。父親はやはり野生出身のナウヤ (Nauyat 1971~2000) です。この両親の間に誕生した双子兄妹であるスバルとサツキは繁殖上のペアにはなり得ません。この二頭が双子であることをおびひろ動物園は認識していたかどうかは微妙です。私は認識していただろうとは思うのですが、以下のようなスバルとサツキの写真も公開されているのです。
北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち_a0151913_22101086.jpg
スバルとサツキ Photo(C)おびひろ動物園

繁殖可能な年齢になってはいないからこうして同じ区画で同居させていたのかもしれません。しかし同園はこの二頭が双子兄妹であることを認識していなかった可能性も排除できません。
北海道・おびひろ動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 大健闘したロシア極北ウランゲリ島出身のホッキョクグマたち_a0151913_2349459.jpg

ロストック動物園の資料では、このサツキに出産があったという記録は全く見い出せません。そういったなかで雄(オス)のスバルは1998年11月19日に亡くなってしまいます。それから8年半後にサツキは2007年7月に札幌の円山動物園に移動します。デナリとのペアでの繁殖を期待されたからでした。それに先立つ2007年2月に札幌の円山動物園で2005年12月に生まれたピリカ (Pirka 2005~ ) がおびひろ動物園に移動してきていました。そのピリカは2010年2月に円山動物園に帰還し、それ代わっておびひろ動物園に来園したのは2008年12月に円山動物園で誕生したイコロ (Ikor) とキロル (Kiroru) の双子兄弟でした。イコロは2015年4月に東京の上野動物園に移動しキロルは2011年3月に浜松市動物園に移動します。現在このおびひろ動物園で飼育されているのは2010年12月に円山動物園で誕生した雌(メス)のアイラ (Aïra)です。彼女は2012年2月におびひろ動物園に移動してきたわけですから、もう8年半この動物園で暮らしていることになります。


The act of enriching Aïra's behavior at Obihiro Zoo (2019)

ロストック動物園の記録をまとめますと、おびひろ動物園におけるホッキョクグマの赤ちゃんの誕生は合計11頭、成育した個体はなかったということになります。この記録は世界における飼育下の血統情報の公式な記録となっているということです。 ただし「帯広資料」では赤ちゃん誕生は合計7頭(成育個体はなし)ということになります。おびひろ動物園は現在では円山動物園のホッキョクグマの預託先として機能しており、再び繁殖に挑戦するかについては同園は消極的な立場を維持しているように思われます。

(資料)
十勝毎日新聞 (つなげ命のバトン - 第3回「追いつめられたシロクマ」

(過去関連投稿)
【訃報】 円山動物園のサツキのお母さんが亡くなりました..
アメリカ・クリーヴランド、メトロパークス動物園のスノウボール (旭山動物園 サツキの母) の遺したもの
旭川・旭山動物園のサツキ (Satsuki) の近況 ~ 孤立した血統を生かせなかった日本のホッキョクグマ界
日本の飼育下のホッキョクグマたちの黄昏 - "Dämmerung der Eisbären in Japan"
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by polarbearmaniac | 2020-09-25 01:00 | Polarbearology

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