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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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浜松市動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 惜しまれるジェイソン(Jason) とバフィン(Baffin) のペアの挑戦結果

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バフィン (Baffin the Polar Bear/Белая медведица Баффин)
(2017年5月19日撮影 於 浜松市動物園)


世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理しているドイツのロストック動物園が収集した記録を振り返ることによって、今回は浜松市動物園におけるホッキョクグマ繁殖への挑戦の記録を振り返ってみたいと思います。
浜松市動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 惜しまれるジェイソン(Jason) とバフィン(Baffin) のペアの挑戦結果_a0151913_20444915.jpg

まず浜松市動物園で最初に導入されたのは3頭のホッキョクグマだったようです。まず雌(メス)のミイコ (Miiko #1552 1980~1984) ですが、彼女は1982年12月18日に同園に入園したものの2年後の1984年12月7日に亡くなっています。そして雄(オス)のポパイ (Popeye #1250 1981~1987) は野生出身個体のようですが、誕生は1981年11~12月と推定され、やはり1982年12月18日に浜松市動物園に入園しています。そして同じく入園した雌(メス)のオリーヴ (Olive #1251 1977~2004) は出自が不明です。このオリーヴも1982年12月18日に浜松市動物園に入園しているのですが、その段階で彼女は5歳になっていました。オリーヴは浜松市動物園に入園する前にどこかの動物園で飼育されていた可能性もあるのですが、その年齢まで野生だった可能性もあります。つまり浜松市動物園は当初は雄(オス)のポパイに対して雌(メス)のミイコとオリーブという2頭の雌(メス)によって繁殖を狙ったのでしょう。しかしポパイとオリーヴのペアによる繁殖の結果の記録はないまま雄(オス)のポパイは1987年12月に6歳の若さで亡くなってしまいます。パートナーだったオリーヴは1995年11月になって宝塚ファミリーランドに移動し、そして2003年7月に横浜のズーラシアに移動して翌年に亡くなっています。このオリーヴについてはすでに「よこはま動物園(野毛山動物園 & ズーラシア)の苦闘の繁殖記録 ~ 健闘の野毛山動物園、不毛なズーラシア」という投稿でご紹介したことがありました。

浜松市動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 惜しまれるジェイソン(Jason) とバフィン(Baffin) のペアの挑戦結果_a0151913_20462633.jpg
バフィン (Baffin the Polar Bear/Белая медведица Баффин)
(2017年5月19日撮影 於 浜松市動物園)


次の世代からは私たちに馴染みの深いペアが登場してきます。まず1993年4月10日に入園したのが雄(メス)のバフィン (Baffin 1991~ )です。彼女は1991年12月9日にスウェーデンのコルモルデン (Kolmården) 動物園で三つ子の一頭として誕生しています。彼女の父親はドイツのロストック動物園生まれのイーマレク (Imarec/Imarac 個体番号119 1979~1995) で、母親はアメリカのメンフィス動物園生まれのナージャ (Nadja 個体番号393 1979~1995)です。このコルモルデン (Kolmården) 動物園では多くの個体が誕生しているのですが私の見たところロストック動物園の記録に正確さか欠け混乱しているように思われる箇所がいつかかあり、後日精査して整理したいと思っています。バフィンは三つ子の一頭として記録されているわけですが、ちなみに他の二頭は白浜のAWSで飼育されていた アークティク (Arctic 1991~2014)、そして横浜の八景島シーパラダイスで飼育されていた ユキヒメ (Yukihime 1991~2017)です。この3頭はバフィンとアークティクを取り扱った動物商とユキヒメを取り扱った動物商が異なり、契約の内容が違っているため輸送の条件も違っていたわけですが、本投稿の趣旨からは外れますので稿を改めたいと思います。

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ジェイソン (Jason the Polar Bear/Белый медведь Йасон 1992~2010)  Photo(C)浜松市動物園

次に1994年6月5日に浜松市動物園に入園したのが雄(オス)のジェイソン (Jason 1992~2010) でした。彼は1992年12月8日にイギリス・ノースヨークシャーの、現在はフラミンゴランド (Flamingo Land) の名称になっている動物園(俗称 マルトン/モールトン動物園)で誕生しています。彼は東山動植物園で飼育されていたミリー (Millie 1992~2015) とは双子兄妹の関係にあります。このことは「名古屋・東山動植物園の苦闘の繁殖記録 ~ ユキコ、そして二世代の「トロイカ体制」実らず」という投稿でご紹介している通りです。

このジェイソンとバフィンという共に欧州出身のペアによる繁殖についてロストック動物園は以下のように記録しています。

① 2001年11月13日 1頭誕生 性別不明           翌日死亡
② 2004年10月21日 1頭誕生 性別は雌(メス)       同日死亡
③ 2005年12月12日 1頭誕生 性別不明         12月18日死亡

この③2005年誕生の赤ちゃんは残念なことになりました。誕生後の第一関門は見事に突破していたわけです。この事実は、母親であるバフィンは母乳が出るということがはっきりとわかったことになるからです。ただ、ロストック動物園の記録ではこの2005年誕生の赤ちゃんの死因については外傷(injury) であることを示しています。私はかなり以前に別々の場所で別々の方から「浜松市動物園の産室には問題がある」という内容のことを聞いた記憶があるのですが、そのことと2005年誕生の赤ちゃんの死に関係があるのかないのかは判断ができません。ロストック動物園は圧迫死の場合は死因をそう記録するのですが、外傷と記録されているということになりますと虐待死も含む表現ですので実際の死因を記録だけから特定するのは難しいでしょう。しかしそういったことよりも、この赤ちゃんの本当の死因がなんだったのかは些末な問題であり、より重要なのは③2005年の出産において赤ちゃんが約1週間生きていたという事実が、彼女には繁殖成功の十分な可能性があるとして大阪に移動させた判断を導いただろうということです。

こうして期待されていたペアでしたがジェイソンが2010年2月8日に亡くなってしまいます。バフィンはその後、2011年3月に大阪の天王寺動物園に移動してロシア・ペルミ動物園生まれのゴーゴ (Gogo 2004~ ) とペアを組み、そして2014年11月25日に見事にモモを出産し、そして育児にも成功したことは記憶に新しいところです。そしてその後2016年6月にバフィンはモモと一緒に浜松市動物園に帰還を果たしたというわけです。浜松市動物園においてバフィンの不在中はキロル (Kiroru 2008~ ) が飼育されており彼もそこで人気者でしたが2016年4月に釧路市動物園に移動しています。


バフィンのプロフィール - Baffin the Polar Bear's profile, at Hamamatsu Zoo, Japan, on May.19 2017.

ロストック動物園の記録で纏めますと、浜松市動物園で誕生した赤ちゃんは合計3頭、成育した個体はいなかったということになります。

(資料)
浜松市動物園 (Feb 21 2010 - さようなら、ジェイソン)

(過去関連投稿)
バフィンさん、モモさん、お元気で! また浜松でお会いしましょう! ~ 「未完のドラマ」は続く
浜松市動物園にゆったりと流れるバフィンとモモの母娘の至福の時間 ~ "Les Ours joyeuses"
モモの真っ直ぐな成長 ~ 母親の庇護下での憂い無き率直さ
バフィン、偉業を成し遂げつつあるホッキョクグマへの敬意 ~ 運命への本能的な「選択」に宿っていた母性


by polarbearmaniac | 2020-09-27 00:30 | Polarbearology

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