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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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旭川・旭山動物園の苦闘の繁殖記録(1) ~ 日本最初のホッキョクグマ繁殖成功、そして息詰まるドラマの展開

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コロ (Koro #204 1974~1990) - 日本最初の繁殖成功個体 
Photo(C)旭山動物園

北海道・旭川市の旭山動物園は4頭のホッキョクグマを飼育している日本有数の動物園です。この動物園におけるホッキョクグマの繁殖について、世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理しているドイツのロストック動物園が収集した記録を辿ることによって振り返ってみたいと思います。その前に一つ前提として理解していただきたいのは、過去における日本の飼育下のホッキョクグマは似たような名前を持つ個体が多いことと移動先で名前が変わっているケースもあり、今回はそういった個体の名前と同時に血統番号を (#XXX) という表記で併記するということです。それから、性別については雄(オス)はM、雌(メス)はFと略記しますので御注意下さい。
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旭山動物園に最初に導入されたペアについて触れます。それは雄(オス)のシロウ (Shirou #202 1966~1989) と雌(メス)のユキ (Yuki #203 1966~1983) でした。どちらも野生出身個体です。そしてどちらも1967年7月4日に同園に入園しています。このペアによる繁殖挑戦の結果について、ロストック動物園は以下のように記録しています。

① 1973年11月30日 1頭誕生 性別不明           同日死亡
② 1974年11月28日 1頭誕生 性別はM         コロ (#204)
③ 1975年11月26日 2頭誕生 性別はM、F         同日死亡
④ 1976年11月29日 1頭誕生 性別はM        ジュン(#1246)
⑤ 1978年12月3日  1頭誕生  性別不明           同日死亡
⑥ 1979年12月3日 2頭誕生 性別はM  ダイ(#205)、ショウ(#206)
⑦ 1981年12月8日 1頭誕生 性別はF        ハッピー(#666)

上の記録を見ただけで母親のユキ (Yuki #203 1966~1983) がいかに優れた雌(メス)のホッキョクグマだったかが一目瞭然でわかるのです。何故ならば全ての出産日が近接した日付けだからです。こうしたホッキョクグマの母親の数はそう多くありません。「偉大なる母」と呼ばれるホッキョクグマは、ほとんどこうした傾向にあるのです。私も今回こうして具体的な出産日まで調べてみた過程でユキ (#203) の偉大さを再認識しました。彼女はウスラーダ、シモーナ級の実力を持つホッキョクグマだったということです。

個別に見ていきましょう。まず②1974年誕生個体の雄(オス)のコロ (Koro #204 1974~1990) が日本で最初に誕生・成育したホッキョクグマの個体です。ちなみに日本で初めてホッキョクグマの赤ちゃんが誕生したのは1917年(大正6年)11月5日の上野動物園でのことだった件はすでにご紹介しています。
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コロ (Koro #204 1974~1990)  Photo(C)旭山動物園

このコロが1975年5月に隣の檻にいた父親シロウに左前脚を噛み切られてしまうという重大な事件があったわけですが、この件については「旭山動物園ヒストリー(昭和50年(1975) ホッキョクグマ「コロ」の思わぬ事故)」という記事を是非ご参照下さい。泣けてくる話です。④1976年誕生の雄(オス)のジュンですが、血統台帳上では登録名がタロウ (Tarou #1246 1976~2003) となっています、彼は1978年4月に白浜のAWSに移動し、そして1993年2月に東北サファリパークに移動し、そこで2003年3月にそこで亡くなっています。⑥1979年誕生の雄(オス)の双子であるダイとショウですが、ダイは血統台帳上ではポール (Pole #205 1979~2010) となっています。彼こそが札幌のララ、旭川のルルの父親なのです。彼は1980年12月に別府の「ラクテンチ」に移動してクーニャ (#1253) とパートナーを組み、そして生まれたのがララとルルという双子姉妹です。この件については「大分・別府「ラクテンチ」の苦闘の繁殖記録 ~ 最後に輝いた星であるルル (Lulu) とララ (Lara)」という投稿を御参照下さい。
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ダイ(シロー爺さん) (Pole #205 1979~2010)
(2010年4月10日撮影 於 とくしま動物園)


彼はその後2004年3月にとくしま動物園に移動しています。そこでは彼はシロ―と呼ばれていたわけです。私は親しみを込めて「シロー爺さん」と呼んでいました。ダイ(シロー爺さん)は2010年7月に亡くなったのですが、私はその追悼式典に出席した思い出があります。双子のもう一頭のショウは血統台帳上ではユキオ (Yukio #206 1979~1995) となっており、彼は1980年12月に大阪の天王寺動物園に移動しています。このショウ(ユキオ)が大阪でいかに繁殖に貢献したかは「大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期での早世個体の多さ」という投稿を御参照下さい。神戸の王子動物園のみゆきはこのショウ(ユキオ)の娘にあたります。ショウ(ユキオ)は1995年に天王寺動物園で亡くなっています。
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ハッピー (Happi #666 1981~2007) Photo(C)旭山動物園

⑦1981年誕生の雌(メス)のハッピー (Happi #666 1981~2007) ですが、彼女はこのシロウ(#202) とユキ(#202) という第一世代のペアの間に初めて誕生した雌(メス)の個体です。ところが彼女にも不幸が襲います。ハッピーは父親であったシロウ (#202) に舌を噛みちぎられてしまったのです。この事件については「旭山動物園だより No.122」(pdf)を是非ご参照下さい。尚、彼女の名前は血統台帳上では "Happy" ではなく "Happi" で登録されています。

旭山動物園におけるホッキョクグマ繁殖の第二世代に移る前に、この時代に同園を彩った他のホッキョクグマたちについてロストック動物園の記録を辿りつつ触れておきたいと思います。

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カンゾウ (Kanzou #1239 1973~2004) 
Photo(C)旭山動物園/北海道心臓協会

まず、雄(オス)のカンゾウ (Kanzou #1239 1973~2004) です。彼は野生出身と推定はできるものの飼育下で誕生した可能性も無くはないと思われる個体です。彼は1974年6月30日に旭山動物園に入園しているのですが同年の8月に早々と大雪山ベアーセンターに移動し、そして2002年9月になって旭山動物園に戻ってきた個体です。彼の名前のカンゾウは旭山動物園に帰還後に付けられた名前のようです。血液検査をしたら、肝臓が悪かったのでカンゾウという名前になったそうです。彼は2004年9月に亡くなっています。

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コユキ (Koyuki #1244 1978~2010)
(2010年3月7日撮影 於 旭川・旭山動物園)


次にこれは非常に有名なホッキョクグマですが、雌(メス)のコユキ (Koyuki #1244 1978~2010) です。彼女も野生出身の個体と考えられ、1979年10月に最初は大雪山ベアーセンターに入園しています。その後の1987年4月に旭山動物園に移動し、そしてそこで2010年7月に亡くなっています。彼女は非常に見栄えのする堂々としたホッキョクグマで旭山動物園のリーフレットの表紙を飾るほどのホッキョクグマでした。私は彼女の訃報をモスクワのホテルに到着したばかりのときに知って驚いた記憶があります。このコユキ (#1244) が日本で最初に繁殖成功で誕生した雄(オス)のコロ (#204) のパートナーとなるべく旭山動物園に入園した可能性は極めて高いと思いますが、ロストック動物園の記録ではそれを読み取ることはできません。というのも コユキ (#1244) には出産の記録がないからです。

このカンゾウ (#1239)とコユキ (#1244) の貴重な映像がありますのでご紹介しておきましょう。



その他、札幌の円山動物園で繁殖を担った野生出身の雄(オス)のポール (Pole #218 1970~2001) は旭山動物園に入園した1995年2月から彼の死の2001年9月まで旭山動物園で暮らしています。さらに旭山動物園は野生出身の可能性が非常に高い雄(オス)の幼年個体 (#667 1982?~1984) を入手した形跡がありますが、この雄(オス)の幼年個体こそがハッピー (#666) のパートナーとして旭山動物園が購入した個体だったでしょう。その個体は1984年4月14日に旭山動物園に到着しています。ところがその約2か月後の1984年6月26日に死亡してしまうのです。そして、おそらくその死んでしまった幼年個体に代わって旭山動物園がハッピー (#666) のパートナーとして入手したのが釧路市動物園で1984年1月に誕生した雄(オス)のコタロウ (Kotarou #669 1984~2001) だったと考えて時系列的にも間違いないでしょう。コタロウはその年1984年12月24日に旭山動物園に到着します。そしてそれから彼の死の2001年5月まで旭山動物園で暮らしていることがロストック動物園の記録で見てとれます。

さて、こうして旭山動物園における第二世代のホッキョクグマの繫殖は釧路市動物園生まれのこの雄(オス)のコタロウ (#669) と旭山動物園で生まれた雌(メス))のハッピー (#666) のペアに委ねられたのでした.....。

次投稿に続く - to be continued)

(資料)
旭山動物園 (Feb.24 2016 - 旭山動物園ヒストリー・読み物 旭川叢書「きたの動物園」(2)) (Jul.25 2007 - 旭山動物園だより No.122)
北海道心臓協会 (命を見つめる



by polarbearmaniac | 2020-09-28 02:00 | Polarbearology

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