人気ブログランキング | 話題のタグを見る


街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ "Perpetuum mobile"

静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ \"Perpetuum mobile\" _a0151913_23134290.jpg
ピョートル(ロッシー)(Rossy the Polar Bear/Белый медведь Пётр)(2017年6月2日撮影 於 静岡・日本平動物園)

静岡市の日本平動物園におけるホッキョクグマの飼育・繁殖について、世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理しているドイツのロストック動物園が収集した記録で見ていきたいと思います。前もって述べておきますがロストック動物園の記録が示す年月日は、日本平動物園のスタッフの方が「でっきぶらし」で述べている年月日とは異なっている箇所が存在していますが、本投稿では全てロストック動物園の記録に書かれた年月日にて記述していくこととします。
静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ \"Perpetuum mobile\" _a0151913_2330195.jpg
日本平動物園に初めて来園したホッキョクグマはロストック動物園の記録によれば1969年6月30日に来園した雌(メス)のユキコ (Yukiko #3219 1968~1973) となります。彼女は野生出身と考えらえます。続いて同年1969年7月6日に来園したのがやはり野生出身と考えられる雄(オス)のジャック (Jak #1234 1968~ ?) となります。ペアとして飼育されたジャック (#1234) とユキコ(#3219) でしたが、雌(メス)のユキコは1973年10月26日に死亡しています。このユキコの死亡については日本平動物園のベテラン飼育員さんが退職に際して書いた回想文 (「42年間を振り返って」)によれば、狭い産室の中で動き回り衰弱してしまったことが原因で産室内で死亡したとのことです。この時に亡くなったユキコが「初代ピンキー」として剥製になっているというわけです。さて、パートナーを失ったジャック (#1234) ですが、1975年12月19日に動物商に権利が移転し、その後は消息不明であるというのがロストック動物園の記録です。

静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ \"Perpetuum mobile\" _a0151913_2043386.jpg
ピンキー (Pinky #1238 1973~2007) Photo(C)日本平動物園

さて、次の世代です。日本平動物園に来園したのは雄(オス)のジャック (Jack #1237 1973~2002) と雌(メス)のピンキー (Pinky #1238 1973~2007) でした。どちらも野生出身である可能性が濃厚であることが記録上示唆されています。この雄(オス)のジャック (Jack #1237) は先代のジャック (Jak #1234 1968~ ?) とは同じ名前(綴りは違います)ですが別個体です。新ペアは1974年6月11日にそろって日本平動物園に入園しています。このジャック (#1237) とピンキー (#1238) という新ペアの間での繁殖に関してロストック動物園は以下のように記録しています。

① 1986年12月1日 1頭誕生 性別不明           同日死亡
② 1988年12月2日 1頭誕生 性別不明          12月7日死亡
③ 2001年11月24日 1頭誕生 性別不明           同日死亡

さて....この③2001年の出産に関してはロストック動物園の記録の authenticity を疑わざるを得ません。2001年11月の段階ではピンキー (Pinky #1238 1973~2007) は28歳になったところです。彼女がこの年齢で出産したとは考えにくく、またそれまで過去2回の出産年とはかなり離れています。そういったことから、この③はロストック動物園の誤記ではないかとも思われるのですが、そうであるという根拠もありません。しかしとりあえずはロストック動物園の記録は記録としてここで紹介しておきます。
静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ \"Perpetuum mobile\" _a0151913_23344313.jpg
雄(オス)のジャック (Jack #1237) は2002年1月21日に28歳で亡くなります。死因は肝臓の腫瘍だったようです。雌(メス)のピンキー (Pinky #1238) は2007年5月4日に33歳で亡くなっています。亡くなったときに「推定35歳」と言われたわけですが、それは正確ではないと思われます。何故ならばピンキーのパートナーだったジャックが亡くなったときに飼育員さんは追悼文のなかでジャックとピンキーが日本平動物園に来園した1974年6月のときの思い出として「当時はまだ子供で白い縫いぐるみのようで愛らしく....」と述べているのです。このことは、1974年6月当時ジャックもピンキーもまだ一歳になっていなかったということを強く示唆しています。つまりこの2頭は1973年11~12月の生まれである確率が非常に高いわけです。となるとピンキーが2007年5月に亡くなった時点では33歳だったということになるからです。

静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ \"Perpetuum mobile\" _a0151913_23382988.jpg
ピョートル(ロッシー)(Rossy the Polar Bear/Белый медведь Пётр)(2017年6月2日撮影 於 静岡・日本平動物園)

さて、次の世代です。これはお馴染みのホッキョクグマです。まず雄(オス)のピョートル(ロッシー)(Пётр/Rossy #2882 2007~ ) は2008年7月8日に日本平動物園に入園しています。彼は今更言うまでもなくロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園で2007年11月27日に双子のうちの一頭として誕生しています。もう一頭は、これはもう日本でもすっかりお馴染みのロシア・ノヴォシビルスク動物園で暮らすクラーシン(カイ)(Красин/Krasin/Кай #2883 2007~ ) です。この双子兄弟の父はメンシコフ (Меньшиков/Menshikov #1196 1988~2016) 、母親はウスラーダ (Услада/Uslada #1190 1987~ ) です。このピョートル(ロッシー)とクラーシン(カイ)の双子兄弟はまさに「カザン血統 (Белые медведи Казанской линии)」の直系のホッキョクグマなのです。

静岡・日本平動物園の苦闘の繁殖記録 ~ \"Perpetuum mobile\" _a0151913_23215030.jpg
ヴァニラ (Vanille/Vania the Polar Bear)
(2017年6月2日撮影 於 静岡・日本平動物園)


そしてピョートル(ロッシー)のパートナーとして2011年8月18日に来園したのが雌(メス)のヴァニラ (Vania #3087 2009~ )です。彼女も「カザン血統の直系の個体で、血統台帳上では正式には「ヴァニア (Vania)」として登録されています。このヴァニラは2009年2月1日にタイ・バンコクのサファリワールド (Safari World) で誕生していますが、父親は野生出身のイゴール (Igor #1564 1993~ )、母親はウディ (Уди/Udi #867 1993~ ) です。このウディはロシアのカザン市動物園で、あのカリスマ的であると同時に深い謎に満ちたホッキョクグマだったディクサ (Дикса/Diksa #731 1973~2006) から誕生しています。一方でピョートル(ロッシー)の母親であるウスラーダもこのディクサから誕生しています。ウスラーダの父親もウディの父親も同じウムカ (Умка/Umka #732 1973~1998) です。つまりピョートル(ロッシー)もヴァニラも祖父母は全く同じであるということです。非常に煩雑ですがわかり易く言い換えますと、悠仁親王殿下(ロッシー)と愛子内親王殿下(ヴァニラ)のペアというわけです。そしてこのお二人共に祖父母は上皇陛下(ウムカ)と上皇后陛下(ディクサ)というわけです。

このピョートル(ロッシー)とヴァニラとの間での繫殖についてロストック動物園の記録では現時点では以下のようになっています。

④ 2015年10月23日 1頭誕生 性別は雄(オス)     同日死亡

ロストック動物園の記録では日本平動物園でのホッキョクグマの誕生は合計4頭、成育した個体はまだないということになります。ただし先にも述べましたがロストック動物園の記録のうち③2001年の誕生記録については authenticity に疑義がありますので実際の誕生頭数は異なっている可能性は高いでしょう。

(資料)
日本平動物園 (Jan.2002 - ホッキョクグマのジャック)(Jun.2007 - ホッキョクグマのピンキー) (Feb.2011 - 42年間を振り返って)
静岡市動物園協会 (Zoo静岡 60/2006)
時事通信 (国内最高齢で死亡したホッキョクグマの「ピンキー」)

(過去関連投稿)
ピョートル(ロッシー)再考 ~ ”Nur wer die Sehnsucht kennt, Weiß, was ich leide!”
ヴァニラ、その自意識のない自然体のホッキョクグマの神秘性 ~ " l'orsetta polare misteriosa"



by polarbearmaniac | 2020-09-30 01:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類

最新の記事

........and so..
at 2023-03-27 06:00
モスクワ動物園のディクソン(..
at 2023-03-26 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-25 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2023-03-24 02:00
鹿児島・平川動物公園でライト..
at 2023-03-23 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-22 03:00
名古屋・東山動植物園でフブキ..
at 2023-03-21 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-20 02:00
モスクワ動物園のディクソン ..
at 2023-03-18 22:20
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2023-03-18 03:00

以前の記事

2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索