街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
和歌山県・白浜町 アドベンチャーワールドの苦闘の繫殖記録 ~ 理解の彼方にあるホッキョクグマ繁殖

AWにて最初にホッキョクグマの飼育が始まったのは1978年だったようです。この時に導入されたホッキョクグマを紹介しますと、まず雄(オス)のネボスケ (Nebosuke #684 1977~2001)です。彼についてはすでに「大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期での早世個体の多さ」という投稿でご紹介していました。彼は天王寺動物園で1998年11月25日に誕生したユキスケの父親です。このネボスケは天王寺動物園に来園するずっと以前の1978年4月にAWに入園し、1983年7月までAWで暮らしています。続いて雄(オス)のジュン (Tarou #1246 1976~2003) も1978年4月にAWに入園するのですが、彼は「旭川・旭山動物園の苦闘の繁殖記録(1) ~ 日本最初のホッキョクグマ繁殖成功、そして息詰まるドラマの展開」という投稿でご紹介していました通り旭山動物園の生まれで、日本で2番目に繁殖に成功して誕生した個体です。血統台帳上では「タロウ (Tarou)」という名前になっています。彼は1993年2月に東北サファリパークに移動するまでAWで暮らしています。そして3頭目は野生出身の雌(メス)のドン (Don #1249 1977~2003) です。彼女も1978年4月にAWに入園していますが、やはり1993年2月に東北サファリパークに移動するまでAWで暮らしています。その他、野生出身の雌(メス)のマリ (Mari #1233 1968~1987)という個体が1985年12月に熊本市動植物園からAWに来園し、彼女の死の1987年12月までAWで飼育された記録も残っています。こうした4頭のホッキョクグマたちがAWで暮らしていた時代には、繁殖に関する記録はロストック動物園の資料には存在していません。
さて。次の世代こそが重要です。1993年4月9日にAWに来園したのが1991年12月9日にスウェーデンのコルモルデン (Kolmården) 動物園で三つ子の一頭として誕生した雄(オス)のアークティク (Arctic #851 1991~2014) です。これについてはすでに「浜松市動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 惜しまれるジェイソン(Jason) とバフィン(Baffin) のペアの挑戦結果」という投稿で述べています。そして彼のパートナーとしてやはり1993年4月9日にAWに来園したのが雌(メス)のオホト (Ohoto #1326 1991~ ) でした。彼女はイギリス・スコットランドのエディンバラ動物園で1991年11月15日に誕生しています。彼女の母親は非常に有名なメルセデス(マーセディス)(Mercedes #633 1980~2011) です。
エディンバラ動物園での故メルセデス(マーセディス)
彼女に関しては「メルセデス (1980 – 2011)、その生涯の軌跡」という投稿、及びその投稿の下の「過去関連投稿」を御参照下さい。オホトの父親はパトゥ (Patu #179 1976~1996) というのですが、彼は以前に御紹介したアモス (Amos #645)とモサ (Mosa #187) の息子です。つまりオホトと豊橋のキャンディは、共に祖母がモサということになりまから従姉妹同士の関係であるというわけです。「ロンドン動物園での飼育最後のホッキョクグマ、ピパラクの異国での悲運の死とキャンディの祖母モサの姿」、及び「ロシア国立映像記録保管所の映像から(2)~ 「二頭の赤ちゃんの冒険」は豊橋のキャンディの祖父の姿か?」という投稿を御参照下さい。
ロストック動物園はアークティク (Arctic #851 1991~2014) とオホト (Ohoto #1326 1991~ ) との間の繁殖に関して以下のように記録しています。あくまでロストック動物園の記録です。
① 2000年2月3日 2頭誕生 性別はMと? 同日死亡
?は同日死亡 Mは5月14日死亡
② 2000年10月12,13日 2頭誕生 性別不明 共に同日死亡
③ 2002年1月11,13日 2頭誕生 性別はMM 共に同日死亡
④ 2005年3月25日 2頭誕生 性別はMM 同日死亡
1頭は3月27日死亡、1頭は4月4日死亡
⑤ 2009年10月13日 1頭誕生 性別はF ミライ(#3017)
⑥ 2013年11月21日 1頭誕生 性別はM "ライト"(#3314)
このロストック動物園の記録はいささか危うい部分を含んでいます。個別に見ていみましょう。まず①2000年2月の双子出産ですが、1頭は3ヶ月以上生存したことになっています。②2000年10月の出産は前回の出産から8か月ほどしか経過せずにまた出産したことになっていますが、このことは①において3ヶ月以上生存した個体は人工哺育された個体であることを示すことになります。③の2002年の出産ですが、2頭の出産日が2日間離れていることは非常に奇妙です。⑥2103年11月の出産ですが、実はこれは双子の出産ではなかったかを疑わせる点が記録上に存在しています。ロストック動物園はこの2013年誕生個体について二つの個体番号を付与しているからです。一つは#3314 であり、もう一つは#3333 です。2014年に発行された前年版の血統台帳では生存している⑥2013年誕生個体の血統番号を#3333としているにもかかわらず、最近になってこの#3333を欠番としてしまい(これは極めて異例です)、そして生存個体を#3314 としてしまっているのです。つまり⑥2013年誕生個体は実は2頭だったのではないかという疑問が湧いてきます。全体的に見ますとオホトの出産日は大きくばらけていますし、2頭を二日間離れて出産したことになっていたりなど不自然さの感じられる記録です。このAWにおいては一般的にはあまり考えていない方法によってホッキョクグマの繫殖がなされているという感じがロストック動物園の記録を見ただけでも感じられてきます。それは、ロストック動物園の情報に単純な誤りがあるといったレベルの話ではなく、このような不自然さを生じさせている不気味な「何物か」が存在しているだろうということです。
ここで⑤ 2009年10月13日誕生個体、つまり人工哺育されたミライ (Mirai #3017 2009~2014) の姿を再度見てみましょう。彼女は2014年5月14日に4歳半で亡くなっています。
次に⑥2013年誕生個体の姿を見てみましょう。彼の名前は「ライト」ということでファンを中心にに浸透していますが、血統台帳上では現在も登録名のないままです。ですから彼の名前の綴りが "Light" なのか "Right" なのか "Wright" なのか "Lite" なのか "Rite" なのかは、わからないままです。
私が最後にAWに行ったのはミライが誕生からそれほど多くの日数の経過していないにもかかわらず一般公開された、その初日でした。保育器のようなものに入れられていました。そのような時期にホッキョクグマの赤ちゃんをああいった形で一般公開した施設の例を、私は世界の文明国ではただの一つも知りません。グロテスク以外の何物をも感じませんでした。ミライはそういった形で公開され続けた過程の中で、光を含めて視覚情報などの外部情報を過多に脳に受け入れたでしょう。一般的にも、このAWから公開されるホッキョクグマの映像は、私にはどれも違和感の残る映像ばかりです。いや、そればかりではありません。ミライの不思議な亡くなり方も私にはよくわからない点が多いです。このAWにおけるホッキョクグマ飼育に関することの、ほとんど全てについて私には理解が困難です。そもそも、理解する必要も全く感じないということです。これはあくまでも私の個人的見解です。
雄(オス)のアークティク (Arctic #851 1991~2014) は2014年4月18日に亡くなっています。アークティクにかわってオホトのパートナーとしてAWに出張したのは大阪・天王寺動物園のゴーゴ (Gogo #1773 2004~ )でした。ロストック動物園の記録にはゴーゴとオホトとの間での繁殖の記録は存在していません。ゴーゴは2018年12月3日に天王寺動物園に帰還しています。
AWにおけるホッキョクグマ繁殖に暗してロストック動物園の記録では、誕生したのが合計10頭、成育したのは(生後半年以上生存したのは)合計2頭ということになります。
(過去関連投稿)
(*故ミライ関連)
和歌山・白浜、アドベンチャーワールドのミライが急死
和歌山・白浜、アドベンチャーワールドのミライの死の状況から死因を憶測する
(*"ライト” 関連)
白浜のアドベンチャーワールドでホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ "La fin justifie les moyens ?"
白浜のアドベンチャーワールドで誕生の赤ちゃんの生後5日目の映像が公開
白浜のアドベンチャーワールドで誕生の赤ちゃんの一般公開開始の日の映像
白浜のアドベンチャーワールドで誕生の赤ちゃんの生後2週間目の映像
白浜のアドベンチャーワールドで誕生の赤ちゃんの最近(生後一か月前後)の映像が公開
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白浜のアドベンチャーワールドで誕生の赤ちゃんの最近(生後二か月経過)の映像が公開
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白浜のアドベンチャーワールドで誕生の雄の赤ちゃん、初めての戸外散歩を行う
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| 2020-10-01 00:30
| Polarbearology
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