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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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兵庫県・宝塚ファミリーランドの苦闘の繫殖記録 ~ 悲劇のホッキョクグマ、オリーヴ

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オリーヴ (Olive the Polar Bear #1251 1977~2004)

兵庫県・宝塚市にあった宝塚ファミリーランドは2003年8月に営業を終了していますが、かつてここでホッキョクグマが飼育されていたことを知る関西の方は、まだまだいらっしゃるだろうと思います。今回はこの宝塚ファミリーランド (以下、"TFL" と略記します)で飼育されていたホッキョクグマと、その繁殖への試みを世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理するドイツのロストック動物園に残されている記録によって辿ってみたいと思います。

ロストック動物園の記録によれば、この TFL で飼育されていたホッキョクグマは3頭だけであることが読み取れるのですが、実際はもっと存在していた可能性はあると思いますが記録上現れない個体をあれこれ言ってもしょうがありませんので、まずこの3頭について述べておきます。まず、雌(メス)のユキ (Yuki #1235 1969~1989) です。彼女は飼育下の生まれである可能性が記録では示されていますが、仮にそうだったとしてもいったいどこの動物園で生まれたかについては不明となっています。彼女は1970年4月19日に TFL に入園し(大阪万博の開催されていた時期ですね)、1989年9月8日にそこで亡くなっています。次は雄(オス)のネボスケ (Nebosuke #684 1977~2001) です。彼は1978年4月から1983年7月まで白浜の AW で飼育され、1983年7月13日に TFL に入園しています。その後に彼は1995年11月1日に大阪の天王寺動物園に移動しています。彼はそこで繁殖の成功に寄与できたわけですが、それについては「大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期・若年期での早世個体の多さ」という投稿で述べた通りです。

兵庫県・宝塚ファミリーランドの苦闘の繫殖記録 ~ 悲劇のホッキョクグマ、オリーヴ_a0151913_02161385.jpg
ネボスケ (Nebosuke the Polar Bear #684 1977~2001)

このネボスケは TFL で雌(メス)の個体とペアを組んで繁殖への試みが行われています。ロストック動物園の記録では、その雌(メス)の個体については「不明」であるとしているのですが、常識的に考えればユキ (#1235) だっただろうと思います。このネボスケ (#684) と、おそらくユキ (#1235) だったのではないかと考えられる雌(メス)の個体との間での繁殖について以下の記録が残されています。

① 1986年2月4日 1頭誕生 性別は不明  2月6日に死亡

大阪の天王寺動物園では当時繁殖を担っていた旭山動物園生まれの雄(オス)のショウ (ユキオ) (Yukio #206 1979~1995) が1995年3月25日に亡くなってしまったため、彼に代わる雄(オス)の個体として TFL のネボスケ (#684) に白羽の矢を立て、その結果としてネボスケは1995年11月1日に天王寺動物園に移動するわけです。このあたりの事情については天王寺動物園の情報誌「なきごえ Vol.42-7」に書かれています。ちょっと話が外れるのですが、その記事を書いていらっしゃる当時の天王寺動物園の御担当者の方は、「雌のユキコは1979年11月19日、米国タルサ動物園生まれ」と述べていらっしゃるのですが、これは資料的には 99.9% 成立しません。その理由については「大阪・天王寺動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 残念な幼年期・若年期での早世個体の多さ」という投稿の記述を追加・補強して述べておきました。その日にタルサ動物園で誕生した個体(双子)は確かに存在しています。しかしその個体のその後の移動先や死亡地は全て判明しており、欧州側とアメリカ側の両方が別個に独自で作成した資料でもそれらの内容が一致しているのです。そしてそれは大阪ではないということです。

さて、TFL で飼育された個体の三頭目についてです。それは雌(メス)のオリーヴ (Olive #1251 1977~2004) です。彼女は1982年から1995年まで浜松市動物園で飼育されていました。その後の1995年11月23日に彼女は TFL に入園しています。これについては「浜松市動物園の苦闘の繁殖記録 ~ 惜しまれるジェイソン(Jason) とバフィン(Baffin) のペアの挑戦結果」という投稿で述べています。当時はもう彼女のパートナーは死亡しており、浜松市動物園は次なる若いペア(つまりジェイソンとバフィンですが)の導入を行うに際してオリーブを他園に移動させてしまったわけです。TFL は当時はたった一頭で飼育していたネボスケを大阪に出すことになったため、その代わりとしてオリーヴを浜松から受け入れるということになったことは想像に難くないことです。やがて宝塚ファミリーランドが営業を終了するにあたって、今度はこのオリーヴを受け入れてくれる動物園を見つけるのは容易ではなかったようです。彼女は間もなく26歳にもなろうという若さの遠のいたホッキョクグマだったためか、最後まで引き取り先の決まらない動物となったようです。しかし横浜のズーラシアが彼女を引き取ることになり、彼女は2003年7月14日にズーラシアに入園した記録が残っています。しかし彼女はそのズーラシアで翌年2004年の8月20日に急死しています。彼女の死の原因については、すべてその責任はズーラシアにあったということは、一般的に知られている話ですので、これ以上は述べません。

このオリーヴはロシア出身の個体だという情報があります。ロストック動物園の記録では彼女が1977年から1982年の浜松市動物園の入園まで、いったいどこの動物園で飼育されていたのか示す記録が欠けているのです。私は長い時間かけて1976~1978年にロシアの動物園で誕生した個体のうち、今度は逆に1982年以降の記録が欠けている個体を丹念に探してみたのですが発見できませんでした。ということは、彼女はロシアとはいっても飼育下ではなく野生出身個体ではないかという推測が一応は成り立つように思いますが、しかしオリーヴの「正体」はわからないままだと言って差し支えないと思います。

「ホッキョクグマは必ず同じような年齢の雄(オス)と雌(メス)をペアとして飼育・展示し、片方が死んだ場合には、残った個体はさっさと移動させ、また新しい若いペアを導入する....」こういった認識で行われていたのが日本のホッキョクグマ界なのです。要するに動物たちの存在を単なる消費物としてしか見ない動物園とファン、これが現実だったというわけです。現在もホッキョクグマの移動について「嫁入り」などという言語的センスの一かけらもない表現を行うメディアやその界隈の人々が存在しています。嘆かわしいことです。

ということで、ロストック動物園の記録によりますと、宝塚ファミリーランドで誕生した個体は合計1頭、成育した個体はなかったということになります。

(資料)

(過去関連投稿)



by polarbearmaniac | 2020-10-08 02:00 | Polarbearology

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