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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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兵庫県西宮市・甲子園阪神パークの苦闘の繁殖記録 ~ 記憶と歴史の彼方のホッキョクグマたち

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甲子園阪神パークのホッキョクグマペア (1970年) 
Image:K.Kitamura

兵庫県の西宮市に今から17年前の2003年まで存在していた甲子園阪神パーク (Koshien Hanshin Park) は私のように関東の人間には馴染みのなかった場所ですが、かつてこの施設の一部には動物園があってホッキョクグマも飼育されていました。今回はこの甲子園阪神パーク(以下 "HKP" と略記します)におけるホッキョクグアたちのことを、世界の飼育下のホッキョクグマの血統情報を管理しているロストック動物園の資料から記録を辿ってみることにします。

HKP がホッキョクグマを導入したのは1957年のことだったようです。その年の10月30日に来園した雄(オス)の個体 (#1218 1956~1985?) ですが、飼育下の生まれであった可能性はあるものの現実はやはり野生出身だったと考えてよいでしょう。そして同じ日に雌(メス)の個体 (#1283 1956~1971) もHKP に入園した記録が残っています。彼女については旧ソ連(ロシア)で捕獲された野生出身個体であることが記録上明示されています。このホッキョクグマのペアの1970年の姿を映した極めて貴重な映像がありますので下に御紹介しておきましょう。映像開始後29秒あたりからです。


この雄(オス)の個体 (#1218) と雌(メス)の個体 (#1283) との間での繁殖の試みについてロストック動物園は以下の記録を残しています。

① 1970年12月7日 1頭誕生 (#1268)  性別はF 12月10日死亡

このペアはこの時は共に14歳だったわけです。上でご紹介した映像は1970年に撮影されたものだそうですから、ちょうどその年の12月に雌(メス)の個体 (#1283) は出産があったということになります。

さて、1970年12月に出産があった雌(メス)の個体 (#1283) ですが、大変残念なことに翌年1971年の7月31日に14歳で死亡してしまいます。その後ですが、雄(オス)の個体は一頭で飼育されたようです。別の個体が HKP に入園した記録がありません。その後の雄(オス)の個体 (#1218) ですが、1985年2月20日までは確実に HKP で飼育されていた記録が残っているのですが、2月21日に動物商に所有権が移転した記録があります。その後についてはロストック動物園の記録では「消息不明」となっています。1985年2月といえばその雄(オス)の個体は28歳になっていましたから、その年齢のホッキョクグマを受け入れてくれる動物園は多分なかっただろうと思います。ですから所有権は動物商に移転していたとしても引き続き HKP で飼育されていただろうというのが私の推測です。ただし、その後いつ亡くなったのかは推測も難しいですね。

HKP で飼育されていたホッキョクグマはこの二頭だけでした。現在においては誰にも語られることのないホッキョクグマたちです。せめてその記録だけでも残しておいてやりたいと思います。ロストック動物園の記録をまとめますと、甲子園阪神パークで誕生したホッキョクグマは1頭、成育した個体はいなかったということになります。


HKP は2003年3月31日にその歴史の幕を閉じています。今から17年前のことでした。

(過去関連投稿)




by polarbearmaniac | 2020-10-16 00:30 | Polarbearology

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