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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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大阪・天王寺動物園で誕生の赤ちゃん、第一関門を突破の可能性強まる ~「ささ鳴き (hummnig vocalization)」が確認される

大阪・天王寺動物園で誕生の赤ちゃん、第一関門を突破の可能性強まる ~「ささ鳴き (hummnig vocalization)」が確認される_a0151913_15160690.jpg

(C)Новосибирский зоопарк

大阪の天王寺動物園で11月25日にシルカから誕生した2頭の赤ちゃん(二頭目も11月25日に誕生したにかは定かではありませんが)についてロシアのノヴォシビルスク動物園も「私たちのシルカ ("Наша медведица Шилка") が日本の動物園で赤ちゃんを出産しました」という公式の発表を行いました。ノヴォシビルスク動物園もシルカの産んだ赤ちゃんの情報を今後もフォローしていくと述べています。

ノヴォシビルスクにお住まいのファンの方々も今回のニュースには大喜びしている様子が facebook(ノヴォシビルスクのファンの方々が管理しているシルカ自身のアカウントですが)などで非常によく伝わってきます。そしてこのニュースは地元メディアも報道し始めています。こういった事態となって私は少々心配になってきたわけですが、それは当初の大阪市の公式発表の内容がホッキョクグマの赤ちゃん誕生の発表にしては「ツボを外した」ものであったからです。授乳が確認されているかどうかの記述が全くなく、発表としては時間的にフライング気味のような気がしました。「この時点で言えることは二頭の赤ちゃんの生後XX日までの生存率はXX%である」といったことを前回の投稿でよほど書こうかとも思ったのですが、非常に喜んでいるノヴォシビルスクの方々の様子を見ていると、さすがに私はそれを書けませんでした(ドイツの動物園などはこういった「生存率( or 死亡率)」を平然と述べます)。最大の第一関門が目前に存在していると書くのが精一杯でした。さてこうなると天王寺動物園の飼育員さんがこの授乳の確認の有無についてすぐにでもフォローする情報を発信するのを期待するしかないとも思っていました。

そして本日11月28日にその期待通りに飼育員さんが公式ブログに記事をアップしました。しかも「授乳の確認の有無」という一点にフォーカスした内容の投稿でした。的を射た非常に素晴らしい情報発信だと思います。できているという趣旨の内容です。この「ささ鳴き (humming vocalization)」についても音声を公開しています。


この「ささ鳴き(humming vocalization)」についてAZA の「ホッキョクグマ飼育マニュアル (POLAR BEAR CARE MANUAL)」(pdf) では次のように述べています。

- The humming vocalization is a good indicator that the cubs are being cared for appropriately.
(ささ鳴きは赤ちゃんたちが適切にケアされていることを良く示すものである。)

ということで、赤ちゃんたちは誕生後の最初にして最大の関門をほぼ突破できそうだということは言えそうです。ただし100% とは言えません。これについては「デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で死亡した赤ちゃんの検死結果出る ~「授乳音 ≠ 授乳」」という投稿を御参照下さい。ちなみに前回の天王寺動物園でのバフィンの出産の際の時のことを「大阪・天王寺動物園がバフィンお母さんの赤ちゃんへの授乳時の音声を公開 ~ 第一関門突破の可能性強まる」という投稿でご参照下さい。

やはり「カザン血統」というのはたいしたものです。その血統で難関を切り開いているといった感じすらしてきます。さすがにシルカはディクサ、アンデルマ、ウスラーダの血を受け継ぐホッキョクグマだと思います。 ここでゲルダとシルカの2014年3月における一般公開開始の日の映像を振り返ってみましょう。初産にもかかわらず母親であるゲルダのこの自信というものはどこから生まれてくるのでしょうか。凄いと思います。


それから最後に一つ、飼育員さんは「もし飲めていない場合のタイムリミットは生後48時間と言われているのですが」と述べているのですが、一般的には生後72時間です。前掲のAZAの公式な「ホッキョクグマ飼育マニュアル (POLAR BEAR CARE MANUAL)」(pdf) の p.51 には以下の記述があります。

- The female and cubs should not be disturbed for a period of at least 72 hours before offering food.

この記述は、仮に人工哺育に切り替えざるを得ない場合には生後72時間がリミットである、つまり授乳が不能な場合に外部からいかに赤ちゃんに栄養を与えるかといった次のステップ(つまり人工哺育)を決断するかというコンテクストで述べられているものです。つまりこれが、「生後72時間の関門」と呼ばれているものの根拠です。まあしかし、これを多少厳しく考えて生後48時間と考えてもそう大差はないと思います。

(資料)
天王寺動物園スタッフブログ (Nov.28 2020 - イッちゃん子育て中)
Новосибирский зоопарк (Nov.27 2020 - Яркая новость этого ноября)
Комсомольская правда (Nov.27 2020 - Шилка из новосибирского зоопарка родила двойню в Японии)
AZA - POLAR BEAR CARE MANUAL (pdf.)

大阪・天王寺動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 立ちはだかる生後72時間の最初にして最大の関門

by polarbearmaniac | 2020-11-28 17:00 | Polarbearology

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