
街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
| S | M | T | W | T | F | S |
| 1 | 2 | 3 | ||||
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
| 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
| 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
| 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のホッキョクグマ飼育・繁殖の歴史 ~ 謎多きソ連時代の実態
Image : "Живое богатство Украины"
Image: "Живое богатство Украины"
ウクライナという国はホッキョクグマの飼育に関しては過去の歴史について非常に謎の多い国です。キエフ動物園、ハリコフ動物園、オデッサ動物園はまさにそういう典型的な動物園ですが、ここ10年近く名前がよく挙がっているムィコラーイウ動物園 (Миколаївський зоопарк) についても同じようなことが言えます。しかし2017年12月に同園でスメタンカ (Сметанка) が誕生したのがきっかけでムィコラーイウ動物園におけるホッキョクグマ飼育の歴史が少しずつ明らかにされつつあります。ウクライナに限らず旧ソ連圏の動物園のホッキョクグマ飼育の歴史については資料的な裏付けをもってしっかりとまとめておきたいと考えています。資料としてはロストック動物園が収集した記録、及び地元のメディアの報道記録などを用いることとします。多分世界でこれを試みたホッキョクグマファンはまだいないと思います。
ムィコラーイウ動物園のホッキョクグマ飼育の歴史は大きく分けて以下の三期に分類できます。
(1)1956~1982年
(2)1987~2008年
(3)2014~
まず(1)、つまり第一期ですが、この時代に同園で飼育されていたのは雄(オス)のエルマク (#296 Ермак 1955~1982) と雌(メス)のベルカ (#297 Белка 1955~1982) のペアです。エルマクは野生孤児出身であり同園には1956年11月5日に来園した記録が残っています。またベルカも野生孤児出身で同じ日の1956年11月5日に来園した記録が残っています。この二頭はひょっとしたら双子兄妹だった可能性は残りますが、その明確な根拠を見出すことは資料的には困難です。
Photo(C)Архивный отдел Николаевского городского совета
このペアの間での繁殖記録は資料的には存在していないことになっていますが、1975年にソ連で制作された "БЕЛЫЙ МЕДВЕДЬ Айка, Документальный фильм” (「ホッキョクグマ・アイカ」 ~ ドキュメンタリフィルム)という映像作品で登場しているアイカはムィコラーイウ動物園で誕生して幼少期を人工哺育で育てられていますので、その両親がエルマク (#296 Ермак) とベルカ (#297 Белка) であったことは間違いありません。この件については「「悲劇のホッキョクグマ」アイカ (Айка) のウクライナ・ムィコラーイウ動物園時代の姿と彼女の両親の1970年代の姿」という投稿で詳しく述べています。このアイカは血統登録がなされておらず、したがって血統台帳上には存在していません。また、エルマク (#296 Ермак) とベルカ (#297 Белка) との間での繁殖の記録もロストック動物園の資料には全く見出せません。エルマクは1982年11月15日にムィコラーイウ動物園で亡くなった記録が残っています。またベルカについては1982年3月25日に同園で亡くなった記録があります。この二頭の姿については「ウクライナ・ムィコラーイウ動物園の昔日のエルマク (Ермак 1955~1982) とベルカ (Белка 1955~1982) の姿」という投稿ですでに御紹介しています。この時代はウクライナがまだソ連に属していた時代ということもあってか、非常に謎の多い時代です。
続いて(2)、つまり第二期ですが、この時代に同園で飼育されていたのは雄(オス)のウンド (#947 Унд 1984~2007) と雌(メス)のベルカ (#1199 Белка ?~2008) です。第一期のベルカ (#297 Белка) と同じ名前で紛らわしいので便宜的にこの第二期のベルカ (#1199 Белка) を「ベルカ II」と呼んでおくことにします。このウンドはカザン市動物園であのディクサ (#731 Дикса/Diksa 1973~2006) から1984年11月21日に誕生しています。このウンドはエストニアのタリン動物園のヴァイダ (#948 Vaida 1984~2014) とは双子の関係にあります。この件については「ディクサ (Дикса/Diksa 1973~2006)、その謎に満ちたホッキョクグマの生涯(2)~ 「神の領域」に達したその偉大さ」という投稿を御参照下さい。このウンドについては一つ奇妙なことがあります。それは、彼の権利が1987年10月9日にカザン市動物園から第三者に譲渡されている記録が残っているのですが、その後の1992年3月21日になってようやくムィコラーイウ動物園がウンドの権利を取得しており、この1987年から1992年の間の期間に彼がどこにいたのかが全く不明である点です。すでに1987年の段階で彼がムィコラーイウ動物園に移動していたのか、それとも1992年になってようやく彼がカザン市動物園からムィコラーイウ動物園に移動してきたのか、これが全く不明なのです。ウンドは2007年10月22日にムィコラーイウ動物園で亡くなった記録が残っています。 次にベルカ II (#1199 Белка) ですが、彼女も非常に謎の多い個体です。ロストック動物園の資料では彼女は1975年頃に生まれた野生孤児個体という記録が見いだせるのですが、1985年に第三者が権利を取得し1992年3月21日になってムィコラーイウ動物園に入園したことになっているのですが、この記録の authenticity は非常に疑問があります。以下のどれかが正しいような気がします。
(a) ベルカ II は1975年に生まれ、実際には1985年にムィコラーイウ動物園に入園していた。
(b) ベルカ II の生年は実は1983年であり、1985年にムィコラーイウ動物園に入園した。
(C) ベルカ II の生年は実は1983年であり、1992年になってようやくムィコラーイウ動物園に入園した。
私の考えでは(b)の可能性が大きいと思っていますが、資料的にそれを裏付ける記録はありません。 ベルカ II は2008年1月21日にムィコラーイウ動物園で亡くなった記録が残っています。ウンドとベルカ II との間での繁殖の記録は全く残っていません。 さて、このウンド (#947 Унд 1984~2007) とベルカ II (#1199 Белка ?~2008) の姿を捉えた貴重な映像があります。これは2009年に放送された映像であり、用いられている動物たちの映像は1996~2008年の間に撮られた映像だそうです。映像開始後4分57秒あたりからホッキョクグマたちが登場しています。
続いて(3)、つまり第三期ですが、これは現在に続く時代です。まず雌(メス)のジフィルカ (#3101 Зефирка 2011~ ) です。
(2018年8月26日撮影 於 ムィコラーイウ動物園)
彼女は2011年11月27日にモスクワ動物園でシモーナが産んだ三つ子の一頭です。これについては「モスクワ動物園・シモーナ (Симона/Simona 1994~ ) の繁殖記録 ~ 高い出産・成育成功率を誇る世界屈指のホッキョクグマ」という投稿を御参照下さい。ジフィルカは2014年3月27日にモスクワ動物園からムィコラーイウ動物園に入園していますが、その様子は「ウクライナのムィコラーイウ動物園にモスクワ動物園のシモーナの三つ子の一頭の雌のジフィルカが到着」、及び「ウクライナ・ムィコラーイウ動物園にモスクワ動物園から到着したジフィルカを伝えるニュース映像が公開」という投稿を御参照下さい。
(2018年8月24日撮影 於 ムィコラーイウ動物園)
そして彼女のパートナーとして2015年1月19日にムィコラーイウ動物園に入園したのが雄(オス)のナヌク (#3309 Nanuk 2012~ ) です。彼は2012年11月24日にチェコのブルノ動物園でコーラ (Cora) から誕生しています。ナヌクのムィコラーイウ動物園への到着の様子は「チェコ・ブルノ動物園のナヌクが無事にウクライナのムィコラーイウ動物園に到着」という投稿を御参照下さい。このナヌクとジフィルカとの間の繁殖の記録は以下となります。
① 2017年12月 8日 1頭誕生 性別はF (#3426) 成育 スメタンカ
さて、このナヌクとジフィルカは共に祖父母がレニングラード動物園のメンシコフとウスラーダですので、いとこ同士のペアということになります。そういうことが理由でナヌクは今年2021年7月20日にベルギー・エワイユの原生サファリパークに移動してしまいました。これについては「ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のナヌク (Нанук) がベルギー・エワイユ (Aywaille) の原生サファリパークへ」という投稿で述べた通りです。今春にナヌクとジフィルカとの間での繁殖行為が確認されているそうですので今年の年末にジフィルカに出産があるかもしれません。また、スメタンカは中国に移動することが決まっています。ともかく、遅かれ早かれムィコラーイウ動物園はナヌクに代わる雄(オス)の個体を導入でねばならなくなるわけです。あるいはジフィルカも他園に移動して、再びムィコラーイウ動物園はホッキョクグマ不在の状態になる可能性もあります。飼育展示場が非常に古く、1956年の同園のホッキョクグマ飼育開始以降からほとんど変化の無い飼育展示場だからです。
(追加資料)
Новости N (Oct.5 2021 - Архивный отдел показал зоопарк, находившийся на месте Николаевской ОГА)
(過去関連投稿)
(*ディクサの生涯)
(*2018年8月 ムィコラーイウ動物園訪問記)
・ポーランドのワルシャワからウクライナのオデッサ (Odessa)、そしてムィコラーイウ (Mykolaiv) ヘ・ムィコラーイウ動物園へ ~ ジフィルカとの再会、そしてミコルカ(仮称)との出会い
・ナヌク (Lední medvěd Nanuk)、その姿と実像 ~ 偉大な雄(オス)の風格が備わるのはまだ先か?
・ジフィルカ (Белая медведица Зефирка)、天性の母親の資質
・ミコルカ (仮称 - Белый медвежонок Мыколка)、素顔とその性格
・ムィコラーイウ動物園訪問二日目 ~ ジフィルカ親子の示す愛情の絶妙な相互関係
・ムィコラーイウ動物園訪問三日目 ~ ジフィルカの自己犠牲的献身性の母親像
・ムィコラーイウ動物園訪問四日目 ~ 猛暑の中で頻繁に授乳を行うジフィルカの体力的強靭さ
・ムィコラーイウ動物園訪問五日目 ~ ジフィルカさん、ミコルカ(仮称)ちゃん、ナヌクさん、お元気で!
by polarbearmaniac
| 2021-08-01 03:00
| 飼育・繁殖記録
カテゴリ
全体Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類
最新の記事
| ........and so.. |
| at 2023-03-27 06:00 |
| モスクワ動物園のディクソン(.. |
| at 2023-03-26 03:00 |
| ロシア・ノヴォシビルスク動物.. |
| at 2023-03-25 02:00 |
| ロシア・西シベリア、ボリシェ.. |
| at 2023-03-24 02:00 |
| 鹿児島・平川動物公園でライト.. |
| at 2023-03-23 01:00 |
| ロシア・ノヴォシビルスク動物.. |
| at 2023-03-22 03:00 |
| 名古屋・東山動植物園でフブキ.. |
| at 2023-03-21 01:00 |
| ロシア・ノヴォシビルスク動物.. |
| at 2023-03-20 02:00 |
| モスクワ動物園のディクソン .. |
| at 2023-03-18 22:20 |
| ロシア・サンクトペテルブルク.. |
| at 2023-03-18 03:00 |
以前の記事
2023年 03月2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月








