街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
ロシア・ロストフ動物園のアイカ (Айка) が間もなく生後9ヶ月へ ~ 垣間見えるスラヴ圏でのホッキョクグマ事情
コメタ(Комета 左)とアイカ(Айка 右)
Photo(C) Ростовский-на-Дону зоопарк
昨年2020年11月26日にロシア南部のロストフ(・ナ・ドヌ)動物園でコメタ (Комета) から誕生した雌(メス)のアイカ (Айка)は間もなく生後9ヶ月になります。非常に順調に成育しているようです。一ヶ月ほど前の映像になってしまいますが、この親子の映像をまた一つご紹介しておきましょう。
ここのところ旧ソ連圏におけるホッキョクグマ飼育と繁殖の歴史を調査したものをまとめ、そして投稿してきているのですが、そこで気が付くのはこのロストフ動物園とウクライナのハリコフ動物園の過去の関係の密接さです。この二園はホッキョクグマの繁殖に成功した個体を互いに移動させたりしていたわけです。現在ではロストフ動物園のあるロシアとハリコフ動物園のあるウクライナは政治的には大きな対立関係にあります。しかし動物園界隈においてロシアとウクライナが対立しているという事象は見出せません。昨日の「ウクライナ・ハリコフ動物園のホッキョクグマ飼育・繁殖の歴史 ~ 「偉大なる母」セヴェリャンカと人知れず逝ったティムへの挽歌」という投稿の中でも述べたのですが、ハリコフ動物園では新装された新しい動物園がオープンはするものの現時点ではホッキョクグマ不在であり、その不在となっているホッキョクグマを調達しようという意欲と見通しが報じられています。これは私の推測ですが、おそらくハリコフ動物園はこのロストフ動物園のアイカを入手しようとロストフ動物園にすでに話を持ちかけたような気がします。しかし報道によるとロストフ動物園はこのアイカを将来どこに移動させるか(つまりどこに売却するかと同義)について自園で決めることはできず、ロシアにおけるホッキョクグマ繁殖計画の作成・調整者(簡単に言いかえればモスクワ動物園)の決定に委ねられるのだということを述べているそうです。つまりこのことは、モスクワ動物園はロストフ動物園がこのアイカを売却、又は交換によって他園に移動させることは許さないという強い意志を示すことによってロストフ動物園を牽制しているという事情が透けて見えてくるのです。おそらくモスクワ動物園はハリコフ動物園がロストフ動物園に接触した事実を掴んでいるのでしょう。

こうしたことによってロシアやウクライナの動物園界の隠された事情が推察できるわけです。現在ロシアの動物園で飼育されているホッキョクグマたちのなかでモスクワ動物園の意向とは無関係に他園に売却したり交換できる例外的な個体というのは、ノヴォシビルスク動物園で誕生した(or これからも誕生するであろう)個体に限られるということです。つまりこれを別の言い方で述べますと、ノヴォシビルスク動物園で誕生した(or 誕生するであろう)個体は繁殖計画から完全に外されている.....そういうことになるわけです。ウクライナのムィコラーイウ動物園で2017年12月に誕生したスメタンカ、彼女も繁殖計画から外された個体であるからこそ中国に行くことになるわけです。ノヴォシビルスク動物園のホッキョクグマペアとムィコラーイウ動物園のホッキョクグマペア(ナヌクは最近ベルギーに移動しましたが)との共通点......それは今更述べることもないでしょう。
実によく背景が見えてきます。こういったことで全て現実の説明ができるのです。
(資料)
Ростовский-на-Дону зоопарк (Jul.29 2021 - Новый выпуск программы «История Дона» на канале «ДОН 24»)
Панорама (Jun.27 2021 - В зоопарке Ростова долгожданной медведице Айке исполнилось 7 месяцев)
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| 2021-08-22 03:00
| Polarbearology
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