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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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札幌・円山動物園がカナダ・アシニボイン公園動物園とホッキョクグマ保全活動に関する覚書を締結 ~ 個体導入目的ならば無駄な努力

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ララとリラ (Lara the Polar Bear with Lilas, her cub)
(2015年8月23日撮影 於 円山動物園)

札幌市の円山動物園とカナダ・マニトバ州、ウィニペグのアシイボイン公園動物園 (Assiniboine Park Zoo )が11月24日付けでホッキョクグマの保全活動についての覚書を締結したことが報じられています。24日深夜の段階では札幌市のHPにも円山動物園のHPにも、この覚書の原文がアップされていない状態ですので、この内容の一次情報が欠けたままでこの協定について論じることは正しいことではありませんが、とりあえず思ったことを述べておきたいと思います。
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ララ (Lara the Polar Bear)
(2015年8月23日撮影 於 円山動物園)

まずこの件を最初に報じたのは11月23日付けの北海道新聞の記事であり、締結後にこれをニュース映像として24日に報じたのは北海道放送です。この二つを比較してみると興味深いことがわかります。北海道新聞の記事では、カナダから個体を導入したいという円山動物園の「本音」、「隠れた意図」が強調されていますが、北海道放送の報道では「気候変動対策の研究や環境教育などに、共同で取り組む」という表向きの話が前面に出た報道内容です。円山動物園の「カナダからの個体導入」の可能性について、この覚書の文面に何か触れられているかどうかは原文を見ないとわかりませんが、私の推測では触れられてはいないだろうと思います。「連携を深めることで、2024年度にも、同州 (注 - マニトバ州のこと)からのホッキョクグマの輸入合意につなげたい」というのは円山動物園が勝手にそう思っているだけのことであると考えるのが正しいような気がします。仮に同園が、現在アシニボイン公園動物園で飼育されている野生出身の若年個体の9頭 (m-5頭、f-4頭) のうちの雄(オス)の個体5頭のどれかを繁殖目的で札幌に導入しようとしても、それは難しいでしょう。同園の野生出身の雄(オス)の個体は繁殖を不可能とする医療措置がすでにほどこされていると私は聞いています。
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デナリ (Denali the Polar Bear)
(2015年8月24日撮影 於 円山動物園)

私は2016~7年にカナダの野生個体で孤児となった個体が保護されてアシニボイン公園動物園で飼育されるようになった経緯を全て漏れなく投稿しています。ところが、それ以来というもの、野生孤児個体の保護についてのカナダからのニュースは全く報じられなくなりました。報じられなくなったとはいえ、そういう孤児個体はそれ以来今まで何頭も発見されたのですが、保護せずに「自然に放置」という方針が採用されたため、野生孤児個体がアシニボイン公園動物園に来ることはなくなったわけです。こういった転換点となった時点の状況については「カナダ・マニトバ州チャーチルの当局者がホッキョクグマ孤児の保護方針の転換を主張 ~ 科学と倫理の相克」という投稿で御紹介していますので是非ともご参照下さい。またこういったカナダにおけるホッキョクグマの孤児個体の保護政策の歴史的経緯については Winnipeg Free Press が2020年10月に "Hope dims for orphaned polar bear cubs" という素晴らしい記事を掲載していますので、それも御参照下さい。 アシニボイン公園動物園もスペースの問題でもうこれ以上の野生孤児個体の受け入れが難しくなったことと、マニトバ州の住民の中でマニトバ州の野生のホッキョクグマは動物園に移すことはせず野生のままにしておくことそれ自体が「資源」であるという考え方が主流になっているからです。つまり、マニトバ州のホッキョクグマはたとえ孤児であったとしても動物園には移さないということが現在ではコンセンサスになっています。チャーチルの市長は以下のように語っています。

- "For cubs orphaned due to natural causes, it is our policy not to intervene. This policy is based on the ecological principle of letting nature take its course, with limited human involvement."

カナダ(少なくともマニトバ州)の野生出身のホッキョクグマについては、いかに円山動物園がアシニボイン公園動物園からの信頼を得たとしても、札幌に来る可能性は現在も将来も全くありません。2017~8年頃を境にしてカナダにおけるそれ以前の方針の転換がなされたわけです。ではカナダにおける飼育下生まれのホッキョクグマならばどうかといえば、それならば来日の可能性はあるかもしれません、しかしカナダにおける飼育下のホッキョクグマ繁殖に主導的な立場にあるのはトロント動物園です(だから私は以前から、円山動物園は組む相手を間違ってしまったと述べてきたわけです)。しかしそのトロント動物園も、近年は飼育下におけるホッキョクグマ繁殖を断念したように感じられます。ですから今更、話をトロント動物園にもっていっても無駄でしょう。

私は今回の円山動物園とアシニボイン公園動物園との覚書に関する北海道新聞のニュースについて facebook に以下のように書きました。

- Sapporo Maruyama Zoo is continuing their efforts to import polar bears from Canada for nothing. Let's laugh them away.

円山動物園の「本音」、「隠された意図」、「最終目的」が仮に本当にカナダからの個体導入にあるとするならば、それに関する限りでは無駄な努力を行っているように思われます。

(*追記)ニュース映像です。



(資料)
Winnipeg Free Press (Oct.29 2020 - Hope dims for orphaned polar bear cubs)

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by polarbearmaniac | 2021-11-25 03:00 | Polarbearology

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