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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園で治療を受ける重傷を負ったディクソンは「安楽死」させずに治療継続の方針が決定 ~ 「尊厳なき命」をどう評価するか?

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12日のディクソン Image: Московский зоопарк

ロシア極北のディクソン (Диксон) で銃弾によって重傷を負っていたのが発見され、治療のために6日にモスクワ動物園に移送された推定3歳の雄(オス)のホッキョクグマのディクソン (Диксон) のCTスキャンによる検査結果が予想以上に厳しい内容であったことは前回の投稿で述べています。12日に神経科医が派遣されてきて、ディクソンの回復可能性の最終的な判定の診断がなされる予定だったわけで、午後にそれが行われたようです。ロシアにおける野生のホッキョクグマを管轄する官庁である天然資源・環境省の自然管理監督局の責任者であるスヴェトラーナ・ラジオノヴァ氏はその結果について書いています。「モスクワ動物園と獣医師は、このホッキョクグマを安楽死させないと言っています。 これからも治療して飼育を続ける方針ということです。ディクソンのこれからの運命は、最もプロフェッショナルな獣医師や飼育の専門家の手に委ねられます。」と述べています。そして連邦政府に対し、動物園の獣医師やスタッフの動物に対する献身と愛情を賞賛するよう訴えています。「ノリリスクの専門家をはじめ、関係者の皆様、ご協力ありがとうございました。モスクワ動物園が助けを必要としているのなら、私をはじめ多くの人がきっと応えます。」と関係者に謝意を述べています。
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12日のディクソン Image: Московский зоопарк

ということでディクソンは「安楽死」を免れました。あとはモスクワ動物園がどうやってうまくディクソンの治療を行っていけるかが問題となるでしょう。彼のケガの内容が非常に多岐にわたり深刻である点を考えると、彼の今後の治療は相当にハードルは高いという感じがします。やはりロシアの動物園は「安楽死」という発想はほとんどないようです。私はもう10年以上もロシアの動物園に関する記事を追い続けていますが、そういった記事にも、そして動物園のHPのニュース情報にも公式のSNSのページにも「安楽死」といった文言が登場するのを読んだ記憶はほとんどありません。動物たちを「安楽死させる」という概念自体が非常に希薄なのがロシアの動物園、そしてロシアの社会ではないでしょうか。この点では日本の動物園に似ています。たとえ「安楽死」させていたとしても、そういう処置を採ったことをあえて言葉では言わない..., ロシアの動物園も日本の動物園もそういうことでしょうか。ここで「デンマーク・オールボー動物園のアウゴが約5メートル下の堀に転落、重傷を負い安楽死の処置にて死亡!」という投稿を見て下さい。ここでは「安楽死」という事実が写真と共にむき出しの状態で発信されています。欧州屈指の社会福祉の発達したデンマークという国の、これはまさに「安楽死」に対する意義を端的に言い現した例でしょう。デンマーク(そして欧州)では「安楽死」させることに「情」があるとされるのに対し、日本(そしておそらくロシアも)ではそうは考えられていないでしょう。日本では「生かし続けること」に「情」を見出すというのが事実でしょう。西欧では「尊厳」に最高の価値を置きますが、日本では「尊厳」の有無よりも「命の存在そのもの」に価値を置くということだと思います。しかしその一方でこれとは相反する形で日本では「生きて虜囚の辱を受けず」という考え方がかつてはありました。これなどは「尊厳なくば死を」という思想が背景にあったとも言えます。この問題は非常に厄介です。考え始めるときりがありません。

さて、ここで12日のディクソンの映像を御紹介しておきます。下をワンクリックして下さい。

モスクワ動物園で治療を受ける重傷を負ったディクソンは「安楽死」させずに治療継続の方針が決定 ~ 「尊厳なき命」をどう評価するか?_a0151913_23081008.jpg
ディクソンに対する抗生物質と鎮痛剤の投与は長期間続くことになるでしょう。そうなると内臓、特に肝臓に負担が強くかかってくることになります。私はディクソンに「安楽死」の処置が採られなかったことには率直に大いに喜んでいますが、しかしこれからの彼の健康状態については非常に心配しています。今回の措置についてはおそらく別の意見(つまり「安楽死」させたほうがよいという意見)があることは間違いなく、現時点では私はそういった別の意見に対しての反論は難しいことを認めざるを得ません。ただし私はディクソンに対しては「何とか救ってやりたい」という気持ちを強く持ちます。
モスクワ動物園で治療を受ける重傷を負ったディクソンは「安楽死」させずに治療継続の方針が決定 ~ 「尊厳なき命」をどう評価するか?_a0151913_02355401.jpg
12日のディクソン Image: Московский зоопарк

今回のディクソンの件についてまとめたTVニュースがありますのでご紹介しておきます。


(*追記)モスクワ動物園のアクーロヴァ園長は、非常に遅い時間になって12日にモスクワ動物園で行われた神経科医の診断の結果の具体的内容を明らかにしました。非常に悲しいことですが、もうホッキョクグマのディクソンは将来も歩くことはできないそうです。以下のようにアクーロヴァ園長は述べています。「このホッキョクグマの状態について報告を受けました。神経科医によると、ディクソンの問題は手術では解決できないそうです。脊椎の骨折、脊髄の挫傷、脊髄症......このようなケガのために、彼はもう二度と歩けないのです。理学療法と水泳が有効かもしれません。ディクソンのリハビリテーションプログラムは、専門家が個別に設計する必要があります。また、リハビリテーションの専門家はペットの犬ではなくホッキョクグマのような大型の肉食獣を扱うのは初めてのことなので、これは斬新なことだと思います。次にどうするかは、これから考えていきます。私たちは、このホッキョクグマのために戦い続けます。」こうアクーロヴァ園長は述べています。

こういった神経科医の診断を受けてあとでも「このホッキョクグマは安楽死させず、治療を施します。」という決意を天然資源・環境省の自然管理監督局の責任者であるスヴェトラーナ・ラジオノヴァ氏に語ったということになるわけです。こうなるとモスクワ動物園は決して後に引くことはできないわけで、それこそ背水の陣でホッキョクグマのディクソンを救うことに懸命になると思われます。アクーロヴァ園長はまさに闘士となっています。しかしこういったことですと、やはり「安楽死」が正解であるということではないでしょうか。私には、このアクーロヴァ園長を筆頭としたロシア人の関係者の「闘争心」は、西側諸国のロシアへの制裁に対する反発を「このホッキョクグマを救う」という戦いの形をとって示しているとさえ思えてくるほどです。

(資料)
(*追加資料)

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by polarbearmaniac | 2022-09-13 01:00 | Polarbearology

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