街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 01月 13日 ( 1 )

アラスカで行われる赤外線を用いたホッキョクグマの巣穴の位置調査 ~ 資源開発の悪影響への対策

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航空機から赤外線映像で捉えられた巣穴から出るホッキョクグマの姿
Image:KTVA

世界の国でホッキョクグマ保護政策が最も厳格なのはノルウェーですが、それに続く国と言えばやはりアメリカ(合衆国)でしょう。アメリカといっても野生のホッキョクグマの生息地があるのはアラスカ州の北岸であり、そしてこのアラスカ州は同時に石油などの資源の埋蔵が多く資源開発の動きも活発であるものの、一方で行政 (内務省の魚類野生動物保護局 - U.S. Fish and Wildlife Service - FWS) や環境保護団体が推進しようとしてきたその地域に暮らすホッキョクグマたちの保護のとの間で長く緊張関係が存在し続けてきたわけでした。アラスカにおけるホッキョクグマ保護も問題については過去関連投稿を御参照下さい。

気候変動の影響でホッキョクグマの雌(メス)たちは出産のために入り込む巣穴を次第に陸の側に掘るという傾向が見られるそうで、そうなるとまさに資源開発の作業現場に近い場所に巣穴が作られることとなるわけです。アメリカの海洋哺乳類保護法 (Marine Mammal Protection Act) では人間による全ての(工業、商業、その他の企業)活動をホッキョクグマの巣穴のある場所の1マイル以内の場所で行うことを禁じています。さて、アラスカのメディアはアラスカ州で資源開発を行う企業のために、事前にホッキョクグマの巣穴がどこに存在しているかの調査を請け負う企業で働く科学者であるジャスチン・ブランク氏の仕事について報じています。ブランク氏の行っている方法は、毎年11月に航空機に赤外線カメラを装着してこの問題の地域の上空を飛び、そしてほんの少しの温度の違いが存在しているスポットを見つけ出すというやり方だそうです。仮にそういったスポットがあれば複数回その場所の上空を飛んでデータの確実性をチェックするという根気のある方法を用いているそうです。これによってホッキョクグマの巣穴のある場所を特定するということだそうです。それを報じるTVニュース映像をご覧下さい。以下をワンクリックすると映像の開始画面となります。
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魚類野生動物保護局 (FWS) はこの地域において活動している資源開発企業が法令を順守しているかを監視しており、そしてこの地域に暮らすホッキョクグマたちの生息状態を絶えず把握するようにはしているものの、巣穴についてはその具体的位置については見過ごしてしまうケースもあるそうで、ブランク氏の仕事はそれを補完する意味があるということになるわけです。仮にFWSがホッキョクグマの巣穴に関する情報を見逃してしまった場合に資源開発企業が採掘などの活動を開始したあとで付近に巣穴の存在が判明すれば、その企業は法令によってその場所における全ての活動の停止してサイトを閉鎖する義務が生じ、そうなると企業側の被る損失は多額のものとなるというリスクがあるわけです。ブランク氏の調査は金のかかるものですが、そういった資源開発企業としては事前にブランク氏が働いている調査会社にホッキョクグマの巣穴の位置調査を依頼しておくほうがトータルな観点で考えれば有利であるということのようです。資源開発企業にとっては事前調査会社に払う金は一種の「保険」のようなものだということになります。アメリカらしいシステムだと思います。ホッキョクグマ保護を推進するために、そのシステムの内側に企業化したシステムを取り込んでいくというのはアメリカらしいやり方だと思います。こういったやり方はカナダやロシアでは生まれにくいシステムでしょう。

(資料)
KTVA (Jan.11 2018 - See how scientists use infrared video to find polar bear dens)

(過去関連投稿)
アラスカにホッキョクグマ生息重要指定地区を設定へ
アラスカの油田でホッキョクグマの赤ちゃんが保護!
自然界でのホッキョクグマの巣穴産室 (maternity den) 内の親子を撮影した貴重な映像
アメリカ・アラスカの連邦地方裁判所がホッキョクグマ保護の「重要指定地区」の設定を無効と判断
オバマ米大統領がアラスカ北部に原生地域 (“Wilderness”) 指定の意向を表明 ~ ホッキョクグマ保護へ
アメリカの控訴裁判所がホッキョクグマ保護の「重要指定地区」への開発規制を無効とした下級審の決定を覆す
米トランプ次期政権とホッキョクグマ ~ 保護地域開発規制撤廃を求め連邦最高裁への裁量上訴の申立てへ
アメリカ連邦最高裁がホッキョクグマ保護の「重要指定地区」の無効を求めた州政府と業界の裁量上訴を棄却
by polarbearmaniac | 2018-01-13 00:30 | Polarbearology

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