街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 01月 18日 ( 2 )

南フランス・アンティーブ、マリンランドのホープがスウェーデンのオルサ・ロフユルシュパルク(動物園)へ

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フロッケとホープ Photo(C)Marineland

南フランス・アンティーブのマリンランドが発表したところによりますと同施設で飼育されている3歳の雌(メス)のホープがスウェーデンのオルサ・ロフユルシュパルク (Orsa Rovdjurspark) に今月にも移動することになったそうです。もちろんこれは欧州における繁殖計画 (EEP) におけるEAZAのコーディネーターによる調整のためです。スウェーデンのオルサ・グレンクリットといえばあのヴィルベアの暮らしている場所ですね。以前はベアパークといったのですが現在は隣接するグレンクリットを併合してオルサ・ロフユルシュパルク (Orsa Rovdjurspark) というそうです。単純にオルサ動物園といってもよいでしょう。



このホープはあのニュルンベルク動物園で人工哺育されたフロッケから2014年11月にマリンランドで誕生した個体で、人工哺育された雌(メス)が出産と育児に成功したという稀有の例だったわけです。もう一年早く移動することになっていてもおかしくなかったわけですが、果たしてこれがフロッケとラプスーチンとの間での繁殖を四年サイクルでやらせるために今年の移動になったのか、それともEAZAのコーディネーターがホープの移動先確保に苦心したために今年の移動になってしまったのかについては私は判断できませんが前者である可能性の方が幾分強いような気がします。つまりは母親と三年間一緒に暮らさせた方がその個体の将来の繁殖にとっては有利であるという考え方によってだろうということです。札幌のララは従来は二年サイクルで繁殖に挑戦してきましたが、これはララと彼女の子供は一年しか一緒に暮らせなかったことを意味しています。しかし欧米では三年サイクルの繁殖を採用していますので母親は子供と二年間を共に過ごします。しかしごく最近に至って欧州ではさらにこの期間を延ばして四年サイクルでの繁殖(つまり母親は子供と三年間を共に過ごす)を採用するようにまでなっているわけです。しかし一方で今回のホープのスウェーデンへの移動は後者が理由ではないかと考えることも十分可能である理由は過去に以下のような事件があったからです。かつてEAZAのコーディネーターはロッテルダム動物園のヴィックスの移動先として散々苦労したあげくやはりスウェーデン・オルサのベアパークを指定して実際にヴィックスはそこに移動したもののオルサのベアパークとEAZAのコーディネーターとの間でトラブルらしきものが生じてヴィックスはロッテルダム動物園に戻って来るといった奇怪な事件があったのです。



欧州はそれが意図的であるか結果的であるかは別として全体的にホッキョクグマの繁殖に三年サイクルどころか四年サイクルを採用するようになってきているわけで、これが果たして繁殖に関する新しい方針なのか、それとも移動先確保の問題なのかについても微妙な問題であるように思います。欧州域内のホッキョクグマの幼年・若年個体の集中プール基地システムが機能しなくなってきているということなのかもしれません。雌(メス)の幼年・若年個体の集中プール基地であるオランダのエメン動物園が新しい個体の受け入れに難色を示しているといった可能性は十分に有り得るのです。もう少し状況の推移を見守りたいと思います。



ともかくこれでフロッケとラスプーチンのペアの今年2018年の繁殖シーズンにおける繁殖挑戦が明らかになったということは間違いないわけです。

(資料)
Marineland (Dec.22 2017 - PROGRAMME EUROPÉEN D’ELEVAGE DES ESPÈCES MENACÉES: DÉPART DE HOPE POUR DE NOUVELLES AVENTURES EN JANVIER !)

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2018-01-18 10:00 | Polarbearology

ロシア極北・ウランゲリ島のホッキョクグマの未知の物への反応 ~ 雄(オス)は好奇心、雌(メス)は警戒心

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Photo(C)Ульяна Бабий/Институт проблем экологии и эволюции

ロシア北東部・チュクチ自治管区にあるウランゲリ島といえばホッキョクグマなどの生息地として近年は脚光を浴びつつあるものの一般旅行者が簡単に行けるような場所ではなく、まさに野生のホッキョクグマ観察の「奥座敷」ともいった場所になっています。
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このウランゲリ島は全体がロシア政府によって自然保護区 (Природный заповедник "Остров Врангеля") の指定を受けており、その自然保護のために管理官が常駐していると同時に北極圏に暮らす動物たちを研究している「生態・進化研究所 ("Институт проблем экологии и эволюции") 」の科学者たちも活動を行っています。その科学者がウランゲリ島において興味深い映像を撮影して公開していますのでご紹介しておきましょう。ホッキョクグマというのは見慣れないものに対しては好奇心が旺盛のようです。



この研究所の上級研究員の方によれば、このホッキョクグマは3~7歳の雄(オス)である可能性が強く、こういった年齢の雄(オス)のホッキョクグマは見慣れないものに対して好奇心が強い傾向にあるのだそうです。一方で雌(メス)のホッキョクグマはこういったものに対しては非常に警戒心が強いのだそうです。これは感覚的にも理解できる話です。

(資料)
Природный заповедник "Остров Врангеля" (Jan.15 2018 - Белые медведи отличаются большим любопытством) (Alexandr Gruzdev/Jan.7 2018 - Еще зарисовки из жизни заповедника "Остров Врангеля".)
Московский Комсомолец (Jan.17 2018 - Впервые собственное селфи сделал белый медведь)

(過去関連投稿)
ロシア「奥座敷・ウランゲリ島」へのホッキョクグマツアー研究
ドイツ・NDR制作の “Wildes Russland” と “Among the Polar Bears – Adventure in Russia’s arctic”
ドキュメンタリー作品 "Polar Bear Alcatraz"  ~ ロシア極北ウランゲリ島のホッキョクグマたち
ロシア極北・ウランゲリ島で顎に空缶が挟まって外れなくなったホッキョクグマが救助される
ロシア極北・ウランゲリ島に打ち上げられたクジラに集まってきた230頭ものホッキョクグマたち
ロシア人研究者の見たホッキョクグマの驚くべき実像 ~ 相互扶助精神に溢れ共同体を形成する彼らの姿
by polarbearmaniac | 2018-01-18 01:30 | Polarbearology

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