街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 01月 30日 ( 2 )

男鹿水族館がクルミの死因は肝腫瘍との見解を発表 ~ 「観念性」と「実体性」による視座

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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

男鹿水族館が先日1月28日に死亡が確認されたクルミについて、その死因は肝臓にできた腫瘍のためと考えられるとの見解を本日発表しました、毎日新聞によりますと29日に解剖が行われて判明したと報じています。そして同紙によれば治療は行われていたと報じています。

死因についてはなんとなく予想していたことではありました。ホッキョクグマといった大型動物は診断や検査のためには麻酔が必要であり非常に厄介です。 本ブログでは今まで何頭ものホッキョクグマの訃報を投稿してきましたが、死因が肝臓腫瘍だった例は非常に多いのです。投薬治療といってもその進行を若干遅くすることができるといった程度の効力しかないはずです。ホッキョクグマの肝臓腫瘍の治療に懸命に取り組んだ例としては「アメリカ・ワシントン州タコマのポイント・ディファイアンス動物園のグレイシャーが亡くなる」という投稿を御参照下さい。直近の例でこれが死因となったのはデンマーク・オールボー動物園のラルスがそうでした。その検査と診断については「・デンマーク・オールボー動物園のラルス逝く ~ 亡き息子クヌートの許に永遠に旅立つ」及び「デンマーク・オールボー動物園で故ラルスの安楽死を執行した獣医さんの回想 ~ "ラルスとの悲しい別れ"」を御参照下さい。日本の最近の例では平川動物公園のホクト白浜AWSのアークティク東山動物園のミリー徳山動物園のユキもこれが死因となったわけです。
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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

クルミがどのようなホッキョクグマであったのかの評価には、多くの方々には賛成していただけないとは思いますが、間違いなく多様性があるのです。「クルミの死は早過ぎた」という感じ方は、それが21歳という彼女の年齢に関することであるならば的を得た言い方でしょう。しかし私には彼女はやるべきことは全てやった後の死であったという感じを持っています。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの36歳での死やフランツ・シューベルトの31歳での死は年齢的にいえば若かったにせよ彼らはやるべきことは全てやり、そして彼らにはやり残した仕事はないといった感じを持ちます。私が生前のクルミに会った最後の日 (2014年1月25日) の投稿に私は彼女があたかも以下のように考えているように感じ、それを次のように表現しました。

「私はあななたち人間が切望していたように、ちゃんと赤ちゃんを産んで育児放棄もせず暗い場所で三か月も授乳を行い、そして立派に赤ちゃんと一緒に産室から出た。そしてちゃんと娘は独りで遊んで育っている。いったいこれ以上の何を私にせよと言うのか? 私は自由なホッキョクグマなのである。何をしようとそれは私の勝手である。」
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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

「彼女は子育て上手であった」という評価は少なくとも彼女の生き方の美学を感じ取り、そしてそれに共感し、そしてそれを認めたことが前提で初めてできる評価だろうと私には感じます。ですから彼女の生き方の美学に必ずしも共感することのできない者にとっては彼女を別の観点から見るということになります。アンデルマやシモーナやフギースやオリンカやララはある種の「観念性」を身にまとったホッキョクグマですが、ウスラーダやマレイシュカやフリーダムやゲルダは「実体性」によって支配されているホッキョクグマです。前者は絶対評価が可能ですが後者は相対評価によって把握すべきホッキョクグマです。クルミは後者に属しています。後者のホッキョクグマへの評価には他個体の比較によってのみなされるということなのです。ですから本来は彼女の生き方の美学といったような絶対評価の物差しのみによってあれこれ言うことは難しいはずなのです。「独自の美学」「他個体との比較」、そのどちらの点についても少なくとも私には同好の方々の大方とクルミの母親像についての共感を共有することは必ずしも容易ではないということです。ホッキョクグマという動物は一般に考えられているよりもそのハーソナリティを構成する要素は複雑であるというのが私の印象です。

再びここで、クルミの死に深く哀悼の意を表します。

(資料)
男鹿水族館 (Jan.30 2018 - 1月28日に死亡したホッキョクグマクルミについて)
毎日新聞 (Jan.30 2018 - ホッキョクグマ「クルミ」の死因、肝腫瘍と判明)
秋田魁新報 (Jan.30 2018 - クルミの死因、肝臓の腫瘍か 男鹿水族館が発表)

(過去関連投稿)
男鹿水族館のクルミの体調不良について考える ~ これ以上の繁殖への挑戦からはもう解放してやるべき
男鹿水族館のクルミが亡くなる ~ 貫いた独立自尊の美学
by polarbearmaniac | 2018-01-30 21:00 | Polarbearology

アメリカ・バッファロー動物園のルナに期待される繁殖の成功 ~ 人工哺育個体へのAZAの繁殖への対応

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ルナ (Luna the Polar Bear)  Photo(C)Buffalo Zoo

アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で飼育されているのが人工哺育で育てられた5歳の雌(メス)のルナとトレド動物園生まれの同じ5歳である雄(オス)のサカーリの二頭です。この二頭は昨年彼らがまだ4歳だった時にすでに同居を開始していましたので繁殖の試みへの初めての挑戦であったと理解してよいと考え、果たしてルナに出産があるかということについて小さな期待を抱いていましたがやはりまだ無理だったようです。人工哺育された雌(メス)で出産と育児に成功したのはドイツのニュルンベルク動物園で生まれたあのフロッケぐらいなもので他の人工哺育された雌(メス)が出産と育児の成功した例というのは記録上は見出せていません。明確な科学的根拠はないものの人工哺育された雌(メス)が朱産・育児に成功するということは非常に難しいと一般には理解されていますのでバッファロー動物園のルナがそれに成功すればフロッケに続く個体になるわけです。フロッケもルナもパートナーのは恵まれていますので、その点には共通点があるわけです。
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サカーリ (Sakari the Polar Bear)  Photo(C)Baffalo Zoo

バッファロー動物園において今年はまだルナとサカーリの同居は開始になっていないようです。 来園者の減る冬期のシーズンにおける集客のためでしょうか、バッファロー動物園は2月一杯を「ホッキョクグマの日々 (Polar Bear Days)」と銘打って同園のスター的存在であるルナに会いに来てほしいというキャンペーンを行っています。それを報じる地元のTVニュースの映像を二つご紹介しておきます。登場しているのはいずれもルナです。
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アメリカは国別では飼育下のホッキョクグマの頭数が最も多いわけですが、ホッキョクグマの繁殖はあまりうまくいっていません。そのことに対する危機感は相当なもので、AZAの繁殖計画(SSP)の繫殖推進委員会はトレド動物園のランディ・メイヤーソンさんの強いリーダーシップのもとで一昨年秋から昨年の春にかけて大きな規模でのホッキョクグマの繁殖のための個体再配置が行われました。サカーリはその再配置計画によってトレド動物園からヘンリー・ヴィラス動物園を経てバッファロー動物園に来園しルナのパートナーとなることになったのです。現在ソルトレイクシティのホーグル動物園で飼育されている2歳の雌(メス)のノーラも人工哺育された個体ですがこのノーラについても将来は繁殖の成功に大いに期待してトレド動物園生まれでノーラと同じ年齢のホープと同居させて「適応化 (socialization)」を行っているのもそういった理由からなのです。ルナにせよノーラにせよ、なんとか繁殖に成功して欲しいといったAZAの繫殖推進委員会の強い願いがあるわけで彼女たちの今後を追いかけていくことで飼育下のホッキョクグマを集団として維持させていこうというAZAの努力の軌跡を注目していきたいと思っています。

(資料)
WGRZ-TV (Jan.27 2018 - Buffalo Zoo presents Polar Bear Days) (Jan.27 2018 - Polar Bear Days continue through February at Buffalo Zoo)

(過去関連投稿)
アメリカ・バッファロー動物園のルナとサカーリの若いペアへの期待 ~ 雌の人工哺育個体の繁殖への挑戦
アメリカ・バッファロー動物園でルナとサカーリとの同居開始 ~ 繁殖可能年齢到達と同時に挑戦させる考え方
(*ルナ関連)
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ その姿が突然公開
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃんの追加映像 ~ ララの子供たちの従妹であるルナ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の人工哺育の赤ちゃんのルナが初めて戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナの近況を伝えるTVニュース映像
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが雪の舞う戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが遂に一般公開へ
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園の赤ちゃんの「ルナ」が仮称から正式の名前となることが決定
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナの近況 ~ 人間の視線への意識と興味
アメリカ ・ ニューヨーク州、バッファロー動物園で遂にルナとカリーが初顔合わせ
アメリカ ・ バッファロー動物園でルナとカリーの正式な同居展示が開始 ~ カリーの今後について
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園でのルナとカリーの同居は順調に推移
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園のルナとカリーの近況 ~ 展示需要と個体数のアンバランス
アメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園でルナとカリーの一歳のお誕生会が開催される
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナとカリーの近況 ~ 新飼育展示場は2015年秋に完成
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナが約4.3メートル下の堀に転落、救出後に精密検査へ
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナの精密検査の結果が発表 ~ 左後脚二か所の骨折
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園で堀に転落し骨折したルナの治療が長期化へアメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園が転落事故で骨折し長期療養中のルナの現在の様子を公開
アメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園の新施設”Arctic Edge”に長期治療中だったルナが元気に登場
アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で人工哺育されたルナが三歳となる
(*サカーリ関連)
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園で新展示場 ”The Arctic Passage”がオープン
アメリカ・ウィスコンシン州、ヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリが繁殖のために他園移動が決定
アメリカ・ウィスコンシン州マディソン、ヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリのお別れ会が開催される
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリがバッファロー動物園に無事到着
アメリカ・バッファロー動物園に来園したサカーリが検疫期間を終了し新年より一般公開へ
by polarbearmaniac | 2018-01-30 01:00 | Polarbearology

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