街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 02月 06日 ( 1 )

アメリカ ・アラスカ州北部の寒村カクトヴィクでブームとなるホッキョクグマ観光 ~ 温暖化の厄災の皮肉

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Image(C)ABC

アメリカ極北のボーフォート海に面したアラスカ州北部の人口が240人の寒村カクトヴィク(Kaktovik) とホッキョクグマについては以前に二回ほど投稿しています。近年になって海氷の形成の時期が遅くなると同時に氷解時期も早くなっており、このエリアに暮らすホッキョクグマたちにとっては狩のシーズンが非常に短くなってきています。そのために彼らは夏から秋にかけてこのカクトヴィクの村付近で過ごす期間が多くなってきて村民たちは緊張を強いられた生活を送るようになっているそうです。ところがこういった状況がホッキョクグマを見たいと言う観光客を急送に引きつけるようになっており、2010年にはこういった観光客は年間たった50人だったものの2016年には2500人となっているそうです。
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カクトヴィクの村は外界とは小型のプロペラ機による空路のみでフェアバンクスの町と結ばれており物資の輸送もその小型機で行われているそうなのですが観光客が押し寄せるようになってからというものは空の便は満席となることが多く重量の関係でそういった輸送物資が積み込めないこともよくあり村には物資の不足が生じて価格が上昇していることが村民を悩ませているそうです。また、村民が病気になって近くの街であるフェアバンクスの病院に行こうにも小型機が予約で満席となるためにすぐには行けないといった困った状況が生じているそうです。アメリカABCの朝のニュースショーでキャスターがこのカクトヴィクの村を訪問したニュース映像がありますので下でご覧ください。



そしてこの下はABCのニュース映像です。なかなか壮大な光景です。



カクトヴィクにやってくる観光客はカナダのチャーチルに行くのはもう古い (“Churchill is so passé”) と、もっと新鮮な場所に行きたいと感じてカクトヴィクにやってくる人々が多いそうです。チャーチルでは観光薬はツンドラバギーという車両に50名が乗り込むわけですがカクトヴィクの場合は少人数でボートに乗り込んでホッキョクグマたちとの遭遇を楽しめるといったことだそうです。そしてホッキョクグマに遭遇する頻度はチャーチルよりもずっと多いそうです。こういった観光客の多くはもっぱらホッキョクグマの写真撮影が目的だそうで、チャーチルよりもカクトヴィクのほうが素晴らしい写真が撮影できるといったことがあるようです。
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Photo(C)Hemis/Alamy Stock Photo

こういった状況で観光客の要求も肥大してきているそうで、ホッキョクグマとボートとの距離は30ヤード(27メートル)を超えてはならないといった規則があるにもかかわらず「もっとホッキョクグマに接近してほしい」といったボートの船長への強い要求も増えているそうです。ひどい例になるとガイドに対して「ホッキョクグマが立ち上がるようにしてほしい」といった要求もあるそうで、そういったシーンを撮影することを望む観光客がいるそうです。写真撮影という行為がいかに人の心を狂わせるかを示している例でしょう。

温暖化によって海氷面積が減少したことによってこういった「ホッキョクグマツアー」が盛んになるというのは考えさせられる問題です。カクトヴィクにやってくるとホッキョクグマに会える頻度が高いということはすなわち、この地域に住むホッキョクグマたちがいかに困っているかを示しているわっです。
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上の図を見ていただきますと、科学的調査によってこのカクトヴィクのあるアラスカ北部・ボーフォート海の地域ではホッキョクグマの生息頭数が、つまり減少 (Declining) の傾向を示しています。頭数の減少傾向が明らかであるにもかかわらずカクトヴィクの村の付近に姿を見せるホッキョクグマの数が増えているということは、つまり人間によるホッキョクグマの姿の目撃数が増加していることが彼らの頭数が増えているということを意味していないことを明確に示しているわけです。「経験的に、以前と比較すると最近は彼らの姿を多く見るようになったから彼らの生息頭数は増加している。だからホッキョクグマの狩猟枠は増やされるべきだ。」といったようなイヌイットの主張がいかデタラメであるかを如実に示しているわけです。そしてホッキョクグマ観光の隆盛はホッキョクグマたちが困っているという状況の上に成り立っているということです。

(資料)
ABC News (Nov.17 2017 - Alaskan town's polar bear problem leads to tourism boom)
Smithsonian.com (Nov.27 2017 - The Politics of Viewing Polar Bears)

(過去関連投稿)
アメリカ ・アラスカ州北部の寒村カクトヴィクに住む人々とホッキョクグマたち ~ 奇妙な共存関係
アメリカ ・アラスカ州北部の寒村カクトヴィクでホッキョクグマが住居に侵入を図る ~ 「警戒員」 の役割
by polarbearmaniac | 2018-02-06 03:00 | Polarbearology

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