街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 02月 07日 ( 2 )

ウクライナ・ムィコラーイウ動物園で誕生の赤ちゃんが生後二ヶ月に ~ 雪の日の父親ナヌク

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Image:Владимир Топчий

ウクライナのムィコラーイウ動物園で昨年2017年の12月7日から8日の夜にかけて6歳のジフィルカが産んだ赤ちゃんですが、無事に生後二ヶ月が経過しようとしています。親子の産室内における最新の映像を同園のトプチィイ園長が公開しましたので見てみましょう。以下をワンクリックして下さい。
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ジフィルカは今回が初産なのですが、なかなかしっかりと赤ちゃんの世話をしているようです。
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赤ちゃんの父親のナヌク Image:Владимир Топчий

ムィコラーイウも今年の冬は寒さが厳しいようです。昨日の雪の中でのナヌクの様子をご紹介しておきます。以下をワンクリックして下さい。
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(過去関連投稿)
ホッキョクグマ・アイカ と レディン家の物語 ~ 愛情の日々、そして悲劇的な終末へ
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 一頭が元気に成育中
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園での赤ちゃん誕生の報道に登場した「悲劇のホッキョクグマ」アイカの姿
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園で誕生の赤ちゃんが生後一か月に
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のナヌクにクリスマスツリーのプレゼント ~ ナヌクの不本意な存在感
by polarbearmaniac | 2018-02-07 21:30 | Polarbearology

イヌイット神話上の伝説の存在の「巨大ホッキョクグマ (‘King’ Polar Bear) 」は実在した可能性が浮上

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"The Old One" の頭骨 Photo(C)Archaeology Magazine
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現代の標準のホッキョクグマの頭部と "The Old One" の頭骨の比較
Photo : Daily Star

大変に興味深いニュースが昨年報じられていたのですが本ブログに投稿していなかったものがありますので今回それを取り上げます。それは昨年、アラスカで行われた海洋科学シンポジウムでの報告です。2014年にアラスカ北部のユトクィアグヴィック(Utqiaġvik - 旧名 バロー)の近郊でホッキョクグマのものとみられる巨大な頭骨が発掘されました。そして便宜上その頭骨を持っていた個体を "The Old One" と呼ぶことにしますが、その "The Old One" の頭骨は現代の標準のホッキョクグマの頭骨に極めて近いものの、サイズがもっと巨大でした。鼻から後頭部までが41cm あるとのことです。以下の写真でご覧いただけますが左端が今回発掘された "The Old One" の頭骨であり右側の三つが標準的なホッキョクグマの頭骨です。
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"The Old One" の頭骨(左端)と標準のホッキョクグマの頭骨(三体)
Photo(C)UIC Science

この "The Old One" の頭骨は雄(オス)の壮年個体のものであるとみられ、放射性炭素年代測定法によって西暦 670~800年のものであると判定されたそうです。つまりこの頭骨を持つ "The Old One" は今から約1300年前に死亡した個体であるということを意味するわけです、この発見物を報告したジェンセン博士によれば、この "The Old One" の頭骨は形体的に非常に特徴があるそうで現在のホッキョクグマよりも後部が長くて狭く、前部の両目の部分は標準的なホッキョクグマの特徴を備えているとのことです。この "The Old One" はホッキョクグマの亜種 (subspecies) ではないかというのがジェンセン博士の見解だそうです。ジェンセン博士の同僚であるシュティメルマイル博士はアラスカ大学の博物館に保存されている約300体以上のホッキョクグマの頭骨との比較を行った過程で、そのうちの何体かが今回発見された "The Old One" の頭骨と似た特徴があることに気が付いたそうです。つまり今回の頭骨の "The Old One" の特徴を備えた少数のホッキョクグマがアラスカに存在していたということがわかったそうです。アラスカ大学の博物館に頭骨が保存されているホッキョクグマは、もちろん体の大きさは現代の標準のホッキョクグマと同じですが頭骨の形体に "The Old One" とやや共通した特徴のある個体がアラスカには少数存在していたということになるわけです。ジェンセン博士は今後この "The Old One" の頭骨からのサンプルを用いてDNAを解析したいと話しています。
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(C)Ancient Origins

ジェンセン博士はさらに、カナダ北部のイヌイットの多くの部族から民族誌学者の聞き取り調査で語られているイヌイット神話上の伝説の「巨大ホッキョクグマ (“King bear” 又は “Weasel bear”) 」について触れ、この "The Old One" の頭骨はまさにその伝説の「巨大ホッキョクグマ」の頭骨である可能性があることに言及しています。

神話・伝説の世界と古生物学との出会いという点で非常に興味深い話です。アラスカに生きる標準的なホッキョクグマの中にこの "The Old One" と頭骨の特徴がやや似ているホッキョクグマが近年においても存在していたという事実ですが、これは "The Old One" という伝説上の「巨大ホッキョクグマ」の遺伝子を受け継いでいると理解してよいのでしょうか。DNA解析の結果が待たれるところです。

(*追記)この ‘King’ Polar Bear というものが "Myth (神話)" なのか "Legend (伝説)" なのかという点ですが、"the Legendary King Bear of Inuit Mythology" という専門誌の表現に従えば "イヌイットの神話における伝説の「巨大ホッキョクグマ」" というような用語の使い分けになります。しかし COD (Concise Oxford English Dictionary) によれば,

Myth - A traditional story, especially one concerning the early history of a people or explaining a natural or social phenomenon, and typically involving supernatural beings or events.

Legend - A traditional story sometimes popularly regarded as historical but not authenticated.

.....という語義が述べられています。こういった語義から考えると ‘King’ Polar Bear という存在は今までは "Legend (伝説)" よりも "Myth (神話)" に近いものであったと考えた方がよいと思いますが、今回の "The Old One" の頭骨の発見によって ‘King’ Polar Bear は "Myth (神話)" から "Legend (伝説)" の域に達しただけでなく "Historical" で "Authentic" な存在となる可能性にまで突き進みつつあるということになります。そういったことから従来の ‘King’ Polar Bear の性格について本稿のタイトルは「伝説上の...」ではなく、あえて「イヌイット神話上の....」としておき、投稿内容においては「伝説の...」というように使い分けて記述しておくこととしました。

(資料)
Western Digs (Mar.26 2017 - Giant Skull Found in Alaska May Be Evidence of Elusive ‘King’ Polar Bear, Experts Say)
Archaeology Magazine (Mar.16 2017 - Huge Polar Bear Skull Discovered at Alaska’s Walapka Site)
New Historian (Mar.25 2017 - Giant Polar Bear Skull Could Belong to ‘King’ Bear)
Daily Star (Mar.18 2017 - Shock discovery of super-sized KING polar bear skull PROVES legends true)
Ancient Origins (Feb.21 2017 - Enormous Skull Found in Alaska May Belong to the Legendary King Bear of Inuit Mythology)
Alaska Dispatch News (Feb.19 2017- Could this giant polar bear skull be the legendary 'weasel bear'?)

(過去関連投稿)
アラスカ最北部のバロー(ユトクィアグヴィック) の空港の滑走路にホッキョクグマが侵入
ノルウェーで発見された一万二千年前のホッキョクグマの骨格の展示 ~ 氷河期時代の唯一の全身骨格の発見
by polarbearmaniac | 2018-02-07 02:00 | Polarbearology

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