街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 02月 14日 ( 2 )

ロシア・ペンザ動物園のベルィがペルミ動物園へ移動か? ~ 大胆な個体再配置計画の可能性

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ベルィ (Белый медведь Белый /Eisbär Bely)
(2017年7月22日撮影 於 ロシア・ペンザ動物園)

これは驚くべき話です。こうせねばならない意味が私には瞬時には理解できませんでした。ロシア・ペルミ動物園でのアンデルマの2月7日の死が公式に同園より発表されペルミの地元メディアはこれに関する報道を一斉に始めたわけですが、その記事の一つに本件の情報、つまりペルミ動物園に伝えられたという今回のホッキョクグマの移動の件が含まれています。それは、現在ペンザ動物園で飼育されている7歳の雄(オス)の野生孤児出身のホッキョクグマであるベルィをペルミ動物園に移すという内容です。これにはロシア国内の飼育下のホッキョクグマの繁殖計画を事実上主導しているモスクワ動物園の意思を見るべきでしょう。そしてモスクワ動物園がこのホッキョクグマの移動案をペルミ動物園に伝えたとみて間違いないのではないでしょうか。

ペルミでは現在、新しい動物園が全く別の場所に建設中なのですが (本来は今年3月末の完成の予定ですが約二ヶ月工事が遅れています)、その新動物園では二組のホッキョクグマのペアが飼育できるそうで、おそらくアンデルマが生きていれば一つの飼育展示場にミルカ(ユムカ)とセリク、そしてもう一つの飼育展示場にアンデルマを入れるつもりだったと思われます。ところがアンデルマが亡くなってしまったために彼女が入るべき場所が空いてしまうわけで、そこにベルィを入れ、そして野生孤児出身の彼のパートナーを他園からペルミに移動させてベルィとペアを組ませようということだと思われます。おそらくこの案を考え出したと思われるモスクワ動物園は近年、野生出身のホッキョクグマの繁殖に非常に重点を置いてきているわけですからペンザ動物園の野生出身のベルィを何が何でも繁殖に寄与させるためには繁殖実績の全く無いペンザ動物園ではなく、実績のあるペルミ動物園でやらせたいと考えて全く不思議ではないわけです。私も最近の投稿で、ペンザ動物園のベルィに関するニュースに注意しなければならないと述べていたわけです。しかしこのような状況になるとは思ってもいませんでした。

でもこれではペンザのファンは怒り悲しむでしょう。なにしろベルィはペンザ動物園ではたった一頭のホッキョクグマですし彼はペンザで大変な人気者だからです。しかもベルィは連邦政府の自然管理監督局によってペンザ動物園での保護・飼育が認められた個体なのです。彼を移動させようと思えば複雑な手続きが必要であるはずです。今回の件は本当にそうなるのかについては今後流動的となるのではないでしょうか。しかし仮にベルィのペルミ動物園(新園)への移動が実現したとすれば、これは以前にも私がその可能性を述べていたようにノヴォシビルスク動物園のロスチクがベルィと交代でペンザ動物園に移動する可能性が生じてきそうな感じがします。ペルミ動物園内部では現在、かなり重大な問題が生じているようで(うかつにはここでは書けない内容です)、事態の推移によってはホッキョクグマの繁殖に支障が出てくることも考えられるような状態になる可能性もあると思います。モスクワ動物園はこの状況を知らずに今回のベルィの移動案をペルミ動物園に伝えてきたのではないかとも思うわけです。まだまだ不透明な状態が続くのではないかと思われます。事態の推移を注視したいと思います。

(*追記)アンデルマの最期の時期の状態についてメディアの同園に対する取材によって得られた情報を「ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの死を公式に発表する ~ "Спи спокойно наша Ама !"」という投稿の最後の「後記」として書いておきました。アンデルマは老衰による静かな死を迎えたようです。

(資料)
Pro Город Пермь (Feb.14 2018 - «Вы будете жить вечно в нашей памяти»: в пермском зоопарке умерла старейшая белая медведица России)

(過去関連投稿)
(*ペンザ動物園のベルィ関連)
ロシア・ペンザ動物園のベルィの近況 ~ 血統的孤立度の優位性が生かせぬ将来への不安
ロシア・ペンザ動物園のベルィに対するロスネフチ社の援助 ~ 年間約130万ルーブルに加え施設整備費
ロシア・ペンザ動物園のベルィに待望のパートナーが決定か? ~ 野生出身個体の飼育下での繁殖の将来
ロシア・ペンザ動物園で寒波と積雪を堪能するベルィ
(*2017年7月 ペンザ動物園訪問記)
・快晴の土曜日、ペンザ動物園でのベルィとの対面へ ~ 抑制、洗練された行動を行うベルィの趣味の良さ
・ベルィ、謙虚さと「大陸的」なスケールの大きさを兼ね備えたロシア・ホッキョクグマ界の逸材
・ペンザ動物園訪問二日目 ~ 生活のペースが確立したベルィ、待ち望まれる彼のパートナーの決定
by polarbearmaniac | 2018-02-14 22:00 | Polarbearology

アメリカ・アラスカ動物園のリューティクがパートナーの死後に不調となる ~ 熟練の観察者の語る異見

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リューティク Photo(C)KTUU/Kalinda Kindle

昨年2017年の12月31日にアメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園で飼育されていた20歳の雌(メス)のホッキョクグマであるアプーン (Ahpun) が急死した件についてはすでに投稿しています。その後、彼女の死因が髄膜炎 (meningitis) であったことが判明したそうです。そのアプーンのパートナーである17歳の雄(オス)リューティク (Lyutyik) はその後、誕生会などのイベントなども行われていたわけですが、同園のパトリック・ランピ園長によればリューティクはここのところ気分的に落ち込んだような状態となっているだけでなく右後脚に膿瘍がみられるため治療に抗生物質を用いているそうです。ランピ園長の気がかりは、ひょっとしたらリューティクも髄膜炎を患っているのではないかといった可能性が完全には否定できないと考えているそうです。同園にとって貴重なホッキョクグマであったアプーンを失ったあとですのでランピ園長もリューティクの状態が気がかりだと語っています。現在のところ血液検査の結果は全て良好であり、ここ数日は経過も良好になっているとも述べています。それを報じる地元TVニュースをご紹介しておきます。下をワンクリックして下さい。
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ランピ園長は、このリューティクはパートナーだったアプーンがいなくなってしまったことを悲しみ、気分が落ち込んでいるのだという率直な意見を述べています。ランピ園長は今すぐには簡単ではないもののこのリューティクの新しいパートナーを得たいと語っています。ちなみにこのリューティクというのはあのレニングラード動物園のウスラーダの息子です。仙台のラダゴル(カイ)や静岡のピョートル(ロッシー)の兄にあたります。要するに彼もアンデルマの孫なのです。
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リューティク Photo(C)KTVA

「ホッキョクグマがパートナーを失って悲しんだり気分が落ち込んだりといったことはないのだ」というのが一般的な動物学における知見となっています。「ホッキョクグマはそのような感情は持たないのだ」ということが動物学による定説となっているわけです。そして「ホッキョクグマは単独生活を指向する動物である。」といったことがその大きな理由としていつも挙げられるわけです。ですからランピ園長のように「リューティクはパートナーだったアプーンがいなくなってしまったことを悲しみ気分が落ち込んでいる」という見解は正しくないというのが今までの動物学が示している結論なのです。しかし最近になって、実はこういった定説は必ずしも正しくないのではないかということをうかがわせる事例がいくつか散見されるようになってきています。そういった事例は本ブログでも何回がご紹介しています。それは南アフリカのヨハネスブルグ動物園の事例とかニューヨークのセントラルパーク動物園の事例などです。さらにホッキョクグマという種は個体間の相互関係が存在している「社会的動物」であるといった非常に新しい見解すら登場してきているわけです(これについては「ロシア人研究者の見たホッキョクグマの驚くべき実像 ~ 相互扶助精神に溢れ共同体を形成する彼らの姿」という投稿を御参照下さい)。ですから、最初から一頭で暮らしていたのならばともかく、長い年月同居していたパートナーがいなくなったことに対して残された個体がそのことを寂しいと感じるということを、あながち否定することはできないようにも思います。ましてや、長年にわたってホッキョクグマを見続け、そして彼らの行動を知り尽くしているはずのランピ園長の語ることを即座に否定することは難しいと思います。

私は、最近まで世界中でホッキョクグマに関して研究され、そして語られてきた彼らに関する見解が果たして本当に真実なのかということを考え始めています。実相は少し違うのではないかとも思っています。少なくとも私は「ホッキョクグマは単独生活を好む動物なのでパートナーがいなくなっても特別な感情は抱かない。」などと平然と語るホッキョクグマ担当の飼育員さんやホッキョクグマファンの方々に必ずしも瞬時には同調できないということだけは言っておきたいと思います。ホッキョクグマはそのような単純な動物ではないという感じがしてきているからです。

(資料)
KTUU.com (Feb.6 2018 - The Alaska Zoo is worried about ill polar bear)
KTVA (Feb.13 2018 - Zoo's remaining polar bear under the weather)

(過去関連投稿)
動物園でホッキョクグマに襲われた人々(後) ~ アラスカの「英雄」ビンキー
アラスカ・アンカレッジの動物園でのお誕生会
アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が始めた奇抜な寄付金募集方法 ~ 「動物園大統領」選挙
アメリカ ・ アラスカ動物園の 「初代動物園大統領」 にアプーンが当選
アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が新施設計画 ~ 野生孤児保護センターの機能強化
オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係
ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園の女帝ウスラーダの15頭の子供たちの姿
アメリカ、アラスカ動物園のアプーンとリューティクのペアの繁殖への期待 ~ 避妊薬副作用の克服へ
アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が新施設計画 ~ 野生孤児保護センターの機能強化
アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園のホッキョクグマ飼育展示場にライブカメラが復活
アメリカ・アラスカ動物園のアプーンが亡くなる ~ 愛されたホッキョクグマの突然の死
アメリカ・アラスカ動物園でリューティクの誕生会と故アプーンを偲ぶ会が同時に開催される
by polarbearmaniac | 2018-02-14 00:30 | Polarbearology

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