街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 02月 28日 ( 2 )

ウィーンのシェーンブルン動物園のリンがデンマークのコペンハーゲン動物園へ ~ いとこ同士のペアの解消

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リン (Eisbärin Lynn) Photo(C)Tiergarten Schönbrunn

オーストリアの首都ウィーンのシェーンブルン動物園では2月27日に「国際ホッキョクグマの日」の前日にさりげなく一つのニュースを公式に明らかにしました。それは、同園で飼育されている6歳の雌(メス)のリン (Lynn) が三月初旬にデンマークのコペンハーゲン動物園に移動することになったというニュースです。この移動が意味することは明白です。それは、現在まで彼女の(将来の) 繁殖上のパートナーとしていた6歳の雄(オス)のランツォはリンとはいとこの関係にある、同じ「ロストック系」だからです。

EAZAのコーディネーターはランツォがフィンランドのラヌア動物園から、そしてリンがオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園からいずれもシェーンブルン動物園に移動してきた時点からこのペアの将来的な解消を狙っていたことに間違いありません。そんなことなら何故この二頭を最初からシェーンブルン動物園に移動させたのかという疑問は残りますが、その理由はラヌア動物園とアウヴェハンス動物園は次の繁殖のためにこの二頭を他園に移動させる必要があったもののEAZAのコーディネーターがその移動先の選定に非常に苦労したために、とりあえずこの二頭をシェーンブルン動物園に移したというのが真相であるということです。特にラヌア動物園の園長さんがEAZAのコーディネーターに大きくプレッシャーをかけたことは周知の事実でした。しかしとうとうEAZAのコーディネーターはタリン動物園から4歳の雌(メス)のノラをシェーンブルン動物園に移動させることに成功し、そしてノラとランツォの相性は悪くないといった感触をつかんだ上でリンをコペンハーゲン動物園に移動させてリンとランツォという「ロストック系」同士のペアを解消させることに成功したわけです。そしてシェーンブルン動物園ではノラとランツォという新しいペアが形成されることになったわけです。
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ノラ (Eisbärin Nora) Photo(C)Tiergarten Schönbrunn

次の映像ではシェーンブルン動物園の園長さん(多分)が「国際ホッキョクグマの日」の意義について語り、そしてシェーンブルン動物園ではノラとランツォが繁殖を担っていくことになったことを話しています。



実のところ私の予想では、雌(メス)のリンをシェーンブルン動物園に残して彼女のパートナーは現在イギリスのヨークシャー野生動物公園で暮らしている4歳の雄(オス)のニッサン(「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」)になるのではないかと思っていました。以前にニッサンがロシアのイジェフスク動物園からモスクワを経由してヨークシャー野生動物公園に移動した時に、このニッサンの所有権を獲得したのはおそらくシェーンブルン動物園ではないかという推測を述べたのはこれが理由だったからです。ランツォをシェーンブルン動物園に残したくない理由は、彼の両親であるヴィーナスと故マナッセは共通の祖父を持っているためです。そういったランツォとリンは今度は共通の祖母と共通の祖父を持つペアとなるとすればかなりの問題ですからランツォとリンのペアの解消は当然としても、その解消の仕方はランツォをウィーンに残すのではなくリンをウィーンに残すやり方が行われるだろうと思っていたからです。リンを「追い出す」よりもランツォを「追い出す」ほうが欧州のホッキョクグマ界全体から考えればより一層、血統面では有利となるはずだからです。

いずれにせよ、欧州ではホッキョクグマの繁殖のための再配置を決めるのはEAZAのコーディネーター(アメリカではAZAのSSPの繫殖推進委員会の座長)であり、それは「推薦 (recommendation)」という用語で行われるわけです。「決定 (decision)」という用語を用いないのは、たとえば個体の所有権を持つ動物園がその権利を主張して拒否することが可能であるからです。しかし「拒否」すればその個体が将来の繁殖上のパートナーを得ることは事実上不可能となります。ですから、「推薦」という用語を用いても実質的には「決定」を同じ意味を持つわけです。こういった個体の再配置を「推薦」するのはEAZAのコーディネーター(アメリカではAZAのSSPの繫殖推進委員会の座長)に一元化されているわけで、自治体の首長や企業の思惑は排除されているわけです。それは当然でしょう。

(資料)
Tiergarten Schönbrunn (Feb.27 2018 - Internationaler Eisbärentag)
Heute (Feb.26 2018 - Eisbären genießen die Kältewelle im Wiener Zoo)

(過去関連投稿)
オーストリア・ウィーンのシェーンブルン動物園でのランツォとリン ~ 「ロストック系」の若年個体の悩み
エストニア・タリン動物園のノラがウィーンのシェーンブルン動物園へ ~ ロシアではなく欧州を向いた同園
エストニア・タリン動物園のノラのハロウィン ~ 生まれ故郷での最後のハロウィン
エストニア・タリン動物園のアロンの満一歳の誕生会、そしてノラの故郷での最後の誕生会
エストニア・タリン動物園のノラのウィーンへの旅立ち ~ 父親の生まれ故郷に向かうノラ
エストニア・タリン動物園のノラがウィーンのシェーンブルン動物園に無事到着
ウィーンのシェーンブルン動物園の飼育展示場にタリン動物園から来園したノラが登場する
ウィーンのシェーンブルン動物園の飼育展示場に慣れつつあるノラ ~ 期待されるウィーンでの繁殖
by polarbearmaniac | 2018-02-28 23:45 | Polarbearology

ロシア・ノヴォシビルスク動物園の「国際ホッキョクグマの日」

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カイ(クラーシン - 左)とゲルダ(右) 
Photo(C)ВЛАД КОМЯКОВ/Комсомольская правда

ロシア・西シベリアにあるノヴォシビルスク動物園では「国際ホッキョクグマの日 (Международный день белого медведя)」のイベントは昨日の2月27日に行われました。現在は同居中のカイ(クラーシン)とゲルダには午後3時から特別給餌がありました。ノヴォシビルスク動物園ではこの日のために大きなプラスチックの缶とか道路工事用のコーンとかの提供を来園者に事前に求めていました。下に映像を二つご紹介しておきます。二番目の映像は画面をワンクリックして下さい。


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「国際ホッキョクグマの日」の2月27日はペアによっては繁殖行動期に入っている場合がありますのでこういった時期にイベントを行うというのは微妙な場合があります。そもそもこの日は本来では、ホッキョクグマの生態に悪影響を与える温暖化を防止するために私たちが身近でできることを考えるといった趣旨が重要な部分であり、アメリカの動物園ではそういう考え方です。
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カイ(クラーシン - 左)とゲルダ(右) Photo(C)НГС.НОВОСТИ

上の映像を見るとカイ(クラーシン)とゲルダのペアはさすがに迫力があることがよくわかります。彼らと比較すると日本のホッキョクグマは何か「吹けば飛ぶようなホッキョクグマ」といった印象すら持ちます。津語の映像はこの日のロスチクです。





彼の将来はどうなるのか、現時点ではなかなか予想は難しいです。ともかく、もう少し事態の進展を見守るしかありません。地元ノヴォシビルスクのファンにしてみれば、彼は冬には雪のある場所で暮らしてほしいというのが本音のところでしょう。

(資料)
НГС.НОВОСТИ (Feb.27 2018 - Новосибирцы подарили канистры белым медведям из зоопарка)
Комсомольская правда (Feb.27 2018 - В Новосибирском зоопарке отметили Международный день полярного медведя)

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の「国際ホッキョクグマの日」 ~ ゲルダ親子を愛する「草の根のファン」
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチク、親子としての一つの「完成形」を達成か?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクが母親ゲルダと別居となる ~ シルカもいた同園内の別の場所へ
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の「二つの愛の心」 ~ "Два любящих сердца"
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクが母親ゲルダと別居となる ~ シルカもいた同園内の別の場所へ
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの別居は安全上の理由と同園は説明 ~ 移動先決定は難航か?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園でゲルダとクラーシン(カイ)の同居が始まる ~ 従来の繫殖方針維持
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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のホッキョクグマ飼育展示場にガラスフェンスが設置の予定 ~ 減じる魅力
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの近況から、彼の今後の移動問題を考える
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のシロ園長がロスチクの移動問題について語る ~ 決断できぬ欧州側
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の「カイとゲルダ」の最近の話題 ~ このペアの名前の由来の真相を考える
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が開園70周年を祝う ~ ホッキョクグマ飼育展示場に人工雪製造機が導入
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの待機続く ~ 移動先候補にフランスのセルザ動物園が急浮上か?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園で本格的な冬の到来を待つホッキョクグマたち ~ 「美しさ」への視点
ロシア・ノヴォシビルスク動物園で二歳となったロスチク ~ 欧州行きの可能性は消えた模様
ロシア・ノヴォシビルスク動物園での2014年のゲルダとシルカの親子の思い出のページ
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の動物たちの暮らしを記録し続ける常連の来園者に大きな賞賛の声
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のホッキョクグマたちの冬の日の光景 ~ 掴めぬロシア国内の繁殖計画の情報
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のカイ(クラーシン)とゲルダのさらなる挑戦
by polarbearmaniac | 2018-02-28 06:00 | Polarbearology

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