街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 06月 23日 ( 1 )

札幌・円山動物園の「ホッキョクグマ館 (Polar Bear Museum)」の問題点を探る (2)

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ララさん、リラちゃん、今日もよろしくお願いいたします!
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この親子の一日を彩るものを見ておきたい。
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リラはいつのまにか肉付骨をもらったらしい。
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リラはそれに執着している。彼女にとってこれはおもちゃのようなものとして機能しているのである。
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今日も淡々と歩き回るララ。
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この親子には以前のようなおもちゃは与えられないらしい。そういう方針になったのだという方がいたが、本当にそうなったのかどうかについては私は正確には判断できない。しかしおそらくそうかもしれないという印象を持っている。仮にそうだとすれば、その理由について円山動物園は以下のようなことを考えているからではないかと思われる。

① ホッキョクグマ館の飼育展示場はは十分な広さがあるので、エンリッチメントとしてのおもちゃは、もう必要ではない。

② おもちゃを与えてしまえばそれに熱中して遊び、そして水中でのアザラシへの突進行為を行わなくなることが予想されるため、集客効果が減少する可能性がある。

さて、仮に上の二つが円山動物園が考えていることだとすると、私はそれには賛成できない。その理由を述べておきたい。まず、円山動物園(正確にはこのホッキョクグマ館の設計者)がこのホッキョクグマ館、とりわけ来園者のための水中トンネルを設置する際に大いに参考としてことは間違いない(あるいは完全に模倣した?)施設は、デンマークのコペンハーゲン動物園に5年前に新設された “Den Arktiske Ring” である。この “Den Arktiske Ring” の水中トンネルの映像をご紹介しておく。





コペンハーゲン動物園の “Den Arktiske Ring” がオープンした時に「デンマーク ・ コペンハーゲン動物園の新施設 “Den Arktiske Ring” の完成 ~ 期待される若年ペアの繁殖」という投稿を行っているので是非それを御参照頂きたい(オープン前に公開されたコペンハーゲン動物園のプロモーション映像が削除されているのが残念ではあるが...)。円山動物園のホッキョクグマ館の二倍の総面積を有するコペンハーゲン動物園の “Den Arktiske Ring” でホッキョクグマたちにおもちゃが与えられていないかといえば、実は与えられている。下の映像をじっくりとご覧いただきたい。



さて、前述したことをもっと正確に述べておきたい。円山動物園(のホッキョクグマ館の設計者)が参考(模倣?)したのは、実際のところカナダのアシニボイン公園動物園の新施設である “Journey to Churchill” である可能性の方が高いと思われる。その “Journey to Churchill” の水中トンネルを下の映像でご覧いただきたい。



このアシニボイン公園動物園の新施設である “Journey to Churchill” のオープンの際に「カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園の新施設、“Journey to Churchill” が遂にオープン」という投稿を行っているので是非それを御参照頂きたい。私はこのアシニボイン公園動物園の水中トンネルはコペンハーゲン動物園の水中トンネルを参考(模倣?)したものだろうと思っている。だから円山動物園がアシニボイン公園動物園を参考にしただろうとはいっても、実はアシニボイン公園動物園はコペンハーゲン動物園を参考に(模倣?)したというのが事実だろうと思われる。要するにコペンハーゲン動物園は「源流」であるということである。このアシニボイン公園動物園は新施設ではホッキョクグマにおもちゃを与えていないらしい。円山動物園の担当者の方はアシニボイン公園動物園ではホッキョクグマのおもちゃを与えていないのでホッキョクグマ館でもそれは不要だと考えている可能性がある。しかし、そもそもの「源流」と考えられるコペンハーゲン動物園ではホッキョクグマにおもちゃを与えているのである。だから円山動物園がホッキョクグマにおもちゃを与えない理由の根拠として仮にアシニボイン公園動物園の例を参考にしているとすれば、それは根拠にならないということである。
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更に私が考えることを述べておきたい。円山動物園がホッキョクグマ館を建設する際に、その陸上部分の飼育展示場を設計する際に参考にしたのは多分、アメリカ:オハイオ州のコロンバス動物園に間違いないだろうと私は考えている。「アメリカ・コロンバス動物園のニヴァとニューニクの双子の満一歳の誕生会が開催される」という投稿を開いていただいて、その下の過去関連投稿をいくつか開いていただくと写真や動画を見ることができる。私は火曜日に円山動物園に来てこのホッキョクグマ館の陸上部分を見たときにすぐに思い浮かべたのがコロンバス動物園だったのである。そしてコロンバス動物園では飼育展示場の陸上部分が広くてもホッキョクグマたちに頻繁におもちゃを与えているのである。
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こういったことから総合的に考えれば円山動物園がララ親子におもちゃを与えないということの理由として考えらえる①の点については根拠がないということになる。

さらに②について考えてみたい。このホッキョクグマ館ではホッキョクグマがアザラシを目標にして水に入ったり水中で突進することを見せるということを「セールスポイント」にしているかのような印象を私は持つ。
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このシーンのようにリラは端で水面を凝視している時間が長いが、それは水中のアザラシの存在を確認しようとしているのかどうかは私には確証がない。しかしリラにとってこのプールとは、そういったアザラシの存在が大きな意味を持っていることは間違いないように思われる。
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このプールはそういった目的、つまり来園者が下の階の水中トンネルからホッキョクグマを見上げるといった目的以外にあまり意味のあるプールにはないいていないと思われる。ホッキョクグマたちは水中トンネルにいる来園者の関心を引くための一つの "Tool" であってホッキョクグマたちの自由意思によってプールで遊ぶための用途としては小さすぎると私は考える。マニトバ基準については以前に「アメリカ・ノースカロライナ動物園のアキーラが改修後の展示場に元気に登場 ~ 「マニトバ基準」 を考える」という投稿を行っているが、近日中に再び新しい投稿を行いたいと思っている。この基準だが、その根底に流れている最も重要な「哲学」の一つはホッキョクグマたちの自由意思の尊重なのである。ところがこのホッキョクグマ館のプールでは彼らをある特定の行動に誘導しようという意図が明白である。これは「マニトバ基準」の基本に流れている「哲学」とはベクトルの方向が逆であると考える。「基準」というものを施設のスペックといったような外形的・客観的なものだけであると理解し、その根底に流れる考え方への理解が不足しているのではないかと私は考える。よって、前述の②もホッキョクグマたちにおもちゃを与えない理由としては成り立たないと思われる。
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私は円山動物園を非難しようとしているのでは決してない。それどころか、よくぞこれだけのものを建設してくれたと賞賛しているほどである(完成までに時間がかかりすぎたという点はあったにせよ)。その飼育展示場がアシニボイン公園動物園、ひいてはコペンハーゲン動物園に酷似しているらしいからといって「模倣である」と非難する気持ちなど、さらさらない。 むしろ、よくぞ世界に目を向けてくれたとこれも賞賛したいと思っている。そういったことだからこそ、やはり疑問点も明らかにしておきたいのである。


草を食べるララ - Lara the Polar Bear, sniffing around and tasting the grass, at "Polar Bear Museum" of Sapporo Maruyama Zoo, Japan, on Jun.23 2018.

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さらに私が同園に言いたいのは、ホッキョクグマの飼育や施設、その他についてはカナダではなく欧州に目を向けるべきだろうということである。カナダは野生のホッキョクグマの研究については最先端を行く国であるが飼育下においてどうやって彼らの動物福祉を実現していくかについては欧州のほうが進んでいると考える。欧州の動物園はもう野生個体を飼育下に編入することが全くできなくなっている点でカナダ(あるいはアラスカ州を有するアメリカ、あるいはロシア)とは状況が異なっており日本の動物園とこの点においては共通するものがある。
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それからさらに同園に理解していただきたいのは、円山動物園がホッキョクグマに関して手始めに求めねばならないのは「繁殖計画への参加」「繁殖計画の協力関係」である。「個体の導入」というのはそういったことの結果であって、「個体導入」が入り口ではないということである。
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6月17日付けの北海道新聞の電子版記事で「繁殖を目的に米国やカナダからも個体を導入できるよう、展示スペースは2頭で最低500平方メートルとするなどの国際基準を満たしている。」とあるが、これは記者の勝手な作文とは思えず円山動物園に取材して書いた記事だろう。しかしアメリカからのホッキョクグマの個体導入は同国の「絶滅危惧種保護法 (Endangered Species Act) 」の規定によって全く不可能である。円山動物園が本当に個体導入に関してアメリカからの可能性を考えているとすれば妄想以外の何物でもない。
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札幌の地元のファンの方々は地元の動物園である円山動物園にかなり厳しい意見を持っているようである。私も今週札幌に来てからそういう意見をいくつか聞いた。そういった意見は多分正しいのだろう。しかし私はホッキョクグマについては円山動物園を応援したいと思っている。
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SONY DSC-RX10M4
Panasonic HC-W870M
(Jun.23 2018 @札幌・円山動物園)
by polarbearmaniac | 2018-06-23 21:30 | しろくま紀行

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