街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2018年 07月 01日 ( 1 )

ドイツ・ハンブルク、ハーゲンベック動物園で15歳のヴィクトリアに人工授精が行われる

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ブリザード (手前)とヴィクトリア(奥)
Photo(C)Picture Alliance/Werner Struss

北ドイツの人口175万人の大都市であるハンブルクのハーゲンベック動物園 (Tierpark Hagenbeck) に暮らすホッキョクグマたちついては今まであまり投稿してきませんでした。この動物園で飼育されているのはこの動物園で生まれた15歳の雌(メス)のヴィクトリアとイタリア生まれの11歳の雄(オス)のブリザートというペアです。ヴィクトリアについては以前、ブレーマーハーフェン動物園からハーゲンベック動物園に帰還した件に関して、そしてブリザードについてはイタリアのピストイア動物園からドイツのロストック動物園に電撃的な移動をした件などについて詳しく投稿したことがありました。ここでヴィクトリアとブリザードの5年前の映像を見ておきましょう。



このヴィクトリアとブリザードのペアについては5年間も繁殖が期待されてきたものの結果が出せていないためか、このハーゲンベック動物園のホッキョクグマに関するニュースはそれほどメディアに登場してこなかったように思います。しかしここにきて実に興味深いニュースが報じられています。このペアの間の繁殖に成功していないハーゲンベック動物園はとうとう雄(オス)のブリザードに超音波検査 (Ultraschalluntersuchungen) を行い、その結果として彼には繁殖能力がないとの診断を下したそうです。精液を採取するのではなく超音波診断で具体的にどう繁殖能力がないことを診断できるのかの詳細はよくわかりませんが、しかし報道にはそう述べられています。さて、ハーゲンベック動物園ではこういう状況に直面し、カールスルーエ動物園で飼育されている17歳の雄(オス)のカップ(彼は男鹿水族館の豪太の異父の兄にあたります)から精子の提供を受けることとし、そしてヴィクトリアに対して人工授精を行うことを考え、それはすでに行われたことが報道されています。この件についてハーゲンベック動物園では公式の発表を行ってはいませんが、複数の報道の内容から考えて間違いないものと考えられます。
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カップ Photo(C)Zoo Neumünster

ホッキョクグマへの人工授精は過去関連投稿を御参照頂きたいのですが私の知る限りアメリカで過去に4回行われていますが(セネカ動物園、サンディエゴ・シーワールド、ヘンリー・ヴィラス動物園、メリーランド動物園)、いずれも成功していません。世界ではまだ成功例がないわけです。ホッキョクグマに関してはそもそも妊娠したのかについてすら診断は困難ですので、人工授精によって妊娠にこぎ着けたかどうかも不明という状況です。今回のハーゲンベック動物園におけるヴィクトリアへの人工授精ですが、同園はその結果にかなり期待しているとは思いますが出産に至るかについては非常に厳しいと思います。私はホッキョクグマへの人工授精には懐疑的ですが、仮にハーゲンベック動物園で年末にヴィクトリアが出産するとなれば快挙となるでしょう。注目して見守りたいと思います。それから、繁殖能力がないと診断されてしまったブリザードですが、彼はこれからさらにこのハーゲンベック動物園に留まるのか、それとも他園に移動するのか、これも注意して見守りたいと思います。雄(オス)のホッキョクグマにとっては実に厳しい状況です。

(資料)
shz.de (Jun.29 2018 - Sorge um Eisbärnachwuchs: Samenspende kommt aus Karlsruhe)
regio-news.de (Jun.30 2018 - Alle hoffen auf Kap: Karlsruher Eisbär soll für Nachwuchs in Hamburg sorgen)
Hamburger Abendblatt (Jun.28 2018 - Hagenbecks Eisbär Blizzard ist unfruchtbar)

(過去関連投稿)
(*ヴィクトリア、ブリザード関連)
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園での妊娠判定の試み 
ドイツ・ブレーマーハーフェンのヴィクトリア、ハンブルクへ戻る ~ 不可解な状況をどう考えるか?
年齢差18歳に挑戦した衝撃のEAZAの繁殖計画 ~ ドイツの壮年個体に新しいパートナー決定
ドイツ・ロストック動物園のヴィエナに出産の期待 ~ 年齢差を克服した相性の良さ
ドイツ・ロストック動物園のブリザートがハンブルクへ ~ 繁殖の可能性と移動のリスクをどう考えるか
(*カップ関連)
ドイツ・ノイミュンスター動物園、悲願へのハードルの高さ ~ カップのパートナー探し難航
モスクワ動物園のムルマ(3) ~ 初産、そして訪れた危機
ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップが同園展示場の地表改良工事のため一時的にハノーファー動物園へ
ドイツ・ハノーファー動物園のカップ (豪太の兄)が施設改修工事の終了したノイミュンスター動物園に帰還
ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップ、パートナー獲得の見込みはあるか? ~ 苦戦するムルマの子供たち
ドイツのカールスルーエ動物園とノイミュンスター動物園の個体再配置 ~ 繁殖できぬ個体に迫った「退出」
ドイツ・カールスルーエ動物園のフィトゥスとラリッサが同園を出発してノイミュンスター動物園に到着
ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップがカールスルーエ動物園に到着 ~ 同園で期待される繁殖
ドイツ・カールスルーエ動物園でカップとニカの同居が始まる ~ 今年の繁殖成功を目指す同園

(*人工授精関連)
アメリカ・ニューヨーク州 ロチェスターのセネカ動物園が史上初のホッキョクグマの人工授精を行う
アメリカ・サンディエゴ、シーワールドの19歳の雌のスノウフレイクに人工授精が試みられる
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園の18歳のベリットに人工授精が行われる
ロシアの3つの動物園が共同で異種間移植(ホッキョクグマ → ヒグマへの胎仔移植)の実験を行うことを発表
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカに人工授精が計画される ~ ドナー候補はどの雄(オス)の個体か?
アメリカ・ボルチモア、メリーランド動物園のアノーキは人工授精での世界初の出産に成功するか?
by polarbearmaniac | 2018-07-01 01:00 | Polarbearology

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