街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア連邦 ・ ウドムルト共和国 イジェフスク動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!

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ドゥムカお母さん Photo(C)Ольга Малыгина /Letopisi.Ru

大変な場所でホッキョクグマの赤ちゃんが誕生しました! ロシア連邦・ウドムルト共和国のイジェフスク動物園で昨年12月12日にホッキョクグマの一頭の赤ちゃんが誕生したそうで同園では秘密にしていたそうですが、このニュースを掴んだマスコミによる報道で明らかになりました。 この赤ちゃんを産んだ母親はドゥムカ、父親はノルドと報じられています。当然現在はまだ産室内にいてドゥムカ親子の様子はモニターカメラで監視中とのことですが、詳しい情報はあまり明らかになっていません。 当然のことながら同園のHPでも何らの発表もなされていません。 このドゥムカとノルドの姿を4年前の映像で見てみることにしましょう。



このドゥムカお母さんは野生出身で現在9歳です。 父親のノルドはモスクワ動物園生まれの8歳でシモーナお母さんの息子です。 このイジェフスク動物園は2008年に開園した新しい動物園であり、ロシアの動物園の中ではホッキョクグマ飼育展示場が最も整備されていると言う評価のある動物園ですので、私も是非一度行ってみたいと思っていました。 位置的にはペルミとカザンとの間の中間地点といったところです。 当然ホッキョクグマの繁殖は初めてのことなのですが、やはりロシアという国は底知れないですね。 今シーズンはもう赤ちゃんは生まれないかと思っていましたが、予想もしなかった場所での赤ちゃん誕生です。
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昨年の秋にこの動物園の若いほうのペアであるピリグリムとオーロラの「結婚式」のイベントが行われたわけですが、その時の様子は「ロシア・ウドムルト共和国イジェフスク動物園でピリグリムとオーロラが「結婚式」 ~ 新しい繁殖基地へ」という投稿でご紹介しています。 今回赤ちゃんが誕生したのは年長ペアのドゥムカとノルドのほうですが、このイジェフスク動物園は将来もかなり繁殖に成功しそうな感じです。

続報があればただちに投稿します。

(資料)
IzhLife.ru (Jan.14 2014 - В зоопарке Ижевска родился белый медвежонок)
Вести (Feb.1 2006 - Думка прибыл в Москву)

(過去関連投稿)
ロシア・ウドムルト共和国イジェフスク動物園でピリグリムとオーロラが「結婚式」 ~ 新しい繁殖基地へ
by polarbearmaniac | 2014-01-14 19:30 | Polarbearology

アメリカ・サンディエゴ、シーワールドのセーニャ、出産の有無の事実の発表ないまま元気に姿を現す

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セーニャとスノーフレイク Photo(C)SeaWorld San Diego

札幌・円山動物園のキャンディの妹でやはり出産を期待されていたアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴのシーワールド(SeaWorld San Diego) に暮らす18歳の雌のホッキョクグマであるセーニャ (Szenja) については、昨年ご紹介していた通り嗅覚でホッキョクグマの妊娠判定を行うビーグル犬のエルヴィス君によって珍しく「妊娠している」と判定された雌でした。 この件については「ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定 (2) ~ サンディエゴ ・ シーワールドのセーニャは “妊娠”!」をご参照下さい。

さて、私はこのセーニャ、そして姉のキャンディの姉妹ダブル出産については内心随分と期待はしていたのですが、キャンディに続いてこのセーニャもどうやら出産は無かったようです。 いや、正確にはあったかもしれませんが少なくとももうセーニャが産室を出てしまってイベントに登場している姿が10日付けの写真とニュース映像で公開されました。 それを見ていただきましょう。 セーニャと一緒に写っているのは雌のスノーフレイクです。 冒頭にCMが入ります。

実はこういうケースは一番困るわけです。 セーニャが元気だからいいようなものの、果たして出産があったものの赤ちゃんが衰弱死したケースなのか食害があったのか、それとも人工哺育になっているのかなどが全く公表されていません。 そもそも出産の有無についての情報がありませんから、エルヴィス君の嗅覚判定が正しかったかそうでなかったかの判断もできないわけです。 ともかくセーニャが元気に10日に姿を見せていることから、一応ここでは出産は無かったということにしておきたいと考えます。

シーワールドは昨年11月にそのSNSのサイトでセーニャに赤ちゃんが生まれるかもしれない ("A Polar Bear Cub May be on the Way !!!") と大きく報じており、そして一般の報道でもそれを報じていたわけですが、その後の続報は無く、こうやっていつの間にか姿を現すというのは何か後味の良くない感じもします。 もっとも、シーワールドは純粋な娯楽施設ですから、そういった「種の保存」に関連した情報の多くを求めるのは無理であるということも言えるでしょう。

それにしても飼育下でのホッキョクグマの繁殖、やはりなかなか難しいものですね。 今シーズンは世界を見渡しても「ホッキョクグマの赤ちゃん凶作の年」といった感じがします。 世界中の施設でまだ公表されていないものの、実はあと2頭ほどの雌が出産しているように予想しています。 果たしてどうでしょうか?  旭山動物園は例年と比較すると随分とニュースが遅くて私には「不気味な沈黙」のように感じてしまいます。 九回裏「逆転満塁サヨナラホームラン」は無理でしょうか?

(資料)
CBS8.com (Jan.11 2014 - Polar bears prove it's easy to play in the cold)

(過去関連投稿)
ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定 (2) ~ サンディエゴ ・ シーワールドのセーニャは “妊娠”!
by polarbearmaniac | 2014-01-14 01:00 | Polarbearology

アメリカ・ケンタッキー州、ルイヴィル動物園に暮らす野生孤児のカニックが三歳となる

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カニック Photo(C)Louisville Zoo

2011年の4月にアラスカの油田地帯でお母さんとはぐれてしまったホッキョクグマの赤ちゃんがアメリカの魚類野生生物局 (U.S. Fish and Wildlife Service - FWS) によって保護された件は当時非常に大きく報道されました。 その後、アラスカ・アンカレッジの動物園を経てケンタッキー州のルイヴィル動物園で飼育されるようになった一連の経緯は多くの写真や映像を交えていくつかの投稿でご紹介していますので是非、過去関連投稿をご参照下さい。
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Photo(C)Louisville Zoo

カニックと名付けられたこの雌の赤ちゃんはその後もルイヴィル動物園で順調に成長し、とうとうこのたび三歳のお誕生会がルイヴィル動物園にて開催されたそうです。 野生出身のためカニックの本当の誕生日は不明なのですが、FWSは1月10日を彼女の誕生日とすることにしたそうで、ルイヴィル動物園では今年はその翌日の11日の土曜日にカニックの三歳のお誕生会を開催しました。 この日にために地元の有名なお菓子屋さんが特製のピーナッツバターケーキを彼女にプレゼントしたそうです。 その様子をご紹介しておきます。
(*後記 - この下の映像、うまく再生されない場合は、こちらのページをクリックしていただき放送局のページで直接視聴が可能です。)

WDRB 41 Louisville News
このカニックは野生出身個体ですのでその所有権は依然としてFWS が保持しているわけですが、FWSはこのルイヴィル動物園の新施設である “Glacier Run” を非常に評価しているそうで、このルイヴィル動物園がカニックの最終的な飼育施設となっています。 あのバッファロー動物園での野生個体カリーの暫定飼育を巡る一連のゴタゴタはここでは起こらなかったわけです。 アメリカにおける野生孤児個体の保護と飼育においては、施設の「政治力」、飼育基準の問題、環境の問題など、我々にはあまり知ることのないいろいろな要素が入り組んでいるようです。 ルイヴィル動物園の園長さんは今回のカニックの三歳のお誕生会に臨んで上の映像で以下の発言を行っています。

"She's an amazing little bear with an amazing story. This is
one of those days which is the essence of the zoo. It's about
celebration, it's about memories, it's about making the
planet a healthier place."

いつもながら思うのですが、アメリカの動物園の園長さんはなかなかうまいことを言いますね。 実に感心します。
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Photo(C)Louisville Zoo

このカニックのパートナーはもうすでに決まっていて、トレド動物園で2009年12月に生まれたシークーです。 シークーとカニックは現在は交代展示だそうですが、まだ当分はそれが続くでしょう。 ともかく、将来はこのルイヴィル動物園がアメリカにおける有力な繁殖基地となる可能性が十分あると思われます。

(資料)
Louisville Zoo (Help Us Celebrate! - Qannik 3rd Birthday)
WDRB (Jan.12 2014 - Louisville Zoo celebrates youngest polar bear's third birthday)
WAVE 3 News (Jan.10 2014 - Louisville Zoo invites everyone to the 'coolest' birthday in town)
WHAS 11.com (Jan.10 2014 - Qannik celebrates 3rd birthday)

(過去関連投稿)
アラスカの油田でホッキョクグマの赤ちゃんが保護!
アラスカの油田地帯で保護された赤ちゃん、アンカレッジ動物園で報道陣に公開
アラスカの赤ちゃん孤児の一般公開後の映像 ~ その視線から感じること
アラスカ・アンカレッジの動物園の赤ちゃん孤児の元気な遊び姿
アラスカの赤ちゃん孤児、月末にケンタッキー州のルイヴィル動物園へ
アラスカの孤児の赤ちゃん、月曜日にアラスカを旅立ち約6時間の空輸で新天地のケンタッキーへ
アラスカでの孤児の赤ちゃんの最後の1日、そして旅立ちの様子
アメリカ・ケンタッキー州のルイヴィル動物園のカニックの検疫終わる
アメリカ・トレド動物園のシークーがルイヴィル動物園へ移動決定 ~ アメリカのPSSP
アメリカ・オハイオ州トレド動物園のシークー、ケンタッキー州ルイヴィル動物園に到着
アメリカ・ケンタッキー州、ルイヴィル動物園に暮らすアラスカで保護されたカニックの近況
by polarbearmaniac | 2014-01-13 01:00 | Polarbearology

バリーバ、バフィン、キャンディの出張組の来シーズンを考える ~ 繁殖可能年齢上限付近の個体の処遇

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デナリ(手前)とキャンディ(奥) (2013年4月6日撮影 於 円山動物園)

今春以降の日本のホッキョクグマ界、特にそれを今後維持し、そして我々の後の世代に継承していくために必要な問題点を考えてみたいのですが、その切り口はいくつもあるように思います。 昨年12月に試論として「来年2014年の日本のホッキョクグマ界の変動の選択肢を考える ~ 壮大なパズルへの挑戦」という投稿を行っていますが、今シーズンの繁殖結果が出そろいつつあり、そして各園担当者の次のシーズンに対する抱負も聞こえ始めているという現時点であらためてこれを考えてみることにします。 この件は非常に logistical な思考が要求されるわけですが、まず手始めに本投稿の表題を切り口にして考えてみようと思います。 というのも、この件はホッキョクグマの移動の有無の問題にまさに直結するからです。 現時点でまだ旭山動物園はルルとサツキの状態についての公式な発表をしていませんし、この2頭のうちサツキはやはり繁殖可能年齢上限附近の個体ですが、彼女については今回は別にして考えておくことにします。 それからさらに、「ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限」という投稿、そしてその投稿の関連投稿も併せてご参照いただければ幸いです。

まずバリーバ(23歳)、バフィン(22歳)、キャンディ(21歳)の出張三頭組についてです。 彼女たちはそれぞれBL契約で出張しているはずで、契約としての体裁上それぞれについて契約期間は定められてはいるものの、必ず契約解除通知期間(多分1ヶ月前までか3ヶ月前までか)が規定されており当事者の一方、あるいは双方の意思によって契約期間終了前に契約を解除することは当然可能であり、その場合に損害賠償などが発生する可能性は契約の性格上まずないと言ってよく、不動産賃貸借契約などとは異なり容易に解除が可能であるといってよいでしょう。 また契約期間の延長についても同様でしょう。 これを踏まえて考えていきます。
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バリーバとジャンブイ (2013年2月10日撮影 於 ズーラシア)

まず横浜・ズーラシアのバリーバですが、飼育員さんのブログを読む限りにおいては、この同じペアでの次の繁殖シーズン(すなわち2014年の繁殖シーズン)に向けて意欲十分といったところです。 確かに契約期間は残存しているはずですし次のシーズンに繁殖に成功する確率がゼロではないというのは事実です。 ただしかし、バリーバの年齢(この3頭のうち最年長)における繁殖成功の可能性とジャンブイの野生出身という血統上のメリットを比較衡量すれば後者をはるかに重視すべきであり、ジャンブイにもっと年齢の若い個体をパートナーに付けて繁殖を狙う方が成功の確率はバリーバとの場合よりももっと高く、そして日本のホッキョクグマの血統の多様性維持の観点から言っても優れていることは明白ではないでしょうか。 ジャンブイの繁殖能力の有無といった問題はここでは脇に置いておきます。 ともかく野生出身の彼は(推定)21歳ですからまだまだ働いてもらわねばならないわけです。 それを、あくまでもこのペアの維持に固執しようというのは、担当飼育員さんの願望実現の場としてならいざ知らず、日本のホッキョクグマ界全体から考えれば明らかに損失です。 彼の新しいパートナー候補としてまずツヨシ(釧路)があげられます。 次にこれはリスクがありますし本投稿の後半で触れる内容ですがキャンディ(札幌)かルル(旭川)です。 こういう組み合わせを実現するためには強力な「司令塔」、つまりホッキョクグマ繁殖検討委員会の強い意志が不可欠です。
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ゴーゴとバフィン(2012年4月19日撮影 於 天王寺動物園)

次に大阪・天王寺動物園のバフィンです。 実は本来は彼女が一番難しい立場だったはずです。 天王寺動物園の飼育員さんは以前、「もうこれが最後で後がない」というような悲壮な覚悟だったようですが最近はどうなのでしょうか。 1月10日付けの飼育員さんのブログでは「妊娠の可能性もかなり低くなったので、徐々に通常の環境に戻していきたいと思います。 ゴーゴもお待ちかねです。」 と書いていますので、これは事実上、来シーズンもこのペアで繁殖にチャレンジするということでしょうし、そういう話が浜松と合意できたのだと理解してよいでしょう。 やはりこのゴーゴとのペアはもう一年継続するのがいいのかもしれません。 このペアについては、いかんせん誤算だったのはゴーゴの男としての「成熟度」だったわけで、何でもかんでも現状維持が好ましいことではありませんが、あと一年だけはこのペアでチャレンジさせてみたいという気は確かにします。 しかし仮に急に浜松がバフィンの帰還を求めれば、ゴーゴの次のパートナーをどうするかです。 候補はやはりツヨシでしょう。 こういった組み合わせを実現するためには、やはりホッキョクグマ繁殖検討委員会の強い意志が不可欠です。
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キャンディ (2013年6月8日撮影 於 円山動物園)

次に円山動物園のキャンディです。 彼女は確か前回の彼女の出産成功・成育失敗という結果の後で、円山動物園が豊橋に「もう一年やらせてみたい」と要請して今回のチャレンジになったと記憶していますが、私の記憶で正しいでしょうか? そうだとすると、「さらにもう一年」という要請が通るかどうかですが、豊橋には彼女が戻ってきたほうが都合がよいと強く考える理由は実は私にはあまり思いつきません。 仮にキャンディが戻ったとしても、かつてのチャッピー、クッキーとの3頭同居が復活するだけの話であり時計の針がそのまま元に戻っただけという気もします。 敢えて挙げるならば2頭より3頭のほうが展示上は見栄えがするといったようなところでしょうか。 となれば、さらにもう一年キャンディの札幌滞在を延長するということになる可能性はありえると思われます。 

ところが...ここで一つ問題があります。それはララ親子の存在です。 つまり円山動物園は、ララに次のシーズン(2014年)に繁殖に挑戦させるかどうかという最終決断を早くせねばならないわけです。 挑戦させるのであればマルルとポロロの移動先確保という大問題を解決せねばなりません。 この問題については昨年12月に「来年2014年の日本のホッキョクグマ界の変動の選択肢を考える ~ 壮大なパズルへの挑戦」という投稿でいくつかの選択肢を考えてみたわけです。 さて、このマルルとポロロの移動先に目途がつかないとすれば、ララ親子は現在の欧米の動物園のように親子同居の2年目が実現するわけです。そうなるとキャンディ札幌残留にとっては都合の良い状況になるでしょう。 デナリはキャンディだけを相手にすればよく、非常にやり易いわけです。 次にマルルとポロロの移動先に目途がつくということであれば、円山動物園は当然、ララとキャンディの2頭の繁殖への同時挑戦を狙うでしょう。 そうなると以下の4つのパターンが想定されます。

①キャンディは札幌に残留し、マルルとポロロの移動先の確保もできたためキャンディとララの2頭が次シーズンに繁殖に挑戦する。

②キャンディは札幌に残留するが、マルルとポロロの移動先の確保ができないためキャンディのみが次シーズンに繁殖に挑戦する。

③キャンディの札幌残留は実現しないが、マルルとポロロの移動先確保ができたためララだけが次のシーズンに繁殖に挑戦する。

④キャンディの札幌残留は実現せず、マルルとポロロの移動先確保もできないため、次シーズンは札幌での繁殖挑戦はない。


円山動物園の狙いが①であることは当然言うまでもありません。 そして最低でも③を実現しようとするでしょう。 しかし私はキャンディを札幌で次シーズンに再度繁殖に挑戦させるならば、マルルとポロロの移動先を確保しようとする試みは保留にしてララ親子をさらに一年同居させ、キャンディだけを繁殖に挑戦させて万全を期すというやり方、つまり結果としては②と同じことになる状況を選択したいところです。 そうするならば、マルルとポロロの移動先確保のために生じる可能性のある「玉突き的な個体移動」を回避することが可能となるからです。 いずれにせよ④は避けたいところですが、何が何でも避けたいというほどのことでもありません。 ④もありえるケースです。 というのは、キャンディが札幌を去っても同園は独自に他の園と交渉し別の雌が札幌に来てデナリとの間の繁殖を狙うという非常に特殊なケースも存在し得るからです。 そこでさらにもう2つのパターンを想定することとなります。

⑤雌の個体Xが札幌に来て、そしてマルルとポロロの移動先確保ができたため、雌の個体Xとララの2頭が次シーズンに繁殖に挑戦する。

⑥雌の個体Xが札幌に来るが、マルルとポロロの移動先の確保ができないため雌の個体Xのみが次シーズンに繁殖に挑戦する。


この二つのパターンでは円山動物園は⑤を狙うことになるでしょう。

デナリとキャンディ (2012年3月12日撮影 於 円山動物園)
デナリとキャンディ (2013年4月13日撮影 於 円山動物園)

キャンディの札幌残留問題とララの次シーズンの繁殖挑戦は別の問題であるという考え方はありえますし、円山動物園はそう考えているでしょう。 キャンディの札幌残留が実現するしないにかかわらずララは何が何でも次シーズンには繁殖に挑戦させ、そしてあわよくば豊橋の了解を得てキャンディも次シーズンには同園で繁殖に挑戦させ一気にダブル出産を狙いたいというのが円山動物園の考え方でしょう。 つまり同園は②は想定外であり④は全く問題外と考えているように思われます。 そして仮に豊橋の了解がなくても同園は単独で別の動物園と交渉して雌の個体Xを札幌に繁殖目的で出張させて、当然⑤を狙いたいと言うのが同園の姿勢でしょう。 この「雌の個体X」が具体的に誰になるのかについては、「来年2014年の日本のホッキョクグマ界の変動の選択肢を考える ~ 壮大なパズルへの挑戦」 という投稿で名前を挙げたつもりです。 それはルル(旭川)です。 仮にルルが札幌に来るとなれば、旭川でイワンとツヨシ(釧路)との組み合わせが可能となるはずです。 展開としては悪くない話です。

しかし私はキャンディの札幌残留問題とララの次シーズンの繁殖挑戦は別の問題ではなく、前者が後者を牽引した問題であると認識しています。 ですから同園がキャンディの次シーズンの札幌残留を望むならばララの次シーズンの繁殖はお休みにすべきだろうと考えます。 (たびたび例に出して恐縮ですが、ララと同じ年齢で、しかもララと同じように2年サイクルでの繁殖を続けてきたモスクワ動物園のシモーナは、さすがに三つ子の出産・育児ということもあってとうとう2013年のシーズンの繁殖はお休みをもらっています。) そして円山動物園はキャンディの次シーズンの札幌残留が実現できる見通しがあるなら、マルルとポロロの移動先確保という難問に取り組むことを急ぐ必要がなくなるということです。 (それからこれは別の投稿で詳しく触れるつもりでしたが雌の双子は極力、今の段階で離してはなりません。 これは「個体の幸福」といった問題からではなく、純粋に「将来の繁殖の有利性」といった観点からです。 これは科学的に実証されているわけではありませんが、実は海外の過去の例から言っても飼育下における雌の双子は5年程度一緒にしておくのが後年の繁殖にとっては有利になる可能性が大きいのです。 簡単に言いますと、雌の双子は離さないでおいて繁殖可能な年齢になるまで「雌だけの小さな世界」を双子の間で形成させておき、そして繁殖可能年齢になった時点でいきなり雄との出会いを経験させることが雌としての成熟、そして母親としての自覚を一気に目覚めさせることに効果があるということです。 そういったことから、二頭一緒に移動できる施設を確保するということは実に難問であり、それをこの1~2月に無理してまで確保しようというのは止めたほうがよいということです。 ましてや、二頭を別々の施設というのは全く感心できません。)

キャンディの今シーズンの繁殖再挑戦が成功しなかったわけですから、物事の一種の「けじめ」を付けようと思えばキャンディは札幌以外の場所に行った方がよいかもしれません。 それは上で述べました横浜の可能性ということです。 ただしジャンブイとの相性という点でリスクはあります。 非常に難しいです。

とにかく日本でのホッキョクグマの繁殖というのはトータルで考えていかねばならないわけで、それを特定の二園間 (あるいは特定の二自治体間) の都合だけで事を進めるのは問題があるわけです。 再度繰り返しますが、強力な「司令塔」、つまりホッキョクグマ繁殖検討委員会の強い意志による調整が不可欠なのです。

次の問題としてこのララ親子の処遇についてスポットを当てて次回の投稿で集中して考えていきたいと思います。 それはイコロ、キロル、アイラ、マルル、ポロロといったララの子供たちと国内外の動物園の個体との関係についてです。 これも非常に複雑なパズルの世界です。

(資料)
ズーラシア・オフィシャルブログ (Jan.8 2014 - バリーバの産室生活)
天王寺動物園 スタッフブログ (Jan.10 2014 - バフィンさん、約2カ月ぶりの餌)

(過去関連投稿)
ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (上)
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)
ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!
来年2014年の日本のホッキョクグマ界の変動の選択肢を考える ~ 壮大なパズルへの挑戦
横浜動物園ズーラシアのバリーバ、展示再開へ
札幌・円山動物園のキャンディ、展示再開へ ~ 今シーズンは出産の可能性低いとの判断
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(11) ~ 母子をいつ引き離すか
by polarbearmaniac | 2014-01-12 06:00 | Polarbearology

アメリカ・オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラの双子姉妹はダブル出産ならず

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アナーナとオーロラ Photo(C)Columbus Dispatch

アメリカ・オハイオ州のコロンバス動物園 (Columbus Zoo and Aquarium) の7歳になったアナーナとオーロラの双子姉妹にそろって出産があるかどうかは私が世界の動物園のなかで最も注目していた今シーズンの繁殖への挑戦の一つでした。 ところが例のビーグル犬のエルヴィス君が嗅覚によってホッキョクグマの妊娠の有無を判定するという新しい試みが昨年暮れから開始され、そしてそれによってアナーナとオーロラの双子姉妹は“妊娠なし”とエヴィス君に嗅覚判定で軽く一蹴されてからというもの、いささか注目度が減じてしまったことは否めませんでしたが、やはりここでこの双子姉妹のその後について書いておくこととします。 このたびコロンバス動物園はこのアナーナとオーロラの7歳の双子姉妹は妊娠していないと発表し、エルヴィス君の判定はコロンバス動物園においては正しかったことが明らかになりました。

10月に同園はこのアナーナとオーロラに妊娠の可能性を思わせる兆候があると明らかにしていたわけです。体重が増加し、そして偏食が見られ、雄のナヌークに対して敵対的な視線を送るなどという妊娠の可能性をうかがわせる兆候があったため、この双子は別々に産室のあるエリアに移され絶えずモニターカメラで監視体制がとられたそうです。 やがてこの2頭は産室内に引きこもってしまったそうですが、12月下旬にアナーナは産室内のそういった暮らしに興味を失ったように産室の外に出るようになり、そして今週になってオーロラもそういう状態になったため同園ではこの2頭は妊娠していないという判断を下したそうです。

同園では次のチャンスに期待したいと語っています。 アナーナもオーロラもまだ7歳になったばかりですからこの先のチャンスは十分あるでしょうから、今回は残念ではありますが将来に期待が持てます。 ただし現在同園でこの2頭のパートナーとなっている雄のナヌークは野生出身で、あの有名なバッファロー動物園のルナの父親で繁殖能力は証明済みですが、現在は推定26歳ですから、今年の春はまだ心配ないかもしれませんが来年の春は繁殖にはかなりきつい年齢となるでしょう。 そうなるとまた別の雄がコロンバス動物園にやってくるということになると思われます。 ともあれ、ビーグル犬のエルヴィス君の嗅覚判定はコロンバス動物園では正解となったわけです。

ここでこのコロンバス動物園のホッキョクグマ展示場 ("Polar Frontier") の設備について園長さんが語っている映像を見てみましょう。



(資料)
Columbus Dispatch (Jan.10 2014 - Pregnancy hopes dashed for polar bears at Columbus Zoo)
nbc4i.com (Jan.10 2014 - It's Official: No Baby Polar Bears At Columbus Zoo)
10TV (Jan. 9 2014 - Columbus Zoo Confirms Its Polar Bears Aren't Pregnant)

(過去関連投稿)
アメリカ ・ オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラ、美しき双子姉妹の楽しいハロウィーン
アメリカ ・ オハイオ州、コロンバス動物園に登場したナヌークへの期待 ~ 25歳の雄の繁殖能力への希望
アメリカ・オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラの双子姉妹、初産でのダブル出産なるか?
アメリカ・オハイオ州、コロンバス動物園がアナーナとオーロラの双子姉妹の出産に向け 「厳戒態勢」
アメリカ・デンバー動物園、コロンバス動物園などがホッキョクグマの妊娠判定にビーグル犬の嗅覚を利用へ
ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定(5) ~ コロンバス動物園のアナーナとオーロラの姉妹は “妊娠なし”
by polarbearmaniac | 2014-01-11 01:00 | Polarbearology

札幌・円山動物園のキャンディ、展示再開へ ~ 今シーズンは出産の可能性低いとの判断

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キャンディ (2013年8月17日撮影 於 円山動物園)

札幌市の円山動物園より本日1月10日午後、正式な発表がありました。 同園は今シーズンのキャンディの出産の可能性は低いものと判断し、近日中にキャンディの屋内終日収容を中止し、展示再開に向けた準備を開始するとのことです。 キャンディ(そしてデナリ)の展示再開は1月16日(木)を予定しているとのことです。

まあ、これは残念ではありますが比較的容易に予想のついたことでした。 それは以前の投稿にも詳しく述べましたし、先月の投稿でも申し上げましたが、ロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告である ”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)” におけるデータから判断して今回のキャンディにとって最も出産の可能性が高かったのは昨年12月6日を中心とした前後の数日間だったわけです。 ですから先月、日本を出発する28日の段階で私は、これでもうキャンディの出産はないだろうと考えていました。 ところが一般的な見方の中には天皇誕生日の関係した12月の三連休のあたりで、いよいよこれからがキャンディの出産の時期であるといったように逆に出産への期待が高まるという傾向があったように感じたのは非常に希望的な観測であったような気がしていました。 なるほど前回は12月30日に彼女は出産していたわけですが、実は一般的にホッキョクグマの雌の初産というのはそれが成功するにせよ失敗するにせよ出産日は非常に遅く、二回目以降は出産日はむしろ早くなるという傾向が比較的多くの例では存在しています。 ですから今回のキャンディについては出産日は前回よりも(かなり)早いだろうと私は予想していました。 一例を挙げればモスクワ動物園のシモーナですが、手持ちのモスクワ動物園の資料によれば初産(失敗)の1999年では12月3日に出産していますが、それ以降の何度もの出産の連続成功ではほとんど全て11月20日付近に出産日が集中しています。 そういったことで、今回のキャンディの出産日が前回のように暮れも押し詰まってからにはならないだろうと考えたわけです。
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キャンディ (2013年9月15日撮影 於 円山動物園)

今回のキャンディの出産への期待が他の20歳を超えた雌(バフィン、バリーバ)よりも高かった理由は、少なくとも記憶の新しい昨シーズンの2012年の年末に出産していたという事実が大きいわけです。 しかし考えてもみれば、バフィンはすでに浜松で複数回出産だけはしており、バリーバについても少なくともピースを出産していたわけです。 となれば、実はキャンディは前回初めてバフィンやバリーバと競い合うスタートラインにやっと到達したという程度にしかすぎなかったというわけです。 ですので今回のキャンディへの出産への期待は私自身も含め、やや過大評価気味であったと言わざるを得ないわけです。 しかも今回のキャンディには前回よりの加齢といった要素も考慮せずにはいられません。実は彼女のような年齢(現在21歳)には思いのほか重要な要素です。 以前も触れたことがありますが、やはりキャンディにとっては前回が最大のチャンスだったように思います。 前回こそが彼女の勝負だったということです。

ということで、この今回の円山動物園の発表は冷静に受け止められることであると言わざるを得ません。 しかしそうは言うものの、やはり今回も痛恨であったことは間違いありません。 それから今更ながらですが、いかにララが偉大なホッキョクグマであるかをまた思い知らされたということです。

(資料)
札幌市・円山動物園 (Jan.10 2013 - 世界のクマ館観覧制限の解除について

(過去関連投稿)
札幌・円山動物園で再びホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生するも2頭とも死亡!
札幌 ・ 円山動物園のキャンディへの期待と声援 ~ 彼女のドイツでの幼少期と今は亡き両親の姿
デナリとキャンディ、「成就」への出発のレールに乗る ~ 週末の札幌・連続4週間目
喜怒哀楽を常に隠したポーカーフェイスのキャンディ ~ モスクワ動物園との深いつながり
曇天の札幌・円山動物園 ~ ホッキョクグマの「再配置」と、「筋」 に入った可能性を感じるキャンディ
木々の色づいた札幌、そしてホッキョクグマたちの姿 ~ "Does Polar God smile twice ?"
札幌・円山動物園のキャンディにとっての12月6日 ~ 平均出産予定日とイケメン飼育員さんが救った命
by polarbearmaniac | 2014-01-10 16:30 | Polarbearology

ドイツ・ミュンヘンのヘラブルン動物園で誕生の双子の赤ちゃん、無事に生後一か月が経過

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1月5日の産室内 Image : Tierpark Hellabrunn

昨年12月9日にミュンヘンのヘラブルン動物園でジョヴァンナお母さんから誕生した双子の赤ちゃんですが、全く危なげなく生後一か月を迎えています。 ここで2つの映像をご紹介しておきましょう。一つ目は1月5日の映像で生後27日経過、二つ目の映像は6日の映像で生後28日経過の映像となります。 特に二つ目の映像はなかなかおもしろいです。 この双子の赤ちゃんたちはもうお母さんの乳を奪い合っているように見えます。





(資料)
Augsburger Allgemeine (Jan.8 2014 - Kleine "Kullerbäuche": So geht es den Münchner Eisbärenzwillingen)
tz online (Jan.10 2014 - Eisbärenbabys kämpfen um Platz an der Milchbar)

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2014-01-10 15:00 | Polarbearology

ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園の赤ちゃんへの思惑 ~ 赤ちゃんの集客力への評価は可能か?

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Photo(C)Zoo am Meer Bremerhaven

北ドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園 (Zoo am Meer Bremerhaven) で12月16日にヴァレスカお母さんから誕生した赤ちゃんですが、早くも地元ではこの赤ちゃんの公開に伴って同園への来園者数の増加の見通しと地元の有力な観光資源としての期待が交錯しているようです。

現在のところこの赤ちゃんの戸外での一般公開は5月初めが予定されているそうですが、ブレーマーハーフェン市の収入役 (Stadtkämmerer) であるミヒャエル・タイザー氏は、今回の赤ちゃんの公開によって同園の年間入園者数は5万人増加し、その結果として年間収入は20万ユーロ(約2700万円)増えると試算しているそうで、この赤ちゃんを絶好の市の「観光資源」だと考えているようです。 調べてみますとブレーマーハーフェン臨海動物園の2013年の入園者数は約25万5千人ですね。 するとそれが約30万人強となることを意味します。 つまり約20%の入園者増となるという見通しです(ちなみにブレーマーハーフェン市の人口は約11万3千人です)。 同園は毎年ブレーマーハーフェン市より90万ユーロ(約1億2千万円)の補助金を受けているそうですが、キュック園長は市の収入役の入園者増の試算は過大であるとして、この赤ちゃんの存在をアピールすることは控えて静かに見守っていきたいと考えているそうです。 事実、同じドイツでもミュンヘンのヘラブルン動物園と比較すると実にほんの少ししか産室内の映像が公開されていません。



以前にもこのホッキョクグマの赤ちゃんの集客力について投稿したことがありました。 チェコのブルノ動物園(2007年 - トムとビル)で前年比28%増、円山動物園(2009年 - イコロとキロル)で前年比32%増です。 それから、男鹿水族館での数字を調べてみましたら今回のミルクの誕生で前年同時期比の31.6%増ですね。 この円山動物園(2009年 - イコロとキロル)と男鹿水族館(2013年 - ミルク)の増加率の数字は恐ろしいほど近いわけですが、円山動物園の数字は年間の数字でありイコロとキロルがまだ産室内にいた1~3月を含めての数字であるのに対して男鹿水族館の数字はミルク公開後の期間に限定した時期の数字です。 そうなると円山動物園と男鹿水族館の入園者増加率が近いといっても、やはり円山動物園の方がホッキョクグマに関してと考えれば増加率は高かったことを意味しています。 ただし、円山動物園のリピーター数(常連客数)は非常に多く、またその訪問回数も非常に多いということとアクセスが男鹿水族館よりも圧倒的に有利であることを考えれば、男鹿水族館の31.6%増という数字は実質的には円山動物園の増加率よりも多いのだと解釈する方が正しいでしょう。

ただし、このホッキョクグマの赤ちゃんの集客力については他のいろいろな要素を考えることが必要で実は簡単な話ではありません。 たとえば同じ円山動物園(2011年 – アイラ)の時は何と前年よりも落ちているわけです。 ところが円山動物園(2006年 – ピリカ)は25%増です。 ある程度言えることは、今までホッキョクグマの赤ちゃんの誕生していなかった施設に赤ちゃんが誕生した場合とか、前回の誕生から年数がかなり経過している場合などでは相当の集客力になるだろうということです。 ですから、ブレーマーハーフェン臨海動物園の今回の赤ちゃんの場合に市の収入役が試算している20%の入園者増というのは決して過大な数字ではないように思われます。 ミュンヘンのヘラブルン動物園の今回の双子の赤ちゃん、これも相当の集客力があると思われます。 一方で、モスクワ動物園のようなところではホッキョクグマの赤ちゃんの存在が直ちに入園者増にはストレートにはつながらないでしょう。 というのも、本当に羨ましい話ですがあそこではホッキョクグマの赤ちゃんは頻繁に生まれているから珍しいものではないからです。 白浜のアドベンチャーワールドはホッキョクグマの赤ちゃんの存在は他の多くの動物たちやアトラクションの中に埋没していますから集客力にはそれほど関係ないでしょう。

ともかくホッキョクグマの赤ちゃんにかなりの集客力があることは間違いないですが、それがいかほどのものであるかを評価するのは実は難しいということです。 そもそも、前年よりも増加した入園者数が全てホッキョクグマの赤ちゃんの存在の出現が理由であるかどうかという出発点のことすら判断が難しい場合もあるからです。

(資料)
Radio Bremen (Jan.9 2014 - Diskussion über Vermarktung des Eisbären)
Radio Bremen (Jan.7 2014 - Besucherzahl im "Zoo am Meer" gestiegen)
読売新聞 (Jan.7 2014 - ミルク見納め26日 男鹿水族館GAO)
札幌市・円山動物園 (Apr.1 2013 - 平成24年度 円山動物園入園者数について)

(過去関連投稿)
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園で誕生の赤ちゃん、順調に生後2週間が経過
by polarbearmaniac | 2014-01-10 02:00 | Polarbearology

カナダ・トロント動物園で誕生し、人工哺育となった雄の赤ちゃんのレミーが生後2か月となる

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レミー Photo(C)Toronto Zoo

11月9日にカナダのトロント動物園でオーロラお母さんが産んだ三つ子の赤ちゃんのうち、唯一生存して人工哺育されている雄の赤ちゃんですが獣医さんからはレミーという名前で呼ばれ、とうとう間もなく生後2か月を迎え今週の月曜日からなんとか4本の脚で立ち上がることができるようになったそうです。 そのような1月6日の非常に可愛らしい映像がトロント動物園から公開されましたのでご紹介しておきます。 音声は必ずonにして下さい。

Cubs First Steps

First Time Eating From a Dish

Trilling the sound of a content bear

Feeding From a Bottle

生後35日で目が開いたそうで、トロント動物園の担当者によれば赤ちゃんは非常に活発で最近では毛布など何でも噛むことがお好みだそうです。 現在は一日に6回ミルクを飲み、体重は4.4キロになったそうです。 このまま順調に生育してほしいものです。

(資料)
CBC News (Jan.8 2014 - Watch a Toronto Zoo polar bear cub take his first steps)
Global News (Jan.8 2014 - New video shows cute polar bear cub being cute)
Toronto Sun (Jan.8 2014 - Toronto Zoo polar bear cub takes first steps)
Toronto Star (Jan.8 2014 - First baby steps for Toronto Zoo's male polar bear cub)

(過去関連投稿)
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃん誕生! ~ 2頭は死亡するも1頭が生存
カナダ・トロント動物園で誕生し人工哺育で育てられている雄の赤ちゃんの近況 ~ 「レミー」 と命名
カナダ・トロント動物園で人工哺育で育てられている雄の赤ちゃんレミーの生後三週間後の映像が公開
by polarbearmaniac | 2014-01-09 06:00 | Polarbearology

横浜動物園ズーラシアのバリーバ、展示再開へ

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バリーバ (2013年2月10日撮影 於 横浜動物園ズーラシア)

横浜動物園ズーラシアの雌のバリーバが展示再開となるそうです。 ジャンブイとは交替展示となるそうで、バリーバが日、水、金、ジャンブイが月、木、土の曜日での展示だそうです。

やはりバリーバの出産はなかったということなのでしょう。 残念ではありますが特にそれほど大きな驚きというものでもないようにも思います。それだけホッキョクグマの飼育下での繁殖は難しいという一般論が一つと、23歳という彼女の年齢を考えればある程度は予想もできた結果のようにも思います。 

とべ動物園とズーラシア(つまり愛媛県、横浜市という自治体)との間でどのような契約がなされているのかは具体的には知りませんが、貴重な野生出身個体である推定21歳のジャンブイを「繁殖資源 (Reproduction Resources)」 として年齢的に活用できるうちに活用しようとすればパートナーをバリーバから他の雌の個体に変更すべきでしょう。 これ以上このペアで引っ張るというのはいかがなものでしょうか。 仮にそうしたとすれば、今年の年末はもっとさらに厳しい成功の確率になるでしょう。 バリーバはもう繁殖の舞台からは解放してやり、引退させてやったほうがよいように思います。

(資料)
横浜動物園ズーラシア (Jan.8 2014 - 【お知らせ】ホッキョクグマの展示について

(過去関連投稿)
来年2014年の日本のホッキョクグマ界の変動の選択肢を考える ~ 壮大なパズルへの挑戦
by polarbearmaniac | 2014-01-08 16:00 | Polarbearology

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