街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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豊橋総合動植物公園のチャッピーが亡くなる ~ 生後たった半年で来日したザクセンの星、逝く

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チャッピー (Eisbär Chappy - Cappy /Белый медведь Чаппы)
(2017年6月11日撮影 於 豊橋総合動植物公園)

豊橋総合動植物公園より発表があり、同園で飼育されていた24歳の雄(オス)のホッキョクグマであるチャッピーが昨日1月30日に亡くなったとのことです。昨年10月から腎臓の機能不全となっており体調を崩していたものの懸命の治療によって一時は体調が回復していたそうですが、5日前から再び体調が悪化し昨日亡くなったとのことです。実に惜しいことをしたと思います。痛恨です。
(*追記)報道の内容によりますと、チャッピーは昨年10月に行った血液検査で腎不全の症状が見られたために展示が中止され、エサをイモ中心にしてたんぱく質を抑えたり消化の負担にならないよう肉をミンチにして与えられたり投薬治療が行われたりした甲斐があり11月末には体調を持ち直して展示が再開となったそうです。ところが1週間ほど前から食欲がなくなり29日には立てなくなったそうで、30日午後2時に職員に見守られながら息を引き取ったとこのとです。死因は腎不全に伴う多臓器不全とのことです。体重は最盛期の300kgsから約250kgsまで減っていたそうです。
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チャッピー (Eisbär Chappy - Cappy /Белый медведь Чаппы)
(2017年6月11日撮影 於 豊橋総合動植物公園)

チャッピーは1993年12月14日にドイツのライプツィヒ動物園の生まれで翌年1994年の6月23日に豊橋総合動植物公園に入園しています。生後たった半年だったというわけです。そのような幼い時期にチャッピーが母親から引き離された理由は多分彼の母親の健康状態に理由があったのではないかと思います。チャッピーの母親であるビラは息子であるチャッピーが日本に去った翌年の1995年の8月に15歳で安楽死という方法で亡くなっているのですが彼女は脂漏症という皮膚病を数ヶ月間患い、最後には肺癌を併発したために安楽死となったそうです。そういった母親の皮膚病が原因で息子であったチャッピーは生後半年ほどで母親のもとを去ることになったのだろうと私は考えています。

このチャッピーは国際血統登録台帳には "Chappy" ではなく "Cappy" と登録されています。私の眼には彼は非常におおらかなホッキョクグマであったと映っていますが豊橋総合動植物公園では彼は神経質なところがあるという理解だったようです。彼は札幌のデナリと同年齢でした。チャッピーはあのロストック動物園の故チャーチルの孫にあたるのですが故ヴィエナの血は入っていませんので私の言うところの純粋な「ロストック系」ではないことになります。しかしチャッピーにはあの欧州の偉大なホッキョクグマであった故チャーチルの面影をどこかに感じるように思います。貴重なホッキョクグマでした。


チャッピーの表情の変化 - A variation in Chappy the Polar Bear's appearance, at Toyohashi Zoo 6 Botanical Park, Japan, on Jun.11 2017.

かつてこの豊橋総合動植物公園ではチャッピー、クッキー、キャンディ(現 円山動物園)という三頭のドイツ生まれのホッキョクグマがトリオで飼育されていた時代が長く続いていました。 雄(オス)一頭に雌(メス)二頭という、繁殖には理想的ともいえる状態だったのですが非常に残念なことに繫殖には成功しませんでした。実に惜しい話です。


チャッピーの水中おもちゃ遊び - Chappy (Cappy) the Polar Bear is playing in the water with a plastic toy, at Toyohashi Zoo & Botanical Park, Japan, on Jun.11 2017.

なんだか今年は年が明けてからホッキョクグマの訃報が多いような気がします。嫌な感じの年ですね。日本のホッキョクグマ界もだんだん追い詰められてきた感じがします。こうなったら、いちかばちかで札幌のキャンディをもう一度デナリと組ませて繁殖を狙わせるか....ということを考えたくもなるのですがキャンディの体調も必ずしも万全とは言えないらしいようですから二の足を踏みますね....。でも運良く成果が出せればその果実の権利は豊橋総合動植物公園が持つことになりますから同園はこれから約30年はホッキョクグマの展示が可能となるでしょう。しかし25歳になったキャンディ(豊橋所有)の札幌での繁殖再挑戦は現実的に非常にリスクが大きいです。キャンディの命を縮める可能性もあります。一方で、今や世界のホッキョクグマ界でも屈指の能力を誇るデナリは「チャッピーの弔い合戦はオレにまかせろ」といった感じで多分自信満々でしょう。旭山動物園の種別調整者と札幌、豊橋の三者で一度話し合ってみてはどうでしょうか? 貴重なチャッピーを失ってしまった豊橋の意向を、とりあえずは聞いてみてはどうでしょうか? 豊橋が所有権を持つキャンディについて仮に豊橋がリスクを承知の上でキャンディが繁殖に再挑戦することを強く望むのならば、彼女をもう一度デナリと組ませるという選択肢はあり得ると思います。
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チャッピー (Eisbär Chappy - Cappy /Белый медведь Чаппы)
(2017年6月11日撮影 於 豊橋総合動植物公園)

心より謹んでチャッピーの死に哀悼の意を表します。

(資料)
豊橋総合動植物公園(Jan.31 2018 - ホッキョクグマのチャッピーが天国へ旅立ちました)
中日新聞 (Jan.31 2018 - 豊橋のホッキョクグマ「チャッピー」天国へ 生態展示の先駆け)
(*追記資料)
東海日日新聞 (Feb.1 2018 - ホッキョクグマの「チャッピー」死去)
中日新聞 (Feb.1 2018 - 動きに野性味、人気だった 豊橋、「チャッピー」に園長も追悼)

(過去関連投稿)
寒風吹く豊橋・のんほいパーク
チャッピーとクッキーの不思議な関係 ~ ドイツ生まれのペアの土曜日午後の穏やかな姿
チャッピーの素顔 ~ ザクセンの生んだ最後の偉大な星はこれから輝くか?
チャッピー、是非とも歩かせてやりたい男の花道
by polarbearmaniac | 2018-01-31 20:00 | Polarbearology

ロシア・ペンザ動物園で寒波と積雪を堪能するベルィ

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ベルィ Photo(C)ГТРК Пенза

ロシアに到来した本格的な冬の寒波ですが、ヴォルガ川流域にあるペンザの街の動物園に暮らす野生出身の7歳の雄(オス)のベルィがその寒さを堪能しているという報道がなされています。ペンザは地理的にはロシアの中央部でありシベリアにはありませんから寒波といってもマイナス40℃になるということはほとんどありません。ホッキョクグマが喜ぶのは寒さというよりも雪の存在であるように私には思えます。一月中旬に行われたベルィに対する新年のお祝いの様子をペンザ動物園が映像で紹介していますので下にご紹介しておきます。





さて、前回の投稿で述べたのですがこの野生出身のベルィにはたして本当に近日中にパートナーが決定されるかという問題です。もう2月になるわけで繁殖のためにはホッキョクグマの再配置が行われねばならない時期になっています。注目して見守ることにしたいと思います。ロシアのホッキョクグマ界全体の動向を占う上でこのペンザ動物園のベルィのパートナー問題はその鍵を握っています。

(資料)
ГТРК Пенза (Jan.19 2018 - Пензенский белый медведь радуется морозам)

(過去関連投稿)
ロシア極北で漁民に保護された1歳の野生孤児が中部ロシアのペンザ動物園での飼育が決定
ホッキョクグマ飼育経験のないロシア・ペンザ動物園が飼育準備を開始 ~ 「親和性」、「運」とは?
ロシア極北で保護された孤児のウムカ、依然としてモスクワ動物園で待機か? ~ 野生孤児保護の問題点
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ロシア・ヴォルガ川流域のペンザ動物園にモスクワから移動したウムカの近況 ~ 待たれる新施設の完成
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園のウムカの新しい名前を公募することが決定
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ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園の苦境続く ~ ベルィ に仮仕様のプールが完成 
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園の2歳の野生孤児ベルィの近況
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園の野生孤児ベルィが間もなく3歳に ~ 完成が待たれる新展示場
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園のベルィがソチ冬季五輪のプロモーション映像に登場
ロシア最大の石油会社 ロスネフチがロシアの動物園の全ホッキョクグマへの援助・保護活動開始を表明
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園の野生孤児ベルィの新飼育展示場建設にロスネフチ社の援助決定
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園でのソチ冬季五輪開催イベント ~ 2026年札幌冬季五輪招致へ
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モスクワ動物園のシモーナの双子が一歳となる ~ 双子のうち雌が来年にペンザ動物園へ移動か?
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ロシア・ペンザ動物園のベルィの新展示場が秋に完成の予定 ~ ロシアの中小地方都市の動物園の苦闘
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ロシア・ペンザ動物園のベルィに夏の旧舎最後の特別給餌 ~ ロシア地方都市動物園の素朴なイベント
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園で最終段階に入りつつある新ホッキョクグマ飼育展示場の建設
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園のベルィに子供達が慈善活動の売上を寄付
ロシア・ヴォルガ川流域のペンザ動物園がベルィのパートナーにモスクワ動物園のニカを希望
ロシア・ペンザ動物園のベルィが完成した新飼育展示場へと移動する
ロシア・ペンザ動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場が遂にオープン ~ 次なる課題はベルィのパートナー探し
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園のベルィは新飼育展示場に移動して伸びやかに遊ぶ
ロシア・ペンザ動物園の新飼育展示場で早々とベルィに「国際ホッキョクグマの日」のイベントが開催
ロシア・ペンザ動物園のベルィの近況 ~ ロシアの飼育下の野生出身個体の繁殖と再配置の問題点
ロシア・ペンザ動物園のベルィの「帰宅拒否」のエピソード ~ ロシア地方都市の素朴な報道
ロシア・ヴォルガ川流域のペンザ動物園、ベルィの健康管理のために入念なチェック体制をとる
ロシア・南ウラル地方、チェリャビンスク動物園がペンザ動物園のベルィの入手を画策 ~ 繁殖成功への執念
ロシア・ペンザ動物園のおもちゃの破壊王ベルィを報じる地元メディアの素朴な報道
ロシア・ペンザ動物園の過ぎ去った夏 ~ ベルィが三週間ぶりに飼育展示場に復帰
ロシア・ペンザ動物園のベルィの近況 ~ 血統的孤立度の優位性が生かせぬ将来への不安
ロシア・ペンザ動物園のベルィに対するロスネフチ社の援助 ~ 年間約130万ルーブルに加え施設整備費
ロシア・ペンザ動物園のベルィに待望のパートナーが決定か? ~ 野生出身個体の飼育下での繁殖の将来
by polarbearmaniac | 2018-01-31 00:30 | Polarbearology

アメリカ、ミルウォーキー動物園の33歳のスノウリリーの近況 ~ 春の天気占いのイベントに登場の予定

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スノウリリー (Snow Lilly the Polar Bear) 
Photo(C)Joel R. Miller/Milwaukee Journal Sentine

アメリカ・ウィスコンシン州のミルウォーキー動物園で飼育されている雌(メス)のホッキョクグマであるスノウリリー (Snow Lilly) が33歳となったことについては「アメリカ、ミルウォーキー動物園のスノウリリーが33歳となる ~ 寂しさの漂うお祝い会」という投稿で述べています。高齢のホッキョクグマの誕生会にしては非常に狭い場所で内輪だけで行われたややさびしさの漂うものであったわけです。アメリカでは「グラウンドホッグデー (Groundhog Day) 」という春の訪れを予想する天気占いの行事が行われる日 (2月2日) があるのですが、今年のこの行事のイベントには高齢のスノウリリーが登場する旨が報じられています。それを前にしてスノウリリーはすでに広いメインの飼育展示場に登場して元気な姿を見せていますのでTVのニュース映像を二つご紹介しておきます。





33歳となっているスノウリリーですが元気な姿を見せてくれているのはうれしいことです。

(*後記)2月2日当日の様子を報じるニュース映像をご紹介しておきます。
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(資料)
Milwaukee County Zoo (THE MILWAUKEE COUNTY ZOO’S GROUNDHOG DAY
TAKES A NEW TWIST IN 2018!
)
Milwaukee Journal Sentinel (Jan.22 2018 - Wauwatosa-Elm Grove-Brookfield: A polar bear will be doing the Groundhog Day prediction at the zoo)
WTMJ-TV (Jan.23 2018 - Milwaukee County Zoo using a polar bear to make Groundhog Day prediction this year)
Milwaukee Journal Sentinel (Jan.26 2018 - Milwaukee zoo's polar bear will usher in spring and family activities at Groundhog Day event)
(*後記資料)
Milwaukee Journal Sentinel (Feb.2 2018 - Standing in for the groundhog, polar bear saw her shadow at the Milwaukee County Zoo)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマが堀に落ちたらどうなるか?(その2)(前) ~  動物園の危機管理
ホッキョクグマが堀に落ちたらどうなるか?(その2)(後)~ 堀に居座ったホッキョクグマ
アメリカ、ミルウォーキー動物園のスノウリリーが33歳となる ~ 寂しさの漂うお祝い会
by polarbearmaniac | 2018-01-31 00:15 | Polarbearology

男鹿水族館がクルミの死因は肝腫瘍との見解を発表 ~ 「観念性」と「実体性」による視座

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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

男鹿水族館が先日1月28日に死亡が確認されたクルミについて、その死因は肝臓にできた腫瘍のためと考えられるとの見解を本日発表しました、毎日新聞によりますと29日に解剖が行われて判明したと報じています。そして同紙によれば治療は行われていたと報じています。

死因についてはなんとなく予想していたことではありました。ホッキョクグマといった大型動物は診断や検査のためには麻酔が必要であり非常に厄介です。 本ブログでは今まで何頭ものホッキョクグマの訃報を投稿してきましたが、死因が肝臓腫瘍だった例は非常に多いのです。投薬治療といってもその進行を若干遅くすることができるといった程度の効力しかないはずです。ホッキョクグマの肝臓腫瘍の治療に懸命に取り組んだ例としては「アメリカ・ワシントン州タコマのポイント・ディファイアンス動物園のグレイシャーが亡くなる」という投稿を御参照下さい。直近の例でこれが死因となったのはデンマーク・オールボー動物園のラルスがそうでした。その検査と診断については「・デンマーク・オールボー動物園のラルス逝く ~ 亡き息子クヌートの許に永遠に旅立つ」及び「デンマーク・オールボー動物園で故ラルスの安楽死を執行した獣医さんの回想 ~ "ラルスとの悲しい別れ"」を御参照下さい。日本の最近の例では平川動物公園のホクト白浜AWSのアークティク東山動物園のミリー徳山動物園のユキもこれが死因となったわけです。
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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

クルミがどのようなホッキョクグマであったのかの評価には、多くの方々には賛成していただけないとは思いますが、間違いなく多様性があるのです。「クルミの死は早過ぎた」という感じ方は、それが21歳という彼女の年齢に関することであるならば的を得た言い方でしょう。しかし私には彼女はやるべきことは全てやった後の死であったという感じを持っています。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの36歳での死やフランツ・シューベルトの31歳での死は年齢的にいえば若かったにせよ彼らはやるべきことは全てやり、そして彼らにはやり残した仕事はないといった感じを持ちます。私が生前のクルミに会った最後の日 (2014年1月25日) の投稿に私は彼女があたかも以下のように考えているように感じ、それを次のように表現しました。

「私はあななたち人間が切望していたように、ちゃんと赤ちゃんを産んで育児放棄もせず暗い場所で三か月も授乳を行い、そして立派に赤ちゃんと一緒に産室から出た。そしてちゃんと娘は独りで遊んで育っている。いったいこれ以上の何を私にせよと言うのか? 私は自由なホッキョクグマなのである。何をしようとそれは私の勝手である。」
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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

「彼女は子育て上手であった」という評価は少なくとも彼女の生き方の美学を感じ取り、そしてそれに共感し、そしてそれを認めたことが前提で初めてできる評価だろうと私には感じます。ですから彼女の生き方の美学に必ずしも共感することのできない者にとっては彼女を別の観点から見るということになります。アンデルマやシモーナやフギースやオリンカやララはある種の「観念性」を身にまとったホッキョクグマですが、ウスラーダやマレイシュカやフリーダムやゲルダは「実体性」によって支配されているホッキョクグマです。前者は絶対評価が可能ですが後者は相対評価によって把握すべきホッキョクグマです。クルミは後者に属しています。後者のホッキョクグマへの評価には他個体の比較によってのみなされるということなのです。ですから本来は彼女の生き方の美学といったような絶対評価の物差しのみによってあれこれ言うことは難しいはずなのです。「独自の美学」「他個体との比較」、そのどちらの点についても少なくとも私には同好の方々の大方とクルミの母親像についての共感を共有することは必ずしも容易ではないということです。ホッキョクグマという動物は一般に考えられているよりもそのハーソナリティを構成する要素は複雑であるというのが私の印象です。

再びここで、クルミの死に深く哀悼の意を表します。

(資料)
男鹿水族館 (Jan.30 2018 - 1月28日に死亡したホッキョクグマクルミについて)
毎日新聞 (Jan.30 2018 - ホッキョクグマ「クルミ」の死因、肝腫瘍と判明)
秋田魁新報 (Jan.30 2018 - クルミの死因、肝臓の腫瘍か 男鹿水族館が発表)

(過去関連投稿)
男鹿水族館のクルミの体調不良について考える ~ これ以上の繁殖への挑戦からはもう解放してやるべき
男鹿水族館のクルミが亡くなる ~ 貫いた独立自尊の美学
by polarbearmaniac | 2018-01-30 21:00 | Polarbearology

アメリカ・バッファロー動物園のルナに期待される繁殖の成功 ~ 人工哺育個体へのAZAの繁殖への対応

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ルナ (Luna the Polar Bear)  Photo(C)Buffalo Zoo

アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で飼育されているのが人工哺育で育てられた5歳の雌(メス)のルナとトレド動物園生まれの同じ5歳である雄(オス)のサカーリの二頭です。この二頭は昨年彼らがまだ4歳だった時にすでに同居を開始していましたので繁殖の試みへの初めての挑戦であったと理解してよいと考え、果たしてルナに出産があるかということについて小さな期待を抱いていましたがやはりまだ無理だったようです。人工哺育された雌(メス)で出産と育児に成功したのはドイツのニュルンベルク動物園で生まれたあのフロッケぐらいなもので他の人工哺育された雌(メス)が出産と育児の成功した例というのは記録上は見出せていません。明確な科学的根拠はないものの人工哺育された雌(メス)が朱産・育児に成功するということは非常に難しいと一般には理解されていますのでバッファロー動物園のルナがそれに成功すればフロッケに続く個体になるわけです。フロッケもルナもパートナーのは恵まれていますので、その点には共通点があるわけです。
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サカーリ (Sakari the Polar Bear)  Photo(C)Baffalo Zoo

バッファロー動物園において今年はまだルナとサカーリの同居は開始になっていないようです。 来園者の減る冬期のシーズンにおける集客のためでしょうか、バッファロー動物園は2月一杯を「ホッキョクグマの日々 (Polar Bear Days)」と銘打って同園のスター的存在であるルナに会いに来てほしいというキャンペーンを行っています。それを報じる地元のTVニュースの映像を二つご紹介しておきます。登場しているのはいずれもルナです。
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アメリカは国別では飼育下のホッキョクグマの頭数が最も多いわけですが、ホッキョクグマの繁殖はあまりうまくいっていません。そのことに対する危機感は相当なもので、AZAの繁殖計画(SSP)の繫殖推進委員会はトレド動物園のランディ・メイヤーソンさんの強いリーダーシップのもとで一昨年秋から昨年の春にかけて大きな規模でのホッキョクグマの繁殖のための個体再配置が行われました。サカーリはその再配置計画によってトレド動物園からヘンリー・ヴィラス動物園を経てバッファロー動物園に来園しルナのパートナーとなることになったのです。現在ソルトレイクシティのホーグル動物園で飼育されている2歳の雌(メス)のノーラも人工哺育された個体ですがこのノーラについても将来は繁殖の成功に大いに期待してトレド動物園生まれでノーラと同じ年齢のホープと同居させて「適応化 (socialization)」を行っているのもそういった理由からなのです。ルナにせよノーラにせよ、なんとか繁殖に成功して欲しいといったAZAの繫殖推進委員会の強い願いがあるわけで彼女たちの今後を追いかけていくことで飼育下のホッキョクグマを集団として維持させていこうというAZAの努力の軌跡を注目していきたいと思っています。

(資料)
WGRZ-TV (Jan.27 2018 - Buffalo Zoo presents Polar Bear Days) (Jan.27 2018 - Polar Bear Days continue through February at Buffalo Zoo)

(過去関連投稿)
アメリカ・バッファロー動物園のルナとサカーリの若いペアへの期待 ~ 雌の人工哺育個体の繁殖への挑戦
アメリカ・バッファロー動物園でルナとサカーリとの同居開始 ~ 繁殖可能年齢到達と同時に挑戦させる考え方
(*ルナ関連)
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ その姿が突然公開
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃんの追加映像 ~ ララの子供たちの従妹であるルナ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の人工哺育の赤ちゃんのルナが初めて戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナの近況を伝えるTVニュース映像
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが雪の舞う戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが遂に一般公開へ
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園の赤ちゃんの「ルナ」が仮称から正式の名前となることが決定
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナの近況 ~ 人間の視線への意識と興味
アメリカ ・ ニューヨーク州、バッファロー動物園で遂にルナとカリーが初顔合わせ
アメリカ ・ バッファロー動物園でルナとカリーの正式な同居展示が開始 ~ カリーの今後について
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園でのルナとカリーの同居は順調に推移
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園のルナとカリーの近況 ~ 展示需要と個体数のアンバランス
アメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園でルナとカリーの一歳のお誕生会が開催される
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナとカリーの近況 ~ 新飼育展示場は2015年秋に完成
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナが約4.3メートル下の堀に転落、救出後に精密検査へ
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナの精密検査の結果が発表 ~ 左後脚二か所の骨折
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園で堀に転落し骨折したルナの治療が長期化へアメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園が転落事故で骨折し長期療養中のルナの現在の様子を公開
アメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園の新施設”Arctic Edge”に長期治療中だったルナが元気に登場
アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で人工哺育されたルナが三歳となる
(*サカーリ関連)
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園で新展示場 ”The Arctic Passage”がオープン
アメリカ・ウィスコンシン州、ヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリが繁殖のために他園移動が決定
アメリカ・ウィスコンシン州マディソン、ヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリのお別れ会が開催される
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリがバッファロー動物園に無事到着
アメリカ・バッファロー動物園に来園したサカーリが検疫期間を終了し新年より一般公開へ
by polarbearmaniac | 2018-01-30 01:00 | Polarbearology

ノルウェーで発見された一万二千年前のホッキョクグマの骨格の展示 ~ 氷河期時代の唯一の全身骨格の発見

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(C)Terje Tveit/Arkeologisk museum, Universitetet i Stavanger

今から約一万二千年前、まだ氷河期だった頃に生きていたホッキョクグマの唯一の完全な骨格が展示されている場所がノルウェーのスタヴァンゲル市の大学にある考古学博物館 (Arkeologisk museum) です。この骨格が発見された場所はノルウェー南部のローガラン県にあるフィニョイ (Finnøy) という島にある一軒の家の地下にある洗濯場の床の下からだったそうです(以下の地図参照)。 
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もちろんこの場所は現在はホッキョクグマの生息地ではないわけですが現在のノルウェーは氷河期には氷で覆われており、海面は現在よりも40m高かったということで、このホッキョクグマは北からこの場所に泳ぎ着いて死亡したとみられるということです。推定年齢は28歳、推定体重は600kgs だそうです。野生としてはかなりの高齢であり、しかも巨体であることに驚かされます。

この骨格の一部はすでに1976年に発見されていたそうですが6年間も陽の目を見ずにこの家の所有者が箱の中で保存していたそうですが、6年後の1982年になって考古学博物館の専門家スタッフが家の所有者の了解のもとで本格的な発掘調査を行い、床から70cmのところでほぼ完全なホッキョクグマの骨格を発見したそうです。その当時すでに氷河期のホッキョクグマの骨の発見は世界で9例あたつぉうですが、このノルウェーのフィニョイのようにほぼ完全な形で発見されたものは初めてだったそうです。そして骨格の若干部分の欠損の補修を行って1985年からスタヴァンゲル大学の考古学博物館で展示されているということです。
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(C)Eirik Gjesdal/NRK

この骨格が発見されたときに考古学博物館の専門家スタッフはこのホッキョクグマの死因を推定しようとしたわけですが、少なくとも空腹や飢餓によって死亡したのではないということ以上は突き止められなかったようです。空腹や飢餓が死因ではないということの理由は、このホッキョクグマの骨格のそばにホッキョクグマが主食としているアザラシの骨が一緒に発見されているという事実があるからだそうです。
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1982年の発掘調査 Photo(C)Terje Tveit/Arkeologisk museum, Universitetet i Stavanger

ホッキョクグマの起源に関する研究はここのところ新しい説が登場するのがやや止まっているようです。「ホッキョクグマとヒグマは、氷期だった約15万年前に共通の祖先から枝分かれした」といったかつての通説である「15万年前説」はとうの昔にすでに崩壊しており、その後には「60万年前説」が通説になったわけです。しかしその後に「500万年前説」という衝撃的な新説の登場に「60万年前説」は大いに揺らいだというわけです。ところがその次に登場したのは「40万年前説」です。日本では依然として「15万年前説」が定説として定着しているようですが、その理由は、日本ではホッキョクグマの起源について世界でどのような最新の研究結果が発表されているかが報道されていないことに原因があると思われます。その背景として、動物園では人気動物であるホッキョクグマに関して彼らについてもっと知りたいという我々ファンの側からの知的欲求が日本ではやや希薄であるという現実があるということです。そういった知的欲求(つまり「需要」)が薄ければ報道(つまり「供給」)もなされないということです。近年における分子生物学の急速な発展によって、世界では次々と有力な説が登場しており、ホッキョクグマの起源については現時点では明確には確定していないというのが実際のところです。ただし「15万年前説」という以前の通説がすでに崩壊しているということだけは間違いありません。ご興味のある方は過去関連投稿の「ホッキョクグマの起源について」の投稿のシリーズを御参照下さい。また新しい有力な説が登場しましたら直ちにご紹介したいと考えています。ホッキョクグマの起源に関する研究について、世界の最前線の状況をフォローしていきたいと思っています。実に興味の尽きないテーマなのです。

(資料)
Arkeologisk museum/University of Stavanger (The Finnøy Polar Bear)
NRK (Dec.27 2017 - Under gulvet i vaskekjelleren fant Sverre en 12.000 år gammel isbjørn)
Phys.Org (Jan.23 2018 - The Finnøy polar bear)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの最古の化石が語ること
ホッキョクグマの最古の化石が語ること (続)
ホッキョクグマの起源について(1) ~ 諸説の成立過程を整理する
ホッキョクグマの起源について(2) ~ ホッキョクグマ版 「イヴ仮説」 の登場
ホッキョクグマの起源について(3) ~ 画期的な新説が登場するも依然として残る謎
ホッキョクグマの起源について(4) ~ 衝撃的で強力な新説の登場により通説が遂に崩壊へ
ホッキョクグマの起源について(5) ~ ホッキョクグマとヒグマとの進化過程での交配を否定する新説登場
ホッキョクグマの起源について(6) ~ 「新・通説」の結論を否定した新説が登場し謎は再び深まる
by polarbearmaniac | 2018-01-29 01:00 | Polarbearology

男鹿水族館のクルミが亡くなる ~ 貫いた独立自尊の美学

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クルミ (Eisbärin Kurumi /Белая медведица Куруми)
(2013年9月14日撮影 於 男鹿水族館)

男鹿水族館より突然、発表がありました。同水族館で飼育されていた21歳の雌(メス)のクルミの死亡が本日1月28日に確認されたそうです。死因その他については調査中とのことです。 (*追記 - 報道によりますと「28日午前8時前、水族館の職員が展示場で横になって寝ている状態のクルミが呼吸をしていないのを発見しました。死んだ原因についてはわかっていません。クルミは去年の夏に体調を崩し、その後回復しましたが、それ以降も体調のよくない状態を繰り返していました。1日2回のエサも27日は全く食べなかったということです。」秋田放送 1月28日付け)ということだそうです。
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クルミ(右)とミルク(左) (2013年9月14日撮影 於 男鹿水族館)

現時点では詳しい発表がありませんので彼女の死について特に何も述べることができません。ただ私の感想では、クルミは自分の生き方を見事に貫いたということです。それは、ある場面においては多くのファンの期待に沿っているという外形的な形を見せていたことで、そしてその同じ場面においては私の本当の期待に沿わない形で....そういうことでした。しかしそれらは全て彼女の美学に基づいたものだったことは間違いないと思われます。クルミは一応は昨年2017年の繁殖シーズンに参戦したことにはなっています。しかしそれが彼女の生き方にとって不本意なものであったとすれば彼女の突然の死は、私には何らかの運命の liquidation であったのかなという印象が頭の片隅をよぎったということも事実です。いずれにせよ彼女の自身の美学は貫徹されたのだと私は考えています。その彼女の美学の結晶こそがミルクという唯一無二の美しい宝石のような存在であるということだと私は理解しています。"Rien n'existe après Milk"....これが彼女の美学の結論なのです。

謹んで心よりクルミの死に哀悼の意を表します。

(後記)地元のTVニュースです。
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(資料)
男鹿水族館 (Jan.28 2018 - ホッキョクグマ クルミについて
秋田魁新報 (Jan.28 2018 - ホッキョクグマのクルミが死ぬ 男鹿水族館GAO)

(過去関連投稿)
男鹿水族館のクルミの体調不良について考える ~ これ以上の繁殖への挑戦からはもう解放してやるべき
(*クルミとミルク関連)
・男鹿水族館の赤ちゃん、はじめまして!!
・クルミの赤ちゃん(クーシャ - 仮称) の素顔と性格 ~ 一般公開日初日の印象
・クルミお母さんの性格と母親像 ~ その 「対象非関与型母性」への評価について
・梅雨期の出羽の国、男鹿水族館でクルミ母娘との再会
・美しく成長を遂げつつあるミルク ~ その素顔と性格
・クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
・クルミ母娘の夏の日 ~ 大きな展示場へ移動した親子との再会
・"La tristesse allante de Milk" ~ クルミとミルクの母娘関係と行動の基本的構図を探る
・悪天候、そして夏の終わりの男鹿水族館 ~ 転換点を迎えたクルミとミルクとの母娘関係
・驚くべき進化を遂げつつあるミルク ~ "Efforcez-vous d'entrer par la porte étroite..."
・過ぎ去らない夏の残る男鹿水族館 ~ クルミとミルクの母娘模様
・ミルクの楽しいおもちゃ遊び ~ 超一流の遊びの能力
・冬の日の日本海と男鹿水族館、そして別れの迫ったクルミとミルクの母娘 ~ 感傷の存在しない爽やかさ
・クルミ、その特異なる母性へのオマージュ ~ 「母親」 たることを拒絶した、その逆説的母親像への敬意
・独立自尊のミルク、その涙無しの旅立ち ~ また釧路でお会いしましょう、お元気で
(*ホッキョクグマの母親像)
・「情愛型」 と 「理性型」、「対象関与型」 と 「対象非関与型」 のそれぞれの母親像の違いを探る
・クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
by polarbearmaniac | 2018-01-28 16:00 | Polarbearology

ロシア・クラスノヤルスク動物園で「新血統」の誕生、今回はならず ~ セードフ司令官が5月に帰還へ

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オーロラ(左)とフェリックス(右)
Photo(C)sibnovosti.ru/"Роев ручей" Красноярский зоопарк

ロシア・シベリア中部のクラスノヤルスク動物園に暮らす12歳の雄(オス)のフェリックスと8歳の雌(メス)のオーロラ(本名 ヴィクトリア)という共に野生出身のペアでの繁殖が期待されておりm地元ではオーロラの出産に大いに期待する声が上がっていたわけです。ここにきてクラスノヤルスク動物園は自元メディアの取材に答える形でオーロラが現時点でも出産していないことを認め、事実上昨年2017年の繁殖シーズンにおいては繁殖に成功しなかったことを認めました。もう1月も終わりが近づいていますので出産が期待されているホッキョクグマを依然として産室内に留め置くことは意味がないということでしょう。そもそもホッキョクグマには妊娠期間 (Pregnancy Duration/Total Gestation times) はデータ上は164~294日となっており、それを遥かに超えても出産を期待するということは意味のない話です。

このククラスノヤルスク動物園の今までのオーロラの出産準備についてメディア等に語ってきた内容には何か安定感の欠けた腰の据わらない内容が感じられていたわけですが、それはやはり同園にはホッキョクグマ繁殖にまだ成功していないという実績の無さが現れていたように私には感じられました。今年2018年のシーズンには当然またオーロラは繁殖に挑むことになると思いますがクラスノヤルスク動物園はもっと実績のある他園からのアドバイスを得たほうがよいと私には思えます。とにかくこのオーロラとフェリックスのペアは野生個体同士のペアですから繁殖に成功すれば「新血統」の誕生ということになります。クラスノヤルスク動物園での今後のこのペアの推移を日本のホッキョクグマ界は注意深く見守っていく必要があるわけです。ここで昨年2017年に放送されたTVニュースの中でオーロラとフェリックスの登場しているものを再度ご御紹介しておきましょう。





さて、クラスノヤルスク動物園の所有であるホッキョクグマにはあと一頭、ウスラーダの産んだ三つ子のうちの一頭であり15歳になった雄(オス)のセードフ司令官 (Командор Седов - ロシア語では「コマンドル・セドーフ」と発音します) がいるわけですが、彼はBLで現在ゲレンジークのサファリパークで暮らしています。クラスノヤルスクでは大人気であるこのセードフ司令官がとうとう今年の5月にクラスノヤルスク動物園への帰還が決まったそうです。おそらくこれはクラスノヤルスク動物園では待望の新しいホッキョクグマ飼育展示場が完成・オープンするのに合わせて帰還するということなのだと思います。このセードフ司令官は16頭もいるウスラーダの子供たちのうちの一頭ですので野生出身のオーロラと繁殖上のペアを組ませることは得策ではないとして他園にBLで出張させられたわけですが、仮に彼がクラスノヤルスク動物園に帰還した場合にパートナーはどうするのかといった疑問が湧いてきます。しかし彼はクラスノヤルスクのファンからは大人気のホッキョクグマですので帰還するのは当然といえば当然でしょう。

(*追記)別の報道によりますとセードフ司令官は2018年の11~12月あたりまでを目途に帰還すると述べています。そして新飼育展示場のオープンは2018年だと報じています。

(資料)
Комсомольская правда в Красноярске (Jan.27 2018 - Разочарование да и только: белого медвежонка в красноярском зоопарке у Авроры и Феликса не будет)
(*追記資料)
sibnovosti.ru (Jan.29 2018 - Белый медведь Седов вернется в Красноярск в конце 2018-го года)

(過去関連投稿)
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園の野生出身の新ペアの繁殖への期待 ~ 日本は果実を狙え
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園の「プール開き」 ~ 夏に向けたフェリックスとオーロラの姿
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園の野生出身のフェリックスとオーロラのペア形成への準備
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園の「国際ホッキョクグマの日」のフェリックスとオーロラの姿
ロシア・クラスノヤルスク動物園のフェリックスとオーロラの同居開始 ~ 新血統の誕生への大きな期待
ロシア・クラスノヤルスク動物園、野生出身のフェリックスとオーロラが繁殖に向け驀進
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマたちに欧州の来園者からプレゼント
ロシア・クラスノヤルスク動物園の新飼育展示場計画発表 ~ 欧露の「囲い込み」体制に日本はどう対応するか
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ロシア・クラスノヤルスク動物園でホッキョクグマのバレンタインデーが祝われる ~ 冬期の新しいイベント
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のプール開き ~ フェリックスとオーロラの夏の季節の始まり
ロシア・中部シベリアに記録的な最高気温の夏が到来 ~ フェリックスとオーロラの夏の過ごし方
ロシアのクラスノヤルスク環境監視検察庁が監査で問題視したクラスノヤルスク動物園のホッキョクグマの移動
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ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のオーロラの出産準備体制 ~ 一抹の不安を感じる経験不足
ロシア・クラスノヤルスク動物園のオーロラの出産準備体制に同園の大きな誤解の存在の危険性
(*セードフ司令官関連)
ロシア・クラスノヤルスク動物園の2頭の伊達男たち ~ 華麗なる独身生活を謳歌?
ロシア・クラスノヤルスク動物園のプール開き
ロシア・クラスノヤルスク動物園の夏の始まり ~ プールを雌2頭に占領されてしまったセードフ司令官閣下
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のプール開き
ロシア・シベリア中部のクラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の10歳のお誕生会 ~ 行方不明の兄弟たち
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の希望無き恋 ~ 野生出身の雌は高嶺の花
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が今週末に同園を出発し新天地へ
ロシア・シベリア中部 クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が同園を出発し、五千キロの移動の旅へ
ロシア・クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が陸路5日間で無事にスタロースコルィスク動物園に到着
ロシア西部、スタロースコルィスク動物園でのラパとセードフ司令官の近況 ~ ラパの健康状態への危惧
ロシア西部、スタールイ・オスコル市のスタロースコルィスク動物園で、ラパとセードフ司令官の同居が始まる
ロシア・スタロースコルィスク動物園のラパとセードフ司令官が黒海沿岸のゲレンジーク・サファリパークへ
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークで暮らすセードフ司令官とサーカス出身のラパの近況
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークのホッキョクグマ展示場にライブカメラ設置
所有権を持つロシア・クラスノヤルスク動物園の同意無しに他園に移動させられた出張中のセードフ司令官
ロシア・クラスノヤルスク動物園に所有権のあるセードフ司令官の無断移動問題、ほぼ一件落着へ
ロシア・ゲレンジーク、サファリパークのセードフ司令官が来年2016年にクラスノヤルスク動物園に帰還が決定
ロシアのクラスノヤルスク環境監視検察庁が監査で問題視したクラスノヤルスク動物園のホッキョクグマの移動
by polarbearmaniac | 2018-01-28 00:15 | Polarbearology

札幌・円山動物園のララとリラが新飼育展示場である「ホッキョクグマ館」に非公開で登場

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札幌・円山動物園に完成した新飼育展示場である「ホッキョクグマ館」に1月25日にララとリラの親子が初めて登場したそうです。詳しいレポートは同園の公式ブログの「初めてのホッキョクグマ館 ララとリラの巻」を御参照下さい。やはりララの警戒心はかなりのもののようですがリラはちょっと無警戒というか単純というか、やはりリラらしいと思います。

この親子を新飼育展示場に入れたままでこの施設を一般公開にするのか、あるいは再度とりあえずこの親子を旧飼育展示場に戻して施設の一般へのオープンの直前にまた新飼育展示場に再度戻すのかについてはよくわかりません。多分後者なのかもしれません。

やはり動画を見てみたい気持ちもします。

(過去関連投稿)
札幌・円山動物園の「新ホッキョクグマ飼育展示場」が竣工 ~ その経緯と意義を考える
札幌・円山動物園で完成の「ホッキョクグマ館」が報道関係者に公開される
札幌・円山動物園のデナリが新飼育展示場(ホッキョクグマ館)に登場 ~ 同園の馴致訓練の戦略を推理する
by polarbearmaniac | 2018-01-27 21:30 | Polarbearology

カナダ・ウィニペグ、アシニボイン公園動物園で保護された野生孤児二頭の名前が決定し一般公開となる

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雌(メス)の ウィロウ (Willow the Polar Bear)
Image:Jamie Dowsett/CTV Winnipeg
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雄(オス)の バフィン (Baffin the Polar Bear) 
Image:Jamie Dowsett/CTV Winnipeg

昨年の12月上旬にカナダ・マニトバ州のチャーチル付近で保護されウィニペグのアシニボイン公園動物園内にある「ホッキョクグマ保護・厚生センター (Leatherdale International Polar Bear Conservation Centre)」に送られた共に一歳である二頭のホッキョクグマ孤児について命名のためのネット投票が開始されたことはすでに投稿していましたが、このたびその結果によって雄(オス)が バフィン(Baffin)、雌(メス)が ウィロウ (Willow) と決まったことが同園から発表されました。たった三日間の投票期間だったものの、それぞれに対して5,000もの投票があったそうです。この二頭は同園内の「ホッキョクグマ保護・厚生センター」で一般公開が開始されました。その様子を見ておきましょう。三つ目の映像については写真をワンクリックして下さい。





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前回の投稿でも述べましたが、この二頭は母親が異なるそうですので双子ではないということです。それからバフィンという名前のホッキョクグマはもちろんすでに日本にいるわけですが、どちらかというとやはり雄(オス)の名前といった語感のような気がします。「バフィン」というのはもちろんカナダ北部のバフィン島 (Baffin Island) が由来でしょう。

(*追記)以下は以前にご紹介していた野生孤児を飼育下で保護することについてチャーチルでは反対の意見が出てきていることを報じているニュース映像です。ワンクリックしていただくと開始画面に飛びます。
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(資料)
CBC (Jan.26 2018 - Say hello to Baffin and Willow, Winnipeg zoo's latest polar bear cubs)
Winnipeg Free Press (Jan.26 2018 - Assiniboine Park Zoo names two new polar bears)
CTV News (Jan.26 2018 - Zoo names polar bear cubs from northern Manitoba) (Names picked for Northern Manitoba polar bear cubs)
ChrisD.ca (Jan.26 2018 - Meet Baffin and Willow: Names Chosen for Winnipeg Zoo’s Newest Polar Bears)
Global News (Jan.26 2018 - Winnipeg zoo’s Journey to Churchill introduces two new bear cubs)

(過去関連投稿)
カナダ・マニトバ州チャーチルの当局者がホッキョクグマ孤児の保護方針の転換を主張 ~ 科学と倫理の相克
カナダ・マニトバ州 チャーチルで保護された二頭の幼年孤児は生息地に戻さずにアシニボイン公園動物園へ
カナダ・マニトバ州チャーチル付近で保護された二頭の野生孤児がアシニボイン公園動物園に到着
カナダ・ウィニペグ、アシニボイン公園動物園で保護された二頭の野生孤児の命名の投票が始まる
by polarbearmaniac | 2018-01-27 06:00 | Polarbearology

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