街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・カザン市動物園のテルペイの近況 ~ 過去の栄光と伝説、そして謎に包まれた同園の乏しい情報

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テルペイ Photo(C)Казанский зооботсад

ロシア南部のロストフ動物園で飼育されていた野生孤児出身の推定15歳の雄(オス)のテルペイ(Терпей) が繁殖目的で今年の1月にカザン市動物園に移動してきた件はすでに投稿しています。そのテルペイのパートナーとするのは23歳の雌(メス)のマレイシュカ (Малышка) なのですが、このマレイシュカはロシアでも繁殖の実績の豊富なホッキョクグマです。彼女はウスラーダの妹、つまりカザン血統の直系にあたるわけで繁殖能力に優れているのももっともなことだと思われます(この「カザン血統」についてお知りになられたい方は「モスクワ動物園が、今後ロシア国内で誕生の個体はロシア国内と欧州だけで飼育の意向を表明」という投稿を御参照下さい)。このマレイシュカとテルペイの間での繁殖が成功するかどうかは何とも言えませんが私は悲観的に考えています。この二頭がどのような暮らしをしているかについては全くといってよいほど情報がありません。しかしごく最近カザン市動物園はテルペイの姿を写真で公開しました。依然として非常に厳しい飼育環境でありテルペイに対してもマレイシュカに対しても同情の念を禁じ得ません。
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テルペイ Photo(C)Казанский зооботсад

カザンには定期的に動物園に行って動物たちの様子をネット上で報告するようなファンはいないようです。そもそもホッキョクグマファンというのはカザンにはいないようで、このマレイシュカが2012年12月に産んだユムカ(現在はミルカという名前でペルミ動物園で飼育)が母親であるマレイシュカと一緒に過ごす最後の日も、誰もこの親子に会う目的で動物園を訪れたファンは私以外には一人もいなかったという非常に寂しい現実があったわけでした。その日のマレイシュカとユムカ(ミルカ)の様子は過去関連投稿の「2013年9月 カザン市動物園訪問記」を御参照下さい。

カザン市動物園というのはホッキョクグマが亡くなってもその事実を公表しない動物園です。人に知られたくない事情があるのか、それとも本来ホッキョクグマに関する情報の発信が極めて乏しいことに理由があるのかわかりませんが容易にはこの動物園におけるホッキョクグマの情報を得ることは難しいわけです。マレイシュカの姿も最近は全く確認できず、彼女が本当に元気でいるのかどうかも確認のしようがないわけです。現在は新動物園が建設中ですが、果たしていつオープンするのかもよくわかりません。二ヶ月ほど前の地元TVニュースにおける新動物園建設工事の様子を見てみましょう。この様子ですと新動物園のオープンは来年の夏以降のことになるでしょう。



さて、話をカザン市動物園のホッキョクグマに戻しますが、今年1月にロストフ動物園から移動してきた雄(オス)のテルペイですが彼はもともとペルミ動物園で飼育されていました。その彼のペルミ動物園時代の姿を再度下の映像でご紹介しておきます。左側にいるのは故アンデルマです。


プラスチック板と遊ぶペルミ動物園時代のテルペイ(2013年9月30日撮影)- Terpey the polar bear plays with plastic materials at Perm Zoo, Russia, on Sep.30 2013.

このテルペイというのは「礼儀正しい」好男子で私は以前から彼を評価しています。彼は2シーズンの予定でカザン市動物園に出張してきているわけですが、この厳しい飼育環境でなんとか無事でいてほしいと思います。次の映像はマレイシュカです。この映像も私の撮影したもので以前にもご紹介しています。彼女はウスラーダの妹ですのでウスラーダに似ているわけですが、それよりももっとウスラーダの娘であるモスクワ動物園のシモーナに似ていると思います。


カザン市動物園のマレイシュカ(2015年8月14日撮影)- Malyshka the polar bear at Kazan Zoological Garden, Russia on Aug.14 2015

マレイシュカはよい意味で非常にふてぶてしいホッキョクグマです。彼女はこのカザン市動物園で伝説の名ホッキョクグマであった故ディクサ (1973~2006)から誕生しています。このディクサについてお知りになられたい方は「女帝ウスラーダとシモーナ、コーラ、リアの三頭の娘たち ~ 偉大な母親たちの三代の系譜」という投稿を御参照下さい。このカザン市動物園のような飼育環境の悪い動物園で暮らしていた故ディクサ、そしてやはり地方都市のペルミの小さな動物園で暮らしていた故アンデルマ、この二頭のホッキョクグマの娘(ウスラーダ)と息子(故メンシコフ)が作りだしたのが「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」という、日本を席巻し欧州にも勢力を広げつつある血統なのです。新しい動物園ができる前にまたこの現在のカザン市動物園に行ってみようかなとも思っています。過去の栄光と伝説、そして謎に包まれたカザン市動物園のこの飼育展示場を改めて記憶に深く刻みつけておきたいと思っています。

(*注)このマレイシュカというホッキョクグマはロシア語で "Малышка"と綴りますので本来は「マリィシュカ」と表記すべきなのですがカザン市動物園は血統登録を行う際にラテン文字で"MALEESHKA" と登録してしまったわけです。ですから彼女の正式な国際血統名は"MALEESHKA"が正しいことになってしまったというわけです。これに沿って本ブログでは日本語表記を 「マリィシュカ」ではなく「マレイシュカ」としています。ただしyoutube のような動画のタイトルでは私はロシア語の "Малышка" を尊重してラテン文字表記を "Malyshka" としています。

(過去関連投稿)
ロシア・ペルミ動物園におけるセリクとユムカの近況 ~ テルペイがロストフ動物園に移動か?
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園のテルペイがロシア南部 ドン河下流のロストフ動物園に無事到着
ロシア南部 ・ ドン河下流のロストフ動物園に移動したテルペイの近況 ~ 飼育員さんに惚れ込まれる
ロシア・ロストフ動物園、テルペイ(Терпей) の「国際ホッキョクグマの日」
ロシア南部 ロストフ動物園のテルペイとコメタの飼育展示場改良工事にロスネフチ社が資金援助
ロシア・ロストフ動物園のテルペイとコメタの近況 ~ ノヴォシビルスク在住のファンの方の映像
ロシア南部・ロストフ動物園のコメタとテルペイとの新ペア ~ 飼育展示場改造による30年振りの繁殖への期待
ロシア・ロストフ動物園のコメタの飼育展示場改造工事は6月に終了の見通し ~ ホッキョクグマを支えるもの
ロシア南部 ・ ドン河下流のロストフ動物園のコメタの飼育展示場の改造工事が終了
ロシア・ロストフ動物園のホッキョクグマたちの一日 ~ ロストフ・ナ・ドヌは欧州とロシアで最も危険な街?
ロシア・ロストフ動物園のコメタの近況 ~ 個体にロシアのファンの関心が深まる
ロシア南部・ロストフ動物園の5歳になったコメタが本格的に挑んでいく繁殖の舞台
ロシア・ロストフ動物園がコメタとテルペイ(ヤクート)とのペアでの繁殖を断念 ~ 新パートナー導入へ
ロシア・ロストフ動物園の「国際ホッキョクグマの日」~ 優遇されるコメタと冷遇されるテルペイ (ヤクート)
ロシア南部 ロストフ動物園のコメタの新しいパートナー探しに予想される困難な現状
ロシア南部・ロストフ動物園の猛暑の下でのコメタ ~ プールの水温冷却を好まないホッキョクグマの不思議
ロシア南部・ロストフ動物園で飼育展示場の整備工事が行われる ~ 「ロストフは熊谷より暑かった!」
ロシア・ロストフ動物園で進むホッキョクグマ飼育展示場の整備 ~ 次々と行われるロスネフチ社の資金援助
ロシア・ロストフ動物園のコメタとテルペイ(ヤクート)の夏の日
ロシア・ロストフ動物園のテルペイがカザン市動物園へ ~ 2年間マレイシュカのパートナーとして繁殖に挑む
(*マレイシュカ関連)
ロシア・カザン市動物園の「国際ホッキョクグマの日」のマレイシュカの姿 ~ 昨年末には出産に成功せず
ロシア・カザン市動物園に短期出張したアルツィンがチェリャビンスク動物園に帰還 ~ 行方不詳のユーコン
ロシア連邦・タタールスタン共和国 カザン市動物園の20歳のマレイシュカ、昨シーズンは出産ならず
ロシア・タタールスタン共和国 カザン市動物園のマレイシュカの夏の日 ~ 知られざる偉大な母
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカの近況 ~ 再び母としての姿を見せるチャンスはあるか?
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカの近況 ~ 「甘いおやつの日」のイベント
ロシア・カザン市動物園が誇る自園の雌(メス)の個体の高い「育児成功率」 ~ 根拠薄弱な数字の魔術
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカに人工授精が計画される ~ ドナー候補はどの雄(オス)の個体か?
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカの近況 ~ 人工授精を行う決断をした同園
ロシア・タタールスタン共和国 カザン市動物園のマレイシュカの習慣化した旺盛な食欲と堂々たる体型
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカが旧飼育展示場で迎えた最後の冬 ~ 5月末に新動物園がオープン
ロシア・カザン市動物園のマレイシュカの近況 ~ 新動物園の完成は8月下旬に延期となる
(*2011年9月 カザン市動物園訪問記)
・カザン市動物園へ ~ 貧弱な飼育環境と大きな繁殖実績との間の巨大なパラドックス
・カザンの星、マレイシュカお母さんの素顔
・カザンで見たユーコン (天王寺動物園、ゴーゴの父) の素顔
・カザン市動物園訪問2日目 ~ 疑惑から事実の確定へ
(*2013年9月 カザン市動物園訪問記)
・成田からモスクワ、そしてカザンへ ~ 別れが目前に迫った母娘への想い
・シャリアピンパレスからカザン市動物園へ ~ 別れの時が迫ったマレイシュカとユムカの母娘の姿
・マレイシュカお母さんの性格と母性
・ユムカの性格と素顔 ~ カザンに初雪の降った日...そして別れ
(*2015年8月 カザン市動物園訪問記)
・カザン市動物園、その疑惑と謎に満ちた不可解な状況 ~ マレイシュカとの再会
・マレイシュカは年末に出産するか? ~ 劣悪な飼育環境にも逞しく生きるホッキョクグマのロシア魂
・ユーコン (Белый медведь Юкон - 姫路ホクト、白浜ゴーゴの父)   (1988 ~ 2014)
by polarbearmaniac | 2019-08-23 23:45 | Polarbearology

アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラが骨折が治癒して飼育展示場に復活

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飼育展示場に復活したノーラ Photo(C)Hogle Zoo

アメリカ・ユタ州、ソルトレイクシティのホーグル動物園で飼育されているコロンバス動物園生まれで人工哺育で育った3歳の雌(メス)のノーラ (Nora) が今年2019年の1月23日に右前脚の上腕骨 (humerus bone) を骨折して8時間にも及ぶ大手術が行われて、その後は治癒に向かっているという一連の出来事は全て投稿してきましたので過去関連投稿を御参照下さい。そのノーラは8月21日に遂に再びホーグル動物園の飼育展示場に復活して元気な姿を見せたそうです。その様子を以下の写真をワンクリックしていただき、開いたページで映像でご覧ください。
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Photo(C)Hogle Zoo

担当飼育員さんは2~3週間前から動物園が開園する1時間前にノーラがリハビリを行っていたバックヤードから飼育展示場に出る扉を開放してノーラが飼育展示場の感触を取り戻せるようにしていたそうです。そのバックヤードでのノーラの様子についてはこちらをクリックしていただいて映像をご覧ください。以前に行われていた遊び友達であるホープとの同居の開始は9月末までは行わないそうで、しばらくの間は飼育員さんが飼育展示場でのノーラの様子を詳しく観察する予定だそうです。そういった事情もあってノーラを一日のうちのいつも決まった時間に飼育展示場に登場させるかどうかについては未定であるそうです。ホープとの同居を開始させる前に再度ノーラに対してのX線での検査が行われる予定だそうで、そういった結果をもとにホープとの同居開始について判断したい意向であると飼育員さんは語っています。ノーラには代謝性骨疾患 (Metabolic bone disease)という幼年期からの持病がありますのでホーグル動物園としてもホープとの同居開始に関しても決して無理はさせないという姿勢が鮮明です。ともかく一安心といったところですが、これからのノーラの健康状態を含めたその成長については注視していきたいと思います。

このユタ州・ソルトレイクシティのホーグル動物園は今更繰り返すまでもなく札幌・円山動物園のデナリの生まれた動物園です。ホッキョクグマ飼育に関しては非常に見識のある動物園です。「アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラの成長 ~ スタッフの強い意思と苦闘の最前線」という投稿を御参照頂きたいのですが、そこでご紹介した内容からもういったことが窺い知れるというわけです。欧州やロシアの動物園は総合力において、やはりアメリカの動物園には負けてしまうというのが私の印象です。

(資料)
Deseret News (Aug.21 2019 - Surgery bears fruit: Hogle Zoo’s Nora back on her feet)
fox13now.com (Aug.21 2019 - ‘Superstar’ polar bear Nora returns to Hogle Zoo exhibit after suffering broken bone)
KUTV 2News (Aug.21 2019 - Hogle Zoo polar bear makes 'big strides' after breaking humerus bone)
ABC 4 (Aug.20 2019 - Hogle Zoo’s polar bear ‘Nora’ recovering after breaking leg)

(過去関連投稿)
アメリカ・トレド動物園のホープがソルトレイクシティのホーグル動物園に無事到着
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園でノーラとホープが同居を開始し、一般公開となる
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラが満二歳へ ~ 必読の 'The Loneliest Polar Bear'
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園でのノーラとホープの同居が充実への兆しを見せる
「ノーラの物語 "The Loneliest Polar Bear"」がダウンロード可能となる
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラの成長 ~ スタッフの強い意思と苦闘の最前線
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラとホープの夏の日
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラが右前脚の上腕骨を骨折 ~ 月曜日に大手術が予定
アメリカ・ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のノーラの大手術は成功し、その後の経過も順調に推移
by polarbearmaniac | 2019-08-22 23:55 | Polarbearology

ロシア・ヴォルゴグラードでの巡回動物園でウムカとスネジョークの生存が確認される

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Image:Высота 102

ロシアにおける巡回動物園 (Передвижной зоопарк) というのはロシアの地方の中小都市をキャラバンのように回って住民に動物たちを見せるという、いわゆる移動動物園なのですが、ここには深い闇が横たわっていることは過去関連投稿を御参照頂きたく思います。これこそが「ロシアの暗部」であるわけで、大変残念なことにこの巡回動物園にはホッキョクグマも存在しています。「ロシアの巡回動物園「モスクワ・サファリ園」に暮らすウムカとスネジョーク ~ ロシアの闇の部分」という3年前の投稿を御参照頂きたいのですが、そこでご紹介したウムカとスネジョークという二頭のホッキョクグマはそれ以降どうなったのかについて全く情報がありませんでした。私は非常に心配していました。ところが本日(8月21日)になってヴォルゴグラード(昔はスターリングラードと呼ばれていた都市です)にこの移動動物園が再び戻ってきていて、そこを訪れた地元の方が撮影した映像が地元メディアの記事に紹介されてホッキョクグマの姿が映っていることから劣悪な条件下でなんとか生き延びていることが確認できました。以下がその映像です。映像開始後26秒あたりから登場するホッキョクグマと映像開始後34秒あたりから登場するホッキョクグマは別の個体である可能性が濃厚であると思いますので、ウムカとスネジョークの二頭は生存していることがほぼ確実であることがわかります。この映像を撮影された方(子供さんだそうです)はあまりにこの巡回動物園における動物たちの状況が悲惨であることを悲しんで映像を撮影しながら泣いている声が収録されています。



気温は40℃近い高さとなっているそうで悪臭が漂っているとヴォルゴグラードの地元のメディアは報じています。「巡回動物園・サファリ園 (Передвижной зоопарк «Сафари»)」と呼ばれている今回ヴォルゴグラードの巡回動物園の園長は、「スタッフは動物たちが暑さで健康を損なわないように努力しており、"Ветеринарный комитет" (これを何と訳せばよいかは難しいですが、一応 "獣医委員会” としておきます)はこの状態での飼育に意義は唱えておらず、またビタミンなどを含むきちんとした食事も与えている。」と地元メディアの取材に対して語っています。ホッキョクグマのいる区画にある窪み(プールの代わりでしょう)には水が入っていないことを記者が園長に質問すると園長は「夜に水を入れます。」と答えています。記者の取材があったためかスタッフは動物たちに水をかけてやるということを行い始めたそうです。この「巡回動物園・サファリ園」の園長は20年にわたってロシアのサーカス団体を統轄する組織である「ロスツィルク «Росцирк»」の責任者の一人であり、「この動物園の動物たちはサーカスで演技していた動物たちである。」と語り、地元住民がこの巡回動物園の飼育環境の悪さについてヴォルゴグラードの地元当局に告発しようという動きがあることを牽制する発言を行っています。

さて、これで一つの事実が完全に明らかになりました。それは、この巡回動物園を運営しているのはやはりロシアのサーカス団体である「ロス(ゴス)ツィルク」であり、飼育されている動物たちは以前から予想していた通りサーカスで活躍した(あるいは不適格の烙印を押されてしまった)動物たちで、要するにサーカスを引退後に(引退させられた後に)、送り込まれる場所であるという事実です。現在ロシアのサーカスで唯一、依然として活躍しているホッキョクグマはモーチャ (Мотя)、ウムカ (Умка)、クノーパ (Кнопа)、ドーラ (Дора) という四頭の雌(メス)のホッキョクグマたちです。これらのホッキョクグマたちのサーカスでの演技を止めさせて彼らをサーカスから解放しようというネット上での署名活動も行われています。私は動物たち(ホッキョクグマ)をサーカスで演技させることには大反対です。しかし彼らを今、直ちにサーカスから引退させることができたとしても、彼らの所有権を持つのは「ロス(ゴス)ツィルク」であり、この団体は引退させたホッキョクグマを直ちに巡回動物園に送りこむでしょう。そうなれば4頭のホッキョクグマたちにはもっと悲惨な運命が待っているのです。「そうなってもよいのですか?」と私はその署名活動を主宰している方に申し上げたいと思います。この署名活動に賛同していらっしゃる方(ロシアと欧州の方)は少々無責任ではないでしょうか? サーカスでの演技を止めさせるより前に、まず「出口を塞ぐ」ことが必要なのです。つまり、サーカスを引退した(引退させられた)動物たちが巡回動物園に「流れ込む」という出口を塞ぐ方が先だと私は思います。「サーカスにいる動物たちは可哀相だ。だからサーカスから彼らを直ちに解放せよ!」という気持ちが非常によく理解できます。しかし彼らの「引退場所」をちゃんと用意してやることこそがもっと急務なのです。ホッキョクグマたちはサーカス団で演技をしているうちは「それなりの」待遇を受けることができます。何故ならサーカス団にとって彼らは「商売道具」ですので一応は「それなりの」待遇を行って健康を維持してやらねばならないからです。ところがホッキョクグマたちがサーカスから引退すると(引退させられると)、彼らはもう「用済み」の動物なのです。ですから彼らが送り込まれた巡回動物園は飼育環境は劣悪のままで改善されることがないのです。

ウムカとスネジョークの二頭のホッキョクグマが今後どれだけこの環境で生きていけるかはわかりませんが、何とか彼らをちゃんとした施設で保護・飼育してやってほしいと思います。私はかつて(2012年秋)、ロシア極東・沿海州のハバロフスク動物園でゴシというホッキョクグマに会ったことがあります。彼は幼少期にサーカス団に送られたものの不適格の烙印を押された後に巡回動物園に送られて何年もそこで劣悪な飼育環境で暮らしたホッキョクグマでした。しかしハバロフスク動物園が新動物園となったときに巡回動物園から救い出されてハバロフスク動物園で飼育されるようになったホッキョクグマでした。彼を巡回動物園から救い出した時はひどい健康状態だったそうです。彼に会った体験は今までの私の海外でのホッキョクグマ体験の中で最も印象深かったもののうちの一つでした。これについては「ロシア極東・ハバロフスク動物園、開園15周年を祝う ~ 三代のホッキョクグマたちの想い出」という投稿を開いていただき、その投稿の下にある「2012年秋 ハバロフスク動物園訪問記」を御参照下さい。ウムカもスネジョークもゴシのように巡回動物船から救ってやらねばならないのです。

(資料)
Высота 102 (Aug.21 2019 - В Волгограде ребенок разрыдался от жалкого вида животных в передвижном зоопарке) (Aug.21 2019 - «Отмените жару!»: руководство передвижного зоопарка в Волгограде оправдалось за страдающих животных)

(過去関連投稿)
ロシア・モスクワ郊外の私設動物園の悲惨な現実
サーカス団のホッキョクグマ、ダーニャは何処に消えた? ~ サーカス団と巡回動物園とを結ぶ暗黒
極地で死ぬかサーカスで生きるか? - "Смерть на полюсе или жизнь в цирке?"
ロシアの巡回動物園「モスクワ・サファリ園」に暮らすウムカとスネジョーク ~ ロシアの闇の部分
by polarbearmaniac | 2019-08-21 23:45 | Polarbearology

ロシア・クラスノヤルスク動物園に対して中国の動物園がホッキョクグマとパンダの交換を申し入れる

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オーロラ Photo(C) Роев ручей Красноярский зоопарк

ほら、また来たかというニュースです。ロシアのクラスノヤルスク動物園の園長であるアンドレイ・ゴルバン(Андрей Горбань) 氏が本日(8月20日)の夜に地元のTV局であるエニセイTVのインタビュー番組に出演してクラスノヤルスク動物園についていろいろと語っているのですが、その中で非常に気になる発言を行っています。それは、中国の動物園がクラスノヤルスク動物園に対してジャイアントパンダとホッキョクグマの交換を熱心に申し出てきているとのことです。園長さんの出演した夜9時のこの番組を以下に御紹介しておきます。



この下では番組の中でホッキョクグマの新飼育展示場について、そして本件についての園長さんの発言部分だけを再生できます。



園長さんが語るには、同園のホッキョクグマ新飼育展示場が秋に完成しても4頭ものホッキョクグマを飼育・展示していくことはできないために、いったいどのホッキョクグマをクラスノヤルスク動物園に残し、どのホッキョクグマを他の動物園に移動させるかを年内に決定しなければならないと語っています。4頭とは、野生孤児出身の雄(オス)のフェリックス、同じく野生孤児出身の雌(メス)のオーロラ、ウルスラ、そして先日ノリリスク近郊で保護された個体です。その他にも同園が所有権を持っていて現在ゲレンジークのサファリパークで飼育されている雄(オス)のセードフ司令官(彼はウスラーダの息子です)がいるのですが園長さんは彼については触れていません。さて、園長さんは中国の動物園が獲得したいのは雌(メス)の個体であり、それと交換にジャイアントパンダをクラスノヤルスク動物園に移動させるということを申し出ているそうです。ただしジャイアントパンダについては中国の国有資産であるため年間100万ドル(つまり約1億円)の有償ローンでの移動という条件だそうです。園長さんは、年間100万ドルも払う資金はクラスノヤルスク動物園にはないと語っていて中国からの申し出には非常に慎重な姿勢を隠してはいません。中国の一体どの動物園の申し入れなのかですが、私の想像では第一の有力な可能性としてノヴォシビルスク動物園生まれのロスチクを購入した動物園でしょう。その動物園はロスチクのパートナーとして雌(メス)の個体を入手しようとしている可能性が十分にあるからです。第二の可能性としては北京動物園でしょう。北京動物園はジャイアントパンダを何頭も飼育しているからです。

さて、この件についてクラスノヤルスクの地元メディアは非常に誤った解釈を行って報道しています。園長さんの語る本件に関する前半の話は「クラスノヤルスク動物園には4頭(あるいは5頭)のホッキョクグマを飼育していくだけのスペース的余裕がないので他園に移動させねばならないホッキョクグマがある。」という内容と、後半の「中国の動物園が雌(メス)の個体をジャイアントパンダとの交換で欲しがっている。」という内容を結びつけて「クラスノヤルスク動物園の雌(メス)のホッキョクグマがジャイアントパンダと交換で中国に行く。」と理解してしまっているわけです。当ブログをもし関心を持って読み続けていられる方が仮にいらっしゃるとすればお分かりでしょうが、ロシアの動物園の野生孤児出身のホッキョクグマの個体は全てロシアの国有財産であり(2000年あたりを境にしてそれ以降)国外に出すことができないことになっています。ジャイアントパンダも一応は中国の国有財産とはいえ、ローンが条件ならば国外に出せるということとは事情が違うわけです。クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマの雌(メス)の個体は全て野生孤児出身ですから国外に出ることはないということです。先頃モスクワ動物園にジャイアントパンダが来園してプーチン大統領と習近平国家主席の臨席のもとでモスクワ動物園でお披露目となったわけですが、実はこれも中国側がジャイアントパンダとホッキョクグマの交換を申し出てきたもののモスクワ動物園はそれを拒否したためにジャイアントパンダだけがやってきたという事情があるわけです。ですからクラスノヤルスク動物園の野生出身の雌(メス)のホッキョクグマがジャイアントパンダと交換で中国に行くということはあり得ない話です。

さらに考慮しておかねばならないのは、クラスノヤルスク動物園の園長さんが同園のホッキョクグマのうちどの個体を他園に移動させるかを年内に決定すると語っていることは一種の「カムフラージュ」であることを理解せねばなりません。「ロシア極東・沿海州 ハバロフスク動物園のハバルのパートナーはクラスノヤルスク動物園のウルスラに内定」という投稿でご紹介しています通り、クラスノヤルスク動物園から移動する個体はウルスラと事実上内定しているのです。ハバロフスク動物園がこのことを地元ハバロフスクのメディアにリークしてしまっていることをクラスノヤルスク動物園の園長さんは知らないのでしょう。
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フェリックス Photo(C) Роев ручей Красноярский зоопарк

さて、中国は以前はホッキョクグマの「供給元」であったロシアからのホッキョクグマの入手が困難となったためにジャイアントパンダという彼らの「切り札」を使って交換という形でロシアからホッキョクグマを入手しようとしているわけです。ロシアの動物園に誕生した個体(つまり飼育下生まれの個体を意味します)の多くは近年では欧州の動物園に移動するケースが多いのですが、それは欧州も今まで飼育してきた個体とは異なる血統の個体を求めてロシアからホッキョクグマを導入するという形をとっています。ただしそれも条件があるわけで血統的に「問題の無い」個体に限られるわけです。ところがこの問題に引っかかってきたのがノヴォシビルスク動物園です。そしてその典型例が野生出身ではなく飼育下生まれのロスチクであり、彼は有償売却ということで中国の動物園に買われてしまったわけです。中国にしてみればホッキョクグマ入手のために「僅かに開いた穴」がノヴォシビルスク動物園(そして将来的に日本平動物園)なのです。ちなみに日本平動物園で赤ちゃんが生まれても権利はレニングラード動物園にありますのでレニングラード動物園は中国にその赤ちゃんを売却することは必至です。そしてノヴォシビルスク動物園のノルジとシャイナの双子も90%以上の確率で中国の動物園に移動する結果となってしまうでしょう。残念なことではありますが。

ということで、クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマがジャイアントパンダと交換で中国に行くという話は成立しないということです。

ちなみに当ブログ開設者はジャイアントパンダには全く関心がありません。知的興味が全く湧かないからです。そして彼らを受け入れる感性も当ブログ開設者は持ち合わせていません。しかし当ブログにジャイアントパンダが登場した投稿が一つだけあります。2010年10月9日の「北京動物園・大熊猫(ジャイアントパンダ)館の風景」という投稿です。ジャイアントパンダに対する私の考え方は全てその投稿に述べた通りであり現在も全く変わっていません。

(資料)
Телеканал Енисей (Aug.20 2019 - Китайцы предложили обменять медведя из зоопарка Красноярска на панд. Но есть один нюанс)
КП - Красноярск (Aug.20 2019 - Китайские зоопарки хотят получить красноярских белых медведей в обмен на панду)
"Лаборатория новостей - Красноярск" (Apr.20 2019 - Китайские зоопарки предложили обменять панду на красноярского белого медведя)

(過去関連投稿)
モスクワ動物園が北京動物園よりのホッキョクグマ入手希望を事実上拒否 ~ したたかなアクーロヴァ園長
ロシア極東・沿海州 ハバロフスク動物園のハバルのパートナーはクラスノヤルスク動物園のウルスラに内定
(*2019年7月 クラスノヤルスク動物園訪問記)
・ノヴォシビルスクからクラスノヤルスク、そしてクラスノヤルスク動物園へ
・野生孤児出身のフェリックス (Феликс) の素顔
・野生孤児出身のオーロラ (Аврора) の素顔
・野生孤児出身のウルスラ (Урсула) の素顔 ~ 日帰りの旅を終えノヴォシビルスクに帰還
by polarbearmaniac | 2019-08-20 23:45 | Polarbearology

オランダ・ヌエネンの「動物帝国」のフリーマお母さんとニヴィとエルヴァの双子姉妹の近況

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フリーマお母さんとニヴィとエルヴァの双子姉妹
Photo(C)Truus & Zoo

オランダ・北ブラバント州、ヌエネンの「動物帝国 (Dierenrijk)」で昨年2018年の11月26日にフリーマ (Frimas) お母さんから誕生したニヴィ(Nivi)と エルヴァ(Elva)の双子姉妹は私も5月に三回この「動物帝国」を訪問してじっくりと会ってきましたが、見ていて本当に楽しい体験でした。素晴らしい飼育環境で伸び伸びと暮らしておりフリーマお母さんも母親として実力があり、といったことで長い時間観察していても飽きることがありませんでした。この親子の最近の様子ですが、映像が二つほどアップされていますので見ておきましょう。何か特徴的なことをしているというわけではなく、ごく普通のシーンを捉えたものです。最初のものは5月下旬の映像です。私がちょうどアウヴェハンス動物園に行っていた日の映像のようです・



次は8月4日の映像です。



この「動物帝国」というところは公共交通機関を利用して行くというのはほぼ不可能で、レンタカーを利用する以外に訪問する手段はほぼありません。行くとなればアイントホーフェンに宿泊して車で通うといった形の訪問となります。この双子姉妹の成長も追ってみたいのですが、あちこちと行くところが多すぎてなかなか手が回りません。再訪するのは来年のことになるでしょう。オランダの動物園のホッキョクグマたちの特徴は、伸びやかで悠々としているといったところにあります。そういったホッキョクグマたちを見ているとこちらも気分が楽になってくるということです。詳しくは過去関連投稿の訪問記を御参照下さい。

(過去関連投稿)
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!~ 不滅の「双子姉妹の神話」
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」で誕生の双子の赤ちゃんが元気に生後二週間を経過する
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」で誕生の双子の赤ちゃん、無事に生後50日が経過
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」で誕生の双子の赤ちゃんの近況 ~ 生後75日が経過
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」で誕生の双子の赤ちゃん、間もなく一般公開へ
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の双子の赤ちゃんが遂に屋外に登場!~ 来園者を45分待たせた親子の登場
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の双子の赤ちゃんの映像からの考察 ~ 授乳時の左右の位置関係と性別
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の双子の赤ちゃんの性格を考える ~ 行動が同じなら同性と言えるのか?
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の双子の赤ちゃんの行動を探る ~ 行動差は意外に少ない?
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の双子の赤ちゃんの性別は二頭共に雌(メス)と発表
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の雌(メス)の双子の赤ちゃんの成長を追うことの困難さ
オランダ・ヌエネンの「動物帝国」の双子姉妹の名前が "ニヴィ(Nivi)" と "エルヴァ(Elva)" に決定
(*2019年5月「動物帝国」訪問記)
・「動物帝国 (Dierenrijk)」でのホッキョクグマたちとの楽しき出会い ~ 止揚された双子姉妹の個体識別論
・「動物帝国 (Dierenrijk)」訪問2日目 ~ ニヴィとエルヴァの双子姉妹の行動と位置関係
・「動物帝国 (Dierenrijk)」訪問3日目 ~ 伸びやかな暮らしをしているホッキョクグマ親子
by polarbearmaniac | 2019-08-19 23:45 | Polarbearology

デンマーク・コペンハーゲン動物園のリンとイマクの親子のトレーニング風景

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イマク Photo(C)Zoologisk Have

昨年2018年の12月1日にデンマークのコペンハーゲン動物園でリンお母さんから誕生した雌(メス)のイマク (Imaq) ですが、順調に成育していることは同園のSNSのサイトに時折登場することから知ることができるものの、意外に一般のファンがネット上にアップした映像が極めて少ないという結果になっています。ベルリン動物公園のトーニャもコペンハーゲン動物園のリンも育児初体験なわけですし、しかも一頭の娘を育てるという共通した条件ですから二組の親子の比較などがもっと話題になってもよさそうなものですが、残念ながらそういった記事は少なくとも見当たらないようです。ここでコペンハーゲン動物園がごく最近公開した映像を見ておきましょう。これはトレーニングの様子です。



このコペンハーゲン動物園についても年内に第二期訪問を行おうと思っています。今年の5月の訪問時にはこの親子は狭い旧飼育展示場にいたわけですがノルドがオールボー動物園に出張していますのでリンとイマクの親子は広いメインの "Den Arktiske Ring" に移動して展示されています。このメインの飼育展示場でのこの親子の様子をどうしてもまた見ておきたいということと、イマクの成長と母親であるリンの娘に対する接し方というものもじっくりと見ておきたいと考えています。このリンというのは私の見たところ非常に優秀な母親です。そういった前回5月の訪問の時の印象は過去関連投稿の訪問記を御参照下さい。リンとゲルダとトーニャの比較、これも大きなテーマだと考えています。
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欧州、特にドイツのファンの方々がコペンハーゲン動物園を避けているのは、おそらく5年前に同園であったキリンのマリウスの件があるために心にわだかまりがあるからではないかと私は思います。仮にそうだとすれば残念なことです。

(過去関連投稿)
デンマーク・コペンハーゲン動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 同園で約20年振りの快挙
デンマーク・コペンハーゲン動物園で誕生の赤ちゃんが元気に生後10日間を乗り切る
デンマーク・コペンハーゲン動物園で誕生の赤ちゃんが生後50日となる ~ 産室内ライブ映像配信が開始
デンマーク・コペンハーゲン動物園で誕生の赤ちゃんが生後8週間が経過
デンマーク・コペンハーゲン動物園で誕生の赤ちゃんの近況 ~ 成育の「第一関門」をどう考えるか?
デンマーク・コペンハーゲン動物園で誕生の赤ちゃんが生後11週間となる
デンマーク・コペンハーゲン動物園の赤ちゃんが遂に2月28日より一般公開開始の告知
デンマーク・コペンハーゲン動物園の赤ちゃん、いよいよ明日2月28日より一般公開へ
デンマーク・コペンハーゲン動物園の赤ちゃんが遂に屋外登場、そして一般公開が始まる
デンマーク・コペンハーゲン動物園の赤ちゃんとリンお母さんの近況 ~ 意外にも少ない情報
デンマーク・コペンハーゲン動物園の赤ちゃんの性別は雌(メス)と判明
デンマーク・コペンハーゲン動物園の雌(メス)の赤ちゃんが初めて水に入る
デンマーク・コペンハーゲン動物園の雌(メス)の赤ちゃんとリンお母さんとの関係を探る
デンマーク・コペンハーゲン動物園の雌(メス)の赤ちゃんの名前が "イマク (Imaq)" に決まる
デンマーク・コペンハーゲン動物園のイマクがリンお母さんと共に “Den Arktiske Ring" に登場
デンマーク・コペンハーゲン動物園のリンとイマクの親子の近況
(*2019年5月 コペンハーゲン動物園訪問記)
・8年振りのコペンハーゲン動物園訪問 ~ イマクちゃん、初めまして!、リンお母さんお久しぶりです!
・コペンハーゲン動物園訪問2日目 ~ 母親としての力量を存分に発揮する育児初体験のリンお母さん
・ノエル (上野のデアの姉) とノルド (旭川のイワンの弟)のペアへの期待 ~ ノエルの挽回なるか?
・イマク (Isbjørnneungen Imaq)、その性格と実像 ~ 全方位的可能性を内包した稀に見る逸材
・コペンハーゲン動物園訪問3日目 ~ 調和と充足感の存在するリンとイマクの親子の驚くべき関係
・コペンハーゲン動物園訪問4日目 ~ リン親子の火曜日、そしてホッキョクグマたちの時間
・コペンハーゲン動物園訪問5日目 ~ 巧妙な手綱さばきで娘のイマクをコントロールするリンお母さん
・リン (Isbjørn Lynn)、その素顔と母性
・コペンハーゲン動物園訪問6日目 ~ リンお母さんをゲルダお母さんと比較する
・コペンハーゲン動物園訪問7日目 ~ 多彩さを増すリンとイマクの親子の行動
by polarbearmaniac | 2019-08-19 03:47

ベルリン動物公園のトーニャとヘルタの親子の夏の日

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ヘルタ Photo(C)Tierpark Berlin

ベルリン動物公園 (Tierpark Berlin) で昨年2018年の12月1日にトーニャお母さんから誕生した雌(メス)のヘルタ (Hertha) は順調に成長しており、その姿は映像で多くネットにアップされています。おそらくノヴォシビルスク動物園のノルジとシャイナの双子に継ぐ数の多さだと思います。ドイツの首都の大都市ベルリンの動物園に生まれたホッキョクグマの赤ちゃんとしては情報の多さは当然のことだと思われます。そういった映像のなかでごく最近のものをいくつか見ておきましょう。まず最初の二つはベルリン動物公園の公式映像です。





次は地元の方の撮影した映像ですが、以前からご紹介している映像と同じ方が撮影したものです。同じ視点で撮影されたもので統一したいという意図からです。まず最初の三つはヘルタが一頭で遊んでいる姿です。







次はトーニャとヘルタの親子の姿です。





この母親のトーニャは我々日本のホッキョクグマファンにとってはかなり異質に感じるタイプの母親です。何故ならトーニャは私たちが何年にもわたって見続けてきた母親としての札幌のララとは非常に異なるタイプの母親だからです。このトーニャはレニングラード動物園のウスラーダとタイプが近い母親です。そういったことはいくつもネット上に公開されている映像を見ただけでは必ずしもわからないというのが私の印象です。私は過去関連投稿の訪問記でも触れていますが、この母親であるトーニャに全面的に共感できるかといえば、必ずしもそうとは言えないというのが本音のところです。一方、ノヴォシビルスク動物園のゲルダについてはトーニャよりも共感できる気がします。共感度が強いかどうかと実際にその母親が能力があるかどうかは別のことではありますが、そこは母親としてのタイプの違いをどう考えるかということがポイントとなるでしょう。欧州のホッキョクグマファンの方々はこういったホッキョクグマの母親にはいろいろなタイプがあるといった視点はないようです。

(過去関連投稿)
ベルリン動物公園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ トーニャが三度目の出産
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんが生後六日目を迎える
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、生後10日間の関門を無事に突破
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、生後二週間が経過
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんが生後五週間を順調に経過、両目を開く
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、無事に生後50日が経過 ~ 同園訪問希望の方々へのアドバイス若干
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんが生後八週間を目前にして歩き始めようとする
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんが元気に生後二ヶ月が経過
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、生後70日となる ~ 好奇心に溢れた行動を始める
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんの性別は雌(メス)と判明
ベルリン動物公園の雌(メス)赤ちゃん、約三週間後に屋外登場となる模様 ~ 名前は"ヘルタ"となるのか?
ベルリン動物公園の雌(メス)の赤ちゃんの一般公開開始は三月中頃とベルリン市が公式に発表
ベルリン動物公園の雌(メス)の赤ちゃんのボール遊び ~ 待たれる屋外登場
ベルリン動物公園の雌(メス)の赤ちゃん、今週土曜日(3月16日)より一般公開開始と同園が告知
ベルリン動物公園の雌(メス)の赤ちゃん、遂に屋外に登場!~ 早くも水に入る大胆さ
ベルリン動物公園の雌(メス)の赤ちゃんの一般公開が土曜日から始まる
ベルリン動物公園のトーニャ親子が多くの人気を集め来園者数が倍増となる
ベルリン動物公園のトーニャお母さんとヘルタの親子の近況 ~ 猛暑が続く欧州
ベルリン動物公園のヘルタの力強い成長の快進撃
(*2019年5~6月 ベルリン動物公園訪問記)
・ベルリン動物公園 (Tierpark Berlin) でトーニャ親子に会った第一印象 ~ 心に迫るものが無い淡泊さ
・ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)訪問2日目 ~ 冷徹にして強靭な感性を持つトーニャお母さん
・ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)訪問3日目 ~ トーニャお母さんの厳しさを感じさせる育児姿勢
・ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)訪問4日目 ~ 力の誇示で娘を圧倒するトーニャお母さんの母親像
・ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)訪問5日目 ~ キリスト昇天祭の日のトーニャとヘルタの姿
・ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)訪問6日目 ~ 育児の基本姿勢を外さないトーニャの手堅さ
・ヘルタ (Hertha)、性格とその素顔 ~ 剛毅で自己決定力と独立心に秀でた逸材
・ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)訪問7日目 ~ トーニャお母さん、ヘルタちゃん、お元気で!
by polarbearmaniac | 2019-08-17 23:50 | Polarbearology

カザフスタン・アルマトイ動物園の間もなく30歳になるアリコル、元気な姿を見せる

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アリコル Photo(C)Казинформ

私はいつも不思議に思うのですが、メディア、特に新聞の関係者は自分たちの第一の存在意義を「権力の監視」であると位置付けていることです。私にはこれは到底納得のできない考え方です。私見では彼らの存在意義は「事実の報道」がアルファでありオメガであるはずで「権力の監視」は「事実の報道」の単なる副次的効果であるにすぎません。「権力の監視」が自分たちの一義的存在理由であると考える旧ソ連圏のメディア関係者は旧ソ連圏における地方権力の腐敗やマフィアの存在といったものを追及しようとして無理してまで取材を行うものの、その代償を自分の生命で支払わねばならないケースはロシアをはじめとしてよくある話です。こういった事情で、メディア関係者が自分の命という代償を支払わずに安直に何かを追及しようとする時に、動物園といったものは格好のターゲットになります。動物園というのは社会的には弱い立場にありますので彼らメディアの「追及」の格好の餌食になってしまうのです。
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Photo(C)Казинформ

中央アジア・カザフスタンのアルマトイ動物園 (Алматинский зоопарк) に暮らす現在29歳の雄(オス)のホッキョクグマのアリコル (Алькор) については今までもかなり投稿してきました。このアリコルも国際的には認知度が非常に低いホッキョクグマですので、何か報じられると可能な限り漏れの無いように投稿してきたつもりです。このアリコルがメディアに今まで登場する場合の多くは、彼の飼育環境が悪いために彼の健康状態は悪化しているといった文脈での報道が行われた時が多いわけです。今年の7月にまたこの種の噂話が流布されたわけですが、アルマトイ動物園、及びそのホッキョクグマ飼育展示場の新設工事の資金を負担したスポンサーの人物はメディア関係者、及び保護活動家などを集めた場所でこの噂話を否定し、間もなく30歳になるアリコルの健康状態は良好であることを明らかにし、そして実際にアリコルの元気な姿を見せて噂話を打ち消しています。そのTVニュースをご紹介しておきます。





アリコルは夏の初め頃は暑さのために体重を落としたそうで、来園者は彼がプールに飛び込んだりするシーンを期待するもののアリコルは日中は休んでいることが多いそうです。高齢になってきていますので、まあこれは仕方のないところでしょう。
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さて、秋に予定しているノヴォシビルスク動物園の第三期訪問ですが、その機会を利用してアルマトイ動物園を訪問しようと思っています。カザフスタンは他にいろいろと行きたい場所もあるのですが、そういったものと組み合わせて....などといつまでも考えていると彼に会う機会はなくなってしまうでしょう。私はこのアリコルの母親であるカリーニングラード動物園の故スネジンカには実際に会っていますのでよく知っています。さらにアリコルの孫であるビル(現 ゲルゼンキルヘン動物園)、コメタ(現 ロストフ動物園)、ナヌク(現 ムィコラーイウ動物園)にも会っていますので私にとってアリコルは全く無縁のホッキョクグマではないということです。さらにこのアリコルには日本のホッキョクグマ界とは不思議な縁があるのです。「カザフスタン・アルマトイ動物園の29歳のアリコルの近況 ~ アルマトイ、上野、徳島を結んだ不思議な関係」という投稿を是非ご参照下さい。

そういえばソチの冬季五輪の男子フィギュアスケートで銅メダルをとったデニス・テンは2018年7月にアルマトイで刺されて殺されたわけですね。その時の地元のTVニュースが下です。彼の車はレクサスだったようですね....。





(資料)
Казинформ (Jul.20 2019 - Как живет старый белый медведь в зоопарке Алматы)
NewTimes.kz (Jul.19 2019 - За гибель животных наказали замдиректора и ветврача алматинского зоопарка)

(過去関連投稿)
カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の「孤独」
カザフスタン ・ アルマトイ動物園に暮らすアリコルへの朗報 ~ 動物園大改修計画による飼育環境改善へ
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルの近況 ~ 地元のファンの温かいまなざし
カザフスタン・アルマトイ動物園の「国際ホッキョクグマの日」のアリコルの姿 ~ 氷のケーキのプレゼント
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルの夏の日 ~ 情報の少ない旧ソ連圏のホッキョクグマたち
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルが飼育展示場で三匹の猫たちと平和に共存
カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコル(Алькор) の「国際ホッキョクグマの日」
デンマークのオールボー動物園が雌のメーリクとヴィクトリアのパートナー候補の雄を世界中に求めて調査中
カザフスタン・アルマトイ動物園がアリコルのパートナー探しを開始 ~ 旧ソ連圏の事情の背景を読む
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルの近況、そして同園のスキャンダルと背後の「黒い影」
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコル、抜歯治療はX線検査の結果次第とモスクワ動物園主任獣医が診断
カザフスタン・アルマトイ動物園がモスクワ動物園主任獣医の診断に反発 ~ アリコルのX線検査は様子見へ
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルが病気であることを同園が明らかにする
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルの近況 ~ 新飼育展示場の建設へ同園の背負う課題
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルの27歳の誕生会が開催 ~ 動向不明期間が長い旧ソ連圏の個体
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルの新しい飼育展示場が完成 ~ 27歳で初めて芝のある飼育展示場へ
カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコルが28歳となる ~ 故スネジンカ、コメタを想う
カザフスタン・アルマトイ動物園の29歳のアリコルの近況 ~ アルマトイ、上野、徳島を結んだ不思議な関係
by polarbearmaniac | 2019-08-16 23:45 | Polarbearology

ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のジフィルカと一歳半のスメタンカの親子の近況

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ジフィルカ(左)とスメタンカ(右) Photo(C)Kateryna Bielikova

ウクライナ南部の都市であるムィコラーイウの動物園で一昨年2017年の12月8日にジフィルカ (Зефирка) から誕生した雌(メス)のスメタンカ (Сметанка) は早いものでもう一歳半になっています。私は昨年の9月にムィコラーイウ動物園を実際に訪れてジフィルカとスメタンカの親子の様子を5日間連続で観察してきました。母親のジフィルカ(当時6歳)はモスクワ動物園のシモーナの娘であり、そういった血統を彷彿とさせる情愛型の母親だったことが強く印象に残っています。スメタンカ(当時はまだ「ミコルカ」という仮の名前でした)はなかなかバランスのとれた赤ちゃんだったことも印象的でした。このスメタンカは秋には欧州の動物園に移動することが内定しており、具体的時期は明らかにされていないものの間違いなくクリスマス前にはムィコラーイウ動物園を旅立っていくことになるでしょう。

さて、ムィコラーイウ動物園では一般市民にホッキョクグマのエンリッチメントのためのおもちゃの寄付を求めていたわけですが、プラスチックの容器を中心にそういったものが市民から提供されていることが報じられています。
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Photo(C)Kateryna Bielikova

さて、このジフィルカとスメタンカの親子の最近の映像というのは実に少ないのですが、5月頃の映像がありますので下に御紹介しておきます。





このムィコラーイウ動物園のホッキョクグマたちについては従来から情報や映像が非常に少なく、せっかく誕生したスメタンカの成長を追っていくということが難しかったのは残念です。私は昨年の5日間の同園への訪問でこの親子がどのような親子であるのかについて自分なりの意見を述べ、また現地で映像をいくつもアップしたのですが(過去関連投稿参照)、残念ながら当ブログは日本語という世界では閉鎖的な空間にしか通じない言語で書かれている関係上、欧米やロシアのファンの方々にはそういったものが目に留まることもなかったようです。しかしこの親子についてはどうしても記録としての映像を残してやらないといけないわけです。特定の動物園の特定のホッキョクグマだけに光が当たるというのは不公平でしょう。

(資料)
Інше.ТВ (Aug.2 2019 - Как развлекаются белые медведи в Николаевском зоопарке в жаркий день)
НикLife (Aug.1 2019 - Работница Николаевского зоопарка показала, как мишки и бегемоты играют с пустыми канистрами)

(過去関連投稿)
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 一頭が元気に成育中
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園での赤ちゃん誕生の報道に登場した「悲劇のホッキョクグマ」アイカの姿
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園で誕生の赤ちゃんが生後一か月に
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園で誕生の赤ちゃんが生後二ヶ月に ~ 雪の日の父親ナヌク
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園で誕生の赤ちゃん、間もなく生後三ヶ月へ ~ 初めての自然光での映像
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園の赤ちゃんがジフィルカお母さんと共に屋外に登場!
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のジフィルカ親子の屋外登場以降の近況 ~ 優れた母親の出現
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のジフィルカ親子に天から与えられた季節外れの積雪のプレゼント
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園の赤ちゃんとジフィルカお母さんの近況 ~ 親子の情報の乏しさ
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園の赤ちゃん、性別も名前も発表されないまま間もなく生後五ヶ月へ
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園で誕生の赤ちゃんが生後半年を無事に経過 ~ 乏しい情報を憂う
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園の赤ちゃんの性別は「雌(メス)」と判明 ~ 同園は名前を公表せず
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園の赤ちゃんの正式な名前が「スメタンカ (Сметанка)」に決まる
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のジフィルカとスメタンカの親子の近況 ~ 乏しいウクライナからの情報
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のジフィルカとスメタンカの親子にお菓子とおもちゃのプレゼント
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のジフィルカとスメタンカの親子にファンからおもちゃのプレゼント
ウクライナ・ムィコラーイウ動物園のホッキョクグマ飼育展示場にライブカメラ設置 ~ スメタンカは欧州へ
(*2018年8月 ムィコラーイウ動物園訪問記)
・ムィコラーイウ動物園へ ~ ジフィルカとの再会、そしてミコルカ(仮称)との出会い
・ナヌク (Lední medvěd Nanuk)、その姿と実像 ~ 偉大な雄(オス)の風格が備わるのはまだ先か?
・ジフィルカ (Белая медведица Зефирка)、天性の母親の資質
・ミコルカ (仮称 - Белый медвежонок Мыколка)、素顔とその性格
・ムィコラーイウ動物園訪問二日目 ~ ジフィルカ親子の示す愛情の絶妙な相互関係
・ムィコラーイウ動物園訪問三日目 ~ ジフィルカの自己犠牲的献身性の母親像
・ムィコラーイウ動物園訪問四日目 ~ 猛暑の中で頻繁に授乳を行うジフィルカの体力的強靭さ
・ムィコラーイウ動物園訪問五日目 ~ ジフィルカさん、ミコルカ(仮称)ちゃん、ナヌクさん、お元気で!
by polarbearmaniac | 2019-08-15 23:55 | Polarbearology

ロシアのニジニ・ノヴゴロド、ニジェゴロド・リンポポ動物園のウムカ-アヤーナの夏の日

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ウムカ-アヤーナ (Умка-Аяна)  Photo(C)Зоопарк Лимпопо

2017年の10月にロシア北東部サハ共和国のレドネコルィムスク地区で孤児として保護され、その後モスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で保護・飼育されていた現在二歳の雌(メス)のウムカ-アヤーナ (Умка-Аяна、以降単に「アヤーナ」と略記します) は今年の4月にロシア第四の都市であるニジニ・ノヴゴロドにあるニジェゴロド・リンポポ動物園 (Зоопарк «Лимпопо») にロシア動物園・水族館連合 (СОЗАР - Союз российских зоопарков и аквариумов) によるホッキョクグマ繁殖計画の一環として移動してきましたが、その一連の経緯は過去関連投稿を御参照下さい。そのアヤーナですが7月に飼育展示場に人工雪製造機が設置されて一日あたり3トンの雪が飼育展示場に排出されるようになったそうです。非常に短いですが以下にその雪とアヤーナの姿を撮影した映像がありますのでご紹介しておきます。



ニジェゴロド・リンポポ動物園では以前からホッキョクグマの飼育、そしてその繁殖を切望してきましたのでかなり広い飼育展示場が新設されたわけですが、最初はモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で飼育されていたシモーナが移動して来たものの、そのシモーナに代って4月からアヤーナが来園してシモーナはヴォロコラムスク附属保護施設に帰還したというわけです。私はまだこのアヤーナに会ったことがありませんのでできる早い時期にニジニ・ノヴゴロドを再訪して彼女に会っておきたいと考えています。ロシアの動物園にもいろいろと若い野生孤児個体が飼育されるようになっていますので、そういった個体は可能な限り会っておきたいと考えているわけです。
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Photo(C)Зоопарк Лимпопо

アヤーナは将来的にこのニジェゴロド・リンポポ動物園で繁殖を担っていくことになるわけですが、問題は彼女のパートナーです。野生出身の雄(オス)の個体が理想的なのですが、ここ数年にわたってロシアで保護される孤児個体はペンザ動物園のベルィやペルミ動物園のセリクを除いて雌(メス)の個体ばかりです。ロシアにおける飼育下のホッキョクグマの今後の繁殖にとっては頭の痛い問題でしょう。実に奇妙なことなのですが欧州、ロシア、日本では雄(オス)の若年、幼年個体が不足してきているわけで、これは雄(オス)と雌(メス)の頭数のバランスがとれなくなってきていることを意味しています。自然下、飼育下を問わず特に幼年個体ではもともと雌(メス)と比較すると雄(オス)の死亡率が幾分高かったわけです。人間でも男の赤ちゃんは女の赤ちゃんと比較すると病気になりやすいといった傾向があるのと同じことです。ところがホッキョクグマの場合はここにきてこの傾向が顕著になってきたのではないでしょうか。仮に母親が雄(オス)と雌(メス)の双子を出産しても雌(メス)だけしか育てないといったケースがかなり出てきているのではないかという気がするわけです。ホッキョクグマの母親は出産直後に「この子は育たないだろう」と本能的に察知した赤ちゃんは食害で「処理」してしまうのだという比較的有力な仮説がありますが、仮にこの説が正しかったとすれば、「この子は育たないだろう」と母親に察知された雄(オス)の赤ちゃんが段々と多くなってきているという、まさに仮説の上の仮説すら立てられるような気もしてきます。これは自然下、飼育下を問わず、環境状態が段々と悪化しているということを意味するかもしれません。私の記憶では自然下では誕生直後の頭数では雄(オス)が約51%、雌(メス)が約49%というのが統計的な比率だったと思います。そして雄(オス)は雌(メス)と比較すると幾分死亡率が高いため、結局は雄(オス)が50%、雌(メス)も50%という同じ比率に落ち着くという、まるで神の摂理が存在しているかのような見事なバランスが保たれるわけですが、これがひょっとして崩れてきているのではないかという危惧の念を持ちます。これは科学的な調査による最新のデータが出てきませんと何とも言えません。

(資料)
ГТРК "Нижний Новгород" (Jul.19 2019- Три тонны снега для одной медведицы)
Комсомольская правда (Jul.19 2019 - Белой медведице из нижегородского зоопарка подарили снежную горку)
Новости Нижнего Новгорода (Jul.19 2019 - Аяна кайфует. В нижегородском зоопарке выпал снег специально для белой медведицы)
Ykt.Ru (Aug.14 2019 - Фотофакт: якутская медведица Умка-Аяна в нижегородском зоопарке)

(過去関連投稿)
ロシア北東部サハ共和国で北極海岸より700キロも離れた内陸で野生孤児が目撃 ~ 保護に動く自然管理監督局
ロシア北東部の内陸をさまよう個体への対応の二つの選択肢 ~ 動物園での保護か生息地への移送・解放か?
ロシア北東部 サハ共和国の内陸でホッキョクグマの幼年個体が保護 ~ 生後一年未満の雌(メス)と発表
ロシア北東部 サハ共和国の内陸で保護された雌(メス)の幼年個体がスレドネコルィムスクの街に移送される
ロシア北東部 サハ共和国の内陸で保護された幼年個体がヤクーツクに到着 ~ ただちにモスクワへ
ロシア北東部サハ共和国で保護された幼年個体がモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設に無事到着
ロシア北東部サハ共和国で保護された幼年個体、検疫終了後にただちにモスクワ動物園の本園に登場の予定
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設で保護された孤児の名前が「ウムカ-アヤーナ」に決まる
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナがニカと同居の見通し ~ 「適応化」へ
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナの近況 ~ 魚の給餌量の多いロシアの動物園
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナ、歯の治療から発見場所の謎を考察する
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設のアヤーナの近況 ~ 優れた外部環境への適応性
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設のウムカ-アヤーナがニジェゴロド・リンポポ動物園に到着
ロシア、ニジニ・ノヴゴロドのニジェゴロド・リンポポ動物園のウムカ-アヤーナの近況
(*2018年10月 ニジェゴロド・リンポポ動物園訪問記)
・ニジェゴロド・リンポポ動物園でシモーナと三年振りの再会
・シモーナ (Белая медведица Симона)、世界最高の母親としての素顔
・ニジェゴロド・リンポポ動物園訪問二日目 ~ 矛盾を内包したシモーナの来園
by polarbearmaniac | 2019-08-14 23:55 | Polarbearology

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自壊する帝国 (新潮文庫)


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ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


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